試合の観戦室では集まった奴等が騒然としていた。この【堕天使総督アザゼル】からしてもリアスの放った一撃は観戦室から見たり感じたりする限りで恐るべき威力。アレを撃てるだけでリアスは【凡庸】の評価を覆すべきだが、それを事も無げに斬り捨てたヴァスコ・ストラーダ倪下にはサーゼクスすら驚かされてた。
今までの試合は積極的に参加はしていなかった。知ってはいたけど老いて爺さんなのにな存在がまさかこれ程とは思わなかった。
いや、それより言うか。
「おい、止めた方が良いんじゃねえか。全員殺されるぞ」
ストレートに言うしかねえ、レーティングゲームだからダメージが一定なら退場させてもらえる考えは甘い。反応が遅れてるのはストラーダ倪下の強さに対する現実逃避かも。何か上役が良いタイミングとして同意し始めた。
「う、うむ。そもそも決勝みたいになってるが
残ったメンバーが試合やる必要は無いから丁度良いか?」
『いえ、続けさせなさい。決勝とやらをやらせるのは私の要望でもあります』
「は、母上?」
打算含めた声に待った掛けたと同時に入室して来たのはサーゼクスの母親なヴェネラナ様だが、目が怖いぞ。見詰めてる先にはモニターに映るストラーダ倪下と向き合、いやビビりながら目を背けまいとしてるリアスがいるが、娘じゃなくて犯罪者見る目じゃねえか。いや、もうそんなレベルなんだろな。
「私的な事ですが、リアスが赤龍帝を眷属にして以来・・・・対応を検討していたら功績か不祥事を出し続ける始末。勘当しても孫がいるからと打算でしょうとする意見もあります」
それは確かにだ。リアスは跡取りだが、サーゼクスの息子ミリキャスがいるグレモリー家からしたら地位なんか揺らぎもしねえ。リアスが言ったような波風立てても適当なタイミングで切り上げちまえば良いだけだ。今までの試合で悪くはねえ。
「あの娘、知っての通りに噂の赤龍帝がいる場の近くに逃げ出した時は、推測で少し歳が下なのに素晴らしい実力を持つ者を目の当たりにすれば薬になるかとして放っておいたのは私の過ちでもあります」
嗚呼、居心地悪そうだぜ。けど、似たような考えをヴェネラナ様がしてくれてた打算もあるか。
「それ以来、良くも悪くも波風を立てていますが詳細は話すまいとしてますので、良い機会ですから言葉ではなく戦い振りでリアスの性根を見てみようと思います。噂の赤龍帝以上と言い切れる強者に対してのものでね」
サーゼクスは母だからにしても俺含めて全員がブルってるぜ。
化けの皮を剥がしてやるとかでも生温い話だわ。精々足掻いてみせなリアスよ。
――――――――――。
「部長、僕が前衛をやりますから援護を」
睨み合いではなく、全員が恐怖を押し殺した中で佑斗は提案した。無難な作戦と言うよりやれるのが佑斗しかいない、位置を整え始めた瞬間。
「ふむ、だが若い!」
ストラーダ倪下は、威圧目的な気合いを入れたけど、その向き先はギャスパーだった。
「あ、あうう・・・・」
「甘いな少年、木場佑斗が前衛を務めるベターな戦術で向き合うと見せた隙に。話に聞く時間停止の神器で私を停める作戦か・・・・周りも知っているから臨戦態勢を整える目眩ましをした」
魔力や気合いを出したりが逆効果になったかとしたけど、倪下は状況を見抜いた。
「ギャスパー君は成功させつつ女性達を守ろうとして前に出てしまったが、それで予想は付いた。裏を突く為なら矜持すら捨てる覚悟を見せるべきだ・・・・噂によると、男気を出せるようになったのが逆効果になったな」
「う、うう・・・・」
ギャスパーは泣いてるけどストラーダ倪下から目を背けない。凄いわ・・・・これだけで以前とは別人よ。
『い、いやああっ!』
その内、重圧に耐えかねたエルメさんが悲鳴をあげて私達の左上空に逃げ出したとした時にストラーダが消えた。
ピン。
いつの間にか移動して、デコピンでエルメさんの形をしたものが消えて核になる蝙蝠が戻って来た。逃げ出したと思わせてな不意討ちも見抜かれている。
「す、スピードも。ならば固まって・・・・っ!」
全員が寒気を感じてアーシアとギャスパー以外が全力で魔力の防壁を張ったけど、百メートル後ろの廃ビルに叩き付けられた。
「は、張り手。いや、掌底の衝撃波ですね。しかも【聖なる力】込められてますよ。これは兄やシオンさんでも歯が立ちませんねえ、特にリアス様は現実を受け入れて下さいね、若者組じゃ歯が立ちません」
ルフェイさんが、遠回しに【私の中にいるシオンの力】を宛にするのはやめるように言ったとわかった。そもそも本気か怪しいのにサイラオーグ並だから、そのサイラオーグでも太刀打ち出来るかな相手よ。
「ぶ、部長。せめて騎士の僕が言うのは情けないですが、切り傷でも何でもでストラーダさんにある程度出血をさせる手はありませんか?」
「わ、私も考えた方向です」
「同じく、私の切り札でパワーに少々対抗手段もありますよ」
【出血】
勝ち筋が見えた!その為には、先ずはストラーダ倪下に流血をさせるダメージとしたけど。それが難題ね。
「不用意に仕掛けないのも間違いではない。ならば?」
「いけない、防御を!」
佑斗の声に従った。相手が地面を殴り付けたら、気を纏った衝撃波が駆け抜けて地中から四方八方に飛び出した。全員が悲鳴を上げて吹き飛ばされ、分散させられと理解した。
「ほう、似たような技を知っているのか。そう言えばビナー・レスザンがソチラにいるのだったな・・・・む?」
「あ、アーシアさん。お逃げ下さい」
「だ、だめです私は・・・・」
そんはに吹き飛ばされてなかったけど片足がちぎれ掛けるダメージをレイヴェルさんが負ってアーシアが治療してる。けど、いけない!
「聖女アーシア・・・・相変わらずだな。どのような事があっても傷付いた者を見捨てられぬ・・・・だが、見るが良い!」
気合いで他に動くなと威圧を掛けられた。悔しいけど、全員が気圧されてしまう。
「動くな、動くのなら手荒にやるぞ。アーシアには言わねばならぬ事がある」
そう言って三メートル程の距離に近付いた倪下はアーシアを真っ直ぐ見据えて言った通りにした。
「見なさい、君を救おうと皆が立ち上がり、私に向かってこようとしていた。不用意に仕掛けたら一気に全滅なのはわかるだろ、レーティング・ゲームである事に甘えた考え故だが、再生能力があるからレイヴェル嬢は見捨てるべきだった。退場させる程度のダメージで済ますので潔く受け入れなさい」
「げ、ゲーム故な考えに甘える気はありませんわ。アーシアさん、逃げて・・・・」
「いえ、私は逃げません。皆さん、手を出さないで下さい。ストラーダ倪下、慈悲を掛けて頂いた御礼代わりをしますのでお覚悟を!」
皆が呆気に取られた。両手を腰の前に構えてアーシアはストラーダに向き合う。え?
「わ、私に・・・・正面から拳を撃ち込もうと?」
流石に呆気に取られたのでストラーダはまるで試合上に乱入した小動物を注意しながら摘み出すような挙動をしかけた。もしかして、アーシアならではな必殺技でもとしたけど。
「せいっ!」
「ぬ?」
アーシアの形だけは綺麗な上方に向けた正拳付きがストラーダの胸に決まる。
「やあ!たあ!てやっ!」
普通の女子高生が空手を体験する際の打ち稽古にしても迫力が無い。まるで小動物の方の小さな猫がプロレスラーや力士にネコパンチをやるような迫力の無さだわ。
傍目にはそうだけど、私達には目を見張る要素があった。
「聖女アーシアよ、見事だ。その拳には聖なる力が籠っている」
何人かはまさかと思ったけど、確かに籠められてるわ。種族の相性で私達にならかなりのダメージだった・・・・けど、相手は規格外な人間だから焼け石に水ね。けど不用意には近寄れないわ。ストラーダ倪下の性格なら近寄る方が危険よ。
「密かに転生悪魔になっているとする声もあったが、やはり君はまだ悪魔にはなっていなかったのだな、繰り返すがレーティングゲームなので一定のダメージで退場となろう、ここは教訓として・・・・ぬっ!これ・・・・は?」
「たああっ!」
アーシアの何十回目な正拳が決まり、倪下の胸が光を放つ、その隙にレイヴェルさんがアーシアを抱えて、私達もコカビエルの時にやった形に魔力を出しながら全力で離脱した後。
「ぬ、おおおっ!」
ストラーダ倪下はまるで普通の人間が肉食獣の爪にされるような形に胸を抉った。凄まじい流血。それに抉り取った部分が光を放って。
【細胞レベルで崩壊した】
「な、何と。回復の力を拳法に応用とは!」
回復魔法とは、要するに生命活動を促進する類い。けど、過剰にやると逆効果になるわ、それを拳打のインパクトを合わせて最低限の形に引き起こす理論はあると言えばある。
「そ、そうです。見たように成功率はまだ全然ですけど」
「うぬ、不覚・・・・だが、むっ?」
祐斗が出した剣、ギャスパーにエルメさんはチャンスと見た。
そして、三名が全力で倪下に向けたて技を放つ。
【ブラッドメイジ】
他に言い方あるし、血液を触媒にする力の類いは多いけど、出血量が致命的になるレーティング・ゲームではこれを応用して相手の止血を妨害すれば失格判定に持ち込める。エルメさんの独学に佑斗の魔剣やギャスパー特性でやれそうだからと強行した。そして!
「総攻撃!」
流石に動きは鈍らせたから、私に朱乃にルフェイさんもレイヴェルさんも!
全員がありったけな攻撃を見舞う!けど、全て斬り捨てられるか直撃しても耐えられる。
「ふふ、体力消耗度と出血量が一定に達すれば私はゲームのルールで失格負けだ。だが、このくらいでは負けぬ」
全員が青ざめた。確かにこのままじゃあ私達の方が先に体力が尽きる・・・・このまま、なら。
「それは、このくらいならでしょ!最後の切り札は私の友達なのです」
ルフェイさんが言った通りの存在を登場させる。これが、彼女がサイラオーグでもなければ勝てると言ってた理由よ!
「あ、アレはまさか・・・・?」
「え、ええ・・・・?」
知らなかった祐斗とギャスパーは驚いた。
【光の中から現れたのは大型犬】
だけど、感じられる気は桁が違うわ。あれはどう友達になったのかは教えてもらえなかったけど、神を喰らう狼な存在よ!
「フェンリルとな・・・・素晴らしい。リアス・グレモリーは単独戦闘力では兄に到底及ばぬが、レアスキルとされる能力持ちを集められる傾向があると聞いていたが、本当だったようだ・・・・ぬうん!」
ストラーダさんは右腕でフェンリルの爪を受け止めていた。私達では視認出来ない速さに反応してるし、僅かに刺さるだけだけど。神殺しの特性が聖属性に多少は効くようね。
「え、この老人殺しても構わんなって?はい、そのつもりでやらないと。自分が負けますよ」
ルフェイさんと意志疎通しているようね、そう言った後に消えたと思ったらストラーダさんに攻撃を防がれたか、逆にカウンター浴びそうになってなヒットアンドアウェイ。フェンリルでも正面対決は厳禁なようね。やはり?
「ファイヤー!」
フェンリルを操るルフェイさんの指示するタイミングで攻撃を加え、剣の力や結界でストラーダ倪下の出血を僅かにだが促している。数分なようで何日も続いてるような耐久戦、先程の拳打で消耗して今の状況に参加手段無いなアーシアが涙を堪えてるのは顔見知りだからね。
「ふふふ、どうした戦士達よ。フェンリルもそうだが、体力が落ちたのか威力が弱まって来ているぞ!」
こんなでも勝てる気がしない、けど押し切るしかないとしている内に恐れていた事が、反撃が来てしまったとしたら。
『ぐぼああぁぁあっ!』
アーシアの背後に迫っていた何者かにストラーダさんの拳圧が炸裂して弾き飛ばされた?
「ば、馬鹿な・・・・」
「え・・・・【シャルバ・ベルゼブブ】?」
「無粋!これは我等の勝負だ。旧でも魔王が聞いて呆れるわ!」
顔は知っていたわ、兄と言うよりルシファーのような肩アーマーやマント姿をした長い茶髪の大人・・・・何故かとした時にストラーダさんの失血が規定に達したようで退場させられた。
「アーシアちゃんをどさくさに紛れて拉致しようとしたのでしょうか?」
「かもね、ストラーダ倪下チームの残りは・・・・いたわ、手を上げているから降参ね」
ゲームには、一応勝ったけど、全然勝った気がしないわね。気付いたら全員が体力切れで病室に運ばれていた。
そして?
「受け取りなさい」
兄、じゃなくてルシファーが別室の男子を連れて来た後、全員に。私にも渡してくれに来たわ。レーティング・ゲームで優れた戦い、印象的な戦いをした者に送られる勲章が入った小箱を。
「まだ問い質さねばなるまい事はさておき、全員が仲間や友達に恵まれたにしても。あのヴァスコ・ストラーダを追い詰めた戦いは私から見ても【見事】だった。今後も精進したまえ」
事務的に告げてルシファー様は去ったけど、ルフェイさんが一言述べた。
「【今後】もと言いましたね、一応は即処罰は免れた事でめでたしめでたしかもで・・・・さあ、まだ寝てましょうね皆さん」
そう言って直ぐに男子は元の部屋に、残った皆も全員がベッドに寝た後。
「う、う゛う゛・・・・ふ、ええっ・・・・ん」
初めてだった。【元】兄に普通に見事なんて言ってもらえたのは。凡庸、身体だけは立派、他にも魔王の妹にあるまじき事を色々と長年に渡って言われた私が・・・・今後もシオンの為に覚悟を決めないといけないのに、でも暫く涙が止まらなかった。
アーシアの拳打の元ネタはご察しだけど、回復系には理論上可能かもな結果な流れ。但し、実戦力はご察し。
佑斗達のもオリ技だけど、レーティングゲームじゃなきゃ実戦力はなものです。
一応、最後のはリアスは報われたかもな展開でした。