ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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 何気無い部分から感じれるものは?



踏み入れるか否か

 どれだけ時間が経ったのだろう?

 

 衝動のままに忌み嫌った力を出しながら自分をこの場に引き込んだ後輩の首を絞めながら朱乃は泣き喚き続けた。いつしか、声すら上げられない程に息が続かなくなって、力無く崩れ落ちた。

 

「~~っ」

 

 必死に呼吸を整えて、見上げた先にいた後輩は何事も無かったように自分を見下ろしていた。絶対的な力の差を痛感するが、尚も朱乃は彼にありったけの激情を込めた視線を向け続けた。だが、シオンの目には一切の情も無かった。癇癪を起こした子供をあるがままに見るような冷たさだ。そして、シオンは漸く口を開いた。

 

「自分で大人しく出来ないなら、動けないようにさせてもらうし、それがいやなら黙って着いて来てもらいます。抵抗しても無駄だって理解はしたでしょう?」

 

「・・・・っ!まさか、それをわからせる為に?」

 

 そう、自分に言う事を聞く他はないと理解させる為にされるがままにされたのだと朱乃は理解した。あまりに底冷えするような意図に涙すら凍らされるような心境にされた。

 

「理解したなら、周りを見たらどうです?『誰も来ない』でしょう」

 

 言われるがままにしてしまった朱乃は、ある事に気付いた。確かに『誰も来ない』・・・・自分があれだけ力を使い、叫び続けたのに・・自分が知る限り、先程に目にした母やあの男だけでも異常を感知して此方に来るハズなのに。

 

「ここはバラキエルさんの夢の中で、思い出の中です。俺達は本来存在しない要素だから、バラキエルさん達に向き合っても気にされはしない、塵や埃みたいにすら見てもらえない、それ以下です」

 

『塵や埃にすら』

 

(・・・・私が・・・・あの男にとって塵や埃にすら?私が・・・・塵や埃以下?あの男にとって?『  』に、とって・・・・塵や・・・・埃・・・・以下っ)

 

「じゃ」

 

「待ちなさい!」

 

 背を向けた後輩、その瞬間に朱乃は全力で叫んだ。構わずにシオンは歩を進める。だが、朱乃はただ呼び止めるだけではなく、先程迄で立ち上がれない程に消耗した身体を鞭打つようにして、必死に地面に這いながら追い縋る。

 

「私を・・・・連れて、行きなさい!連れて行きなさい!」

 

『塵や埃以下』

 

 事情を話さずに去るよりも、自分がバラキエルにとって塵や埃以下と言い張られた事が許せない朱乃は必死にシオンを這い進みながら追った。夢の中での木々のざわめきや小鳥達の囀りしか朱乃に降るものは無かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、シオンを力業?で送り出したサイラオーグの側は一旦は終わった戦闘の後処理と次にどうするかを検討していた。

 

 この中で、木場佑人は、達成感も何も無い事に気付いていた。

 

 ただ次に成すべき事を考えていた。

 

 自分の復讐は事も無げに終わったのだと。

 

 バルパー・ガリレイをいとも簡単に斬り捨てて私怨は晴らし、残った者達が所持していた聖剣は全て回収した。

 

 どうやら、サイラオーグの側に集まった旧魔王派に属するかそれ寄りな者達は分かれた聖剣を一つにして、その過程から生じる余波でこの辺りを崩壊させる算段を考えていたらしい、だが?想定を遥かに越える戦力が集まっていた事からバルパーが瞬殺される等の予想外が幾つも重なって、部隊は壊滅してしまい、投降した者達は一纏めにされた有り様だ。

 

 木場は身の上からの復讐よりも、リアス・グレモリーの騎士としての立場を捨てきれなかった。

 

 復讐よりもリアスを救った代償だろう何かに蝕まれていると推測される同級生への思いを優先させた。その過程で力を貸してくれた同胞達の為にもいつの間にか歩み始めた道を行こうと誓った。

 

 だが、問題が起きてもいた。

 

 捕虜となった者達から神の不在を告げられたゼノヴィアとイリナは呆然となっていた。皮肉な事に木場の新たな力である『聖魔剣』が証拠だと告げられた。本来あるべき存在が失われて聖と魔のバランスが崩れたからこその産物、先程にノリノリでシオンを送り出す手段を提案したイリナも神の不在をシオンが知っているハズだと言われて、大いに揺さぶられてしまったのだ。

 

 兎に角、次にどうするかを考えていた時であった。

 

「♪♪~~♪♪」

 

 イングヴィルドが歌っていた。

 

 シオンが向かった場に、自分が一年も滞在している場に向かって。

 

「歌か・・・・日本のアニメとやらのだな?シオンの為に歌っているのか?」

 

 何故かわかってしまうイザベラがイングヴィルドに敢えて問うていた。

 

「うん、シオンが何か大変な事になってそうだから・・・・シオンはね?色々・・・・青い猫さんのアニメのディー・ぶぃ?デぃ~?とか、私の為に色々と持って来てくれたの・・・・シオンね、まだ私や他に言えない事がいっぱいあるけど、それよりもやれなきゃならない事も多いから、私なりに何かをやってあげたいの」

 

「そうだな、そうだ・・・・」

 

 二名を離れた場から見ていた小猫は立ち入るまいとしていた。あの二名は既に踏み入れているのだと理解していた。理解出来ないし、今の自分では無理な何かにと、今後を検討するサイラオーグとロイガンにロスヴァイセも同じ心境であった。




 イングヴィルド嬢の歌っているのはイメージで自由に想像してくれ。

 歌かあ・・・・俺は季節と場所が作中の舞台にはしっくり来るのが来ないかなあ。
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