「あ、あのエルシャさん・・・・確認しておきますが、貴女も例の『おっぱいドラゴン』なんですか?」
「なりたかったわね、私は同性は好きな方だし百合ハーレムなんてのも一興だしね。それより早く出しなさい。イングヴィルドさんが消耗したらビナーさんが何かした時に大変よ」
反論出来ない、ビナーさんが何かしてくる可能性大なのとその際にイングヴィルドさんが頼みの綱なのくらいはわかる。ここは・・・・是非に及ばず!私のおっぱいで、サイラオーグさんが以前語ったような戦略兵器級な威力で敵を殲滅出来るレベルな現象を起こしてくれ、るな・・・・ら。
「・・・・おい、イリナ。上着の裾に手を掛けただけじゃないか!さっさとたくしあげろ!」
「わ、わかってるわよゼノヴィア・・・・だけど、こういうのは普通、見せたい相手にしたいじゃない!?」
「じゃあ、私をその相手に見立ててみなさい。練習にはなるわよ」
「み、見せたい相手・・・・見せた、い・・・・」
「む、催眠術か?」
ゼノヴィアが何かを言った気がしたけど、誰かと言われたらやっぱり、色仕掛けなんか効果無いどころか呆れられるだろうし。
「み、見せて欲しい・・・・なら」
目を瞑りながら上着をたくしあげて、人間にしてはそれなりな胸のブラを外した。多分、簡単に見せて欲しいなんて言わないだろうけど、本心からそうなる日を・・・・。
フニッ!
「い、痛い・・・・っよ・・・・もっと優しく・・・・してよ、シオン君・・・・」
「私は九重じゃが?」
「え、ぇぇえっ?」
「はい、そこで呼び掛けなさい!」
「わ、わかった!母上、目覚めて下され!」
ショックが抜けないまま、何か周りが暗い空間になった。私の胸を鷲掴みにしながら必死に呼び掛ける九重さんの呼び掛けが続く、どれだけの時間が経ったかわからないまま周りが優しい光に包まれて?
ーーーーーー。
「母上ぇぇぇぇっ!」
「九重・・・・どうしたのじゃ、大勢の前で泣き虫じゃのう」
エルシャさんが何をしたかわからないけど。周りが元に戻って、普段の姿になった八坂さんはまだ意識が戻ったばかりで少し朦朧としているわね、九重さんが泣きついて感動的なやり取りになったから結構よね、けど私は・・・・私は人生の初めてを勘違いで、私のおっぱいを・・・・。
「イリナ、上手く行ったんだから隅で体育座りはよせ」
「うぅ、私の『初めて』が・・・・」
「まあまあ、練習なんだから。それに、年下の子にしてもらう路線が正しいのかもとわかったでしょ?」
「違うもん、私はどちらかと言うと・・・・」
嗜好の違いがあるにせよ、私はやっぱりシオン君に甘えられるより甘えながらの方が良いのかも、けど性急路線が通用するワケは無い。
ロキを閉じ込めたスニオンピラーを尻目に日付けが変わった頃には、私達は八坂さんのお屋敷に運ばれて全員が泥のように眠っていた。他の方が重要だけど消耗するアイテムを使用したりした私達も体力が尽きていたのよね。
-ーーーーーーー。
夢・・・・ね、それくらいはわかる。
シオン君は初めて会った時から、大人びていて白い肌が眩しかった。私は気にしなかったけど、微妙に浮世離れしていたから怖がられてもいたらしいわ・・・・いつの間にか一緒に近所に馴染んでいたけど。
『パパとママはね?』
今思えば、何て迂闊な事をしていたんだろうと思った。智恵お父さんと柴乃お母さんは私達から見ても善良極まる人達だった。けど、光があれば影がある・・・・私は、いえ私達は完全に見落としていたのよ。
『あの二人がただの一般人じゃないって』
最初は、シオン君が赤龍帝だと判明した時期だけど。何故かあの両親には害が及んでなかった事で気付いた。
単にシオン君が何かしたか、協力してくれる人がいるだけじゃ済まされない何かがあるハズだって。
(それって、イリナちゃんが紫乃お母さんを怖がってるだけじゃないの?)
「違うもん!・・・・っ!」
夢で幼稚園の同級生とのやり取りをした辺りで、目が覚めたのか見知らぬ和風の天井が見えたわ、そうよ・・・・違うもん。
「目が覚めたか、例のピラーは使うだけで私のより消耗するようだな丸一日半寝ていたぞ」
ゼノヴィアが人の事を言えない顔色で私の横にいた。やっぱり、素の実力が低くちゃどうにもならないわね。周りを見渡すと、大部屋で全員が寝起きの表情だった・・・・聖槍で腹部を貫かれてるイザベラさんはどうしたか気になったけど。
「焼いて塞いだ」
乱暴極まるけど、悪魔の再生能力に加えて最近のイザベラさんに起きた事を考えたら刺された箇所が何ともない事くらいはどうとも思わない方が良いわね。
「・・・・」
「はいはい、甘えん坊さんねえ♪♪おっぱいドラゴンがどういうのか擬似体験した気分だけど、役得多いわ♪♪」
イングヴィルドさんはエルシャさんに抱き着いてあやしてもらってるわ。シオン君の身体がどうなってしまうのか聞きたいけどどうにもなない内にああなってるのね、今は誰かが暴発しないのを祈るしかない。
「全員が目を覚ましたら八坂さんがお礼を兼ねて面会したいと言ってましたよ♪♪」
何か上機嫌なロスヴァイセさんが告げた。ロキは結界内のピラーに閉じ込めて水攻めのお仕置き中なのが引っ掛かるけど、マンション爆破犯の濡れ衣晴らすキッカケになるかもだし。
そして、八坂さんとの会見、と言うより大部屋を訪ねて来てくれた。
「わらわが不甲斐ない為、世話になってしまった。心から感謝させていただく・・・・恥ずかしながらお互い疲労が貯まっておるようだのう」
九重さんに支えられて来て、疲労が消えない顔で頭を下げる八坂さんに同意、京都中の妖怪に周りを警戒してもらったりしてるけど・・・・今、ビナーさんから撤退した曹操達が再度仕掛けて来たらアウトかも。
「御大将、頼まれたものを」
侍従らしき方々が運んで来たのは昔ながらのお膳で、上に乗っているのは?
『お粥』
そう言えば、お腹は空いてたから消化の良いのは有難いわね・・・・醤油で味を付けた葛餡が添えられてるから、かけて食べたけど。
「~~っ、こ、これ・・・・は」
ゼノヴィアが感嘆している。そうよね、良質なお米の甘い風味がサラサラと優しく溶ける口当たり、全粥と言われる段階の水加減で疲労が溜まってる身体に優しい・・・・味付けな葛餡は鰹節の濃厚な出汁が効いてて日本食好きにはたまらないわ・・・・これは。
「シオンの・・・・」
ああ、やっぱりイングヴィルドさんは食べさせてもらった事あるのね、京都の何百年続く料亭の朝粥、紫乃お母さんですら模倣をしたけど多少近付ければ御の字としていたお粥よ、シオン君も挑戦したのね、途中で鶏肉のスープも出してもらったけど、これも美味しい・・・・食べ終わったら魂を優しく撫で回してもらったようになっていた。
「ふむ、口に合ったようで何よりじゃ。見たところ早く目的地に行きたいようじゃったから体力を回復させねばならんからのう」
「目的・・・・そ、そうだわ!ビ・・・・いや、曹操とかも何をするかわからないし!」
「落ち着け、そのスープが答えかもしれん」
「スープ?」
え、と・・・・鶏の出汁が効いた薬膳スープで、具はあばら骨付近の部位で、あばら骨?
「・・・・『鶏肋』」
エルシャさんの呟きでハッとなったわ!鶏のあばら骨付近の肉は味はあるけど少ない、けど捨てるには勿体ない。
「三國志の曹操は、一説には宿敵に大事な場所を渡すまいとして戦いを挑んだが、引き際を決めかねて痛手を被った。だが、今回の戦いは総合的に見て『鶏肋』に例えるようなものか否なのか、ビナー・レスザンにも同じ事が言えるかもな」
ビナーさんの事は知っていたようね、様子からして本当に私達任せにしていたのは得るものが少ないから?
「まあ、そこは触れない方が良いわね。今のままだとビナーさんに仕掛けられたら全力で逃げるしか手が無いわ、曹操にしても引き際をわきまえている相手は怖いわよ」
『その通り、実力と引く勇気を兼ね備えた相手は怖いものですからね』
隣の襖が開いて、入って来たのは紺色のローブを来た初老の人だったわ、静観な外見でピシッとした人だけど。
「はじめまして、八坂様には昼に顔を合わせましたが・・・・『孫』と、孫がお世話になっている方々にご挨拶をと・・・・私は、ゲンドゥル。そこにいるロスヴァイセの祖母です。以後、お見知りおきを」
「ば、ばば・・・・ばあちゃ・・・・いえ、お祖母さまは何故ここに?」
「孫が、見合い候補にあがった年下にお世話になったと思ったら、その相手のマンションを爆発さ・・・・しましたなんて事態に大人しくしてられるとでも?念の為に捜索を申し出て人間界に出向いたのですよ、まさか片付いたにしても最近は不穏だから様子見を命じられた京都にいるとは思わなかった」
「そ、そりゃ濡れ衣だ・・・・」
「即座にそれを主張しなかったのは、心当たりがあったからで、はないのですか?」
嗚呼、確かに。ロスヴァイセさんのがシオン君の部屋で大量生産した飴玉型の魔力爆弾使いまくった私達には心当たりがあるわ。ロキの仕業としても、普通にロスヴァイセさんの失敗でマンションが爆破されてた可能性もある。ところで、何かが漏れてるような会話ね?
「そもそもオーディンの・・・・」
「様付けで呼ばないって事は、相当不満溜め込んでたね、だからいったべ!要領悪いお前にはヴァルキリーは向いてねっで!」
「わ、わたすだって、あれ程だと思えなかったさっ!」
方言が出た!尚も寂しい青春混じりなやり取り。そうよね、夕張でそんな事さあっだ・・・・いけない、呑まれてる。と思っていたら八坂さんすら面白いやり取りが始まったって思ってるようだわ。
「そもそも、お前がさっさと身さ固めてしまえばええ言われたんにヴァルキリーなんかになりたがってたからだ。変に見栄を張って清い交際にばかり拘るから彼氏が出来ないからと泣いてばかりだったんださ!」
「わ、私の貞操観念、ばあちゃんゆずりだ。変に口さ出さんで欲しいさ!」
「偉そうに!大体、お前はとっくに赤龍帝に手を出してるでねか!見ればわかるさ!」
周りが固まった。見渡すと、目を丸くしているのはまだ良いわよ・・・・けど、イングヴィルドさんとイザベラさんは『しまった』・・・・って、顔に出ていた。つまり、やっぱりロスヴァイセさんは二人と同じになっていたのと、私が立てた仮説が当たってたって確信した。
ゲンドゥルさんから見たロスヴァイセの状態とは?な回でした。