ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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今回の舞台イメージ、某ボクシング漫画の日本初の世界王者に因んだペンション。



ヴェネラナの誘導

人間界において、自分が価値を知らないままイリナに譲ったカードゲームのレアものならまだしも、住んでるマンションすらも無くなったのは露知らずにシオンは、ヴェネラナから行くよう言われた場に向かっていたが行く先々で空間移動等ではないレベルに出る様々な場に迷い込んでは進む中で思わぬ事態に見舞われていた。

 

(いつ以来だろうな・・・・)

 

赤龍帝の籠手を目覚めさせてからの恩恵に加えて前世のと今世の異なる世界で発達した知識を活用して・・・・十年近くも医者要らずとか言われたんだが・・・・何でこんな時にと情けなく思っていた。

 

・・・・俺、風邪を引きました。

 

冥界の悪魔やドラゴンが掛かる類いのらしい。

 

山中のいつ地滑りしてもおかしくない場にあるペンションらしき建物で療養中だ。イングヴィルドが作ってくれた生姜に似た風味の冥界の山中にある植物、食用のジンジャー・リリーとでも言うべきものを効かせたスープを飲んで寝ている。イザベラさんがアレを知っていたかららしく、効能は人間界での『干し生姜』に迫るらしくて身体が芯から温まった。場所が良かったからベッドで寝てられてるし、加湿器無いから水の魔力を器用に使って湿度を上げてくれているし・・・・とにかく、寝よう・・・・それしかできない。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

「比較的・・・・わかりやすい事態になってくれたかな」

 

「・・・・」

 

別室で私イザベラとイングヴィルドは途中で調達した冥界の熊笹を煮出したお茶を飲みながら落ち着きを取り戻していた。これがヴェネラナ様の意図の一つ目だが・・・・やはり割り切れないものもある。

 

『シオンに冥界とドラゴン特有の風邪を引かせる。長引かせて口上やアリバイを作らせる』

 

「ヴェネラナ様も恐ろしい事を考えつかれたな実質『隔離』ではないか・・・・」

 

イングヴィルドは私のまとめを静かに聞いている。流石に人間界にいたままでもいつかはあっちの有りがちな病でこうなるとわかっていたが意図的な誘導の形にされると複雑なのだろうな・・・・大事な家族をわざと病気にさせられるような事を提案する方も同意せざるを得ない自分にも良い感情を抱けるワケは無い・・・・『家族』・・・・ああ、そうなのだろうな。シオンから見た私はそういうのには程遠いが・・・・今はシオンが風邪を引いた理由とそれを理解してしまえる私についてだ。イングヴィルドは語らずとも理解はしてくれているようだが、それに甘えと過信は禁物だ。

 

「前までは・・・・」

 

「?」

 

「前までは、シオンは病気になんかならなかった。私が無意識に神滅器の力を漏らす形で歌いながら使っても・・・・」

 

「神滅器の力・・・・ドラゴンに影響を与えるものとシオンとの『』か・・・・?・・・・っ!」

 

即答してしまった・・・・『』・・・・と言い出して予想以上と言わんばかりの目を向けられている・・・・イングヴィルドの神滅具にはドラゴンに影響を与える力もあると目の当たりにしていたにして、あの時の『真相』をまだ聞いてすらいないのに迂闊だったな、何度も繰り返したが何が起きてるか私にも全くわからんとは言え・・・・。

 

 

(もしも・・・・)

 

私は先週末のもしもを考えてしまっていた。レイヴェル様とシオンのマンションを訪ねた場合は、怖くなるくらいに違った結果となっていただろう・・・・そうなった場合、状況からしてイングヴィルドは『アレ』を見ないで身体が動くようにならなかったのかもしれない・・・・いや、違うな・・・・これからどうするかの方を考えないといかん。

 

「あの・・・・」

 

「?」

 

「シオンと会った時の事を聞かせて欲しい」

 

「む?」

 

声が強張るのを感じた。あの時の事は機密事項であり、立場上は漏らせない・・・・だが、もしもあの時の正体不明の敵について、イングヴィルドが何かを知っていたら?安易に過ぎるが、百年前に旧魔王派の血を引いた娘として過ごしていたのなら、近年で解明されない事・・・・っ?待て!・・・・肝心な事を先に言わねば。

 

「機密事項だからな、助けられた辺りしか言えない」

 

そうだ。考え過ぎてしまう前に言うべき事だった・・・・ゴシップ記事に二名が同棲していたのを取り上げられた事すら言ってはいないのだ・・・・それが正しいとした。私の部屋に落ちているだろうが、アレならまだその辺りを読んではいないともできる。

 

「・・・・ごめんなさい」

 

「構わん」

 

不注意さを反省している目だな、そんな目で見てくれるなよ・・・・眩しくて仮面の下まで焼かれるぞ。私とて、仮にも主とその一族より自分とシオンを優先した身だ。其方とは比べようが無いのだ。少しでもシオンの為になる事を藁にも縋る思いで探っているのは同じとしたいがな。しかし、私がここにいる事がどれだけの範囲で気付かれているかが問題だな。

 

 

イングヴィルドはある程度察して考えを保留した。この場の三名とセラフォルーにロイガンだけに都合良くだけではならない、例えばリアスには不用意な事をさせないようしておくのが肝心だからだ。尤も自分がリハビリを兼ねて整えた防犯措置がリアスに釘を刺すと言うより鉄槌を下したに近い事を実現しているのもロイガンの仮説通りに遠隔操作をする手段を知っていればやれていたのはまだ知らないのだが、だがイザベラの心配は杞憂に終わっていた。流石にヴェネラナが示した場にシオンとイングヴィルドが入る寸前に転移して合流してしまった等とは神や魔王ですら考えようもない、イザベラに起きた事はそれ程のレベルのものだ。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 

そして、冥界のとある片隅にある方のペンション、登山の休憩所に使う程度のものだ。

 

「そうですか・・・・そのイザベラさんは人間界には行ってなかったのですね」

 

「はい、レイヴェルからはそう報告がありました・・・・」

 

向き合っているのはヴェネラナ・グレモリーとフェニックス夫人・・・・。

 

なぜこうなったか?

 

夫人が先週末の戦いの報告で刮目させられたイザベラ、そのイザベラの部屋で突然に転移系の魔力が働き、部屋には自分も読んだゴシップ記事だけがイザベラの部屋に残っていた。

 

部屋に入った者達は内容が内容な為に、まだ読んでなかった側は特に慌てたが、そこそこの割合で出されてる結論であるサーゼクスとグレイフィアの例があるからロマンスのように取るかを決めかねていると踏んだ。つい最近だがグレモリーの跡取りの眷属となった赤龍帝と旧魔王派の崇める血筋の娘の組み合わせは歪ではあるがやり方次第で益にもなるという方向だ。尤もソーナ達のようにイングヴィルドがレヴィアタンの血筋と人間の混血であるのはまだ知らないのだが。

 

「レイヴェルさんは人間界、貴女はサイラオーグの方ですか・・・・私も驚きましたが、イザベラさんの力の増し方は確かに異常ですね、夫は呑気な事を言ってましたが顔は真剣でした」

 

「えぇ、だからこそ皮肉な結果になりました」

 

「・・・・」

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

『むう、まるで以前読んだ人間界の漫画のようにありふれた車にいきなりV8エンジンと予期せぬ事態でスーパーコンピューターを搭載してしまったようなパワーアップだな』

 

ヴェネラナは夫の言い分に当初呆れたが、その後に続いた言葉が問題であった。

 

『しかしだな、その車は運転している者のテクニックとコンピューター自体に時代を先取りしているような優秀なAIとやらがあったからやっていけたようなものだ。唐突にそのような状態になってしまったイザベラさんは私が述べたようなものを片方でも持っているのか否か、若しくはまだそれ等を必要とする程の事態に対面しているかが不確かと言うのが気になるな?』

 

息を飲まざるを得なかった。流石に内政力チートと言われる類いに数えられる夫はふざけてるようで鋭いところを突く、ヴェネラナは遠回しにその辺りを調べるよう促されたのだと理解したのだ。だからこそ、セラフォルーに頼まれた事をやると同時に打てるだけの手を打った結果の一つとして、フェニックス夫人に会えた。ご近所の主婦が偶然会って話を始めているようなノリでと揶揄される形だからこそ都合が良い。

 

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

相手もそれなりに考えて動いていた。レイヴェルを人間界に向かうのを許したのは、イザベラが記事の内容をシオンに問いに行ったと思ったからとしているが丁度記事の内容について何か知っているだろう側が行方不明は非情な考えをすれば都合が良い、ある程度行動を共にしていた側も慌ただしくなるだろうからと同時に自分達の理解すら超えている何かがあるのは明らかなので様子見を決めた・・・・どう問われても最近不用意な移送系の術を使って行方不明になるか見当違いの場に行ってしまった者が増えている為にそれの類いで済ませるしかない、イザベラと一緒にイングヴィルドが旧レヴィアタンの血筋だと判明した場に居合わせた側にも慎重になるべきで夫人が遠回しに出向く事に決めた。

 

記事にした出版社は冥界の政府自ら調査に当たる事が決定したらしいのだが・・・・果たして?と言う状況だ。

 

ヴェネラナはリアスがやった事を粗方把握してしまった。知る術は無いがシオンを目の当たりにした者の中で五指に入る程の域で真相に迫れていたので真っ当にシオンとのよしみを望む側に向き合うのは正直気が引けた。

 

前置きのような段階を終えて、二名の話題はビナーが送って来た『密造品』についてに移っていた。説明不用のフェニックス家の涙、しかも以前から噂があった密造品をコカビエルが持っていたので調べて下さいとビナーから送られて来たので対応を問われている。考えてみれば複数の事態が絡み合っているからシオンやリアスについての言及が僅かに剃らされているようなものだが・・・・それが偶然なのか意図的なのかはまだ判明出来なかった。シオンを遠回しに他の目に入らない場に時間稼ぎをさせながらの形に誘導したヴェネラナも自分なりに水面下の死闘を展開し始めた。




飲みに誘われたら事前迄の事を事も無げに後回しにする大人よりはマシなご婦人方よのう?

怪しい薬飲まそうとするのよりはマシとくらいにしたらんかい!



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