ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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リアス、本当に鬼になってます。


リアスの見せたもの

 最早、一触即発であった。

 

 リアスから発せられた言葉に耳を疑う者ばかりである。特に事情を全て知っているワケではないアーシアとギャスパーも豹変したように怒気を露にした朱乃に震えるのみであった。

 

「リアス?もう一度言ってみてくれない?」

 

「貴女、レイナーレさん達・・堕天使組と一緒に外にいるバラキエルさんと合流して」

 

 本当にもう一度言った。何名かが呆気に取られるが、朱乃はそうはいかない。リアスに向けて本格的に堰を切ったように溜め込んだものを溢れさせた。

 

「ふざけないで!!わたくしと・・・・あの男の事は知っているでしょう!それを知っている貴女が!シオン君との事を詮索しないでいるわたくしだけじゃなくて、貴女より先にシオン君と知り合いになっている者の多いメンバーの前で何を言い出すの!?」

 

 朱乃の叫んだ内容はバラキエルとの確執を除けばこの場の全員が程度は違えど共感している事だった。シオンと何があったかを深く詮索はせず。暗部に踏み込まないままでリアスを信じているのは、あの夜に居合わせた者達全員で共通している事だ。だが、不満と言うより不安と言った方が正しいものが少しずつ積み重なる日々だったのも確かである。特にリアスより先にシオンと知り合っていた者達からしたら尚更だ。

 

「何をって、聞いたままよ?」

 

 だが、丸で意に介してはいない声色でリアスは返した。これには他も黙ってはいられない。

 

「リアス!貴女は姫島さんの言ってる事を理解してないのですかっ!?バラキエルさんとの事は私情にしても、貴女についてはどうなのですか!?」

 

「そうっすよ!俺達だって、貴女が本当に姉ヶ崎に何をしたのか聞き出したいのを堪えてたんだ!」

 

 そう、私情からの言い分への返しにしてもリアスの言い分は、自分の事を完全に棚に上げている。だが?

 

「それはこの状況を乗り切ったら幾らでも聞くわ?バラキエルさんと同じ言い方だけど、言いたい事と聞きたい事がこの場の全員の命より大事だと言うなら、好きなようにしなさい」

 

 反論の余地が無い、この場の全員の命より大事か?と問われたら即決出来る程ではないのだ。だからこそ朱乃もバラキエルに同行しながら此処に来たのだ。

 

「わかったわ、もしも私達堕天使組と姫島朱乃が?言われたようにバラキエルさんと合流したとして、この状況が好転するって説明してくれるならそうする。そうなってもまだ姫島朱乃がワガママ言うようなら?私達が引きずってでも連れてく、さあ?指示の理由を説明してもらえる?」

 

 レイナーレがリアスの案に賛同しつつ、説明を要求した。状況の好転が全てに優先、但し根拠を知らなくては従いようがない。流石に他を捨て石にして自分だけは逃げるとは言わないだろうとはしていたのだ。

 

「何を口を挟むの!?」

 

「だから、大人しくしなさいな?貴女の王の言い分は私情は二の次って事なんだし?そもそもにして、自分なりに多少は戦えると思ってはぐれの迎撃に出たら、成す術も無く半殺しにされて、そのままなら何をされたかわからないとこを助けてくれた子に数日後?何をしたかの真相を話さない結果として大事な眷属達に去られても良いなんて言い張るような事をやっちゃったなんて、私情優先の悪い例になった御方の提案なんだから一聴の価値はあるでしょ?」

 

 思い切り皮肉を効かせた言い分だ。確かにリアスは自分なりに戦えるハズと言う見解、悪く言えば私情を優先させてレイナーレが言う通りの流れに繋がる失敗をした。その結果がシオンとの縁の始まりだ。完全にリアスを見限ったワケではない朱乃の激情を多少は冷ます効果はあった。リアスは皆の熱がやや冷めたのを確認して語り始めた。

 

「当面の疑問、バラキエルさんが来た訳を知りたいけど?彼方は話す気は無い、けど少なくとも私達に手を貸してくれる以上は私達に害が及ぶのを想定している。判明してないし対処のしようが無い事ならせめてバラキエルさんには此方の防衛に熱を入れてもらうわ」

 

 バラキエルの目的は知らない、だが少なくとも朱乃や自分達を守る気にはなっているのを見て取った事だ。だが?

 

「あらあら、大したものね?要するにバラキエル様が此方を守るのに必死になってもらう為に身内を使うワケね♪♪私達を同行させるのは、近くに敵がいたとしたら?堕天使組が身内を手土産に泣きついたりしてるように見せかけるってとこね」

 

「ええ、解説してくれて手間が省けるわ」

 

 血も涙も無い計略を看破して当たり前に肯定するやり取りに朱乃以外は空恐ろしいものを感じていた。このやり取りには最早、迂闊に口を挟めなくなってしまった。

 

「次、私達はそれで良いとして?残った面子は、この後にどうするの?まさか、例えばシオン君達が帰ってくるまで待ってる気?直ぐに帰って来る保証は無いわよ?」

 

「いえ、帰って来てもらうわ」

 

「どうやってよ?転送系は不安だし、普通のスマホとかが通じないから戦闘中とかかもよ?」

 

 言うように、コカビエルとビナーが戦い始めてから此処に来る途中迄で何度かシオンに連絡は送ったのだが、電波が届かないと言うメッセージすら出ない、恐らくは特殊な結界内か交戦に入ったかと踏んでいた。レイナーレはシオンの契約者の正体は知らないが、シオンの仕事用携帯が生半可な魔力系の妨害程度では不備を起こさない『特注品』なのは説明されていたので、シオンが置かれた状況を推測していた。

 

 それに対して、リアスは自分の意図を話し始めた。

 

「簡単よ、このマンションはね?シオンの自室に近付くと魔力の主やその関係者に警鐘が響く仕様なのよ、シオン本人から明かされてない契約者やシオンに異常を感知してもらえるわ」

 

「待った。そのシオン君の部屋にはどう向かうの?私達がそっちに合流する前に留守中狙ったはぐれ共は二階にすら行けずにヘトヘトになって一旦外に出てきたんだけど?」

 

「ああ、それは心配無いわ・・・・私には、このマンション内の幻術は通用しないのよ」

 

「通用しない、何でよ?」

 

 尤もな疑念からの質問、リアスはこれを好機と見て予定していたやり取りを始めた。  

 

「では、証拠を見せるわね?私が二階に続く階段に案内するわ?それを確認したら私の計画通りに動いてもらう、それでどう?」

 

「ええ、構わないわ」

 

 そして、リアスは階段へのドアではなく数歩進んで通路の壁に向かって歩を進めた。その時、リアスの身体が壁を通り抜けた。

 

 残った者達は驚愕するが、リアスが後ろ歩きで戻って来て皆に声を掛ける。

 

「一緒に来なさい、この先に階段があるから」

 

 言われるままに歩を進めて壁に向かって歩き、身体がぶつかる事なく気付いたら階段の前だ。狐に摘ままれた気分だが、少なくともリアスには本人が言った通りマンション内の幻術は通用しないのが事実と立証されてしまった。

 

「では、改めて指示させてもらうわね?朱乃と堕天使組はバラキエルさんと合流、私は単身でシオンの部屋に行くわ、理由は二階以降は普通に歩くだけで負荷が掛かる仕様なのよ、特に幻術に掛かってしまう側にはね?アーシアは以前に私と一緒に訪ねたから知ってるけど、階段は各階毎に今の階と次までになってて、その次は別の場所にある。これは、この幻術の為の仕様ね、エレベーターは表向きは故障中だけど、其方は多分異次元に飛ばされるレベルの罠だらけでもあるわ、使うのは厳禁よ・・・・良い?ソーナ達が拘束したって連中みたいになりたくなければ残りは大人しくこの場で待機よ?」

 

 最早、言われるがままにする他は無かった。そして、特にレイナーレとシトリー眷属は気付いてしまったが、今のリアスは最も冷酷に徹し、鬼のように見えた時のシオンに近いものが見える姿だった為に誰もが言葉を失い、重い雰囲気となっていた。

 

 親友の豹変に戸惑うソーナ、それだけではなく自分の触れられたくない部分を?自分の事を棚に上げながら容赦なく侵しつつ良いようにされるしかなくなった朱乃。

 

 レイナーレすら想像を越えた振る舞いを見せられた事に腕を組みながら何やら思案し直していた。

 

 集まっている者達はリアスが二階への階段を進む中、どうにかリアスの豹変振りに対する打開策を見いだしたくなってしまった。最初に思い付くのは最近のリアスを一番知る存在・・・・同居しているアーシアに目を向けてしまうが、当人はギャスパーと二人で先程のリアスに対し恐怖心を抱いたのか震える手を握り合っていた。強引に問い詰めようにも二名の神器は戦闘力に劣る自分達にとっては頼みの綱と切り札を兼ねている為に精神的に不安定にする訳にはいかないので即座に一声を掛けるのは全員が思い留まった。

 

 しかし?二名からしたら、これは本心からではあるが、予め決めていた事の確認も兼ねていたのだ。

 

(・・・・こ、これで良いんですよね?)

 

(・・・・は、はひぃ・・・・)

 

 二人は目を合わせて以心伝心で取り敢えず打ち合わせ通りになった事の確認を終えた。

 

 コカビエルが訪ねて来る前、二人で現状と今後の相談をしていた際にリアスが何か恐ろしい事になるかもしれない、その際に周りが何か手掛かりを求めるとするならば、最初に目を向けるのはリアスと同居しているアーシアであろうと仮定したギャスパーからの案である。

 

 周りがアーシアに詮索するのを一旦躊躇わせる程度のものだが時間を使わせる訳にはいかない現実に対する手段である。そもそもアーシアが見て来たのは、イリナに語った最中に自分が内心思ってた事のみであり、周囲の認識するリアス像の延長でしかない・・・・恐らく、リアスが余程罪悪感を抱く事をしたらこうなると推測される範囲の姿でしかないのだ。尤もアーシアにしても、最初リアスの異変を目の当たりにした時に・・・・仮に悪夢に泣き叫ぶリアスがシオンとの秘密を洩らしていて、それを聞いたとしたら命を取られかねないと危惧はしたが、それを自分だけでなく付き合いが長い親友達にすら実施しかねない程のものを感じ、極端に言えば?この場には、あの夜のように暴走を始めてしまったリアスに即座に対応出来る者がいないと理解はしているので打ち合わせ等は関係無くなっていた。

 

 ギャスパーの方も今考えているのは、実はリアスがどうなっているか把握している事については、まだ直接会って確認出来てはいないのだが?恐らく自分は話に聞くシオンにサイラオーグ以上なのだと仮定していたが、半ば確信に近い域に達していた。だが、その事は口外してはならない・・・・仮に自分の仮説が当たっていたとしたら・・・・その時・・・・否、今やるべき事はそれについて怯えながら考える事ではないとして、言うべき事を述べた。

 

「あ、あああ・・の?あ、の?こ、これからどうするんですかぁぁ?」

 

 周りはギャスパーの震えながらの声色にハッとなって、現状に思いを馳せた。これは対人恐怖症を克服しきれてはいないギャスパーの素の部分からの声色である為に周りに不審は抱かれなかった。取り敢えずソーナが当面の行動について話を切り出した。

 

「釈然としませんが、今はリアスの提案通りにするとしましょう?姫島さんと堕天使組はバラキエルさんと合流・・・・残りは、この場で待機。仮に敵が入り込んだとしても?壁の向こうに私達が集まっているとは、直ぐ様に気付かれる可能性は多分少ないから時間は稼げるハズ・・・・これで良いですね?」

 

「はい、異議なしであります。では堕天使組とグレモリー眷属のワガママ女王はバラキエル様と合流!」

 

「な、何をするの!?」

 

 自分の両脇を掴むレイナーレ達に朱乃は抗議するが、先程の宣言通りに引きずっていくだけである。レイナーレ達とて単にシオンとの偽装作戦で時間を貰った間に何もしてなかったワケではない、密かに入手した『    』で、転生悪魔とは言え、朱乃クラスでは抗えない腕力を出していたのだった。




激流を制するは静水、リアス嬢は肝を据えたようで何よりだ。

バトルものとした場合はある意味正しいけど、原作と比べて怖過ぎるわ子供泣くぞ。
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