恐怖、準最強がマジモンの最強候補になっていた。その頃、真相に限り無く近付いている側の近況は?
ゴールデンウィークに入り、駒王学園は一般人関連では『諸事情』により期間中は学園が解放されない、その間は元々拠点にしているのも理由に留守を預かるグレモリー眷属関係者の宿営地扱いだった。最近の情勢では準魔王級が来てもおかしくはないので警戒体制でもある。
木場、ギャスパー、小猫、黒歌、ロイガンとその眷属達が細かい仕事をこなしながら訓練を始めていたが?人間界に滞在する悪魔の中で、グレイフィアを撃退した事で最強と認知されたビナーには、本人すら予期できなかった事態が起きていた。
「・・・・」
校舎三階の一室を自分用に整えたビナー・レスザンは無気力となって『燃え尽き症候群』に近い状態だった。優雅にではあるが、他が作るか調達した食料をつまみに酒を飲み続ける自堕落極まる日々、時折出す空気は人間の一般人なら心臓が止まるくらいの重圧が含まれている。
原因は、数百年に渡り密かに貯めた私怨を呆気なく暫定的に晴らした反動、つい先日の戦いの後に時間が経つ程に虚しくなって、戦いの後に立てていた算段は別に直ぐやる必要が無い事も一因で、気付いたらこの始末。
「全く・・・・もう少し、は・・・・腑抜けにならんよう・・・・あれだけ、迷惑掛けて・・・・どう間違えれば、平和ボケ・・・・になりやがりますか?」
いっそグレイフィアに敗れていれば少しはマシだったかもとまで考えてしまっている。次は何をするかと言われても・・・・早目にシオンを・・・・と考えたが、戦う場合は、彼が万全でも自分を殺せる程になるまで『数年』掛かるだろう。手合わせくらいなら?と考えたが、それは気が進まない、そんな感覚程度では自分の渇きを潤してはくれないだろうとなってしまう、そもそも自分は戦いたいのではない、ならばやるべき事は?
「ただ・・・・い、ま・・・・です。ギャスパー・ヴラディ・・・・戻りました」
「おや、帰りましたね?依頼の物は・・・・」
「はい、これですけど・・・・」
並べたのは保存用の瓶やボトル類のものだ。ジャムやドレッシング用から小さ目のものが一通り揃っている。
「あの・・・・これ、一体どう使うんですか?・・・・っ、ヒィィィ!」
「聞き、たい・・・・ですか?」
「は、はひ、いぃぃっ!」
「『趣味』です。私は料理もするので、気晴らしですよ・・・・正直、貴方達に戦闘訓練でもしてあげれば・・・・と思ったのですが、私は・・・・グレイ・・・・フィ、あの女と違って?手加減がド下手なので・・・・」
ビナーは、自分からの視線にガタガタ震えるが、決して目を逸らすまいとするギャスパーを見て多少は気分が良くなった。若者達をそれなりに気に掛けたのは善意からなのは嘘ではない・・・・自分からの『課題』をこなすギャスパーに退室を促した。
・・・・・・・・。
「だっ、大丈夫だった?」
「佑斗先輩、はい・・・・大丈夫・・・・ですよおおっ!?」
泣きじゃくり、恐怖を吹き飛ばしながら叫ぶギャスパー君・・・・見てないけどグレイフィアさんを短時間で撃退したビナーさんの実力はロイガンさんの想像すら越えていたらしい、手が付けられない強さの女性と思ってはいたけど、それ程とは思わなかった・・・・けど、今は違う意味で怖い。気に触ったら叩き殺される程度で済めばマシなくらいかも。
学園が修復された後のビナーさんは、僕達に『合宿』とでも言うべきな日々を進めて・・・・ギャスパー君への課題はビナーさんからのお使いを一人でやる事・・・・ロイガンさんの眷属が周りを警戒はしているのは秘密・・・・買った物は一人でビナーさんのとこに持って行くようにして、ギャスパー君の対人恐怖症克服修行にしているけど、今のビナーさんは?出す空気だけで僕の剣すら切れるかもと錯覚させられるから・・・・正直、僕もやるのは怖い。
でも、どんなに怖がって泣いても逃げないギャスパー君は、間違いなく強くなっている。この後はロイガンさんとその眷属との模擬戦だ。休憩はあるけど、基本的に全て死にたくないなら強くなりなさい、なれないなら死になさいなノリでだよ、正に地獄の合宿。けど、ビナーさんはこの後にどうするか?・・・・ビナーさんの境遇から溜め込んだものについて、ロイガンさんから知ってても殺されはしないらしい程度は教えてもらった時、溜め込んだ割にはアッサリし過ぎてるってのは僕も覚えがあるから気になると言えば気になる。
木場なりに自分と照らし合わせての考えは正しかった。しかし、ビナーにはある事情と可能性があるから表向き沈黙していたのである。今はどうする気かと言うと?
「ふむ、人間界の『いちご』はやはり良い、季節外れの酸っぱいものでなく、旬を敢えてこうするのも一興」
ビナーはピンクのエプロン姿となり、生気が抜けた表情でだが、本当に料理をしていた。煮沸消毒をした瓶に、砂糖だけ加えて軽く似ただけの汁沢山いちごジャムを詰めて・・・・次は?
『お手製のリコッタチーズ』
『新たまねぎのスライスを酢漬けにしたもの』
『アスパラガスのごま和え』
『山菜のお浸しに、それ用のくるみのタレ』
人間界の5月が旬の食材を次々と料理して行く・・・・栄養豊富な副菜類やデザート系ばかりだが、あると嬉しいものばかり。無論、残りの合宿での食事は大いに華やいだ。
趣味・・・・趣味、趣味だ。
シオンのようにイングヴィルドがいるから相手の事を考えながら作るような概念は無いとしているが、知らないでいた時期、弟に甘い期待をしていた頃に培った技術・・・・姉なら料理くらいはとか言われて、何より?
(俺みたいに・・・・)
忘れようがない、ある事情で『先』を見た自分の知る赤龍帝・・・・『栄養補給すら出来ない状態』になりながら、次の代の心配をしていたバカな少年・・・・出来れば、弟には良い意味でそんなのとは無縁でいて欲しかった。
『生き別れの弟と何代か後の赤龍帝』
シオンがアーシアを救った話を聞いた後、望みが叶ってくれたと思った。もう、あんな御人好しと同じようなのが赤龍帝であって欲しくは無かった・・・・戦争をやる可能性があるのは自分みたいなのがお似合い、そしてユーグリッドとグレイフィアの件で最早、踏ん切りを付けた。後は・・・・自分の為に生きよう、今・・・・自分が欲するのは?と考えた辺りで、酔いが覚めて来たのを確認し、仕上がった料理を別場に運んだ。
「さて?準備運動と仕込みは充分・・・・」
オーフィスが黒歌さんにやらせようとしたのは乳房の先端から『アムリタ』と言うか何というか・・・・『乳海攪拌』の言葉から、イッセー君や周りの方々が間違いだらけの形で編み出したもの、正直・・・・黒歌さんにやらせようとしたのは私には僥倖でしたね、あれがオーフィスの秘策、嘗ての友達の為になりたいのは理解出来るし、良くわかりましたが?
(良くわかりました・・・・しかし?ドライグにアルビオンにオーフィスも眩しいもの・・・・そう、眩しい・・・・です。だから!)
私は、外部からの連絡も視覚もアルビオンからの繋がりすら一時的に遮断した上で衣服を脱いだ。悪魔だからにしても見た目や体型なんか気にしない生き方をしましたが、シオン君に有効ならばそれで良いでしょう・・・・以前、喫茶店の地下で探りを入れた時に唇を奪うような図になりましたが、今思えば・・・・奪ってやるのも一興でしたかね?私みたいに経験無しな身では・・・・と思いますが、それはそれでシオン君を刺激しないだろうから丁度良い。
(参考になるものは無限でしたが、贈り物のお陰で良くわかりましたよオーフィス?・・・・残念でしたね?・・・・『私の勝ちです』!)
残った小瓶に『処置をして』・・・・しかし、肌着が邪魔になる理由はあるにしても?全裸でこれでは、私はさしずめ?とんだ変態科学者ですねえ・・・・まあ、そうするに足る理由はありますから、つくづくつくづく思いますが、オーフィスは?
『大失敗を犯した』
オーフィスが自分の事だけ考えるなら微妙だけど、シオン君をどうするかに関して言えば知らないにしても『サマエルの毒』に不用意に近付く程に失敗です。黒歌さんを介して私達に伝えた術式には・・・・?
『この次がある』!!
数時間後、一通りの『確認』を終えた時、全裸で床に倒れ付したビナーは豊満な肢体を汗濡れにして息も絶え絶えになりながら妖艶な笑みを浮かべていた。これで全て上手く行くと勝利を確信したが、それ以上に?
『壊れていた』
ビナーは、弟に失望して間も無く姉をアッサリと下して生き甲斐を失った時、それ以前の歪な部分過多なりな基準では完全に壊れてしまったのだ・・・・ビナーに残されたのは、密かに抱いた理想像を体現し、歪んだ形のやり直しを叶えてくれる条件を兼ねたウソのような存在への関心。
(リアス達も・・・・こういうのが、望みなのですかね・・・・こんな、風に身体が動かなくされちゃうくらい・・・・シオン君に・・・・気の毒ですが、それを可能にする手段・・・・は、自分で見つけなさい・・・・イッセー君みたいに、男としてハーレム作るのはシオン君には不向き・・・・ならば?女の方から作らせるなんてのも有りですが?・・・・ハーレム要員は、順番以外は等しく『妻』と自他共に認めるような・・・・のが、気分良いでしょう?)
一見、飛びすぎた論ではあるが?ビナーなりにシオンやリアス達の現状を考えていたなりの暴論ではある。息を整えたビナーの目には生気が少しずつ戻っていた。
年期が違う恨み酒な割に切り替え早いのう?ウチのに見習って欲しいわ。
『ウチ』って言い方が知らないのからしたら意味間違いやす過ぎる気がするわい。