ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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優遇?二名。


見れたもの

「どうなっている!?」

 

「エレベーターの中に入ったと思ったら出口から外!ドアの先に階段のあるハズな場に入ったら空き部屋!」

 

 ここはシオンが居住するマンション、彼の留守を狙った部隊は心底困惑していた。高いが殺風景で無機質な建物だと思いながら外部に階段すらない為に内部に入った。シオンが住むのは最上階辺りと調べていたので先ずは内部から上を目指したが?先程から何名かが苛立ちと共に吐き捨てるようにエレベーターを開けた先、ドアの向こうに階段のある場を通る度に一回の空き部屋や出口に毎回違う場に出てしまう。流石に一旦外に出て落ち着こうとした彼等の前には?

 

「留守中に、所謂空き巣?を狙うのは感心しないな?」

 

 顔の右半分を仮面で覆う女性、情報にあるフェニックス眷属の戦車イザベラであると理解した侵入者達が何かを言おうとする前にイザベラの姿が消えた・・・・と思ったら、一旦死角に移動したイザベラは、相手が自分を見失った事を確認して、そのまま出て来た面子の内一名の顎をすれ違いざまに拳打で打ち抜いてまたも死角に移動し、次の対象に同じ事をする攻撃を繰り返した。瞬く間に全員が顎を打ち抜かれた衝撃により脳が揺さぶられて昏倒させられていた。

 

「こ、拘束なさい!」

 

 イザベラの後方で唖然とするシトリー眷属の中で先に我に返ったソーナの指示通りに倒れ付した侵入者達は拘束される。侵入者の中の一名を拘束しながら匙元士郎は戦慄していた。シオンの顔馴染みであり幾度も手合わせを申し込んでいる女性悪魔とは聞いていたが、実際目の当たりにしたイザベラから感じられる戦闘力は自分の知るシオンに匹敵する程だった。既に何度か目の当たりにしたレイヴェルすらもイザベラの異常なレベルアップには改めて驚愕していた。

 

 成り行きを見守るイザベラは自分の中で邪な考えを振り払おうとしていた。昏倒させた者達のように留守中のシオンの部屋に入ろうと迄は思わなかったが、マンション内はシオンがどういう原理か自分の留守中対策にある幻術の類いを施しているとは聞いた。つまり、シオン絡みの何かを感じて『あの時見たもの』にまた触れられるかもしれないと考えてしまっていた。

 

(い、いかん!いかんいかん!私にだって・・・・最低限の矜持はある!)

 

 イザベラの邪な考えに対する判断は結果だけならば後に半分正しく、半分は間違っていた事になるのだが・・・・思考を中断させてくれる存在が近付いて来た。

 

「やっぱり!団体でバカやり始めたわね!」

 

 天野夕麻、否・・・・シオンと偽装作戦で交際している堕天使レイナーレと恐らく同胞の者達である。事情を説明し合って、レイナーレの考えを聞いて全員が納得した。

 

 シトリー眷属は、街でイザベラにレイヴェルの二名に出会い、取り敢えずシオンの帰りを待って今後を相談しようとしたら不審な者達を見つけてこの有り様である。この分ではサイラオーグ側と学園に残るリアスの側も危険かもしれない。

 

「留守にしてる店には別に参考になるモノはないから良いとして、サイラオーグさんの滞在場は通常の携帯とかじゃ連絡付かないし?転送の類いじゃ近辺にしか行けない!この段階ではシオン君でも異常に気付くかは微妙だから誰か連絡に行くべきよね、只し?私達が行ったらコカビエルが相手とした場合、同族の気配で気付かれる危険が大がから却下よ?多少の襲撃を切り抜けられるようなのが最適だけど?」

 

 それなりの強者が適任として、駆け付けたばかりの者達を除いて、条件を満たす者に注目が集まった。

 

「わかりましたわ、イザベラ?頼みます」

 

「承知しました!では、レイヴェル様達は学園の方に」

 

 イザベラがレイヴェルの用意した転送の魔法陣でサイラオーグの滞在場付近に向かい、残りは学園に向かった。各々が最適と思われる形で動くものの不安が取れるワケではない、手段を選ばない相手への対処法に長け、実際に経験した者は自分達側には学園にいるビナーくらいだったのだ。今はこれくらいしか出来る事はない。

 

 

・・・・。

 

 

 投降した放火魔達はサイラオーグの部下達が厳重に拘束していたが、問題が起きていた。

 

投降した者達から事情を聞き出したくても大半が半死半生の有り様で、残った者は一連の流れ恐慌状態だった惨状、サイラオーグもだが、放火魔側にしたら途中で消えなかったら全滅させられてた程に圧倒的な力を見せられたイングヴィルドの水龍がトラウマになっていた。

 

 そして、咄嗟に力を使ってしまったイングヴィルドが車椅子に座りながら、うつらうつらと眠り掛けていた。そう、彼女はまだリハビリの途中であり、あのような力を即座に使うのは負荷が多い、水龍を出す際に自分の魔力だけではなく城の近くにあった池の水を使う事で消耗を抑えてなければこの程度では済まなかったかもしれない。何故、そんな無茶を?と問われて。

 

『森、焼かせたく、なかった・・・・』

 

 恐るべき力の片鱗を見せたイングヴィルドの素性が気になるであろうサイラオーグは、その一言で全て納得した。目覚めてからまともに自然を見れたのは初めてであったのだ。特に城に入る前に見渡した森林の美しさは彼女を満たしてくれた。だから、放火等を許せなかった・・・・それで充分だが、当のイングヴィルドは説明が終わると、シオンに縋り付いて震えていた。

 

 怖いのだ。

 

 力を使って放火を防いだのは間違いではない、だが?もしも・・・・もしも代償として病が再発したら?と、怖くて震え始めてしまった。漸く前向きになれた切っ掛けになってくれた少年が目覚めたらいなくなっているかもしれないのだ。最初に病に掛かる前に周りにいた人々のように。

 

 知ったばかりだが、イングヴィルドの心情はその場の全員が察していた。イリナは少し複雑そうにしてはいたが、直ぐに気持ちを切り替えていた・・・・だから、他の者達のように見守るばかりであった。

 

「大丈夫だ。お前がそう願えばな・・・・」

 

 シオンの言葉に嘘はない、彼女は徐々に力を取り戻し始めている。だから、心から願いさえすれば何物にも勝るものが発現する。シオンの言葉に平静を取り戻し、改めて見上げた。自分が今欲する唯一の存在・・・・『その時』

 

「え?」

 

 イングヴィルドの周りは一変していた。

 

 縋り付いていた少年は、温もりも何もなく冷たい何かが型取ったものとなって、空洞となった左胸から溢れるオーラがイングヴィルドを包み込んだ。ワケがわからず周囲を見回すと、建物の内部は色を失って凍り付き、自分が放火をくい止めた森もただ朽ち果てるのを待つだけのものと成り果てていた。

 

「シ、シオン!」

 

 堪らず立ち上がったイングヴィルドに周囲は目を丸くした。

 

 だが、イングヴィルドは自分の変化を感じて周りの目は気にならずにいた。身体の感覚が鮮明となり支障無く立ち上がれた。眠気も飛んでいる・・・・周囲も自分の正面に立つ少年も元に戻っていた・・・・だが、数秒前よりも怖くなるくらいにわかる。目の前の少年が・・・・シオンがどうなってしまっているのかを・・・・。

 

(二人目か、意外と早かったなぁ・・・・)

 

 シオンの左腕の中で、赤龍帝ドライグは複雑な独白をしていた・・・・そう、これで二人目。




リハビリ中の何かは本当に恐い。
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