シオンのマンションの前、バラキエルは取り敢えず集まった大人数が中に退避したのを確認して身構えていた。聞くところによると、あのマンションは居住者の留守中、つまり赤龍帝の不在の際に内部に侵入者が入り込んだ場合は迷宮と化し、人避けを始めとした結界が張られていると聞く、敵が外から破壊を行わない限りは一固まりになっていれば安心だろう。後は自分は新手に備えつつ、例のものについて情報が来るのを待つのみだ。
だが、この算段が思わぬ事態を引き起こすとは予想出来なかった。
マンションの中に入った者達は違和感を感じ、試しに階段に続くドアを開けたら、一階の管理人室に繋がっていた事に驚いたが、確かに算段通りにもしもだが敵が入り込んだ際には時間稼ぎにはなるだろうが、先ず当面の問題はリアスと朱乃だ。
「・・・・」
「・・・・」
ここに来る前から顔を合わせず、言葉も交わさない二名の間に漂うのは緊迫した空気だった。朱乃の境遇を知っているのに迷いなくバラキエルと鉢合わせた。それなりに状況を理解しているにしても、朱乃からしたら、自分は今までシオンと何があったのかを詮索しないでいた矢先に今回の件である。不満くらいはある。
(これは、想像以上ね)
最初、ソーナはバラキエルが此方に来た時にリアスの事だから親友に考慮して遠回りにバラキエルに協力してもらう路線を取るかもしれないと考えた。だが、リアスはそれをせずに真っ先に朱乃とバラキエルを会わせてしまった。
『私情は禁物』
『そもそも、此方にバラキエルさんがいるとすれば朱乃との過去関連を揺さぶりに使われるに決まっているから、唐突にそうなるくらいならば、先に知っていた方が良いわ』
来る途中にリアスが語った事だ。
正論ではあるが、ギリギリの部分では情を優先してしまうのが周囲のリアス像、非常時であるとは言え今回だけでそれを大きく逸脱しているのは衝撃である。リアスがこのような在り方になった切っ掛けは言うまでもなくリアスが暴走した時だ。シオンと何があったか話さない結果、眷属達に去られても良いと言い切る程の何かがあったのは頭にあったが、流石に私情とは言え親友のトラウマになっている部分すら真っ先に二の次にする程とは思わなかった・・・・尤も、つい先程迄にディオドラからコカビエルの来襲に際してリアスが自分の甘さを痛感した成果ではあるが。
(リアス、貴女は本当に何よりもシオン君を優先する気になったのですか?)
ソーナの疑念こそが全てである。何があるかは判明してないが、今のリアスの行動と思考の原理はそれ以外に考えられなかった。
(さて、面倒な事になったわねえ?)
レイナーレの方は面倒と割り切れないレベルと思っていた。
彼女からしたら、別に二名が仲違いしていても知った事ではない、但し?シオンに悪影響を与えるのは避けたい。いや、この類いの発想をしているのは今のリアスと同じようなものではないか?それはどうも気分ではないとして、手っ取り早いのは二名を仲直りさせてしまう事だとした。
とは言え、意固地になっている姫島朱乃を言い聞かせるには特に『堕天使』の自分では相性が悪いから・・・・この場で打てる手は?
「取り敢えず。現状・疑念・今後に関して語り合いの必要があるんだけど?」
レイナーレの言葉に朱乃が複雑にしてはいるが全員が賛成する。ギスギスしっぱなしよりは良いとして状況をまとめる事にした。
「先ず、コカビエルはビナー様に任せてある。あっちがどうなってるかわからないけど?仮にコカビエルが魔王級ですら手に負えないならもうどうしようもない、この場に攻めて来たら?リアス・グレモリーとソーナ・シトリーに身内に助けを求めてもらいながら逃げる以外に無いわねえ?元々冥界にいる魔王様達が迂闊に動けないからビナー様が来てくれたにしてもね」
リアスとソーナはレイナーレの意見に頷いて肯定する。そしてレイナーレは次の問題に話題を進めた。
「次、私達はこのまま隠れて事態が収まるかシオン君達が帰ってくれるまで待つのが妥当なんだけど?堕天使陣営屈指の武人様が来てるからには、詳細は不明だけどコカビエルと同等かそれ以上な驚異とされる何かが関わっていると考えるべき、これは皆も予感はしてるわね?」
そう、元々堕天使陣営の不祥事であるからには元々真っ先に来てもおかしくない存在が事態が判明してから数日遅れた今と言う時期に現れた。そう考えるのが正しい。
「取り敢えず。これ以外には何かある?」
それに関して、リアスが挙手をしたので語り手が交代した。
「私が抱いた疑念は、首謀者であるコカビエルが?何故か堂々と学園に現れた事、それから聖剣ね。聖剣に関して何も言ってないし判明してもいない、そもそもコカビエルが聖剣を盗み出したのが簡単に漏れすぎな気がする。最初は動乱の切っ掛けになれば良いという発想からの確信犯と思っていたけど、下手人か共謀者がまだいそうね、其方は今頃はサイラオーグにシオンの方に目を向けているか攻め込んでいるかもしれないけど」
言われてみれば聖剣に関して未だに不明なのだとして、リアスの推測通りにしている可能性はあるが。判断に迷うとまでは大半が同意した時。
「そこで朱乃?提案があるわ」
わざわざ一番連携が不安になっている相手を指名するリアスに皆が注目する。そこからリアスが発したのは驚くべき提案であった。
「貴女、レイナーレさん達・・堕天使組と一緒に、外にいるバラキエルさんと合流して」
最早、ソーナ達からしたら正気すら無くしたのではないのか?と言いたくなる事であった。
いきなりの変化は戸惑うものよ、周りは気が気でなくなるだろうな。
そう思うなら外見も中身も唐突に面白けりゃ良いで変えるのは止めたらどうなんだよっ!?