他とは噛み合わないようで合ってはいる。
ソーナ達が退散した頃、ロスヴァイセはシオンへの説明を一通り終えていた。祖国にいた頃から基本的にお婆ちゃんっ子に近いので、今の外見より幼く感じてしまえる少年に教師みたいに振る舞うのは新鮮さを感じる程であった。
「説明は以上ですが、理解はしてもらえましたか?」
「はい」
(やはり、違和感ありありですね・・・・私としては以前のように、クールなようでグイグイ行くな方・・・・って、駄目でねか?その発想は)
「記憶喪失・・・・だから、名前も思い出せないし何がどうなってるか、全然わからない・・・・あの、僕はこの後にどうすれば?」
『どうすれば』
えぇ、と・・・・弱気な目で見ないで下さいよ。私はそんな風に見てもらえるような女じゃないんですよ・・・・でも、やっぱり何か良い・・・・彼氏持つなら?元のシオン君みたいに頼れると同時に頼られたり甘え合ったりが良いですね。
そう思って、自然にシオン君の頭をなでなでしてしまったのがキッカケになったのです。
がたっ、と音を立てて弾かれたように椅子から転がり落ちて床に転倒したシオン君の様子は只事ではありません。
「ど、どうしたんですかっ?」
「・・・・いや・・・・だ」
「?」
「来ないで・・・・下さい、僕・・・・僕は」
涙を浮かべて私を見てる?ど、どうしましょう?小さい子を泣かした?いえ、怖がられた?・・・・そう感じてしまうくらいに・・・・で、でも何をやってしまったのかが、さっぱりです・・・・触れてしまっただけでこうなるので思い付くのは?・・・・そ、そうだ!近所にいた野良な子猫みたいに変に過敏になってるようなで・・・・先ずは目を背けて静かに距離を取るのです!としたら?
「あ、あの・・・・何だかわからないけど、いきなり怖くなってしまって・・・・もう大丈夫・・・・ですから」
「(お、落ち着いてくれた?)・・・・そう、ですか?・・・・それは、何よ・・・・っ!?」
暗い?周りは凍り付いたようになって目の前には、黒い何かが立ち上っている?出所は穴が空いたシオン君の左胸?
その内、完全な闇となった空間に人間大の灰や砂粒の塊が見えて来て、それが崩れて出て来たのは・・・・『光』?その光の中で見た・・・・もの、は。
「あ、あの・・・・ロスヴァイセさん?」
「だっ、大丈夫ですよ?」
いつの間にか元に戻った光景で私を気遣うシオン君の目を真っ直ぐ見るに耐えない・・・・そんな目で見ないで下さい!私だって、事ある毎に泣き出すとか言われてますけど、知ってはいるんです!人間は泣かなければならない時があるんだって・・・・貴方は先ずは思い切り泣くべきなんです。そして、ごめんなさい!私はこんな事を考えてしまった・・・・これで私は流れに乗れましたと、そう・・・・細かい部分での謎も一発で解けました!
女の人が苦手なのも、先日出会った紫乃さんがああなっていた真相も・・・・私は見た!ルネアス様から転生者と聞かされたお陰にしても・・・・貴方が前世で生まれる瞬間、正確には母親が産気付いた瞬間に。
『母親を殺してしまった光景を』
そして今生で?
『紫乃さんの子として生まれた理由』
『何故、離れた場に進学したか』
『何故、女性に弱いか』
どれも考えるのも怖いけど、3つ目に関してシオン君は、簡単に言えば?『女』に弱いのではなく、無意識と本能的な域で恐れている。特に『母親』とまではいかないまでも年上女性にされるような行為・・・・記憶を無くしている状態のせいで、先程のような事をされたらああなる。
実は、ヴェネラナ・グレモリーの意図を見抜けずにいた理由が気になっていたのですが、間違い無くこれが理由・・・・『母』としてはしっかりしているだろう存在を無意識に恐れて、私も知った特有の洞察力が働かなかった。
(ふむ、何よりだぜ・・・・リアスですらまだ見れてなかった光景まで見れたとは、オーディンの爺さんも完全な計算違いに見舞われたようだな)
ドライグは、ショックに耐えられずに泣き崩れて嘔吐までするところをシオンに気遣われるロスヴァイセを無様とは思わなかった。マトモではあるからだ・・・・前世の母親を胎内から出る瞬間に胎児の段階で身に付けてしまっていた『光と炎』で殺害してしまった瞬間。
実は他に下手人がいるような救いと言うには複雑な真相は無い、シオンは本当に生まれ出たと同時に母親殺しをしてしまったのだ。自分ですらリアスが封印を一時的に解除した時に見たものを考案しても他の要因は有り得ないと確信している。
それから始まった地獄は新米ヴァルキリー程度では見るに耐えられなかったのだが、またも嬉しい誤算だ・・・・前の二人、早いキッカケになったイザベラに予想より早いイングヴィルドだけでも嬉しい誤算だったが、それとは良い意味に違った形で『三人目』となってくれたのだから。問題はリアスがロスヴァイセ程に見てないが結論は出せてる段階でどう動くかであろう、今のままではシオンの前世の母の死因は?精々紫乃で言うと早目に倒れて身体を壊すことなくそのままと言う流れとしているからだ。
それに、今回のロスヴァイセの件はセラフォルーが目を掛けてから気に入り度が強くなったのを理由にお姉さんぶってしまったのが大誤算に繋がったのを思い起こし、改めてセラフォルーの行方を気にした。
・・・・・・・・。
夢を見ているような感覚。
何となくだけど、私は自分がどうなっているかがわかるわ・・・・私・・・・リアス・グレモリーの身体がどう足枷になるか未知数だけど、シオンなら何とかなるハズ・・・・けど、私には心残りが多かった。せめて?
『ギャスパーと話をさせたかった』
私はギャスパーの生い立ちを完全に把握しきれてはいなかったけど、何となく想像が付くようになれた・・・・逆効果になるかもしれないけどそれでも私にとっては有益よ、恨まれても良いから有事の際には二人を協力させる必要があるのよ、私なりの結論の為に・・・・私が立てた算段の重要事項、ドライグですらやれなかった事。
『シオンに自力で前世の記憶を完全に取り戻してもらう』
そうすれば、記憶を取り戻した際のショックが手伝って私なりの償いが完成する。そう、私が使った術を無効化する為に一番難しいけど、確実な手段は術を掛けられた対象が自分の意思で掛けた者を・・・・そうよ。
『シオンが私を殺す』
今の段階ではそれが不可能な程にシオンには自分を害する思考はできないから・・・・キッカケとして必要だから、自分なりの青写真とした。
(これなら、最後に私は・・・・シオンの傍にいれるわ・・・・)
どんなに汚れても、誰にどうされようとも構わない・・・・最後にシオンへの償いが完成していれば良い・・・・けど?
(アーシアをどうします?)
私を踏み留まらせているのはシオンからの一言だった・・・・そう、私はアーシアの安全だけは確保しなければならない・・・・そのアーシアに私がやった事を知られてしまっているのはともかく、オーフィスが何故そうしたのかを知らなければならない、この数日で行き着く結論はそれ・・・・曖昧な中で私の意識は夢から深い睡眠に入る段階のように失わて行った・・・・まるで、誰かが余計な事を考えをさせまいとするように。
・・・・・・・・。
『音速の世界』
考えてみれば、元々姫島家のような生まれでは大空をスーパーホーネットのような戦闘機の最高速度で移動する機会は無かったのですが、私の膝の上のルフェイさん同様に正直シオン君の『操縦初めて』発言の方が心配のようですわね。
『心配』
私にはシオン君にとって、最大にして最悪の『トラウマ』を解消出来る可能性がある・・・・けど、まだ早い・・・・それに、私にはそこまでやる自信が無いですわ・・・・長年父様を恨んでしまった私には『前世での母親殺し』に触れるキッカケが掴めない、そもそもどうやって気付いたか上手く伝える自身も無いので、暫定的な解決法がわかってもそれでは意味がありません。
何よりもドライなようで、どこか人が良い時の・・・・私を支えてくれた時の彼でいて欲しかった・・・・それは私心ですが、今はこれで良いハズなのですと考えていたら、目的地に近付いた機体の警告音がコックピット内に響き、まるで空中戦が始まるかのような流れで別方向から接近する機体がレーダーに写っていたのです。やはり、他が黙ったままで何もかもが円滑に行くと考える事が間違いのようですわね。
朱乃の考えは当然の事、各界においても避けては通れない者達は動き出していた。
『ビナー・レスザンが実戦形式での査察に来た姉を叩きのめし、撃退された姉は行方知らずとなった』
間違ってはいない、リアスの眷属に対しての手合わせは将来を期待すべきな合格点としされている。眷属達についてはビナーと戦ったら只では済まないから先にグレイフィアが送っていた事項であるが、ロイガンの件は伏せられていた。
「大丈夫か?」
「はい・・・・」
サーゼクスは父からの問いに微かに苦い表情を滲ませたが、命を取られてたワケではない、そう判断出来る手段は幾つも用意してはいた。手持ちの『駒』にもそれを判断する為な改良はしてあった。それに今回の件はグレイフィアに関しては予め彼女自身が決めて、事実を知る者達に言い聞かせていた事だ。
『旧魔王派の者達が私的に挑んで来た際に、例え自分が敗死したとしても相手を咎めないように』
ビナーが相手では特にそうだろう、鞍替えした自分の風評に関しては構わないが実家やその分家関連はそうもいかない、流石にグレイフィアの死には黙っていられる自信はないが、改めて命があるだけ幸いとした・・・・グレイフィアが犯した過ちは公平に見るまでもなくビナーに叩きのめされる程度は覚悟するべきだとしてはいたのだ・・・・尤も、自分にしてもいつビナーがグレイフィアを問い詰めに来てもおかしくないので先にリアスに接触させる小細工をした以上は責められる立場ではない、割り切るには複雑な心境を振り払いたくてサーゼクスは話題を移した。
「次に、私の眷属は試作した移送魔法陣で一端戻しました。試験運用も大切ですから」
「うむ、個人用移送法の改良型も成果は出ているが、ちと特殊なのが難儀だな」
「では、次に・・・・この『紅髪の女性』が確認された事に心当たりは?」
「ある」
目を剃らす父の様子は只事ではない、北海道で確認された存在は自分もそこそこしか聞かされていないが、父が若いと言うより幼い頃に目を覚ましたと聞かされている存在のハズ。
「だが、サーゼクスよ?詳しくは話せんが場合によっては救いになる!まあ、ビナーがいるのだ。これに加えてだから、それ以上は不確かな事に対しての対策にしても贅沢だ」
「確かに・・・・」
だが、この親子は始祖である存在のトリックスター振りを把握しきれてはいなかった。既に自分達ですら太刀打ち出来ない存在に極上の手土産を『大量に』届けてしまっていたのだ。
・・・・・・・・。
そして、堕天使総督府・・・・であるが、ここでは人間界で一皮剥けた存在が猛威を振るっていたのだ。
「えーと、そんなに睨まんで欲しいんだが」
「アーシアの件は確かに必要でありましたが、冥界が引き込みたがっている子を行方不明にした影響は計り知れません」
そう、いきなりアーシアへの手土産が傍目には暴発して行方知れずになる結果を招いた。アザゼル達ですら既に人間界に戻っていると知れないアーシアの行方を掴むのはどの勢力でも当分は不可能だった。
「まあ、危険な場から一旦は離れて結果オーライじゃ済まされないよな」
「私達にそれで済ませる思考はシャレになりません!只でさえ流れに乗り損なってるのですから」
「・・・・(ここで、例の横流し品の事を切り出さない辺り思慮深くなったもんだぜ・・・・まあ、下手したら最悪のタイミングの異動だしな)」
アザゼルは自分の下に招き入れたレイナーレに完全に主導権を握られていた。赤龍帝シオンに接触していた間、完全に中身が別物となってしまった。自分なりに離れた場からシオンの助けになりたいレイナーレはアザゼルを余計な事をしがちな厄介者と見ているフシまである。
「だがな、俺はお前達が赤龍帝君にお熱ってのは良いけど?気になる事があるんだよ」
そう言って、レイナーレに気を剃らせたアザゼルはまとめた資料を映像化した。それは、シオンが各界で確認された時期を全て時系列順にまとめたものだが?
「人間界だけでなく、冥界でまで度々ですが最初に確認されたのはシオン君が赤龍帝の力を発現させてから約5年・・・・つまり、何故かそれまで確認されてなかったと?」
「おう、隠しきれなくなったと言えばそれまでだが・・・・もしもだぜ?徐々に漏れていたのがだな?『確信犯』だとしたらどうだ?」
有り得る!実はレイナーレも聞かされた範囲でリゼヴィムと仮定される者も疑わしいが、次に思い付いたのはシオンの契約者、その正体は勿論、奥に見え隠れした『狂気』を感じてはいた。
「そこで、お前さんに『仕事』を頼む」
然り気無くオリキャラ主人公の大弱点判明回。
そんな締めで良いの!?以前に、こればかりは母親に良い思い出無い僕も代役はキツいよっ!!