ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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皆、動き出す。


覚醒への狂奔 激動の週末休み
意図


 来訪者が矢継ぎ早に訪れ、一悶着手前の連発が去ってから三日後の土曜の放課後。

 

 先ず、木場祐斗が眷属から離れてしまった。

 

 リアスがサイラオーグとの一件後、意気消沈となってしまったからだ。事情を聞いたソーナ達からは、暫く動くのを止められている。

 

 その間の暫定としているが、本人は自分で決着を付けるつもりのようだ。聖剣と木場の因縁についてはアーシア以外は知っているか聞いたかだ。

 

 正直、簡単に振り切るのは無理だろうとしている・・・・リアスに関してはアーシアと朱乃、何より冥界公認で助っ人に入ったビナーが付いているから任せるとして、シトリー眷属は行動を開始した。

 

 

 

 そして、シオンは?

 

 

 

「・・・・何で、俺に付いてくるんだ搭城?」

 

「追跡しようとしたのですが、バレると思ったので」

 

 下校時刻に、堂々と靴箱の場で待ち受けていた搭城小猫が正直に答えたので、一緒に下校していた・・・・マンションの自室に荷物を置いてから『目当ての連中』を探す事にすると打ち合わせながら。

 

「先輩、佑斗先輩を探すんですか?」

 

「いや、木場に話を持ちかけても意固地になってるだろうしな、先ずはイリナとゼノヴィアに協力を持ち掛ける。教会にもそれなのに意図があるようだし、探りを入れたいとか敵の手懸かりとかの情報を貰えたりな流れにすれば連携くらいはしてもらえるハズだ」

 

「成る程、では・・・・二人と佑斗先輩の居場所は知ってるのですか?」

 

「候補地はある。先ず近くの公園と街中から当たる」

 

「わかりました」

 

 小猫は、シオンの言葉を信じて同行した。何度か共闘して、シオンの『神通力染みた勘』は多少は知ったつもりだ。一方でシオンは?

 

(今の部長やビナーさんの近くに、搭城を置いたら危険な気がする)

 

 アーシアの件で自分の堪に向き合う気にはななりつつあった。そして、先日雨が降ってくれたのが幸いだったと思っていた。

 

 セラフォルーを頼れば楽だが、レイヴェルが人間界に来たりしてるくらいだから、冥界にも動きがあるとわかっているので、不用意な事は避けた。そして、先日にとっておきの術を使っていた。

 

『水面鏡』

 

 気を通した水を使って、気や魔力の感知場を造る術であるが大気中の水分からやるには負荷が多い、だが雨の日ならば触媒となる水を無尽蔵に使える上に周りにも感知されにくい、これを極めれば雨の日には戦闘フィールドを丸ごと自分の監視下に置ける。

 

 目当ての人物達が立ち寄った場所は把握できる程度は使いこなしていた。少なくとも近くに行けば感知は出来る。

 

 だが?

 

(しくじったなぁ・・・・思ったよりも体力が落ちてる・・・・水面鏡はやめた方が良かったかもしれない)

 

 公園で早くも自販機で買ったトマトジュースを飲みながら休憩していた。

 

 リアスの眷属になって以来の身体の不備に先日のサイラオーグとの一件で感じた違和感がシオンを蝕んでいた。本人がそれを本格的に案じられない理由もリアスに掛けられた術の範囲内だ。

 

 小猫は付いて来て正解だったと思っていた。

 

 付き合いは短いが、今のシオンは違和感と不安要素の固まりである事程度はわかっていた。悪魔に転生した後遺症と仮定されるものを含めた何かがある。そして小猫には自分なりにシオンに後ろめたい事があると、シオンに奢ってもらったお茶を飲みながら思っていた。小猫は知らないが、アーシアが自分が不用意な事をしなければこうはならなかったかもしれないと言う罪悪感に近いものが小猫の思うものだ。

 

 リアスに頼まれて他同様にシオンの資料を探した時の事だが、途中で調べている対象が赤龍帝だったと知った時、個人的に意図があった。

 

 自分の力を忌み嫌う小猫は何か参考になるものを欲していた。歴代で、力の魔魅に呑まれた宿主・・・・逆に克服した宿主も多いと聞く赤龍帝ならばと・・・・それならば、自分をリアスに引き合わせたサーゼクスを・・・・最強の魔王として両親にすら異端視された存在を頼るのが一番なのかもしれないが、落ち着いた時にはリアスは自分も知った理由で冥界から離れていた。個人的に動くのはリアスを自分なりに慕う小猫は躊躇していた。何よりもサーゼクスは冥界からは不用意に動けたりはしない立場。

 

 都合良く頼ろうとした存在は、真っ先に暴走したリアスと対峙した末に自分達の味方になってくれたが、そうなった経緯が問題にもなっていた。シオンから感じた違和感から推測して、恐らくリアスしか真相を知らないそれが自分達にとってどう転ぶかの不安も先日に実証されてしまった。

 

 だが、少なくとも?あのサイラオーグ・バアルがリアスに怒気を向けた際に庇ってくれた姿は本物だと思っていた。

 

 小猫から見てもリアスにはシオンが必要なのだ。それがどのような落とし穴や闇が潜ませた事だとしても、自分が慕う存在に必要・・・・だから、小猫はシオンを助ける気になっていた。

 

 休憩を終えて街中に繰り出した。落ち着いて街中を見回すのはいつ以来かと小猫は思っていた。人間界に来た理由がリアスの家出同然な経緯であるが為に、管轄地の把握と食べ物の事以外はリアスの心情ばかりを気にしていたから、一旦はリアスを他に任せている状況では複雑な新鮮さがあるようだ。

 

(ビナー様の事は良く知りませんけど、今は任せるしかなさそうです)

 

 

 

 

 

 

 考えてる内に一番人通りが多そうな場に来たが、シオンの足取りは重い、何でも悪い予感がするとの事で小猫は警戒態勢を取っていた。

 

 アーシアの件だけでシオンの勘は信じるに値するから油断は出来ないと。

 

(・・・・正直、怖いです。先輩が暴走した部長と戦った日、部長に突撃して勢い余って背後の校舎の裏側まで行って、私達の目から離れた時、皆が二人の所に向かおうとした・・・・その時、私は恐怖で動けなかった。何か恐ろしい気が感じられた。その場にいた皆は?特に、アーシア先輩は自分が慌てて治療したから、まだ回復しきれてなかったと思っていたようですが。とにかく、あの時のような事は起こらないように願うしか無いです・・・・)

 

 小猫は至って真面目に、そう願いながら街中を見回していた。

 

 

 だが?

 

 

「迷える子羊にお慈悲を~」

 

「哀れな私達に情けを~」

 

 路頭で祈りを捧げながら、何とか乞い?をする白いローブの見た目美少女二人の奇怪極まる図に通り掛かる人達は奇異の目で見るか関わるまいとしていた光景を目の当たりにした。

 

「先輩、どうします?」

 

 シオンは静かに身体を震わせていた。悪い予感の正体がこんなのだったと目の当たりにしてしまい、やるせなさに震えてていたのだ。しばらくして溜まったやるせなさを吐き出すように声を出した。

 

「あんっの、バカは一体、何をやってるんだああぁぁっっ・・・・!?」

 

 

 

 

 

 場所は移って、シオンのマンションの自室。

 

 

 

 

 

 二人を引き摺るように持ち帰って、事情を聞いたら、イリナが何かの絵を購入してお金が無くなったからと聞き出した。ゼノヴィアについても一緒に何とか乞いをしてる時点で、やはりイリナの相棒やれるだけはあるとしてたら?

 

「何か食べ物ない?」

 

 ストレートなの要求にゲンナリしながら、シオンは作り置きとあり合わせのご飯を大量に出した。

 

 安売りの牛蒡を全て笹掻きにしてキノコと一緒に煮込んでおいた具を使った高野豆腐とひじきの各種煮物と、余った具と大量に出る煮汁は出汁の効いた味噌汁にしてしまって、ご飯は炊けてないから保存しておいたトマトソースに野菜と冷凍エビピラフにチーズを入れて煮込んだ即席リゾットと、水切りした豆腐を糠漬けにして、あっさりしたチーズみたいな味にした物を次々と。

 

(部長から聞いたように、家庭的とでも言うべき・・・・そう、朱乃先輩が得意な『肉じゃがや筑前煮』に似てる類いのものを感じる味ですね、しかも?他にも次々と出て来ます・・・)

 

「美味い!身体に染み渡る美味さだ!」

 

「これよ!これこそ故郷の味よっ!」

 

「何で俺のあり合わせなんかが故郷の味なんだよ?」

 

「先輩、察するに昔、イリナさんに何か食べさせたでしょう?」

 

「ああ、試しに作ったのを何回か・・・・」

 

 小猫も、いつの間にかお相伴に預かっているが、滋養に満ちて味付けが塩分控え目なので生姜や香辛料で力を補いつつアッサリしたものに仕上げている分たくさん食べられるとして、二人に負けない程食べている。イリナはこの味こそ自分の故郷としてる程に心を打たれたのだと理解した。

 

「堪能した!悪魔の誘いとはこの事かもしれんな」

 

「ああ、主よ。人の心を失ってはいなかった少年にご慈悲を」

 

 妙な言い分。二人して胸で十字を斬ろうとするが、シオンが止めた。無駄なダメージは避けるべきだ。

 

 シオンは食後のお茶を出しながら交渉を始めた。聖剣絡みの被害は馬鹿にならないし。この土地には前々からレベルが高いはぐれ等が度々出る事もあるので連携した方が良いと言う事から切り出した。

 

「それは一理あるな、この辺りには堕天使は勿論、旧魔王派の手先まで出没していると聞く」

 

「う~ん、それが正直わからないのよねえ?旧魔王派が?この地で狙うものがあるとしたら現魔王の身内なリアス・グレモリーやソーナ・シトリーが思い浮かぶけど、この二名をどうにかしようとして、あのサーゼクス・ルシファーやセルフォルー・レヴィアタンが怒り狂って仕返しに来たらどうするつもりなのよ?って疑問があるわ」

 

 シオンは尤もだと思っていた。セラフォルーはわかりやすいが、サーゼクス・ルシファーもかなりのシスコンだと聞いている。冥界で身内に比べて凡庸と罵られたリアスがサイラオーグ程の迫害を受けてないのはそれが理由だろうとしていたのだ。

 

(・・・旧魔王派の狙うものか・・・・実は心当たりがあるんだがな・・・・)

 

「イリナ、相手を甘く見すぎるのは禁物だが?相手が本当に現実を見えていないのも有り得るぞ、人間界での下手なテロリストが正にそんな感じだろうしな、若しくは?そんな奴等を使って虚を突こうとする黒幕がいたりするのかもしれん」

 

「成る程、一理あるな?超一流の足元を掬うのは寧ろ二流の方が有効かもしれないって論か」

 

 勢い任せのタイプのようで機転が効いた事を言うゼノヴィア、やはり教会は人選を考えてないワケではない。

 

「まあ、それはそれで目的は?現魔王様達への揺さぶりとか?」

 

「かもしれないな、サーゼクス・ルシファーを揺さぶれば他勢力に対する抑止が崩れる可能性は有り得る・・・・その隙を突くとかかな?まあ、今の私達には聖剣が優先だ。先ずはその件についてお前の幼馴染みと話をしようか?」

 

 

『それは待って!』

 

 

 その場にいた者達は、突然掛かった声に驚いた。声の主を知っているシオンは特に何故?と取ったのだ。

 

 そして、居間に入って来た者に全員が注目した。

 

 純白のドレスに紫の髪をした少女、だが少女から粒子のように立ち上る薄い紫のオーラにシオンを除く三名は戦慄していた。明らかに只者ではない。

 

「だ、誰よ貴女?ここはシオン君の部屋よ?どこから入って来たのよっ!?」

 

「入って来たんじゃない、元から居たの!部屋の構造には細工がしてあるから、来客にはわからないの・・・・私はシオンに保護してもらっていたの・・・・」

 

「ほ、保護ぉっ!?シオン君!これって、どういう・・こ・・・・と?」

 

 唐突な事実、シオンが何故か年頃の少女を保護していた事を問い詰めようとしたイリナだが、少女を見据えるシオンの目は厳しいものがあって、そのまま黙ってしまった。

 

「・・・・何で人前に自分から出た?約束を忘れたか?」

 

「怒ってくれて良いよ・・・・でも、私はわかったの・・・・旧魔王派の狙いも、何よりも?このままじゃシオンがいなくなっちゃう!あの女に完全に取り込まれちゃうの!」

 

 オレンジ色の瞳から涙を流す少女、自分達を置いてけぼりにして語り始めた内容に要領は得ないが当人達が真剣な事はわかる。

 

「あ、貴女は・・・・誰、なのです?」

 

「あの女の眷属ね・・・・でも、信用は出来そうね、私も全部把握してる訳じゃないけど?お願い、力を借して!」

 

 自分達に歩み寄る少女はまるで壊れた機械人形のようなぎこちない動き、シオンは咄嗟に彼女を支えた。まるでそうするのが当たり前になっているような動きの自然さに他は益々口を挟み辛くなる。

 

「シオン・・・・ごめん、理由は話すから・・・・もう限界なの!あの契約者さんの非常時についての取り決め通りにしましょう?」

 

「・・・・良いのか?」

 

「ね、ねえシオン君?とにかく、その女の人は誰か教えてくれない?」

 

「私・・・・イング・・・・ヴィルド・・・・イングヴィルド・・・・『レヴィアタン』・・今の新魔王派じゃなくて?旧魔王派の崇める血筋に当たる魔王の血筋と人間の血筋の・・・・混血の女」

 

 二人だけにしかわからないやり取りを始めた事にしびれを切らしたイリナはたまらずに先ずずは把握するべき事を問うたが、返された言葉は近年で一番驚愕すべき内容であった。




家事が出来るだけで充分な取り柄よ

好きで得意になったかどうかも考案したれよっ!

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