耳にした事が何度も響いた。
『白龍皇』
(・・・・ビナー義姉様が・・・・『当時の時代』・・・・推測すると、私はまだ調査不足だけど、何代か前の赤龍帝のいた時代辺りからの白龍皇・・・・いえ、それ以前に・・・・『神滅具を宿せる』という事は・・・・)
リアスは、ワケがわからなかった。純血悪魔であるグレイフィアの双子の妹のハズ。
父からの手紙を渡けてくれた。
サイラオーグを連れて来た。
コカビエルが動き出した事態に冥界からの指示で駒王学園付近に滞在していた。
何よりも、初めて会った時にグレイフィアを良く知る自分が本人だと疑わなかった。僅かな気の違いを探れるようになれと言われて注意して見たけど、まるで違いを感じられなかった。双子の妹というのが嘘だったとは思えない。
少なくとも、ただグレイフィアと似ているだけの存在のワケが無い・・・・身内からは信頼されているハズ、少なくともコカビエルとの戦いで自分達が見た範囲で戦闘力だけなら瓜二つだったのだ。
(・・・・わからない、本当にわからないわ・・『受け継いだ』というのも何の事かわからない・・・・それでは、冥界の上層部や実家が私のところに来させた意図は一体?場合によっては現赤龍帝のシオンとはどうなるのか・・・・けど、今わかるのは、ビナー義姉様の存在すら知らなかった私には迂闊に口を挟めはしない事以上に義姉様の目に私達は映ってはいない事・・・・『ユーグリッド』・・・・グレイフィア義姉様が新旧魔王派の戦いが終わった後に、大戦中から度々会っていた兄と結ばれたけど、実家であり旧魔王派の最右翼であるルキフグス家が散り散りになってしまって弟も行方不明だとは聞いていた。
そのユーグリッドは、凄絶な有り様となっている。
背中から剣を抜かれて倒れ付すユーグリッドは魔力で宙に浮かされて、ビナーがどこからか出した処刑台のようなものに両手を尖った石を杭代わりに縫い付けられて張り付けにされて、なます斬りにされながら恍惚とした笑みを浮かべている。
喉笛を斬ってしまったのを含めて、事情を聞き出すのに拷問に掛けるのは効果が無いと判断したのか、念話の類いを使って聞き出したようだった。
「リアス、これは・・・・一体・・・・っ?」
ソーナ達、駒王学園に残る関係者が全員集まったが、皆は言葉を失っていた。突如感じた違和感を辿っていたが、ビナーが現れた事により結界が内部から徐々に破壊された。ロイガンさんにすら張られた事に気付かない結界だったのも驚いたけど、破った方が凄すぎたのね。取って来て貰った予備の制服に着替えたりして気を落ち着けてから、念話で聞き出した事について説明をしてもらえたけど、内容に怖気を覚えた。
狂乱していたせいで細部や時系列が不確かなようだけど、嘗ての赤龍帝は戦いの果てに死んだ。その際に最後の力で何かを救ったり届けたりしていたまでは良いけど・・・・その際にユーグリッドが遺体の一部を回収してあのレプリカの鎧を製作し、保管していたらしいのだ・・・・しかも、それをやった動機は。
『姉への邪欲』
ユーグリッドはグレイフィア義姉様にそういう想いを抱いていたが、兄サーゼクスにあっさり敗れた後に旧魔王派の敗北で戦争が終わり、その兄がグレイフィア義姉様と結婚した後に精神に異常をきたしていたようね。
そして・・・・最早、姉本人達かどうかの区別がつかないまま銀色の髪の女を付け狙い続け、その内にビナー義姉様が嘗ての赤龍帝と短いながらも交流があった事を耳にしていた為に、関心を買うためのレプリカとして完成させたのが、あの鎧・・・・。
要領は得ないが、その場に残ったもので弟の所業を知ったビナー義姉様が怒りのままにこの場に移送して来た事・・・・妨害については、怒りに我を忘れた為に力技で破ってしまったようだ。
そのユーグリッドは拘束されたまま感覚すら定かでない身体で暴れているが、どうやらビナー義姉様が打ち込んだ技で何かの幻を見せられているらしい・・・・。
「そんなワケで、人間界の銀色か近い色の髪の御方に悪さをしていないか心配なので?一応駒王町から周辺の者だけでも調べた方が良いですね、此方の身近な者では二名、搭乗さんとロスヴァイセさん・・・・搭乗さんに吹き込んだのはアレでは無かったようですが、後はロスヴァイセさんが心配ですね」
尤もな事を言っているが、目が笑っていないし声色も冷たい。
私のようにグレイフィア義姉様の事を知っている側はビナー義姉様の心中はある程度はわかっていた。
生き別れになった身内があんな風になっていただけではなく、知人に非道極まる仕打ちをしていたのだから・・・・そして、皆が抱いた懸念の一つは勿論・・・・私。
何故ならば、嘗ての赤龍帝と何かあったようだけど、ユーグリッドの仕打ちに怒りを爆発させる類いのものだった・・・・白龍皇としては、神滅具となってからも歴代の宿主を介して出会えば戦っていたのとは違った感情を赤龍帝に抱いていたのは明確。
「安心なさい?私は貴女には興味はありませんよ、先ずは私の言った事をお願いします」
疑問を言い当てられたけど、私達は当時の事を聞くどころか、今の怒りを抑えきれていないビナー義姉様と向き合う勇気が無く、指示通り動くしかなかったわ、私を含めてロイガンさん以外は震えを必死に堪えていた。様子を見るに予め誰かにビナー義姉様が白龍皇と知らされていただろう小猫すらも・・・・小猫はビナー義姉様が何故神滅具を宿せるかの理由も聞いたのだろうか?いえ、また呪いが発動するかもしれない事は後回しよね。
私は、ユーグリッドを任せて言われたようにこの辺りに滞在する銀色の髪の女性が今のところユーグリッドの魔の手が伸びてはいない事を確認し始めてロスヴァイセさんにも連絡を取ったけど、事情を伏せながら安全を確認しつつ警戒するようにしか言えなかった。純血悪魔のハズな魔王級が神滅具を宿して長い間過ごしていた等と迂闊には口に出せない。
少し落ち着いても、ロイガンさんに昨夜の事を聞き出す事も出来なかった・・・・けど一理あるのは理解していた。
『シオン君は白龍皇に勝てない』
昨夜にこう言った意味・・・・神滅具を宿したのが何代か前の赤龍帝の生きていた頃や新旧魔王派の戦いが起きた時期からなのだとしたら、経験値からして次元違いの差がある。私がああした以前のシオンでも戦って敵う相手ではないと考えるべきね、ロイガンさんは知ってても言わなかった理由はこれかもしれない。
ビナー義姉様はシオンには表向き敵意を抱いてる素振りは無い、寧ろ好ましく見ていたのはわかる。私的見解かもしれないけど、シオンがアーシアを救った時の話をした時の目は私の誉めるべきところを誉めてくれたグレイフィア義姉様と同じものだったから。
だからこそ、私がシオンにした事をある程度把握していて敵視してる方が自然として寒気がした・・・・他もある程度はそう考えているでしょうね。
そうしている内に、私達の元に駒王町に潜んでいるロイガンさんの眷属から連絡が来た。
『シオンのマンションが、爆発事故らしき事態が起きて崩壊したと』
原因はわからないけど、少なくとも『内部から』の爆発で、ロスヴァイセさんが行方不明になっていたとも伝えられた。
可能性としては、昨夜に訪ねた際に心当たりは無いとは言ってたけど、まさかあのファーブニルに悪神と言われながら撃退された相手?若しくは銀髪の女性を付け狙っていたユーグリッドの手の者?
そのユーグリッドは、喉をやられながらもグレイフィア義姉様・ビナー義姉様の両方に対する妄言を延々と出しているので、聞き出すのは期待できない、一先ずは冥界に送って取り調べに掛ける事になった。
シオンのマンションについては連絡して来た側に調査を任せるしかなかったけど・・・・私は、あのマンションに行くのを恐れている。イングヴィルドさんを模したものに惨敗したからだけではないわ、他に何かあるかもしれないし、崩壊したせいで出るような事態があるかで。
それ無しにしても・・・・先手を取られ、裏目に出て、規格外の味方がいてくれたから何とかなる事態ばかり、覚悟を決めて冥界に戻り、実家に助力を頼むのも出来ないなら、せめて戦う事を選択から外して逃げる事を前提にと考えたけど私には、ロイガンさんを介してある指示が来た。
『人間界に留まるように』
「例の横流し品を破ってしまいましたから、波風が立って大変なのでしょうね」
そうね、兄ですら自力で破れなかったものを破った私の評価が冥界では爆上がりしているとも知らされたからそのせいかもしれないけど、その三日後に目覚めてからの約一日でアーシアを拐われ、三度も惨敗を重ねた私には皮肉でしかない。それに留まると言う事は最初から逃げを選択するのに支障が出る・・・・それでは・・・・。
「リアス?」
「っ」
ビナー義姉様が私を正面から見据えて厳しい目を向けていた。やはり、グレイフィア義姉様そのものな目を・・・・。
「眷属や関係者を守れなかったのは失態ですが、そこから崩れるのが許されると思っているなら・・・・『私が最後の手段に持ち込みます』」
冷徹な視線に腰を抜かすのを堪えるのが精一杯だった。ビナー義姉様はやっぱり『把握していた』何の事かをある程度わかっているのは、この中では、私の見解では多分レイヴェルさんくらいだろうけど、そのレイヴェルさんも私と同じで堪えながらビナー義様から目を背けまいとしていた。聞きたい事は山程にあるけど、ロイガンさんですら気圧され気味ではどうしようもない・・・・『後にしなさい』と無言で語っている。
そして、近付く気配に気付いた。
「どうやら、一悶着あったようですね」
教会のシスターの格好?北欧系な顔立ち・・・・いえ、勢力と人種は違うのよね・・・・けど、この気配は。
「急な来訪で申し訳ありません、わたくしは四大セラフたるガブリエル様のクイーン、グリゼルダ・クァルタと申します」
四大セラフ・・・・つまり、天界の勢力・・・・ビナー義姉様以外は目を丸くしていた。その前にグリゼルダ・クァルタと言えば悪魔や堕天使と戦う女性エクソシストとして五本の指に入る実力者とも聞いている。そんな御方が今の情勢で何故この場に?そのグリゼルダさんはビナー義姉様に緊迫した視線を向けていた。
「・・・・」
「おや、知っていた側のようですね」
「はい、先日にイリナとゼノヴィアが任務の関係でこの学園を訪ねたと聞きましてね・・・・下手をしたらワケありな二天龍の戦いに巻き込まれていたかもしれないので」
口振りからして、ビナー義姉様がかなり前からの白龍皇と知っていた?・・・・やっぱり、理解が出来ないわ。それに少数でも知っている事だとしたら小猫が呪いで傷つけられたのが無意味になる。小猫に吹き込んだ者の正体と意図は一体?と思っていた時。
「緊迫しているとこを失礼します。校内の会議室か何処かでお話をしましょう?結界を張り直していても大人数になってるから一般生徒に見られたら不味いでしょう」
ロイガンさんの意見通りにするのが一番だと思った。何が動き出したのか把握しなければならない。
・・・・・・・・。
提案通りに空いていた会議室で私とソーナにロイガンさんがテーブルを挟んでグリゼルダさんと向き合って、他は後方に待機な形で話が始まった。そして出た話題は?
「わ、和平会談?」
「はい、堕天使総督のアザゼルを始めとした各勢力の一部から前々から提案はされていた話です。その関係で私が急遽訪ねさせていただきましたのですが?それに反対する声も多い、先日のコカビエルや旧魔王派もそれでしょう・・・・その者達は各勢力の関係者が完膚無きまでに打ち負かしてしまいましたが」
それがキッカケの一つ?けど・・・・。
「成る程、表向きはそうだけど実際は?という点が危惧されているのですね」
ロイガンさんが言ったように、あの戦いは悪魔側が成果を独占したと言って良い内容だったわ。コカビエルを一騎討ちで打ち負かしたビナー義姉様と、上手く連携して旧魔王派の大部隊を壊滅させたサイラオーグやシオン・・・・それに比して、神の死と不在を僅かに漏らされる事になった天界側と、失態を重ねた堕天使側が問題だわ・・・・。
「はい、今の段階で不穏分子の存在無しにしても時期が悪い・・・・和平としては悪魔側が優位に過ぎる形です。しかし、その悪魔側は?」
そう、問題は私・・・・元々注目されていて例の横流し品を真っ当に破ったシオンとは違って他には言い出せない形で破って注目されている以前にシオンにした事を悪い意味で注目されているし、仮にも現ルシファーの妹でもある。私は和平会談実現に波面を投じた側・・・・。
「まあ、それならば私はどうなのです?」
「大問題ですね、神滅具を仮説以外は不明な理由で扱える魔王級の純血悪魔等・・・・しかも、あの『初代ルシファー』の血筋から生まれた白龍皇から引き継いだ者ですからね」
「おや、ロイガンさんはともかく若手に教えて良いのですか?」
「白龍皇の力を見せてしまった側が言う事ですか?」
「確かに」
会話に理解が追い付かない・・・・自分の問題を反らしてくれたようで、聞き捨て出来ない言葉が出たので説明をしてもらった。
嘗ての赤龍帝・・・・おっぱいドラゴンと唄われた存在の宿敵である白龍皇はあろうことか初代ルシファーの血筋の悪魔と人間との間に生まれた存在、今で言えばイングヴィルドさんの男版と言えばわかりやすい天才だった。二名は何度か激闘を繰り広げた後に何故か和解してしまったと。
二天龍が和解していたのも驚かされたけど、それが広まっていない理由も納得したわ、両者の戦いが不意に再開されて、また三大勢力が手を取り合わなければならない惨劇が起きてからでは遅いので慎重に徹しているのね。
そして、一番気になる点について。
「簡単に言えば?私が白龍皇となり得たのは、その者の代で何かがあったのでは?とされているのですよ、ルシファーの血筋と人間の血筋が交じった者に宿っただけではなく、例の赤龍帝も次々と前代未聞の事をやって各界のお偉方の頭を悩ます存在でしたから?二天龍と神器そのものにまで神や魔王ですら理解出来ない何かが起きたのでは?とね、幸いにも『利害』が一致したので冥界からは様子見を決めてもらいましたがね、その後に何代か続いたらしい赤龍帝とは顔を合わせてすらいません・・・・生意気な事を言えば、経験値が違い過ぎますからね、双方がやる気になっても不公平です」
淡々と語る内容に私は安堵の色が浮かんだ。他も同じようね、内容が尤もなのもあるけど、元々冥界において、憧れの的の一角であるグレイフィア義姉様の双子の妹だけではなく、頼もしい味方でいてくれた存在、其方の方向で居て欲しい願望もあった。但し?
「では?『今代の赤龍帝を相手にするか否か』はどうなのです?」
シスター・グリゼルダの質問が一番の懸念だったわ、好意的な態度でも戦うに値すると判断したらどうなるのか?と。
「暫く保留ですね、アルビオンが複雑にしているので」
『同感だ』
翼が出て、そこから声が響いた。表に出て声を出すのは初めて見たので夢の中で度々会っていた私以外に驚いていなかったのは?
「・・・・出来れば、気付いてるハズなシオン先輩もドライグさんも気にしてなかった理由を知りたいのですが?」
小猫だった。多分先週末にシオンと一緒にいた時に目の当たりにしたのだろう。確かに近くにいたのだから気付いてはいたハズ。それを踏まえて小猫が敢えて白龍皇が誰かと言おうとした理由も気になる。また呪いが発動しないかと心配だけど、自分から言い出すのは内容が許容範囲だからと信じたいわ。
『手前勝手に言えば?語られた代の時代に我々すら理解出来ない事が続いたのでな、ドライグも今の代で安堵している部分があるのでライバルとしてはソッとしていてやりたかったのだ。向こうもそれを察している部分があるな』
「安堵?」
『うむ、俺の別名を知っているか?』
「『ケツ龍皇』」
『速攻で言うなベルフェゴールの!』
おっぱいドラゴン、又の渾名を『乳龍帝』に因んで付けられたらしい渾名、当時の宿主が女性の魅力を感じる箇所をある御方に訪ねられた際に、何となく尻と答えたら、そう付けられたらしいわね・・・・その際に二体揃って泣いていたと・・・・。
『とにかく!今の赤龍帝は当時のとは真逆なノリな奴だが?当時の俺の宿主のように何故か真顔で妙な地雷を踏みかねんから注意しといてもらおうか!』
皆の視線が私に集まった。日常生活で迷惑を掛けているのは周知で、アルビオンの言う地雷に真っ先に数えられる危険因子なのだから。
アルビオンのお陰で妙な空気にはなっていたけど、私は感じられてしまった。各勢力の首脳陣が和平を望むのは歓迎すべきだけど・・・・決して、安易に明るい未来にはならない事を。
今回は大小合わせてフラグが最多。
だから、数えるこたぁないやろ!?
※
堕天使側の失態がアレな流れなので、切り出し役は変更となってます。