ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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まあ、わかりやすいのが来た。


似てるもの

 校内を朱乃と一緒に歩いていたら、いつの間にか現れたローブ姿の者が五名・・・・一体何者?いえ、それよりも。周りには此方の様子が視認されない程度は確実な結界がいつの間にか張られていたので先ずはやるべき事を。

 

「朱乃、周りには誰もいないわね?」

 

「えぇ、念のためにこれを」

 

 朱乃が持っていたスイッチで試験運用を装った鐘の音が鳴る。私達絡みの非常事態を学園内に知らせる為の合図・・・・先日までで魔力絡みの移送だけでなく連絡手段、人間の使う物まで含め妨害工作だらけにされている為に一回限りならやれる通達手段を幾つも考案していた。

 

 そうしている内にローブ姿の集団の内一名の姿が僅かに揺れたと同時に私の眼前に接近したので咄嗟に胸の前で腕を交差させる形のガードを固めた瞬間、掌底での一撃がガードの上に決まって、そのまま後方に弾かれてしまった。

 

「リア・・っ」

 

 お互い、気を取られかけたけど、咄嗟に踏み留まった。訓練の時に似たような事があったので反応出来た。いつの間にか朱乃に近付いた二名が魔力を纏った手刀を振るって来たので、その場で上体を屈めて水面蹴りの形で片方の足を薙いで転倒させ、虚を突かれてすれ違うだけになった片方の隙も見て取ったので抜き撃ち気味だけど威力はなるべく込めた雷撃を各々に放っていた。私の方も追撃してきた側を両腕が痺れたフリをしながら追撃を横にいなし、虚を突いて脇腹の辺りに魔力弾を放って昏倒させられていた。

 

 片方に気を取らせる。虚を突くのは、やるのもやられるのも訓練でシオンやビナー義姉様相手に何度も繰り返した事だけど、今回の相手はイングヴィルドさんを模したものに比べたら怖さは無い為もあって訓練の成果を上手く出せたわ。

 

 残った側も思わぬ展開だったようで、止まっていたけど・・・・その内にローブ姿の敵から水蒸気が立ち込めて姿が消えたと思っていたら、周りが水蒸気に覆われていた。

 

「こ、これって・・・・『水の魔力』」

 

 私達は昨夜の事が頭に過り、その隙を突いたように水が龍ではなく、無数の大蛇のように型どられ、伸びてきたものに分断される。そして四方八方から鞭のようにしなりながら飛び交う水蛇を回避し続けましたが、その内に回避仕切れずに何度も打ち据えられた。痛み以上に昨夜の惨敗が頭に過って、戦闘中に震えてしまっていた・・・・倒れ付した私達は追撃で振るわれた水蛇の鞭に二度、三度と打ち据えられて悲鳴をあげてしまう・・・・更なる追撃の痛みに耐えていた私達は力を振り絞って、魔力を強く出せれば何でも良いとして出鱈目と言える形に地面に放って目眩ましを掛けた。効果があったのか水蛇の攻撃が一瞬緩まった隙に立ち上がりって合流した。

 

「リアスっ!」

 

「えぇっ!」

 

 二人掛かりでドーム状の結界を張る。再開された水蛇の攻撃を凌ぐ内に朱乃が疲労とダメージで片膝をついてしまったとして相手の魔力が高まったけど、その変化に気付いた私がすかさず放った魔力弾が何かに直撃して、水蒸気が晴れてボロボロになったローブ姿をした敵が二名墜落・・・・やはり、トドメを放とうとする瞬間に隙は比較的生じやすい・・・・それを誘っての膝をついてしまったフリが成功した。

 

 水蒸気が消えて、改めて向かい合った時にリーダー格だけは無傷で残っていて動じてもいないのを見た。ダメージを受けた側は倒れ付したまま・・・・昏倒したフリからの騙し討ちに注意しつつ、リーダーと向き合っていた。

 

「ほう?聞いたところによると実力的には取るに足らないと思ってましたが・・・・少しはマシになってはいるようですね?『昨夜』の一件が身に染みているようですね」

 

 私と朱乃はギクッとなったが、何とか平静を保てたつもりよ・・・・ペースを握られてはいけないとしたけど、やはり昨夜にシオンのマンション内で起きた事を見透かされているような言葉を向けられたのはショックが隠せなかった。あの後にマンションには侵入者の形跡は無かったハズだけど、思い当たる事があるわ。

 

 ロスヴァイセさんが結界を上書きした時に何かの不備があるかもしれないと言っていた。

 

 けど、そのロスヴァイセさんから聞いた限りを推測すると?あのマンションはイングヴィルドさんを匿う以外には別に価値は無いのだとしている可能性がある。けど、やはり自分達だけでは判断はしきれなかった。

 

「どうやら、噂の赤龍帝が留守のようですね?私達は彼に手合わせを挑みたかったのですがね」

 

「シオンと?」

 

 私はローブ姿の・・・・声からして男が語りだした内容に私は少し疑問だったわ、この相手は未知数だけど?先程までで何とか倒した者達は、シオンと出会う前の私達なら恐らく負けていた・・・・けど、シオンと正面から戦える程ではない気がする。

 

「はい『今なら勝てるかもしれないので』」

 

 

『今なら』

 

 

 つまり、シオンの秘密と不調・・・・いえ、これは迂闊には動じては駄目!私が隙を見せさえしなければ・・・・っ!

 

 朱乃も何となく私の心情と相手からの揺さぶりを察していたようだけど、必死に堪えていた。私情に任せて父を窮地に追いやった時のようなミスは許されないからとしている程度はわかる。

 

「リアス・グレモリー?『薄汚いグレモリー』に産まれた凡庸な姫君よ・・・・貴女は兄を憎んだ事はありますか?」

 

「な、何ですって・・・・っ」

 

 私が避けていた事・・・・兄を憎んだ事はあるかと聞かれて、即座に否定は出来なかった日々を過ごした・・・・周りはその類いを問うことはしなかった。その理由は?と思うと、益々・・・・その瞬間、男が笑った気がしたけど、ローブから出した左手に装着されたものを見て、私達は驚愕した。

 

「・・・・『赤龍帝の籠手』?」

 

 そう、見間違えはしない・・・・シオンが装着しているものにそっくりだと、完全に私と朱乃は硬直させられた。

 

「禁手化(バランス・ブレイク)っ!」

 

 ローブ姿から赤い閃光が放たれて、オーラとなったそれが向き合っている者を包む・・・・現れたのは所々に銀色のラインが入った赤い全身鎧の姿・・・・アレに比べたら軽装気味だけど何度か見たものとそっくりだった。

 

「「・・・・赤龍帝の鎧化(ブーステッド・ギア・スケイル)」」

 

 思わずその鎧の名を呼んでしまった私と朱乃は理解出来ない事に驚愕するしかできなかったわ、赤い鎧からは禁手状態のシオンと訓練した時に感じた類いのものを感じた。

 

 少なくとも、只の紛い物ではないわ。

 

「ほう、顔色を見るに只の紛い物ではないと理解できてはいるようですね?では、真偽の程は戦って感じてみると良いでしょう」

 

 そう言い放つ相手に私と朱乃は全力で滅びと雷光の力を込めた魔力弾を放った。そうしなければやられると感じたからだけど、難なく打ち消されてしまった・・・・驚く間も無く目の前に現れた相手が腹部に指を当てた瞬間、身体の自由を奪われてしまった。立ったままで微かに身体を震わすのがやっとにされてしまった。

 

「身体が・・・・動かない」

 

「リ、リアス・・・・」

 

「ふむ、やはりまだまだ・・・・」

 

 肩を竦める敵は優雅に振る舞っているけど、意図が読めない・・・・いえ、そもそも赤龍帝の鎧に似たものを纏わずとも私達を倒せただろうくらいの力の差は感じるのに、一思いに私達を殺さない理由は一体?

 

「何故、私が貴女達を殺さないかと思っていますね?顔に出ています・・・・理解してもらった方が都合が良いのでお教えしましょうか?私はある理由でグレモリーの紅髪が嫌いでしてね・・・・貴女の顔を親友と並べて刃物でズタズタにしてやりたいし、貴女が嫌うグラシャラボス家の確かゼファードル?のような下衆な悪魔に貫通式を行わせてもやるのも良い」

 

 言葉自体にはゾッとするし、仮面の下から感じる視線には悪寒すら感じるわ、楽しむように淡々と語っているけど、真剣味を感じなかった。それを見透かされたかのように彼は次の言葉を述べた。

 

「ですが、傷つけられたり汚されたりでは生きていれば誰かに慰めて貰える事があるので、私は考えました・・・・今の貴女達に相応しく、最も苦痛を感じるであろう事を・・・・先ずは貴女達をどこかに意識がある状態に閉じ込めるような事をする・・・・そして?」

 

 一息付いて、相手が何処からか出したのは昨日目にしたゴシップ記事、それをシオンとイングヴィルドさんについて書かれたページを開いて私達に見せつけた・・・・内容が内容なので私達の顔に動揺が広がったのを見たようで、喜色が浮かんだ声色で意図を語って来た。

 

「察するに、この二名の事を気にしているようですね・・・・では、せめて現赤龍帝とイングヴィルド・レヴィアタンが記事の内容からして立場を越えた絆とやら・・・・有り体に言えば結ばれたりするまでは生かしておきましょうか?」

 

「っ!?」

 

「な、何ですって!?」

 

 目を見開いてしまったが、踏み留まれた私に比して朱乃は全力で叫んだ。それは許さないと言う意図が込められていて、私も気持ちは痛い程にわかるけど冷静を保ててしまえる理由が悔しかった。

 

「おや?反応からして二名とも『そういう気持ちを赤龍帝に向けていた側』でしたか?てっきり、この記事で推測される『ロマンスを見守る側』かと思いましたが、これは失礼・・・・現レヴィアタンの妹と懇意な貴女達には、拗れるような事態が起きるのが苦痛かと思ったのですがね」

 

「っ!」

 

 謀られた!

 

 真意は不明だけど、私と朱乃の心情をかなりの域で把握されてしまった。

 

「お黙りなさいっ!私の気持ちを知ってどうする気なのですっ!?」

 

「冷静におなりなさい、貴女の主も耐えているのですよ?」

 

 耐えていると言われる事が苦痛だった。私も朱乃のように怒りを露にしたいけど・・・・いえ、それは今は関係無いとしたが、ペースを握られている事を考え直すのが遅れてしまった。

 

「リアス・グレモリー?思春期らしい思考はやむ無しですが・・・・傍目には伝説の赤龍帝を眷属としただけならともかく、その赤龍帝が旧魔王派の崇める血筋の娘と懇意にしていた事、これについて現魔王の妹としてどう考えていたのですか?」

 

 尤も過ぎる質問ね、けど把握してすらいなかった事だから答えようが無いわ・・・・情けない、本当に情けない事だけど。私にはシオンの私生活に踏み入る勇気すら無かった・・・・だから、この後にどうされても答えようは無いわ。

 

「ふむ、素直に答えてくれないなら・・・・相応しい技を用いさせていただきますか」

 

「?」

 

 そう言いながら、私達のボロボロになった制服に軽く手を触れた。何のつもりかと聞き出す前に『ソレ』は起きた。

 

「「ぃ、いやあああっ!」」

 

 悲鳴をあげてしまった。

 

 私達の制服も下着も靴も全て吹き飛んで一子纏わぬ姿にされてしまったからだ。何とか大事な部分を隠そうと手を動かしたが、虚空からか伸びてきた魔力の鎖により両手を吊り上げられた・・・・結界内とは言っても卑猥過ぎる形で拘束される恥辱に震える私達にやはり淡々とした口調で告げてくる。

 

「いけませんね、一般の女としてならばともかく?戦場に立つなら、その程度の事態に対しての覚悟は無いのですか?聞くところによると、赤龍帝に助けてもらわなければ半死半生のまま辱しめられていたりした身では?」

 

「い、今それを実現しようと言うの?いきなりで驚いたけど?生憎、そんな程度で屈するくらいなら生き恥を晒していないわっ!」

 

「リ、リアス・・・・」

 

「朱乃、恨むなら私を恨みなさい!それしか言えないのを含めてね」

 

「・・・・っ、いえ・・・・そうはしません」

 

 そう、私も朱乃もやりたい事があるわ!出来ればシオンと・・・・そんな事を考えたりもしてしまうけど、相手が私達を・・・・見方を変えれば時間を使わせるだけで、隙を見出だすか誰かの助けを宛にするだけにしても・・・・生きていれば逆転の可能性があるわ!・・・・そう考えている内に妙な魔力が立ち上ったと思って気を取られてしまった時。

 

「ほう・・・・気丈ですね?其方の御方は?バラキエルを助けてもらったのが縁で大層シオン君に恋い焦がれてはいますが、宛にするばかりな思考にはなっていないようですね」

 

「な、何を・・・・っ!ま、まさ・・・・かっ!?」

 

「その通りです。多少知っているようですね、これは嘗ての赤龍帝の編み出した技・・・・平たく言うと、読心術です」

 

「な、何です・・・・って?」

 

 読心術・・・・読んで字の如く、心を読む。

 

 つまり?

 

「そうですよ、リアス・グレモリー?貴女がひた隠しにしている赤龍帝との秘密をこれで聞き出してあげましょう」

 

「っ!」

 

 最悪の事態が頭に過った。今、裸にされている状態ですぐに気付くべきだったのに・・・・シオンからも少しだけ聞いて、多少は調べられたから、私達は思い当たった。

 

 何代か前の赤龍帝は本人が才能は無いにしても鍛練を重ねて基本的な戦闘力だけで魔王級すら一目置く程の・・・・わかりやすく言えばサイラオーグのようになっただけではない。女性限定であり、原理が不確かだが・・・・良く言えば如何なる防具も強制的に破壊し、範囲は不明だが戦場にいる全ての敵の思考を読む読心術すらも編み出した恐るべき存在・・・・今、自分達を窮地に陥れている相手がそれを使える事を。

 

「や、やめて・・・・」

 

「おや、急に弱気になりましたね?ですが、そう言われてやめるとでも?それに、ものの頼み方がなってないですよ?」

 

「・・・・っ、ゆ・・・・許して・・・・下さい!他の事なら・・・・私・・・私だけで、やれる事なら・・・・何でもします!」

 

「リ、リアス・・・・」

 

「おやおや」

 

 何を口走っているかなんて関係無かった。私には何よりも大事な事をどうにかバレないようにしたいとしか考えられなくなっていた・・・・。




リアスと朱乃は混乱している。

普通のロープレみたいなノリのナレーションじゃ済まされねえんだがね、つか早期登場は敵側もまだ増えるんかな?



一応は訓練の成果や敗北を糧にはしてる二名と、正体は丸わかりな奴の回。

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