ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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 すんなりとは行かない。

 朱乃さん絡みもハードモード。




 シオンがバラキエルに向き合い始めた頃であった。

 

「全く、念入りな事だぜ」

 

 人間界に到着した堕天使総督アザゼルは、現地の者達と合流するか集めて指揮下に入れるかをしながら数を揃えつつ自分なりにアレの捜索を開始したバラキエルが娘を始めとした面子を守りながら情報を待っていると聞き、とにかくシオンのマンションの周囲に散在する形で控えた敵小隊を次々としらみ潰しにしていた。肩書きに相応しい力の持ち主であるので、潰された部隊の者達は気付いた時はやられている事に心底恐怖しながら意識を失うか、死あるのみであった。

 

 そして、遠目が効く者達からの報告により、恐れていた通り、バラキエルが娘絡みで隙を突かれたと歯噛みをしたが、その後の事には顔をしかめた。

 

 

 

 

 

 つい数時間前の事だった。

 

 

 

 

 

「何だとっ!?『アレ』が人間界に!!しかもコカビエルと組んでる疑惑特濃な奴等の元に流れただとっ!?」

 

 堕天使総督のアザゼルは全力の怒鳴り声をあげていた。

 

 『アレ』とは、堕天使達の一部にしか残っているのを知られてない名前も無いモノ。

 

『大戦の負の遺産の手前に認定されているモノ』

 

 アレが猛威を振るってしまっては、冷戦手前の状態から一気に火種が広がり兼ねない。

 

「は、はい・・・・ですが総督?既に下手人達の居所が判明して『バラキエル様』が事態収拾の為に人間界に至急で派遣されたようで、私はその事も報告に来たのです」

 

 報告に来た部下の言葉にアザゼルは一先ずは安堵した。信頼出来る友人であり実力者が既に事態収拾に向かっていただけでも自分の救いにはなる。

 

「そうか、それなら・・・・って、待て!ちょっと待てよ!?話が上手過ぎだな、アレが無くなるくらいな事態にしたら流れ、が・・・・人間界のどの辺りだ?」

 

「『日本の駒王町付近』です」

 

 それを聞いたアザゼルは『流れ』を考えて急速に下手人達の狙いが推測出来てきた・・・・アレをどう使うかもそうだが?流れた先は今は騒ぎの渦中にある場で、そこにバラキエルが・・・・。

 

「そう言う事かよっ!ゲス共めっ!説明は無事に終わった後だ!今やってる仕事はお前に任せる!俺はバラキエルと合流するぞ!」

 

 アザゼルは全てを読めたワケではないがバラキエルが現地に行った事が下手人達の思惑通りな流れになるのだと看破した。とにかく、急がなければならない、手遅れになる前に事態を収めなければならないのだ。

 

 

 

 

 

 

 やはり、考えた通りに計画を実行する時期を念入りに考えて、発覚した際にはバラキエルが差し向けられる辺りを選んだ成果であろう、冷静に相手の立場となって考えた場合は自分が下手人ならばやはりそうするだろうし、してやったりとほくそ笑むだろうから腹立たしくなりつつも誉めるべきか。

 

 但し、持ち出されたものを早目に使われたと言う部分にアザゼルは顔をしかめた。そして、もう一つ重要な事は?

 

「噂の赤龍帝が、アレにやられたバラキエルに何かを試みている・・・・か、決めた!このまま赤龍帝君の住み処に不審者を近付けないようにしろ!サイラオーグ・バアルを始めとしたグレモリー眷属の味方らしき奴等は除いてだぞ!」

 

 指示を受けて、その場に集まった堕天使達は各地に陣取った味方にそう伝えるべく散っていった。アザゼルは下手にシオンに近付いて彼の邪魔をするのは避けた。下手したらバラキエルの精神が破壊されかねない事態でもある。今は友人の安全が先決と踏んだのだった。

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 姫島朱乃は、されるがままの後に荘厳でありながら無機質な気に包まれて半ば意識を失っていた。

 

 何かに導かれるように、引き込まれてしまうように行き着いた先は、一条の光りも刺さないような深淵。

 

 深い、余りにも深い闇の深層に永遠とも一瞬とも取れる時間の中で必死に手を伸ばしながら意識を覚醒させようとしていた。この先に何があるのかを理解しつつも必死に求める反面、拒み続けた。そして朱乃は目覚めた・・・・目覚めてしまった。

 

 朱乃は突如として目の前に広がった光景に絶句していた。

 

 辿り着いたのは小さな平屋建ての家の近くだった。  

 

 昔の日本風の家だ・・・・周囲に広がるのは、自分の幼い頃の記憶そのものの光景だった。

 

(・・・・嫌・・・・見たく・・ない、見たくない!だって、あの家の中に今ある光景は!)

 

『見たくないなら、大人しく待ってて下さい』

 

 朱乃は後ろを振り向き、声を掛けた相手を確認した。先程に自分を強引にあの男の身体に押し付けた後輩である。

 

「シオン君?これは、何・・・・何なの!?何故、私だけじゃなくて貴方までがここにいるの?」

 

 朱乃は狂乱手前の形相で涙を流しながらシオンに問う。その形相を気にもせずに答える。

 

「ここはバラキエルさんの夢の中です」

 

「夢?」

 

「バラキエルさんに掛けられた術式は、先ずは相手の深層心理に侵食し、大事な思い出の世界に自我を閉じ込めてしまうものです。その上で何もかもを書き換えて、術を掛けた相手の思いのままにしてしまう為のもの・・・・悪魔だろうと、堕天使だろうと生物には心があります。その心の底の底を揺さぶり、染めてしまえば?どんな強者も少なくとも脆くはなる。サーゼクス・ルシファー様のような正攻法で敵わない相手への対策としては正解に近いですね、現に裏目に出たとは言え場合によっては、大戦中から今頃もサーゼクス様は旧魔王派の操り人形のままだったと冥界のロマンスで語られてます」

 

 そう、朱乃も知る冥界のロマンスの中でさえ脅威として語られている名も無き禁忌の術式を兼ねた道具・・・・自分が隙を作ったのが原因で、それにバラキエルは・・・・。

 

『父様!』

 

「え?」

 

 朱乃は家から聞こえた声に思考を中断した。

 

 家から出て来たのは、幼い日の朱乃である。その背後からは亡き母・・・・そして、二人が出迎えているのは・・・・。

 

『おぉ、朱乃!出迎えに来てくれたか』

 

 家を留守にする事が多かったバラキエル、そんなバラキエルが家に帰って来てくれる瞬間を誰よりも心待ちにしていたのは・・・・バラキエルに抱き上げられた幼い日の自分、そして・・・・そんな二名に笑顔で近付く亡き母。

 

 家族だった。両親と、その娘・・・・ただそれだけで、幸せな家族だった。

 

「・・・・め、て・・・・っ」

 

 いつの間にか膝から崩れ落ちていた朱乃は消え入りそうな声を漏らした・・・・やがて?

 

「止めて! 止めて! 止めて! 止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて! 止めて!止めて!止めて!止めて!止めて! 止めて!止めて!止めて! 止めて!止めて!止めて!止めて! 止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!止めて!

 

 狂乱したように叫び、いつしか身体中から雷光を・・・・自分が忌み嫌った力を出しながらこんな光景を見せる状況に引き込んだ相手に飛び掛かり、両手で首を絞めながら叫び続けた。

 

「私に、これを見せてるのは貴方!!今すぐ、今すぐに止めなさい!私にこんなものを見せないで!今すぐに私の過去を見せるのは止めなさい!止めなさい、よおぉぉっ!」

 

 正しく、鬼の形相のまま涙を流し、身体中から雷光を全力で放ち続けながら自分の首を締め付けて叫び続ける朱乃にされるがままなシオンだった。




 過去を見せると言う事は甘くはないのだ。
 
 ま、まあ場合によっては最悪だしな。

↑(言いたい事は多々あるが、朱乃に気圧されてます)
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