ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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 サイラオーグさんの滞在する場は、型月の名作で言えば例の銀髪幼女の住む森林地帯の奥にある城なイメージ。


戦い

 方針がある程度決まった。

 

 まだ日曜の昼間、これからサイラオーグはシトリー眷属と合流して、木場と合流したシオン達は一旦学園にいる部長と合流しようとした時である。

 

『侵入者』

 

 滞在場所の森林には多用途の結界が張られ、レーダー要らずな感知能力があるシオンもいるから感知は出来る。とにかく侵入者が入って来たのに気付いて、外の様子を城の二階の窓から見た時である。

 

「森が・・・・燃えてる!」

 

 結界の為に外には認知されないのを逆手に取ったのか。小さな城の窓からは、森の三ケ所に火の手が上がり始めたのが見えた。古典的だが撹乱には最適なのだろう。しかし?

 

「・・・・」

 

 次の瞬間にシオン達の目に映ったのは飛沫程度の『水』だった。城の近くにあった小さな池、その池から公園の噴水が数秒吹き出した程度の量の水が上空に舞い上がる。

 

 そして、水から魔力が迸り膨れ上がる。やがて三十メートル程の龍の形になり火の手が上がった場所に一体ずつ飛んでいった。唖然しながらも自分達の近くにいる存在から薄い紫色の魔力が立ち上っていた為にアレを造り出したのはイングヴィルドと理解した。瞬く間に火の手が消えたと同時にシオンが下手人達の逃げ出す方向を感知、帰るのを居城の窓から見守ろうとしていて事態を察したサイラオーグが空いた窓から飛び降りながら『任せろ!』と声をあげた。そして着地したと同時に消えたと見間違う程の速さで駆け出していた。

 

 

 

 

 

 森に火を付けた者達は三組、人間の一般人の外見で構成された者達のどの組も阿鼻叫喚となっていた。放った火は特殊なもので普通の放水等では消えないし、魔力を持つ道具は相当のものでなければ効果は薄い、即座に消せるとするなら?例えばかのセラフォルー・レヴィアタンのような氷属性の魔力クラスでも用いなければならないハズだ。

 

 この地に滞在するサイラオーグ・バアルは滅びの力も受け継げず録な魔力も無く生まれた悪魔であり即座に対処は出来ないハズと言う前提がアッサリ崩されたのみではない、飛来した水龍の戦闘力は自分達を遥かに凌駕していた。体当たりと尾の攻撃のみで骨を砕かれた者、こちらの攻撃がまるで通じずに驚愕する者・・・・しかし、水龍は此方を殲滅する前に魔力が消え去り霧消した。ワケもわからずただ退却予定の地点に向かおうとした彼等が目の前には?

 

「投降すれば命は保証する・・・・が?放火の報いは受けて貰おう」

 

 その場の数十名は震えあがるのみである。牙を剥いた獅子の前に抗う術は無い・・・・が?

 

「クソッ!バアルの欠陥悪魔があっ!!」

 

 リーダー格が飛び出して、右の拳で殴り掛かるものの、その拳はサイラオーグの左手に事も無げに掴まれ、そのまま『握り潰された』激痛を感じて叫ぶ瞬間には残った右の拳が眉間に打ち込まれて、血飛沫をあげながら残った者の元に返されてしまった。サイラオーグは争いにルール等は無用と理解しても自分なりの線を踏み越えた者達にはそれなりの怒りはあるのを実証したのだ。

 

 最早、形勢は覆らない。眉間を割られて意識を失ったリーダーとリーダーの手当てを始めた者以外は両手を上げて降参の意を示した。

 

 

 

 一方?

 

 

 

「これはキツいですね」

 

 学園には多数の悪魔が白昼堂々と襲撃を掛けていた。ディオドラの遺体を冥界に送って間も無く今度は団体で襲って来た。ディオドラ同様に爆弾に仕立てられたはぐれ悪魔の群れはビナーにサッカーボールのように蹴り上げられて、或いは剣で突き刺されてそのまま上空に放り上げられては幻術のお陰で花火になる。学園には結界も張ってあるので外部からは様子がわからない、ソーナ達の根回しで念の為に部活中止にしてあるので一般学生や教員はいないのが幸いだ。

 

「全く・・・・『きたねぇ花火』を連発させるようなやり口とは・・・・相手も本気でバカに徹しているようですね」

 

 ビナーの発想はレイナーレと同じであった。小規模であっても組織の意向が『みんなでバカになる』になってしまって恐るべき有り様だ。

 

 部室内では、震えあがるギャスパーとアーシアを守りつつリアスと朱乃が待機していた。最もリアスと朱乃もこのような残虐な手口は想定外であり内心では震えていたが、後輩の二人を守らなければならないので必死に気丈さを保っていた。ギャスパーの力を使おうにもコントロールが不安定な上に僅かにでもタイミングが悪く噛み合えば此方が危険だと考えた時にリアスはある事を推測していた。

 

(まさか、仕掛けてる側はギャスパーの事を何故か知っていて、私が封印を解くと想定していたの?)

 

 そう、外で戦うビナーがいるだけでも爆弾にされた悪魔達は対処は出来る。なのに送り込んだ理由はソレではないか?と、ギャスパーを精神的に揺さぶり、不安定にして停止世界の邪眼を少なくともリアス達に都合良く使わせなさいようにする為にこのような手段に出たのでは?と。

 

(当たっているとしたら、私の決断が完全に裏目に出てしまっている状況に持ち込まれたわ・・・・甘かった・・・・結局、私は戦うとなれば弱い、これが戦い、なのよ・・・・っ)

 

 リアスが自分の甘さを悔いる間も無く、次なる策謀は既に動き続けていた。




 飽くまで、劣勢になった側は相手が想定外と一枚上手なのが原因な回。

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