リアス、冥界に帰る
『私の・・・・リアス・グレモリーの存在意義』
何だろう・・・・?人間界に来る以前の私は、例えば『凡庸』と言われ始めなければ、どうしていたのかしら?
意識が戻る前に、こう考えた。
あの夢を私も見ていたから、あの時点の朱乃達が相手なら大丈夫だと思って、穏便にとシオンに頼んだけど、逆効果だった。まるで、今のままなら近い内にこうなると焼き増しされたような光景を見せつけられた。
けど、私には立ち止まってられない・・・・冥界に行ったシオンと合流しなければいけない、学園には。一応は万が一の時。
【長い休学扱いにしてもらうようにしてある】
最初に私の身体を動かせられるようになった理由を知らないといけない。
けど、例えば身内に会った場合は、事情を話してもカテレアの首級一つでどうにもならない存在であるオーフィス、兄を含めた現魔王が総掛か・・・・りっ!?そうね、その手もあるわ、安直なら安直なりのやり方っ・・・・その後を!
そして、何食わぬ顔とやらで皆の前に戻って目的地に向かう事にした。緊張感を増してるような仕草になっているけど、事情は皆は知っているからと流した。私は逃げ出したハズの場に戻るのだから、レイヴェルさんが何故かオーフィスといた理由も後回し、今は・・・・ね。
「事情が事情だから、朱乃とレイヴェルさん以外は?私の空いている眷属候補として同行をしてもらう、それで良いわね?」
オーフィスに関しては?正体を知らないし、シオンに興味持っているから誘ったとして片付ける。ビナー義姉様の知り合いで、以前の赤龍帝の友達なら力になって欲しかったからにするわ。
「それにしても、思いもよらなかったです。吸血鬼の領土の近くにこんなものがあった等と」
長年放置された特別製の移動用魔方陣、しかも使い捨て、経験上?地球そのものが敵も味方も基地扱いなのね、スケールが大きいから今は流すしかない。
「行くけど、良いわね?」
皆が頷いてくれたけど?実は綱渡り、何故かシオンの意図が図れなくなっている。けど日本にはビナー義姉様がいるから戻れない、結局は出たとこ勝負が良いとこでやるしかないとして魔方陣を作動させたわ。
周りが万華鏡のようになり、凄まじい魔力が働いている。下手に動いたら、身体が霧散してしまう、オーフィスですらキョロキョロしているくらいに留めてる。
そして、抜けた先は?
「何でしょう?城の酒蔵を小さくまとめたような場ですが?」
エルメさんが感想を述べたわ、これは確か?果実酒の類いの酒蔵。
「何者です?」
執事服?戦闘力は感じないけど、何処かで見た覚えがある気がするわ。
「不法侵入者ですか?この場に現れる者は、それなりの者でない限りは狼藉者として対処をせざるを得ませんが?」
「くっ、申し訳無いですが・・・・」
私が応える隙に、痺れる程度の『雷』の魔力を朱乃が放つ、不意打ちだけどやむを得ないとした。でも、雷が何かの『穴』に吸い込まれ、後方からバチっとした音が鳴った?オーフィスが朱乃の後ろで手を上げて何かをキャッチして握り潰していた・・・・確か、これは?
『あら、今日の執事さんが主の師父で無いからと思っていたら?何やら珍客でしたわね』
『クイーシャ・アバドン』
後ろから来た金髪をポニーテールにした美女は、知っているっ!『アバドン家』の上級悪魔で・・・・まさか、此処は?とした時に。
「何をしているんだお前達は・・・・?」
「サイラ、オーグ・・・・っ」
「ふむ、バアル領の果物を使った酒類を台無しにしたくはない、中でコーヒーでもどうだ?丁度、母がリハビリを兼ねてアップルパイを焼いたところだ」
淡々と話を進めてくれたから、私もそれに乗る事にしみたわ、それから?
『母がリハビリ』?
ミスラ様ね。つまり、シオンが冥界を訪ねた目的は達せられていた。唐突に此処に来た事へお互いまだ困惑しているけど?
「『アップルパイ』?我、食べたい」
「フィリスさん、それなりの相手なんですから淑女らしくしなければなりませわよ?」
「まあまあ、無垢なんですねえ?ここは、しっかりご挨拶からですよ」
「挨拶・・・・『おはこんにちわ』」
「『おはこんにちわ』?人間界でそのようなものがあるのか?」
レイヴェルさんとルフェイさんに促されてからのオーフィスのお陰で緊張感が和らいだわ、サイラオーグは知っているのかわからない、先ず私達はお言葉に甘える事にしたわ。
そして、屋敷内の来客用の部屋で、長いテーブルを挟む私達はサイラオーグ達と対面した。
「ようこそ、貴女が・・・・その?リアス・グレモリーさんね?『貴女の母親』には気遣いをして頂いて感謝しております」
「いえ・・・・」
まだ病み上がり感が抜けないミスラ様と挨拶を交わす。
移送手段や生い立ちの事は、この際は考えないようにしている。私は、そんな余裕がある身分じゃない、落ち着く為にも出して頂いたアップルパイを一口・・・・っ!バアル名産のリンゴの中で、人間界の『紅玉』に近い種類を使ったから?加熱調理に向いたリンゴならではな豊潤な香り・・・・オーフィスも気に入ったようね、パクパク食べているわ・・・・それに、このコーヒーは人間界のもの?食べ終わって落ち着いてから、私は本題を切り出した。正直、渡りに船だったから。
「シオン・・・・私の眷属が訪ねたハズですが?」
「はい・・・・それに関して?アーシア・アルジェントがいる。幸いか否かですね」
「え、私?」
何故か空気が変わった。アーシアも自分が何故関係あるのか理解出来ないでいるし、サイラオーグも以前には程遠いけど、私に厳しい眼を向けている?
「リアス、率直な流れになるが?お前はそれなりの覚悟をしたのは疑う余地は無いが、お前自身がわかっているハズだ。それで済まされるような事ではない」
「わかっているわ、シオンは何処に?」
「先日、イングヴィルドと一緒に訪ねて来て、詳細は守秘義務だが母を目覚めさせてくれた後に帰った。その後の事を他に、特にお前に話す際の取り決めがある。知る覚悟はあるか?」
「『覚悟』?今更よ、私は殺されて当然の事をしたわ、けど?シオンの安全だけは確保したいの」
同席しているバアル眷属達が、何やら言っているけど?構わない、イングヴィルドさんに殺されるかもしれないけど、私はシオンに会わなければならないのよ。
「『安全』・・・・そうですね、本来ならばシオン君にはイングヴィルドさんが傍にいるだけで安全だった『絆』ではなく『力』の方面で、それが無ければどんな絆も意味は無い、では?ご案内しましょう・・・・」
唐突だけど、私には何となくわかる。擬似的なイングヴィルドさんに歯が立たなかった私にはミスラさんの言葉に反論の余地は無い、アーシアも悔しそうに俯きながら案内に従って、地下室に繋がるような階段を降りて、廊下の先に向かっていたら知っている人影が複数あった。
「リアス!アーシアさんも・・・・」
「ソーナ・・・・無事に来れたのね」
何故ソーナと眷属達が?と考えたけど、彼女達の顔色は青くなっていた・・・・これから、何か恐ろしい事が起きるような。
「では、リアスさん?この扉の先に、一人でお入りなさい・・・・息子の眷属達は、屋敷の周辺を警戒してますので」
周りが何かを言い始めているけど、私はミスラ様の指示通りに入った。
先に続いている廊下を歩いて進んでいたら、辿り着いたのは闘技場?地下施設にしては広い、どんな原理か?と考えた時に、進んで来た方の廊下の扉が閉まり、床が凍り始めた。凍気が出て来た先にある通路から足音が聴こえて来て、姿を見せたのは?
「よ゛う゛ごぞ・・・・久し振りだなあっ!?」
「セラ、フォルー・・・・様」
「事情は全部お見通しだっ!私の秘蔵っ子・・・・お前を助けようとしてくれた子・・・・『私のシオン君』をよくも殺して、操り人形にしてくれたなあっ!?」
『私のシオン君』
身体を震わせているかどうかもわからなくなるくらいの恐怖で凍り付きそう、いえ・・・・もう凍り付かされて粉々にされているように錯覚したけど、セラフォルー様の言葉で私は察した。
凄まじい形相、ソーナが生まれる前には性格も口調も荒々しい御方だったと聞いていたのも思い出した。今、その時のようになる理由・・・・全て理解出来た。
『シオンの契約者』
セラフォルー様だっただけじゃない。
ソーナに近付けたからには、シオンの事を単なる手駒なんかと思ってはいないと考えた時に微かにセラフォルー様の魔力が高まったと理解した次の瞬間、必死に身体を横に逸らした。
音もなく、私の右胸から肩の中間、ギリギリで肺を掠めない程度の箇所を衝撃波で撃ち抜かれていた。出血は無いけど、凍結はしている。
「ぅ、ぐ・・・・っ!」
「ふんっ、少しはマシになったようだねえ?まあ、その程度は進歩してないとね」
そう言い捨てるセラフォルー様は怒りとやるせなさを込めた目だった。それに、何かを思い出すように、私に攻撃した箇所を見ている?と思った時。
~~~~~っ!
空間が揺らいで雨の中、川の近くにある野球場程度の広間、結界を張られているのか、周りに被害が及んでいない?セラフォルー様と戦っているのは?
『ごふっ・・・・!』
シオン?小学生になったばかりの頃?禁手の鎧もボロボロで片膝を着いてしまっている。
『相棒、もう良い!言ったろ?相手が悪すぎるんだ。降参しろ、命までは取られない』
何故か、ドライグの声も聞こえた。忠告されているのに、そうは出来ない理由があるのか、その後に何度も打ちのめされて、倒れ付しては必死に身体を起こして、シオンはセラフォルー様と向きあっている。何故か動けないでいる私は『やめてください!』と叫んだけど、二人には届いてないようだった。
『あらら、血反吐を吐いてるとはこの事ね、大したもんだよ、その歳でそんなに手加減してない私とここまで戦えるなんてねえ?君は?君と同じ年だった頃の私より?よっぽど強い、益々欲しくなったよ☆』
『うるさい・・・・』
『まあまあ、大人しく着いて来なよ?言ったよねえ?私に勝ったら、自分を好きにさせろって内容の約束は良いけど?『赤龍帝』なら狙われるに決まってるから、私の言う通りにするのが安全だよ、ご家族なら記憶弄るくらいはやってあげるから、私・・・・と』
セラフォルー様は、目を見開いていた。降り続ける雨、近くの川・・・・全てが荘厳でありながら恐怖すら感じない、寧ろ優しい気を放っていると、それがシオンに流れている?アレは私が知るのを遥かに上回っている。
『・・・・っ黙れ、よっ!』
先程とは全然違う。ドライグですら理解出来ない種類の力の高まり方、私にはわかる。人間がやるには最も難しい『水』の属性の使い方だった。その理由とやれる意味を察したようだわ、あのセラフォルー様が気圧されている。
『俺・・・・はっ!あの人達の・・・・『子供だ』・・・・この先、どうなるか・・・・わかっている!』
内容は詳しくわからないけど?シオンはそれを受け入れている。凄まじい覚悟を感じる。何よりも・・・・一瞬ではあるが魔王級を凌ぐ程の力を発揮したシオンは、それを更に赤龍帝の籠手の能力で『倍加』させ、左の拳に乗せて一直線に突き出して。
『セラフォルー様の身体をぶち抜いた』
けど、限界を超えて身体が動かなくなってしまったようで、セラフォルー様が腕を掴んで引き抜いた。念の為に凍結させて真っ直ぐに向き合いながら告げている。
『・・・・残念だね、急所が外れたよ?それに、何だって『右胸狙った』の?・・・・幾ら、私が魔王でも『心臓をぶち抜いちゃえば勝ち目はあるんだよ』・・・・?』
『・・・・『女の子』にやり過ぎるなって言われたんだ』
『女の子』
激痛に耐えながら、セラフォルー様は呆れたような面喰らったような顔になっている。誰にか聞かない、それを言うような者は多分?紫乃さんくらい。
『戦場の掟・・・・知ってるでしょ?敗者は何されても文句は言えない、だからそうするべきだ』
『わかってる・・・・着いて行くから、両親の命だけは・・・・』
『いや、君は人間界で私の秘蔵っ子として細かい仕事をやるのよ・・・・その変わり、君が望む便宜は全て図る。両親の安全は全力で守ってあげるよ?』
『・・・・?』
『お姉ちゃんの・・・・いえ、私の敗けだよ。その証としてね?私が君にあげられるものは、全部受け取ってね☆』
そう告げるセラフォルー様の表情は?と考えた時に?
~~~~っ。
周りが元に戻って・・・・此処で向き合った表情になっていて、今度は凍気を纏った圧力に吹き飛ばされて、壁に叩きつけられた。
「サービスが過ぎたかもしれないけど、理解したね?さあ、お前の『奪ったもの』を無理矢理取り出すか預けておくかは、私次第だ!」
そう、セラフォルー様にはそれを判断する資格があるし、私には『示す』理由が出来た。相手や出会った時期で引くワケにはいかない!
戦いますな回。