ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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悪夢と定番の光景、陽炎に似て?


揺れるオカルト研究部 学園外からの来訪者達
欲するもの


 リアスは、何度目かの光景を見渡していた。

 

 そこは正しく、地獄だった。

 

 氷の大地と空を覆う赤い妖気が漂い、そこで死に絶えた人々は極寒の中で遺体が朽ち行く事も無い・・・・。

 

 思えば、お笑い草な戦いだった。その世界では赤子から幼児は勿論、生まれる前の胎児の段階で早期に適正を見出だして、規準を満たした者は悉く戦士として養成し飛躍的に成果をもたらしたのだ。

 

 だが、その技術は一つ穴があったのだ。

 

 どれだけ発達した技術を持ってしても計り知れなかったもので覆された。後天的なものまで含めた有りがちなもの・・・・即ち『才能』に。

 

 切っ掛けは、正に口減らし・・・・極寒の地に住む人々を襲わせる計画はある存在により、アッサリと頓挫し、自分達が構築した社会は数年も経たずに『破滅』を迎えた。

 

 リアスは、彼が何をしたと言うの?と、憤った。

 

 ただ。自分に人並みの生活を・・・・何より愛情を与えてくれた人々と一緒に平穏に暮らしていきたかっただけ、しかし・・・・彼のもつ絶対的な『才能』が自分すらも蝕み破滅させる災厄を招いた。

 

 自分の兄がどれ程の幸運だったか、そして?兄に比較されてた程度な自分もと見せつけられているような人生。

 

 因果か輪廻か?

 

 地獄を駆け抜けた者は違う世界で光を掴んでいたのかもしれない・・・・だが、それを・・・・味合わせてはならない苦界に落としてしまったのがリアスの現実だ。

 

 罪悪感と同時に最低な安堵感を持ってしまった・・・・そう、リアスにはわかる。あの日に、もたらされたものを鬼餓感の赴くままにありったけ甘受してしまった恩恵を持っているからだ。詩音はリアスを恨んだりはしてない、自分の未熟が原因の不始末としか見ていないのだ。それは事実を知っても変わらない。

 

『運の良い事だな、リアス・グレモリーよ』

 

 リアスは、ビクッと身体を震わせて振り替える。

 

 そこに頓挫しているのは嘗て、三大勢力を結束させる切っ掛けとなった二天龍の片割れ、赤龍帝ドライグの在りし日の姿であった。

 

「私に、これを見せているのは貴方なの?」

 

『さてな?そうとしても・・・・案外、お前が見れるようになってるって要素の方が強いと思わねえか?何せ相棒のは?』

 

「言わないで!」

 

『ほう?威勢が良くなって来たなあ?最初は腰を抜かして言葉すら録に出せないでいやがった癖に・・・・まあ良いさ、今回は俺の方から聞きたい事がある。俺の方の責任は問わねえのか?』

 

「貴方のやった事は正しい、わ・・・・私・・・・私、が・・・・それを揺るがしたのが誤算・・・・だったんで、しょ?」

 

『おお・・・・理解してるなあ?全く、貪欲な姫様だぜ、相棒が思い出せてねえ事まで見ちまったのは恐れ入ったぜ?』

 

 そう、あの時・・・・リアスは無意識にドライグがシオンに施した『封印』を一時的に解除してしまったのだ。その隙に自分は・・・・自分はシオンを・・・・と、思い出してしまって、全身を震わせ、膝から崩れてしまう。

 

『ショックから立ち直るのは、まだ程遠いか?相棒が近くにいたらまた泣き擦ってるな』

 

「いや・・・・いやああ・・・・っ」

 

『やれやれ・・・・どうせ泣くなら?相棒にその身体を差し出して、嬉し涙の方で泣かせてもらおうって、考えられちまえば楽なんだがなあ?まあ、例の件が無ければな話だが』

 

 偽悪的な態度のドライグは見下ろすリアスを更に嘲る。

 

『いや、お前の身体は悪魔にしても本当に美しいぞ?俺が歴代の宿主達を通じて見た中でも極上の部類だぜ・・・・芸術品ってやつか?いや、芸術なのはお前の間の良さと悪さの噛み合わせの方か・・・・』

 

 ドライグの真意を考えるどころか言葉を聞き入れる余裕すらリアスには無い、ただ泣き崩れるだけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・・ま?)

 

 リアスは、声が聞こえた気がする。本能で察して意識を全力で其方に向けた。それが今の自分の心の拠り所とわかっているのだ。

 

(・・・・え・・・・様?)

 

 リアスが目を開けると、自分の同居人となったアーシアが心配そうに自分の顔を覗き込んでいた。

 

「ア、アーシ・・・・ア、わ、私は・・・・何か言ってた?」

 

「え、え~と、何か急に泣き出して・・・・いつも通りです」

 

 リアスは安堵した。

 

 ここは自分の寝室だと・・・・夢の中で何かを見ていると知ってしまって以来、アーシアはリアスと一緒に寝るようになったのだ。

 

 アーシアはわからなかった。

 

 リアスと共に暮らし始めているが、一番の心配は『夜』だった。

 

 朝から昼間、学園にいる時は普通に振る舞うリアスであるが、夜になるとこうなっていた。

 

 初めて、リアスの異変に気付いた時・・・・リアスは何かの悪夢にうなされていると思い、心配になって近付いた。だが、直後に泣き叫び、ひたすらこの場に居ないシオンに謝罪していた。あの日、自分達が駆け付けた時に悪魔に転生していたシオンに泣き縋っていた時のように。

 

 『ごめんなさい』と。

 

 ・・・・何度も何度も何度も。

 

 思わず起こしてしまったアーシアをリアスは泣きながら見据えて、寝言で何を言ってしまっていたかを問い質した・・・・その形相は、仮に明かされていないシオンとの秘密を知ったのだとしたら、口封じに命を奪うのも辞さないとわかる程に恐ろしいものであったのだ。

 

 アーシアは正直に話して、一先ずは安堵するリアスに自分の心情を打ち明けた。

 

 教会に見放され、自分が頼った先と助けた悪魔の正体を知らされて、後に確かめたと言うより確かめさせてもらって絶望した自分。

 

 唯一の救いは、仮に何も知らずにいた運命から救ってくれたシオンだと・・・・だが、それこそが、シオンが真っ先に暴走したリアスに向き合う切っ掛けであるのだ。

 

 最近のシオンはどこかおかしくなっているのはアーシアも何となく察しているし、アーシアならではの考えで他と同等かそれ以上に不吉な予感があった。

 

 自分がいなければ、シオンはそんな事が無くシトリーの学友達と健やかに過ごせていたかもしれない、だがリアスの暴走で出てたかもしれない被害を見過ごせないと言う思いをだ。リアスはアーシアに謝罪してお互いに抱き合って泣き明かした・・・・大罪を犯し、誰にも顔向け出来ない自分の秘密を敢えて聞かずに向き合ってくれた存在に心から感謝した。

 

 そう、リアスにはやらなければならない事が出来た。だからその為だけに生きなければならない・・・・そんな自分への救いとなってくれた少女に感謝した日から、二人は寝るのを共にするようになった。近い考えを持っていたと判明した相手にお互いすがりつかねば壊れてしまいそうだったのだ。

 

 尤も、リアスが悪夢に震えながらアーシアにすがりつくばかりの日々で、アーシアは一人では怖くて寝れずに母や姉にすがりつく幼女にそうするようにリアスをあやしながら一晩が過ぎている日々だった。

 

 身震いしながら今日も抱き合う二人はある考えがよぎっていた。

 

『できれば・・・・シオン(さん)が良い』

 

 二人はできればシオンが自分に寄り添い、不安を沈めてくれたらと・・・・駄目とわかっていても求めてしまうのだ。あの不器用だが人の良く、どこまでも自分達に・・・・最悪な言い方をしたら都合良い少年を。その考えを割り切れない自分達がこれから何をもたらしてしまうのかと思うと更に恐怖を覚えてしまうが、明日にはその少年を訪ねる予定になっていた。

 

 

 

 

 

 

 改めて、リアスがアーシアと同居を始めた週の土曜日だった。

 

リアスは、自分の同居人以上に心の支えとなったアーシアと共に目的地に着いた。マンションと言うには余りに硬質で無機質な建物・・・・この最上階に居るシオンを訪ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オカルト部員を兼ねる事になったシオン、姉ヶ崎詩音・・・・私の罪の象徴・・・・表向きの部活の為に詳細をまとめたプリントを届けに来たけど、この建物の無機質差には顔をしかめた。

 

 部屋の前に来るまでは・・・・てっきり、最近に漸く完結した新世紀なのに世紀末感のあるアニメヒロインのような乱雑さを想像した・・・・彼はどこか自分の事がおなざりだから・・・・けど?

 

「美味しいです!」

 

 事務的に通された部屋内は見事に掃除が行き届いていた。先程の例えに出したアニメで言えば、外見はヒロインの住まいで、中身は何故か上司に引き取られた主人公が住む事になり、しっかり整えた部屋・・・・丁度、食事時だったからか、シオンは昼食の定番の一つ、カレーを作っていた。同行したアーシアが興味を持ってお相伴に預かる事になったのだけど・・・・。

 

(ま、負け・・・・た・・・・わ)

 

 複数のスパイスとルー、前回作った物の残りを冷凍保存していたものを加えた上で仕上げただけあり、味わい深さと熟成具合が突き抜けている。具にもジャガイモを始めとした長時間置くと、とろみが出てしまうようなものは避け、欲しい場合は別にする工夫している・・・・ご飯の炊き加減も季節の気温と湿度まで計算しつつカレー用に固めに炊いた綿密さ、口に入れただけで脳内までが馥郁たる香りに侵食され、咀嚼して飲み込むと身体を内部から優しく溶かされてしまいそうだわ。

 

 材料はありふれているのに・・・・これが、家庭料理と言うもの?

 

 感嘆し、敗北感に勝るものに突き動かされ、気付いたら空になったカレーのお皿・・・・どのような顔で食べていたか気恥ずかしい・・・・アーシアは何か上目遣いにシオンを見据えると彼は当たり前にお代わりを用意してくれた・・・・仮にも貴族の食事を知る私でさえ我を忘れたのだ・・・・教会の質素な食事しか知らないアーシアは抗えないのだろう、その微笑ましさに・・・・つい漏らしてしまった。

 

「ふふ、お母さんみたいね?」

 

 ピシッと空気が変わった。

 

 最初、助けられた時に知ったハズ、シオンは女性的な容姿にかなり思うところがあると・・・・アーシアも事態を察して狼狽えている・・・・正に一生の不覚。せっかくの楽しい一時が恐怖の一時に・・・・と思ってしまったら。

 

「良く、言われましたよ・・・・」

 

 泣きそうな表情でシオンが語ってくれた。

 

 嘗て、幼少期にご近所の女の子・・・・ヤンチャ娘のと言う言葉の化身のような存在に振り回され、いつの間にか彼は同年代なのに年長者を通り越しておかんのような立ち位置に納まってしまったのだと・・・・怒りを通り越し、悲しみすら感じるようになったものに触れてしまった私はアーシアと一緒に暫くはシオンを気遣った。

 

 これが、彼と過ごした初めての平穏だと気付いたのは後だったのだ。せめて、少しでも・・・・このような時間が欲しかった。シオンとアーシアに・・・・ずっと私の傍にいて欲しいと思い始めてしまった。




詩音には追い討ちで悪いが、リアスの敗北感は原作でイッセーの母が風の時に出したおろし生姜入りな味噌汁に対して感じたようなものか。

意地悪だが、原作からして身内から悪くは思ってない相手をああしたり、こんな展開になったりしたらダメージでかいだろうなって感じのリアスとアーシアな回。

何気にイッセーみたいなお人好しへ率直な依存を封じられたらどうなるかの一案も兼ねてる。
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