ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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あらすじ

 飲んだくれていたビナーは徐々に密かに自分の為だけに生きる準備を始めていた。思わぬ恩恵を研究した結果、勝利を確信する以前から、彼女は徐々に精神に異変を来たしてしまっていた。




ちょっとしたオリ設定出ます。
 


突撃!危険地帯!

 ソーナ達が撤収した後、イリナ達はこの後にどうするかを考えていた。駒王学園の校舎程度の広さの屋敷は山間地の別荘にしか過ぎないので立て籠るには不向き、どう動くかの前にメンバーの状況をまとめる

 

 聞いた話でグレイフィアは?実はビナーに敗れて一週間は他に顔を見せられない状況にされたハズになってるので一緒にいるのは危険、屋敷にいる男性悪魔達は彼女の部下寄りな立場なので同じ立ち位置。

 

 残ったメンバーは本来所属している場を離れている者ばかり、シオンとイングヴィルドは各界からの刺客が来てもおかしくはない、誰が来ても不味い!取るべき手は?

 

「逃げる!私とゼノヴィアにロスヴァイセさんは『不法入国者』だし!」

 

 イリナが堂々と言った。そう、便宜を図ってくれそうと宛にするべき相手はセラフォルーくらいだが?イングヴィルドが連絡手段を知らないし、シオンは記憶を無くして戦力にはなるのかすらわからないで悪魔陣営に見つかっては不味すぎる状況であるからそうする!そして、逃げる場所は?

 

「北欧、オーディン様のいる方のよ!冥界が駄目なら置き去りにされたロスヴァイセさんが何も調べてもいないかもなのに濡れ衣着せられたから、頭来て殴り込んだのを追っ掛けた流れにする事に切り替え!シオン君の記憶喪失の治療法相談相手にも丁度良いわ!逃げるなら例外は除いた中で一番危険地帯かもしれない場に自分達から突撃する形にするわ!」

 

「同感だ!最早、形式も何も無いのは今更だろうし、そもそも先に妙な事を仕掛けたのは向こうだ!」

 

「そうよ、ゼノヴィア。そして、あのコカビエル達の真似するようで嫌だけど?私達は頭脳担当にせよ記憶喪失になってるにせよなシオン君がいるからにはバカはやらないって思われてるかもだし?」

 

「成る程、こういう時は敢えて正解とは真逆になるような馬鹿をやる・・・・更には、レイナーレさんがコカビエル達をこう言っていたが『皆で馬鹿になる』!」

 

 イザベラも同意した。彼女はどうもシオン第一思考になりつつあってフェニックス家に一旦戻る気配が無いどころか同行する気満々、戦力的に小回りが効くから大いに宛に出来る。そして、後から来たロスヴァイセが悪ガキ?万歳思考な提案を聞いて出した結論は?

 

「・・・・何で、冥界に『屋形船』があるんでしょうねえ?て言うか?距離や日数考えたら『遊覧船』に近いですよ」

 

「グレモリー家のように人間界の文化を好む悪魔達が多い影響らしいですよ、『地形の改良計画』含めてね?この際は優雅に行きましょう、路銀はグレイフィア様から冥界のお金をたんまりせしめましたし」

 

 乱暴な言い方・・・・やはり、イリナは私怨が収まり切らないのだろう、何故屋形船に乗っているのかは?

 

 北欧へ向かうのに賛同したロスヴァイセを中心に移動手段を考えた結果、移動に適した場に向かう手段は出来れば海が良い・・・・海ならばイングヴィルドの独壇場になるからだが?冥界には『海が無い』から当面は断念。

 

 次の候補は『川』だった・・・・先程にイリナが言ったように、川は冥界の地形改良計画のせいで海が無い場にしては良い具合に存在してくれた。悪魔は数が堕天使同様に激減しているが、それにより手付かずな土地が有り余っている。それを考えた流れと聞くが、詳細はイザベラというより冥界の名家であるフェニックス家の生まれであるライザーとその眷属すら詳細を掴みきれていないが、今は後回しにした。

 

 川に話を戻して、シオンと訓練した成果を多少聞いただけで?水の近い場では敵に対してはレアアイテム級なレーダー要らずと言える状況を作れるのだからにしても堂々とし過ぎだが、有名な脱走映画を参考にして普通に一般の悪魔になりすましつつ、敵からしても予想し得る場を移動する手段をイリナが選んだ。

 

 敵対する者達からは自分達が『水上移動』するのは一番安全なルートと考えるとして、敢えて待ち伏せを掛けるに分かりやすい手段を此方が選ぶのは裏を掛ける可能性は高いだろうとした結論、正直言って?イリナはこの中では戦闘力最下位争いな反面で肝の座り振りは一番頼もしい。

 

 だが、この作戦で一番肝心なイングヴィルドは?

 

「・・・・っ、ん」

 

「姿勢悪くして寝ると身体に悪いですよ?」

 

「う、うん・・・・」

 

 うつらうつらと眠り掛けてシオンに世話を焼かれている。実は眠りの病の後遺症とは無縁のワケでは無かったので、度々睡魔に襲われていたが、気合いで振り切っていたのだ・・・・一応シオンの命が救われたので、緊張感が薄れたのが仇になって堪えていた分が今になって回って来たのだが、非常時に支障が出なかっただけマシだろう、実は船に乗るまでシオンに背負われて移動していた・・・・やはり、記憶を無くしても本能的にイングヴィルドに対して世話焼きになってしまう部分は残っていた。

 

「良いのか?」

 

「うん、今はね・・・・記憶が無くなってても最近一番長く過ごしてたから本能的に安心感があるんでしょうね・・・・それに?いえ、良いわ」

 

 イリナは言葉を濁した。シオンの記憶喪失絡みに関して割り切るしかない自分達にとってイングヴィルドは頼みの綱だが、一番の不安要素でもある。仮にイザベラすら言い聞かせられない域に暴発したら止める術が無いのはソーナ達と会った時に理解している。今は冷徹になるしかない・・・・おんぶしてもらえた嫉妬等はもっての他で、自分なりにやるしかない。

 

『それしかやれないって時にはね?やるべき事はただ一つ・・・・それしかやれない事をやるんだよ』

 

 イリナがルーネスに忠告された事をやろうとしているのをゼノヴィアは理解したが、正解ではあると踏んでいた。敵が来るとしたら仮にも成果は出してるメンバーばかりなので大戦経験者クラスが来るだろう、そうしたらシオンが万全でいたとしても経験値で劣る自分達には真っ当に戦略から戦術を立てるような戦いで来られては勝負にならない、今は経験者とは違った発想で動いて虚を突くべきとして全員がその類いに強いイリナ頼りだった。自分も今やるべき事は、本来自分の分野な斬り込み役すら任せっきりにしてでも友達の友達で、世話になった男を守る事だけだとしていた・・・・そう考えた時に、二人が持つ剣が一瞬だけ光った事はまだ気付かなかった・・・・のだが?

 

(実を言うとね?私なりに今まで知った事や、マンションの地下にあったもので確信した。この船旅は『安全』・・・・シオン君とイングヴィルドさんが落ち着いてさえいれば、水が大量にある場の周辺じゃ、レーダー要らず能力どこじゃない次元の恩恵がある。教会のトップ級からルーネスお姉ちゃんですら二人をどうにも出来ないから、これは『出来レース』に近いのよ・・・・が根拠だけど)

 

 そう、それ程広い川ではないのだが?イリナには川全てを埋め尽くす規模の軍勢に守られて移動している心境だった。実は、現ルシファーや魔王級からそれを知る者達が、程度は違えど次の魔王候補に二人を推すような話題を何気なく出してしまう理由に踏み込んでいたのだ。落ち着く為と言うより、単純にお腹が空いたので船の料理を大量に注文して食事を始めた・・・・しかし、どの界でも何故かそれ程に違いが無いと言うより人間界寄りなのは知っていたが?

 

「何で屋形船の中で『猪の溶岩焼き』・・・・なのかしら?」

 

「討伐隊任務の夜営で『野牛の蒸し焼き』をした私達に言えた義理では無いと思うが?」

 

 ゼノヴィアが言ったのは事実だ。イリナが日本の漫画を参考にして掘った穴の中に捕らえた野牛と焼け石を入れて蒸し焼きにする豪快極まる料理自体は、あの時に共闘した者達から大好評だったが、後になると堅物な連中からは真面目にやれとか言われた。

 

「まあまあ、味は良いですし・・・・」

 

「うむ、冥界の猪は力が付くから食べられるだけ食べておけ?野菜も人間界のものに近いから残さずにな?」

 

 全員がイザベラに同意する。猪の食べていたものが良いのか?『牡丹』と言われるように綺麗な色合いの肉は、甘い脂身と柔らかくも旨味の濃い赤身の部分もだが、内臓の部分も健康な為か力強い風味、味付けは塩と単純なタレばかりだが、それがかえって良い・・・・しかし、こんな時にシオンが世話を焼いてくれない事がイングヴィルドとイリナは少し寂しかった。

 

(早く、戻って・・・・私ね?シオン君の世話焼く方になりたかったけど、こんな形じゃ嫌だからね?)

 

 イリナの願いに他意はない、しかし・・・・船の上から船員が手紙の入った瓶を川に投げていたのを気付かなかった。

 

 そして・・・・川の底に潜伏して、襲撃を掛けようとした者達が悉く、瀕死の状態で陸地に上がったと同時に力尽きて倒れていた。旧魔王派やはぐれと判明した悪魔達は半分近く精神を破壊され、その同類はシオン達を乗せた船が進めば進む程に数が増えていた。

 

 

 

 

 瓶については、投げられた物を回収した悪魔が依頼主の元へ運ぶ。

 

 

 

 

「ふむ、やはり赤龍帝やイングヴィルド嬢には見抜かれていないようですなサイラオーグ様」

 

「ご苦労・・・・しかし、綱渡りだったが、当面は安心か?」

 

 屋形船に部下を紛れ込ませたのはサイラオーグと、その執事だった・・・・彼等も静観していたワケではない、母を救ってもらった恩義もあるのだ。しかし、執事はサイラオーグに厳しい声を向けた。

 

「違いますぞ?私達には危険は最初から少ないですが、今回の件であの者達には致命的な欠点があると判明したのです!それは、あの方々には神通力染みた勘があるのは間違いではないですが、それは『悪意や敵意』を持った対象以外には必ずしも働かないと判明したのです。もしも善意で的外れな協力を申し込むような者達に関わったら経験がものを言う分野で不覚を取り兼ねません!」

 

 厳しいが、正しい言い方だ。サイラオーグにとっては師父と言うべき全てを兼ね備えた執事が言うには、シオンとイングヴィルドは『水』が大量にある場においては戦闘力以上にその他の分野が無尽蔵に強化されてしまう・・・・仮に今回の件が上手く行ったら、何かの不備を起こしている可能性もあると言う事も聞いていた。

 

「それは、あの方々が自分達で向き合わなければならない事・・・・干渉は不要ですよ?」

 

 眠りの病から目を覚まして間もない母ミスラが告げる。流石に自分を産む以前の勉学の成果には太刀打ち出来ないので押し黙るしかない、今は彼等の無事を祈ろう。

 

 

 

 理解者達の存在を知る間も無く、それなりな思惑で移動するイリナ達だが、向かった先にも動きはあった。

 

 

 

「はるばるご苦労だったのう?」

 

 隻眼の老人にして主神なオーディンは、自室に『客人』を通していた。最近の情勢下で即座に移動出来る手段を使うのはそれなりの上客なのだが、少し微妙だ。俗な意味で世間的には少し新参者と言うにも早い。

 

「赤龍帝と『偽装』とはいえ『交際』していたお嬢ちゃんを送るとは・・・・アザゼルの奴、小賢しい事をしよるとは思わんかね?『天野夕麻』よ・・・・」

 

「それは偽名で、私の名はレイナーレです。そもそも和平会談の根回しに、私の茶番相手がどう関係があるのです?アレは『便利屋』程度なガキンチョですよ」

 

「ほっほっほ・・・・あの赤龍帝をガキンチョ呼ばわりとは中々・・・・これは面白い会談になりそうよのう?まあ、長くなりそうだから、後ろに控えた方々共々食事でも如何かな?」

 

 カラワーナ、ミッテルト、ドーナシークは緊張感が増す。会談が長くなりそうとは含みを感じるが、そもそもアザゼル総督がくそジジイ相手に自然体で良いから北欧に行って来いと言った真意が気になる・・・・それをやる意味は?

 

「食事・・・・ですか、それは是非・・・・しかし、この状況で出すからには、何か一筋縄では行かないのでしょうね?」

 

「ふふふ、そうさな・・・・人間界の日本で言えばワシのような者に打ってつけらしいぞ?」

 

 そして、15分後に簡単なテーブルを挟んで座る人数分の料理が運ばれて来た。ある意味で食を兼ねる会談は腹の探り合いか礼節を試すような場なのだが?

 

「お待たせしました。ご注文の『死肉ごはん』をお持ちしました」

 

『死肉ご飯』!?

 

 物騒極まる言い方にテーブルに着いた堕天使達が怖じ気付くが、並べられたのは何度か見たものだ。

 

「最近、人間界の食事もオツでのう?日本の傑作料理の一つ・・・・『豚の死肉フライ卵あえかけごはん』じゃよ」

 

 要はカツ丼だった・・・・何やら絵にすれば丼の蓋を取った際に出た湯気が鼻水か何かになっているように嗅いでいるような間違いだらけな作法?の後にオーディンはカツ丼を食べ始めた。日本では昔から『七十過ぎたら豚肉を食え』と言われる程に豚肉は栄養があるから確かにオーディンみたいな老体には間違いではない。

 

 レイナーレにすれば喫茶店の賄い分のカツカレーを用意する時に、カレーが足りなくなった際にこんな風にしてくれたシオンを思い出してしまうから複雑だが?

 

(上に乗っているのはグリーンピースなのね、シオン君のはサラダ用の三つ葉だったわ)

 

 卵とじにしながらも衣の歯応えが残るように煮た豚カツ、肉自体が良質でロース肉の甘い脂の味と堅くなったりしない赤身の程好い歯応えは揚げ方が申し分無い証明だ。日本で定番な醤油を基本にした甘辛い味付けのタレが染みたご飯も人間界のものに近くて美味しい・・・・だけど、付け合わせのお味噌汁や漬物が無いんじゃ物足りないわね・・・・と、レイナーレは皮肉ってしまう。何故か、あの時は・・・・と考えながら食べ終わった時である。

 

「ふむ、全員が余程人間界の・・・・と言うより、赤龍帝の料理が恋しかったと見えるのう?」

 

 食べ終えた四名は、空になった丼を持ったまま眠りに付いていた。

 

『一服盛られたのだ』

 

 気の毒だが、オーディンは自分の仕組んだ茶番に巻き込むに足ると判断したのだ。僅かなやり取りの中、レイナーレはシオンにとっては大きな存在なのだと確信したからだ。

 

「まあ、恨むなよ?『今の』赤龍帝にお主は危険なんじゃよ・・・・」




そう言えば、誰かさんからプールの水を飲んで巨大化疑惑掛けられたが、やってなかったのう?

やらんでええわ!!



オリ設定は地形改良計画による『川』でした。詳細は続きで。
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