ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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久々に戦闘描写書いた(汗)


飴と鞭

 空気が切り裂かれ、人間大のはぐれ悪魔の顔面と上半身が無数の鞭で打ち据えられたように腫れ上がり続けるだけではなく、皮どころか肉が裂かれて鮮血が飛び散り続けている

 

 片方の腕からフリッカージャブの形で拳打を放ち続ける女性悪魔は。右半分を仮面で覆った端正な顔と引き締まった身体を相手の返り血で塗らしていた。敵が堪らずに一縷の望みで突進した瞬間、もう片方の腕から一直線に放った拳で顎を砕き地面に沈めた。

 

 フェニックス眷属の戦車であるイザベラは深夜の駒王町周辺を散策しつつ、何体かのはぐれ悪魔を叩き伏せて冥界に送っていた。そんなイザベラの背後で冥界に送る役割を担当しつつ様子見していたレイヴェルはイザベラの戦闘力に身体を震わせているのを決して悟らせないように努めていた。

 

(おかしい・・・・ですわ)

 

 イザベラが近年、腕を上げているのはわかっていた。兄であるライザーすら、フェニックス家の不死身の特性が無ければ勝てないのではないのか?とまで言われる程なのは間近で見てきたレイヴェルが一番良く知っているつもりであった。

 

 だが、今のイザベラは把握していたレベルを軽く二つも三つも上回っている。片腕からのフリッカージャブから相手を翻弄と言うより死に体に近い程に痛めつけて、体勢を崩してのトドメかヤケになって突撃して来た場にもう片方の拳をストレートやアッパーの形でカウンター気味に打ち込むだけの戦法が冴え渡っていた。これ迄倒した相手は決して弱くは無い、寧ろフェニックス眷属の中で数えても中の上には該当するレベル。当のイザベラもレイヴェル同様に戸惑いを覚えている。

 

(・・・・身体が、怖いくらいに軽く動く?最近の訓練の成果なのか?いや・・・・)

 

 イザベラには、心当たりはある。

 

『アレを見た』

 

(・・・・シオン・・・・助けられて以来、自分なりに君を目指して腕を多少は上げたつもりだ。だが、これは・・これはどういうワケなのだ?君にもう一度会って・・・・会って、どうする?また・・・・『アレ』を?)

 

 イザベラは一旦考えるのを止めた。今はまだ早いのを実感はしているのだ。だが?

 

(シオン・・・・君は近くにいるし、明日にでもまた会えるハズ・・・・頼む、私の考えた通りにはならないで欲しい・・・・私は、まだ君に・・・・)

 

 内心で際限無く湧く疑惑を振り払うようにイザベラは次に向かう、まだ敵がいるのを感じたからだった。

 

 

 

 

 

 ロスヴァイセは自分の耳を疑っていた。

 

 入浴させてもらって身を清め、多少は落ち着いた自分を待っていたのは、何やら神妙な顔をしたシオンだが、自分の私服のポケットにあるものに勘づいていた。それはオーディンから預かっといてくれと頼まれてスーツのポケットに入れていたものであった。日本の何種類もの飴玉の詰まったドロップ缶。町中を歩き回る途中で購入して珍しくロスヴァイセにも中身を一つ分けてくれた。オーディンが気遣いを見せてくれたのに大層激しく感激し、その隙を突いて自分の目を離れて好き勝手に遊び始めて気付いたらこの有り様だったのだが、とにかく何事かとお互い同意して開けたドロップ缶の中に入っていたのは?

 

『ロスヴァイセが昔に書いた論文の一部をコピーして小さな魔力の玉』

 

 丁度ドロップと同じ程度の大きさの玉に記録したもの、それを感知したシオンに見せたのだが?何故こんなものが?と考えたが、それを見たシオンは更に緊張感を増しながらこう言った。

 

『確信犯ですね』

 

 つまり、ロスヴァイセをシオンのいる場に置いておく為に一芝居を打った。

 

 あの老人が真面目に思慮深さを見せた事は滅多に無い。だが、シオンは更にロスヴァイセを驚かせる行動を取った。

 

「きゅ、旧魔王派の崇める血筋の娘を保護してたですってぇっ!?」

 

 あろう事か、イングヴィルドと会わせてしまったのだ。これには先に来てた面子も驚いてしまった。

 

「まだ。想定内ですがロスヴァイセさん?貴方の論文・・・・多分、各勢力の今後に重大な影響を与えるものですよ?貴女にはリアス部長や冥界にいるサーゼクス様を始めとした魔王様達にも近い内に会ってもらいたいし、何よりも?この論文の事が知られたら旧魔王派を始めとした勢力から貴女が狙われる事になるでしょうね・・・・」

 

 シオンのマンションに集まった面子は、これまでわかっただけでも、自分達はとてつもなく大きな流れに組み込まれたのではないか?と緊張感を増した。冥界だけではなく北欧の主神すらも何やら動いている。そのキッカケになっているのは間違いなくシオンであり、その流れに自分達も組み込まれている予感がしたのだ。最早、以前にオーディンが匿名希望でロスヴァイセの名前と写真だけの見合いの誘いをシオンに送って来た事等に騒いではいられない。

 

「とにかくロスヴァイセさん?貴女は、この論文の件は後回しにして本当にオーディン様に粗雑な扱いされたって事にして行動して下さい。結局、俺達は主神や魔王が全面対決しない為に動いてるって程度な立ち位置ですからね、深読みしたら危険な上にキリが無いから、先ずは人手は増やしてはもらってるって解釈で良いとこ取りをさせてもらいましょう」

 

 達観してると言うべきかドライと言うべきかな言い分だが、恐らく的は射てる為に全員シオンに合意した。最も当のシオンは飴玉だけで感激するロスヴァイセの心情を計算に入れてる結果である。つくづく自分は他に比してセラフォルーが雇い主で良かったのか否かに考えてしまっていた。




そろそろ塩飴とか必要になる時期だなあ。

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