ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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木場君の行動理由は?な回でもある。


魔女達の意図

「おや?」

 

冥界某所。

 

セラフォルー・レヴィアタンは『侵入者』の予想より早く事態を察知した。

 

『秘蔵っ子のマンション』

 

リアスが意図したように、あのマンションの侵入者については魔力の主に感知はされたが、リアスには誤算が多すぎた。それについては許容範囲内としてセラフォルーは静観を決め込む。

 

「頑張るねぇ?少しは骨があるにしといたげるで良いのかなあ?」

 

セラフォルーはサーゼクスには悪くは思っていた。だがもう少し、待ってね♪♪そちらの妹ちゃんがもっと頑張らないとと結論付けている。

残念だが、リアスがどうなろうと仮に死のうともセラフォルーには知った事ではない。

 

そう、それだけリアスが犯した罪は重いのだ。

 

(ソーナちゃんの親友ってのは気になるけど、まだだよ、まだ甘いんだよ。これは君の為だけに思ってんじゃない、各勢力に存在する全ての?そう、世界に生きてる皆の為に思ってんの、今のままでもだけど中途半端に終わったら、それこそ取り返しが着かないんだ。だから私は君がどうなろうと放っとくしかない、昔は楽しかったけど?)

 

サーゼクスとの妹自慢喧嘩でヴェネラナ・グレモリーに、それが魔王のやる事ですか!?と叱られたのも良い思い出だ。だが、それもリアスが犯した罪を庇うには程遠い。今は事態を好転させるキッカケに成り得る展開を敢えて見逃す事にした。

 

(さあ、正念場の一つ目だよん♪♪しっかりやって根性見せるんだよお?)

 

その内にセラフォルーの身体からは並の悪魔程度なら近付いただけで命が奪われかねない凶悪な魔力が溢れだし、出された声は普段の彼女からは想像もつかない、地獄の底から溢れ出したような声色であった。

 

(出来ないなら死んじゃいな。そうさ!死んじゃいなよ?リアス・グレモリー!)

 

正に魔王に相応しい形相、今のセラフォルーを魔王少女等揶揄できる存在はいなかった。

 

 

 

・・・・・・・・・・。 

 

 

 

旧魔王派の一団から出てきたバルパーと向き合う、シオン達は彼の意図を掴みかねていた。だが、状況を動かす為に踏み出す者がいた。

 

「御託はここまでだよバルパー・ガリレィ?とにかく死んでもらう!」

 

「ほう、私を殺す前に聞きたい事があるのではないのか・・ねっ!?」

 

言い終わる前に木場の造り出した魔剣での斬撃がバルパーを真っ二つにしていた。唖然とする旧魔王派の真っ只中に飛び込む事になった木場はそのまま周りにいた者達を撫で斬りにし始めた。一方的虐殺とも映る戦い振りだが木場にはなりふり構わずにいる理由が出来ていた。

 

そう、コイツらを生かしては置けない・・・・自分の私怨もあるが、バルパーと組んでいたからにはコイツらもシオンの何かを知っているかもしれない、だから生かしてはおけない。下手に刺激してはいけないと推測は出来ていた。返り血に染まりながら木場は思っていた。

 

 

生きたいと思った。

 

 

突然の悪夢から逃げ出した自分を救ってくれたリアス・グレモリー。

 

そのリアスが心から欲したシオン、自分が把握していない事に何があるかまだ知らない、シオンとは精々普段の仕事と戦闘訓練に付き合ってもらうくらいしか親交は無い、だが一つ確かな事がある。それこそが聖剣への私怨以外に自分が行動を始めた理由。

 

(あの日、部長が暴走したあの夜、僕はシオン君に部長を止めてくれと頼んだ!シオン君は、それに応えて部長を出来るだけ無事に止めようとしてくれた!その結果が今のシオン君だってくらいは僕にもわかる!だから、部長とシオン君に害を成す者は僕が止めるくらいはやる!)

 

木場は自分なりに決めた事、恩人達を守る事だけは成すべく剣を振るう、そして理解した・・・・バルパーが持っていたものが自分に力をくれた。嘗ての仲間達が奪われた『聖剣の因子』に残った意志が木場に応えた。敢えて修羅に徹した木場の覚悟に。

 

『禁手』

 

いつの間にか木場が握っていたのは聖と魔が合わさった剣であった。現実を受け入れられない旧魔王派ではあるが、その思考は中断されてしまった。木場に目を取られた者達は他に殲滅され始めたのだ。布陣の中央=約三分の一が瞬く間に殲滅され、残った側が恐怖のあまりに遠距離から遮二無二と魔力弾を放つもロイガンの裂け目には効果が無いのだ。

 

(綺麗ね・・・・)

 

凄惨な光景、傍目には決して誉められたものではない。

 

だが、自分なりに覚悟を決めた騎士とその心意気を察して助力する若い戦士達、いつの間にか木場と連繋するサイラオーグとシオンは何故か残った側から現れたケルベロス一体ずつを、前者が渾身の右ストレートで身体を、後者が3つの頭をほぼ同時に放たれた拳で粉砕して歯牙にも掛けず瞬殺してしまう。

 

ロイガンはその光景を綺麗と思った。ただ友や仲間、その心意気を組んで戦うのみ・・・・後ろめたい事に手を染めた自分とは違う。赤龍帝に何かがある予感が想像以上だった事に関心が行ってしまいガチな自分との落差。

 

そう、自分にはわかる・・・・当面は良くても後にはバルパーをアッサリ始末した弊害が出るだろう事が。味方側を見ながら内一名の表情で気付いていた。

 

(赤龍帝シオン君ね・・・・どうやら、私と同じ事を考えられてるようね、あの歳で・・・・嫌な女よね私、都合良い相手を見つけてしまったからってねえ?)

 

ロイガンはこの場に参戦したキッカケを思い浮かべた。

 

今日はロイガン自らが『依頼』の担当であった。

 

見守る先にあるのは駒王町とは離れた場にあるとある一軒家であった。

 

休日の昼ともなり、高校生程の年である子供がいる年齢の夫婦が昼食の席に付いているありふれた一景である。

 

夫婦は時折、離れた場の条件の良い高校の推薦枠を得て進学して一人暮らしを始めた為に家には居ない息子の席を見て寂しくもなるが、当人が学費から将来を考えた上だから異論は無い。向こうでそれなりにやっているらしいが、幼少の頃にご近所のやんちゃ娘に振り回されたせいで身に付けた社交性が妙な方向に作用しては貧乏くじ引く傾向がある息子には心配事は尽きない・・・・だが、連休には時折帰って来てくれるから、それを楽しみにして自分達もしっかりやっていこうとする気になれる。

 

『何回も辛い思いをして漸く授かった息子』の為にと。

 

その内、現れたので直接取り抑えた不審者の転送を遠回りに終えた女性は嘆息していた。人間界では『頭にあるもの』は消した姿で過ごさざるを得ないのはさておき、特殊な能力は足が付くからフィジカル面がモノを言う範囲で戦うのが原則のようになっているのだ。

 

(フィジカル面・・・・か)

 

ロイガンは羨ましかった。

 

サイラオーグ・バアルのように、持つものが身体しかないが故にそれを鍛えるしかない道を歩んで若手最強となり、賛否あれど将来を有望視されるまでになった者。

 

噂の赤龍帝のように、才能頼みに縁がない戦い振りと慈善事業のような事を続けて社会的地位には関心が無いと推測される生き方を続ける者。

 

惨めだった。

 

使っている物の恩恵で今の立ち位置にいる自分と若き新星と成り得る者達との落差が悔しくて仕方がなかった。

 

そんな折りに持ち掛けられた仕事を続けているのが今の現状だ。

 

自分の眷属を含めて『遊学』とでも言う形で外界に赴く、又は噂の赤龍帝の身辺を探る為の行為。そうして当人がどう考えているかはさておき・・『赤龍帝の両親』を守るのが今の自分。

 

(リアス・グレモリーも生い立ちから考えられる心境が、こんななのかしらねえ?それに赤龍帝を眷属にしちゃった経緯がバレたらそれはヒドい事になりそうな感じなのは想像に難しくはない・・・・私のアレのように)

 

そして、例の話を思い浮かべた。

 

別に本決まりではないが、自分の個人的嗜好が根拠にされた話である。正直、友好的と言うより魔王の身内の醜聞を期待しての話な疑惑の方が強い。自分が感じているのは其方だ。

 

(会いに、行っちゃおうかしらねぇ?例の赤龍帝君・・・・に、今は騒ぎの最中だって聞くし、都合良すぎに思われるかもしれないけど・・・・蒔かぬ芽は生えぬって人間界のことわざも一理あるわ・・・・正直、アレがバレてややこしくなるならなるで、都合良い相手が良いし)

 

女性の考えと内に抱えるものは、渦中の中心となっている少年の周りの女性達の内何名かと酷似していたが、それは知る由もない。

 

そして、どこか投げやりであった表情を引き締め。その拍子に隠していたモノが頭部に現れ始めたのを慌てて引っ込めた。

 

(良し!直接対面するかはわからないけど、敢えて行くわ!)

 

こうして、後の事は同行した者達に任せて人間界に置いては然り気無く大規模の大戦の火種が生じ掛けている場に向かった。少なくとも、彼女に幸いだったのはビナーが送ったディオドラの遺体の件で波紋が拡がり始める前だった事。駒王町にいる者達にとって、特にシンパシーが生じる者達に波風を立たせるか否かになる存在の女性悪魔であるロイガンは渦中に飛び込んだのだ。

 

 

回想から戻り、再び自分の打算的な部分に嘆息しながらやる事はやるロイガンの闇はまだ晴れない、だが何もしないよりは良かった。

 

 




ただ周りが変わるのを待つだけよりはマシな展開だなロイガン女史は。

お前、場合によってはとんでもない事する気だったろ?

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