ダンジョンのある世界に転生したのは間違っているだろうか   作:舌百

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第二十九話 極西(アストラン)

 現在、我々、ケルヌンノス・ファミリア護衛とサンタムエルテ・ファミリアの一団は二つに分けた馬車に乗って酷暑の中を突き進んでいます。

 あちこちから変な鳥の鳴き声の聞こえるジャングルはここしばらく穏やかなオラリオで暮らしていた私にはおよそ耐えがたいものだ。

 この遠征のメンバーは、私、リィヤちゃん、コリネウスさん、パシウスさん、アルバートさんの5人、そして前の馬車に乗るサンタムエルテ神とラ・フラカちゃん。

 どうしてこの面子になったかと言うと、遡ることおよそ5日。

 

 

 あのあと団長、私、主神、そして訪れたフラカちゃんの4人で応接室に居た。なぜ私も居るかといえば依頼の第一受領者であるからだ。

 

「この法外な報酬金はいったいなんなんだ…」

 

と未だ顔の引きつっている団長がぼやく。

 

「それは依頼の口止め料みたいなもの。詳細は語れないけど口外されると困るから」

「犯罪の片棒を担がせるつもりなら受けられないが」

「そんなことはしない。この前の魔石、あれを運搬しないといけない。外に漏れると私たちだけじゃなくてギルドも困る」

「まーいいだろう。メンバーは…」

「こっちで決めてある。ここに呼んで」

 

そして呼ばれたのは、まずリィヤちゃん。次にコリネウスさん…という人。

 彼は私と度々縁のある、初日に隣で本を読んでいた人、そして私を持ち上げようとして冤罪を掛けられた人でもある。ヒューマンの眼鏡を掛けた長身のイケメン、魔法使いとかなんだろうか。

 その次がパシウスさん。彼女はここ数日のダンジョン攻略で度々一緒になるレイピアで戦う前衛のお姉さん。種族は私と同じハーフエルフ、リィヤちゃんとも仲良しでよく三人で潜っている。彼女もまた170C近い長身に良好なスタイルの美人さんだ。

 最後に入ってきたのがアルバートさん。彼とは本当に絡みがない。ヒューマン、白髪、青目、例に漏れずイケメン。このファミリアで2番手につける槍使い、らしい。

 

「とりあえず呼んだが、知っての通り彼らはうちのメインメンバー、全員レベル2だぞ?過剰戦力じゃないか?」

「そんなことはない。あとはラストに来てほしいけど」

「それは無理だ。ただでさえ減る戦力を俺まで削ったらこのファミリアの強度がガタ落ちする」

 

そう言った団長の目線は私に向いた。

 

「ああ、ノクシアが行くのはどうだ?」

「うん。いいね。あの時のメンバーだし、中遠距離を対応できる人材も欲しい」

「えっ、えっ」

 

2人から、いや、この部屋にいる全員から目が向けられる。

 

「ま、まあわかりました…そこまで言うなら…」

「よし、決まりだ。日時はいつなんだ?」

「明日、遅くても明後日がいい」

「そりゃずいぶん急だな…」

「問題ある?」

「いや、ない…が」

「なら明日。明朝にオラリオ西のゲートで集合。よろしくね」

 

そう言って、解散となったのであったとさ…。

 

 

 今に目を向ければあいも変わらずムシムシした暑さに襲われている。

 馬車のなかでは軽食を口にしながら暑いね〜と談笑する女子チーム、あいも変わらず本を読んでいるコリネウスさん、そして一人斧付き槍を抱えて外を眺めているアルバートさんがいる。

 なんかコリネウスさんの獲物袋に入ってるけどやたらとでかいんだよな…。

 なんてことを思っているとアルバートさんが口を開く。

 

「あれは、敵だな」

 

その言葉に反応した全員が一斉に外に顔を出す。

 場所は馬車後方、8時の方角。中型種のモンスターであるオークの亜種が三匹とそして見たこともない大型の鳥種が一匹だ。

 

「あの鳥はケツァル、別名は王の鳥。仕留めれば大金になる。やろう」

 

すでに停車した馬車の幌の上から声がする。上を覗き込めば鎌を構えてすでに臨戦態勢のフラカちゃんだ。

 ケツァル、そう呼ばれた鳥は日の光に照らされて青緑に光る羽を持った、翼の端から端を測れば2Mはありそうな怪鳥だ。

 

 開戦の嚆矢はケツァルの大きな鳴き声であった。

 

 まず動いたのはコリネウスさん。袋ごと獲物を持って外に出る。長いローブ着てるけど、暑くないのかな。ていうか前衛出て大丈夫なのかな。

 彼はなんとそのままオークたちの目の前まで歩いていくと、右手に持った袋を抜くことすらせず一振りする。

 次の瞬間、襲いかかろうとした3匹のオークたちが、全て胴から上が両断される。

 破れた袋から見えたのは大きな大きな、それは大きな斧であった。刃の長さはおよそ1M。彼の上半身ほどもあるそれを彼は片手でいとも容易く振るってみせた。

 

「コリネウスくん派手だねー!」

「うっす、あざっす」

 

野次を飛ばすのはリィヤちゃんだ。それに彼は後頭部に手をやってヘコヘコしている。

 なんか、運んでもらおうとしたときから思ってたけど見た目のインテリ感と比べてフレンドリーすぎるな、彼。そして、パワフルすぎるな、戦闘スタイル。

 コリネウス・コーンウォール、その冒険者の二つ名は山削り(エクスカベーター)。およそ人間には振れない重量の大斧をいとも容易く片手で振り回し、ダンジョン内の地形すらも変えたことからその二つ名がついた。

 

 私も負けじと矢を番え、もう残り一体だけとなったケツァルに2本の矢を放つ。さすがは鳥、飛来する矢に気付いたのか軽やかな動きで高く飛び上がって回避しようとする。

 だが、無意味。ケツァルの真下を通り過ぎようとした私の矢は普通ではあり得ない挙動で、グググと曲がり真上のケツァルの両翼を貫いた。

 これが私のスキル、魔弾射手(デアフライシュッツ)の力。嬉しくてダンジョン攻略でマインドダウンするまで使ったから勝手はもう覚えた。

 翼を貫かれたケツァルは地に落ち、それをフラカちゃんが一気に首を絞め上げて戦闘終了だ。

 

 その後は息絶えたケツァルを幌のうえに括り付けて再びの行軍だ。

 

「ほふひは、ほへかららっはねぇ」

 

口のなかにパンパンに物を詰めてリスみたいになってるリィヤちゃんが褒めてくれてる…のかな。

 ゴクン、と飲み込んだ。

 

「もうスキルも慣れたみたいだし良かったよ!」

「ふふ、最初に一緒に潜ったときは連発しすぎてマインドダウンしちゃってね」

「いやぁその節はお恥ずかしい姿を…」

「私もよくマインドダウンするからだいじょーぶだよ!」

 

 リィヤちゃんが頭を撫でて励ましてくれる。パシウスさんも抱きしめてくれるけどあっつい。

 そんなこんな百合百合やっていると前方の馬車から声が聞こえる。

 

「長旅ご苦労様。着いたよ、私たちの土地。アストランに」

 

 丘を登りきったところ、今までの森を抜けた先に広がっていたのは、広大な低地。

 サバンナというべきだろうか、荒涼としながらも自然豊かな景色、だだっ広い平野が広がっていた。

 もちろん、何もないわけではない。およそ都市であろう巨大建造物がポツポツ見えるし、はるか遠くには山頂の見えない巨大な山が見える。

 しかし、広大。見える範囲は今いる場所が丘の上なのも相まっておよそ200Kはあるのではないだろうか。

 

「このあとは都市を転々としながら真の目的地であるアストランを目指すよ」

「アストランってここのことじゃないんですか?」

「いい質問だねノクシア」

 

 ここでフラカちゃんによる説明が入った。アストランとは、そもそもが理想の地のことを指す言葉であり固有名詞ではない。

 この土地、半島自体も広くアストランと呼ばれているが、それとは別に都市名としてのアストランもあるという。

 北アメリカ大陸にアメリカ合衆国がある、みたいな認識だろう。

 そしてこれから向かうのは都市の方のアストラン、らしい。

 

「はいフラカ先生!それってどこにあるんですか?」

「あそこだよ」

 

フラカちゃんが指を差したのは、山。とおーくに見える、あの山だ。

 

「あそこまで…いくんですか…?」

「3日ってところかな、じゃあ今日は一番近場の街…チチェンまで行こうか」

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