ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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原型でやり直し。


明暗と結末

冥界某所、サーゼクスは待ち合わせた場所に訪れた相手に目を向けた。

 

「久々だけど、何の用なの?」

 

呑気なセラフォルーに対して、サーゼクスの顔は厳しいものであるが、それは意にも介されてなかった。

 

「何故、黙っていたんだ?赤龍帝の事を・・・・」

 

「いやあ私だって?ソーナちゃんに護衛とか協力者?で良いのを探してたら、寄りによって話がわかる宿主な赤龍帝で、とにかく都合良すぎなの見つけちゃったんで、良いのかなぁ?って思ってたんだよ・・・・だって赤龍帝だよ?

 

『昔みたいになったらどうするの?』

 

『他が何かするに決まってる』

 

『冥界の上層部なんか、まだ昔の恨み残してるかも』

 

『ソーナちゃんに危険があるかも』

 

考え出したらキリが無いから私も慎重にならせてもらったんだよ」

 

「む・・・・」

 

セラフォルーの言い分は一理ある。そもそも赤龍帝は嘗て、宿敵たる白龍皇との理由もわからない戦いを続け、その戦いのとばっちりたるや三大勢力に手を結ばせるまでの事態になったという災厄そのものだ。接しようとするのはともかく、都合良過ぎな流れを考える方が間違いなのだ。セラフォルーの言い並べた事が正しいと言わざるを得ない、ましてソーナへの危険を自分に置き換えた場合?『リアスに危険があるかも』を賭けとは言っても考えが甘くなっていた事がサーゼクスにはショックであった。

 

「そもそも、多少秘匿権あるもん♪♪そっちも赤龍帝とまで言わなくても『妹』にそれなりのを最初から付けたけりゃ良かったのにねえ?」

 

当たり前に返された中で『妹』と言う単語を使われたら反論の余地が無い、サーゼクスは近年でセラフォルーに敗北感を抱いていたが、理由がそこにあった。

 

誉められたものではないが、過保護であり人間界で言うところの『モンスターペアレント』も辞さないセラフォルーの有り様は『自分より遥かに劣る妹』を溺愛する者同士なのに、凡庸の烙印を押されて長年苦しむ環境をリアスに味合わせてしまった自分と、ソーナにそのような苦境を味合わせないでいられたセラフォルーの差となってしまっていた・・・・。

 

尤も、自分との差を気にする妹の心情を気付いてあげられなかった側と、気付いてはいたが関係無しに溺愛してた側と言う比較する以前の差があるのだが。

 

「まあ、それはそうと私の可愛くて強くて良いこと尽くしな秘蔵っ子は、そっちの妹ちゃんが何故か眷属にしちゃったけど・・・・それはどう説明すんのさ?」

 

「・・・・」

 

そう、リアスは正気を失っている間に何をしたか?

 

当のリアスは黙秘を貫き、あろうことか?

 

『そのせいで、自分が罰されても良い・・・・眷属達に去られても構わないわ!』

 

そう言い切ったと、ソーナから報告があった。

 

サーゼクスはある意味で一番の衝撃を受けた。

 

罰されても良い覚悟はともかく、眷属に去られても構わないと言い切った事にだ。眷属や下僕である以上に親友であり、妹や弟同然に接している者達・・・・周りから凡庸の烙印を押されて身内全員に劣等感を抱いてしまってからのリアスにとってその者達だけが心の支えだったのだ。少なくとも偽りなく本当にそう言い切る覚悟を持ったのは確信していた。仮に自分が出向いてもリアスは言わないだろう。だから、セラフォルーの質問に答えられはしないのだ。

 

「まあ、良いさ・・・・折角だからソーナちゃん達と協力して色々やらせときゃ良いってとこ、それに?旧魔王派のおバカちゃん達の一部が『事故』でアジトが壊れて一網打尽にされでしょ?そっちに事情聞いたら?」

 

セラフォルーは去り、悔しげにサーゼクスは俯くしかなかった・・・・今回の件について、黒幕とおぼしき者達が捕らえられたお陰でそれなりに便宜を図れた。既にリアスの不祥事は彼等が資料に混ぜた術式に原因があると、あながち間違いではないどころか一部合っている結論を出している。リアスには現場に居合わせた者達にけじめを付けさせれば良いとまでしている。

 

結局、部分的に当初の計画以上の成果・・・・赤龍帝を悪魔として冥界側に引き込んだと言う成果に繋がったに加えて、ルシファーである自分やグレモリーに不祥事をもみ消した貸しを作れた利点が冥界の上層部にはあるのだ。

 

自分の見透しが甘かったのを痛感しているサーゼクスは思うことが無い訳ではないが、口を挟む事は出来ずに明暗が別れたのみである。

 

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 

一方で、人間界に滞在する魔王二名の妹達はこれまた明暗が別れていた。

 

 

『居合わせた者達にけじめを付けさせれば良い』

 

 

冥界の通達に基づいた事が行われていた。

 

「う、ああっ・・・・ぃっ・・・・ぁああああっ!」

 

パン パン パァンと軽快な音に混じって押し殺せない悲鳴が響いていた。

 

生徒会室のほぼ中央で椅子に座った姉ヶ崎詩音の腿の上に腹這いで乗るリアス・グレモリー。先日の騒ぎの当事者二名・・・・幼女にやるようにリアス・グレモリーはそれなりに加減はしてもらってはいるが容赦なく詩音から『お尻叩き』をされ続けて泣きながら悲鳴をあげ続けていたのだ。

 

(何故・・・・こうなったのでしたっけ?)

 

他同様に唖然とするしかないソーナ・シトリーはこうなった経緯を改めて整理していた。

 

数分前の生徒会室は、一種の裁判所となっていた。

 

室内に集まったのはグレモリーとシトリーの眷属、そして先日リアスが起こした騒ぎに居合わせたアーシア、悪魔となった詩音・・・・と中央で床に正座をし、生徒会長の無慈悲な視線の先にいるのは先日暴走したリアスである。

 

幸い、一般学生には詩音が早期に予兆に気付いてくれたお陰で出なかった。

 

だが?事が終わって、悪魔になっていた詩音と正気に戻っていたリアス。

 

あの時・・・・リアスが暴走した時、何が起きたのか?

 

これは、詩音がリアスに突貫して、そのまま背後の校舎裏にある桜の木の下まで場を移してしまい、自分達が駆け付けた時、既に事が終わったのを目の当たりにした全員の疑念。

 

只、全て異常であった。

 

リアスの暴走させた力は自分達から見てもリアスには扱えないレベルのものだった・・・・現に詩音は自壊仕掛けなリアスを目の当たりにして事を急いだのだ・・・・しかし、リアスは傷一つなく正気に戻っていた。

そして、詩音は・・・・リアスの持つ悪魔の駒、兵士の駒を全て費やす事で悪魔に転生していたのだ・・・・何を思っていたのか、鎧を解除した学生服姿で立ちずさみ、そんな詩音に一糸纏わぬ姿のまま、膝立ちで泣きすがってひたすら謝罪していたリアス。

・・・・最も、先に被害を被らせた顔見知りに謝罪が先でしょと言った詩音にリアスは自分達の方に放り出され、力が入らないが為に赤子のように這い進んで来て謝罪したと言う凄まじい図となったのだ。乱暴だが彼なりの思いやりであるのは疑いようがない。

 

何故、ああなったか・・・・聞き出そうにも口を割らないリアスと気にもしない詩音の奇妙さであるが?

 

「リアス?今回の件は当の詩音君が気にもしてないからと言ってお咎め無しでは済まされません、冥界の上層部もこうなる事を見透かしていたような返答が来ています・・・・『迷惑掛けられた者達に一任する』・・・・それだけです」

 

詩音以外は複雑にしている。即ち、ある程度見透かされていたと言う事・・・・そもそも、詩音にしても嘗ては三大勢力が手を組んだ切っ掛けであり、場合に寄っては今世でも最強の敵になりかねない赤龍帝が自分達程度の駆け出し連中の協力者として滞在しているのか?疑念が尽きたワケではないのだ。

 

「あの、会長?ここは最低限のケジメをするくらいで済ませては?リアス部長は反省はしているのは本当のようですし」

 

この場を好転させたい為か、一先ずの提案が生徒会唯一の男子でありソーナの兵士から出された。

 

「匙・・・・それは私も同意です。しかし、ケジメをつけるですか・・・・リアス?貴女はこういう時はどうしています?例えば貴女に『修正』として平手打ちするにしても、私達は真相を知りません・・・・知っている者にさせるのが一番かもしれませんが・・・・?」

 

「ストップ!ストップっすよ会長!姉ヶ崎にやらせたら首から上が取れちゃいますよ!?」

 

「いや、俺はどこの世紀末覇者だ?」

 

生徒会メンバーからは何名か顔を青ざめながら一切のフォローが出来ないと言う視線が向けられる。戦闘訓練に付き合ってもらって長いが、その度に死にかけているのだ。

 

「会長?貴女は匙に以前に軽罰を与えた時にリアス部長も同じ事をしてたと述べた事がありますが?」

 

「し、真羅副会長?まさか・・・・」

 

「ああ、良い案かもしれませんね?でもシオン君にやらせるのですか?」

 

「何だ?何をやられたんだ匙?」

 

質問に匙は震えながら答えた。

 

「あ、その・・・・尻叩きだ」

 

「尻?ああ、親が悪さした子供にやったりするアレ?」

 

「お、おお・・・・アレは本当に・・・・」

 

「ま、まあ・・・・それでも詩音君のパワーでは」

 

「こほんっ・・・・ケジメとしてやるのは、まあ良いでしょう・・・・ですが詩音君次第で・・・・」

 

流石にこんな事をやらすには無理があると続けようとした時である。

 

「・・・・まあ、それなら仕方無い」

 

「へ?」

 

「え?ええ~~っ!」

 

室内に居る者全てが戦慄していた。

 

事も無げに畳んだパイプ椅子を持ち、中央に正座するリアスの近くに移動後、椅子広げて座った自分の太股上に立たせたリアスを腹這いにする詩音・・・・これではまるで躾をされる幼女の図だ。しかも、相手は年下で自分より背の低い男子。

 

「し、詩音?」

 

「迷惑行為をしたのは事実なんですから、迷惑被った人達の人数の何倍か・・・・まあ、昔から百叩きの刑とかありますよね・・・・今回はそれで済ますで良いですか会長?」

 

淡々とした手腕と口調・・・・年頃の乙女にするような形ではないが、先日リアスの全裸姿を見ろ見ろと声を上げ続けた自分達に言えた事ではない、詩音にしても、あの苦戦の教訓として女性の恥態程度に狼狽えまいとしているのだ。

 

「え、あ・・・・貴方がそれで良いのなら」

 

判決は下った・・・・リアス・グレモリーには?

 

『お尻、百叩きの刑』が下された。

 

それなりに加減してくれているのが仇になってしまって、尻を掌で打ち据えられ続けるリアスの悲鳴は途中から艶を帯びたと言うか、目覚めてはならないものに目覚めてしまったと言うのか、執行人が鈍感な時は鈍感な為にただ痛がっていたり子供みたいに扱われて流石に恥ずかしかったとしか考えておらず。ただリアスに淡々とお尻叩きをするのみであった。

 

そしてピシャアアンッと一際大きい音が悲鳴混じりに響く、漸く終わりとした詩音は加減を多少間違えたかもと自省していた・・・・息も絶え絶えに自分の両腿に腹這いになったまま身体を震わるリアスの様子をやり過ぎではないかとしたようだが、真相を教えられはしない。事が終わったのに声を殺して泣くしかできないリアスは、あろう事か尻の痛みに身動き取れなくなっていたとして、詩音におんぶをされて修復された部活に運んでアーシアに治療させた。

 

その際にアーシアには尻を直接触る為に下着を脱がさせまでした。

 

年下男女にこのような扱いをされたリアスの中で何かが目覚めてしまった。

 

「会長・・・・私達、何かに負けた気分です」

 

「・・・・」

 

親友の開眼?に複雑な心境のソーナであった。

 

・・・・と言うのが、表面上の事である。

 

流石に、リアスが尻を叩かれる続ける最中にどんなに悲鳴はあげても詩音に対して。

 

『やめて』『許して』

 

このような言葉を一切出さなかった事の真相は流石に見抜ける者はいなかった。




聖剣編に対する遠回しな皮肉。

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