(気まずい・・・・)
マンションの外でバラキエルと合流した側は、皆内心でそう思っていた。
姫島朱乃の生い立ちは知っている。堕天使の父と人間の母との間に生まれた娘、幸せな家庭を築いてはいたのだが・・・・姫島家のような家系は異分子等には偏見の塊な思考が必然みたいな輩が多い、そこから端を発した事件の末バラキエルの留守を狙った者達が姫島朱乃の母を殺害。バラキエルは妻が自分の留守中に殺害される悲劇に見舞われたと聞いた。
あくまでバラキエルは『間に合わなかった』のだ。見殺しにした訳ではない。だが、残された朱乃は父バラキエルに責任を押し付けなければ心が壊れてしまったのだろう。その日から放浪の果てにリアス・グレモリーの眷属となった朱乃だが、未だに父を許せてはいない。更に今の朱乃は親友リアスの豹変により心の寄り処がほぼ失われている状況。
しかし、レイナーレからしたら、関心が向くのはバラキエルの態度であった。事情をレイナーレから聞いたバラキエルは目を丸くしたが、それを意に介さず娘と自分達に背を背けて周囲を警戒しているのみである。確執とバラキエルの性格を考えて娘と話くらいしたいハズ、楽観的であるがリアスとの仲が決裂寄りな現状は皮肉な好機ではないのか?
(て言うか、私が介入は駄目よね?私は神器を回収したりな仕事をしてた。つまり『アザゼル総督』絡みな部署の堕天使、それが問題。どこまで把握して考えているかは知らないけど?姫島母娘が襲撃された時にバラキエル様が留守だったのは、アザゼル総督から仕事で召集されたからだった。キッカケに噛んでいる者の下っ端が仲介等はすんなりは行かない・・・・『仲介』?何で私がそんな事を?贅沢言ってんじゃないわよとか言えばマシなんだけど、自分を責めるばかりで敢えて娘の非難を受け、アザゼル総督にも恨み言は言わないでいる父が生きているし、歩み寄って話せば多少は改善の余地はある・・・・時間さえ掛ければ決して和解出来ないワケではないハズ、それなのにと言いたかったけど?その流れだと、上手くは行っても多少拗れてからになるわよねぇ・・・・それは、今は論外!バラキエル様の態度からして何かは知らないが重大な事が絡んでいる。今拗れて隙が出来て?そこを突かれては最悪だわ!とにかくバラキエル様に身体を張ってもらうしか無い、立ってるものは親でも使えにしとく)
レイナーレなりに結論付けた。だが?
「ヒャハハハハハハハハハッ!さ~ぞや、幸せでしょうねぇ?バラキエル様ぁ?過去の清算として娘さんの前で良い格好が出来る機会が掴めてるのだからあ?」
現れたのは、フリード・・・・アーシアを陥れようとした者達に所属していたイカれた男だが、シトリー眷属の調査とシオンの勘で陰謀が未然に防がれたが為に身を隠していたハズな存在。レイナーレからしたら当たりを引かせてもらえないままならばこうなったのではと思う存在、自分達がシオンのマンションに向かったのを目撃して襲撃を掛けるべく所属不明の兵達を率いて来たが、流石にバラキエルには到底敵わずにボロボロにされながら、バラキエルの過去を煽りまくる。
(・・・・怪しい、時間を稼いでいる?いや、煽って隙を生じさせようとしている?)
最初から、バラキエルを煽りに煽っている。既にバラキエルによりフリード以外は大半が半死半生のダメージを負わされて無力化されている。フリードも何故か傷が全快を二度繰り返して尚も挑んで来ては叩きのめされながらバラキエルを煽る。その光景にバラキエルも腸を煮え繰り返しながら平静を保つように努めている。
「ヒャハハハ!例えば?ディオドラ・アスタロトみたいな事をやって、人間の女をウマウマといただいた疑惑掛けられた末の悲劇はさぞや御愁傷様!どうです?つまらない仕事やってないで、そいつらみたいのを一掃したくはあ~りませんですかぁ?」
そう、フリードの言うようにバラキエルは悪辣な方法で亡き妻を自分の女にしたと疑惑を掛けられたのが悲劇の始まり、憤怒の形相を浮かべるも必死に堪えるバラキエルであったのだが?
「黙りなさいよ・・・・」
バラキエルの背後から歩み寄って来たのは異様な気を漂わせ、バラキエルに負けない程の憤怒の表情を浮かべた朱乃であった。様子がおかしいのでバラキエルから戦いは自分達に任せて後方で守りを固めつつ周囲を警戒しているよう言われて、指示に従っていたが?フリードの言葉に我を忘れた朱乃から発せられる雷光は彼女本来の力、自分が今までに敢えて使わずにいた力だ。その力の圧力にはレイナーレ達は止める事が出来なかった。
「母様は・・・・母様は、あのディオドラのようなやり方に騙されてなんかいない、そうよ・・私の・・・・私の、と・・・・う、様は・・・・」
朱乃は、思わずに本音を漏らした。そう、本心では理解して、認めてはいた。両親が本当に愛し合った末に自分が生まれたのだと、それを汚すような発言をしたこの下衆な男だけは許せない、この男だけは自分が・・と、逆鱗を触れられた朱乃は尚も歩を進めて来た。
「あ、朱乃・・・・」
バラキエルは聞いた。ぎこちなくも娘が自分を『父様』と呼んでくれた事を・・・・万感の思いがよぎった時である。
「隙ありぃぃ!!」
フリードはバラキエルの気が逸れたのを見逃さなかった。隠し持っていた『ソレ』をバラキエルに投げつけた。予定が多少変わったが、これこそがアザゼルが看破した事、バラキエルの弱みである娘との確執から生じる隙を突ける可能性狙いである。
「~~~っ!!?」
バラキエルに投げつけられた星形の紋章らしきものから異様な魔力が立ち上った。そして、バラキエルの瞳から光が消える。否、身体全体から生気が消え失せていた。
「と、と・・・・う、様?」
父の異変に呆然となる朱乃、そしてレイナーレはフリードが使ったものの正体を看破した。
「これ、は・・・・記述にある堕天使陣営の負の遺産!!」
「イエス!イエス!イエ~~ス!原理は不明で名前も付いてないんだが、大戦の負の遺産の手前に認定された鬼畜な代物さね!仮にもグレモリー眷属なら知ってんでしょお?『ロマンス』の山場に噛んだ代物だしねえ?」
「ま、まさか!?」
朱乃は事態に気付いて愕然とした。
嘗て新旧魔王派の争いの中で敵対していたサーゼクス・ルシファーとグレイフィア・ルキフグス・・・・戦後に結ばれた二名の逸話は大戦中のものを含めて『ロマンス』として語られているが、その中で重大な山場に数えられている場に数えられる一因である。
『堕天使陣営からの横流し品』
フリードが言うように詳細不明ではあるが、簡単に言えば自我を失わせて他者の思い通りにしてしまうものだが、恐るべき事に最強の魔王サーゼクスすら自力で破れずに仕掛けた側に操られた・・・・皮肉な事に、どのような指示を出したか諸説あるがサーゼクスの暴走で真っ先に使った者達は皆殺しにされた。後にも旧魔王派の過激派にのみ被害を出す羽目になり、更にサーゼクスを正気に戻したのは、あろうことか旧魔王派にいたグレイフィアであり、戦後に二名が結ばれる一因になると言う本末転倒の極み振りは未だに語り草。だが、喜劇にされる一方でサーゼクスすら自力で破れなかった品の驚異も広まっていたのだ。堕天使陣営ではそれらしきものは扱いの難しさと出してしまった結果により厳重に管理されたハズのもの・・・・。
「わ、私・・・・は」
「ヒャハハハ!事態を察しましたかぁ?感謝しますよぉ?流石に使う隙が無かったから本気で困ってたら、あなたが出張って来て、正に隙ありぃ!だったんです。ヒャハハハハハハ!さあさあ、てなワケで?堕天使陣営屈指の武人様は俺様の操り人形となり華麗なるデビっ!!!」
フリードが勝ち誇ると同時に上空から無数の魔力弾が降り注いでフリードの身体を穴だらけにした。倒れ付したフリードは悲鳴をあげる前に魔力弾を放った者に着地様に喉を思い切り踏み付けられて声すらまともにあげられなくなっていた。
「全く・・・・どこも千客万来ですね」
「シオン・・・・君」
空から降ってきたように飛来した主の名を唖然としながら発した朱乃であった。
最後のシオンの台詞は移動手段についてのネタバレ防止で本来のものからは変更してある。真相は後のなんとやらにしてくれ。
次回をお楽しみに♪♪(い、言わないぞ・・・・何で今回は普通にやってんだ?なんて・・・・)