ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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慌ただしい詩音君の日々はついに……。

ご察しかもしれませんが、リアスの原作での異名はまだですが、流れとサブタイではこの辺りが切っ掛けになるか否かな段階。


始まりへの序曲

部活も終わり、大半が帰宅する時間の生徒会室にアーシアを連れて来たが、一言でこれだ。

 

『何が楽しいんだよ!?』

 

俺が何をした?

 

ただ安全の為にアーシアを連れて来たんだ……。

 

そうしたら、集まった生徒会……正しくは契約者の妹な会長とその眷族の連中と来たら?

 

一部が何故か真っ青になり、若しくは目を丸くしてるか、暖かい目を向けて来やがった!……例の声変わりした青狸みたいのじゃないのをだよ……尤も、流石に事情を話すまではだが。

 

「事情はわかりました。アーシア・アルジェント?貴女は私達の監視下に入って頂きます」

 

会長、ソーナ・シトリーが本題を切り出す。流石に一切の情けは無かった。

 

……最も『アーシアが助けた悪魔の正体』を調べてくれていたのは幸いだった。

 

「言いたい事はさておき?姉ヶ崎君の目撃した事を照らし合わせれば…『善意』であろうと?貴女は秘匿すべき力を人目につく場で堂々と使ってしまった……これがどう言う事か理解できないのならば、言われたように『アホ』程度では済まされません、貴女が向かおうとした『教会』についても『貴女が助けた悪魔』も疑う事をしようとしない、無垢な心が全てを滅ぼす毒となる事も有り得ると学ぶ事をしなさい、さもなければ貴女は『今の』この街においても普通の社会においても、ある意味で最大の悲劇を引き起こす切っ掛けになる事も有り得ます……ここに連れて来られる前に彼に言い聞かせられたように……」

 

泣きそうになりながらもアーシアは会長の言葉を真摯に聞いていた。気の毒そうな目がシトリー眷族の皆からアーシアに向けられていた。流石に『騙されていた』事を知らされた直後なのだってとこか。

 

「では、会長?後はお願いします」

 

「あ、詩音さん…っ」

 

「何だ?会長から今後の説明聞くのが先だろ」

 

「……はい」

 

 

 

 

 

 

無機質に退室する詩音にすがろうとして突き放され、本格的に泣きそうになるアーシアには憐れむような気遣うような、又は何か琴線に触れられた目が向けられていた。

 

「残念だったな、あいつは多忙なんだよ…けど、わざわざ連れて来てくれたんだから悪く思われてはねえハズだぜ?」

 

生徒会唯一の男子が励ますが、どうも割り切れてはいない……が?

 

『ヤバ、正統派過ぎる』

 

嗚呼……肉食系からお姉様系等々も良いが、こんな正統派がやたら新鮮な今日この頃……最も、この少女の関心が誰に向かっているかは明らかだが。

 

……自分なりの善意が唾棄すべき輩に付け入れられた証拠となる資料を見てしまった。信じられなかったアーシアだが、詩音から自分達がお前を騙しているように見えるのか?と言われて少なくとも考えて、後に自分なりに確かめようとする気にはなっていた。

 

とにかく、改めて今後を見当しようとした時であった。

 

「会長!」

 

「え?」

 

何故か、慌ただしくUターンして来た詩音に皆は目を丸くした。

 

「突然だが、一般生徒と教師の状況から聞かせろ!時間からして大半は帰宅してるな!?」

 

「え?ええ…」

 

「とにかく、学園内で何か異常な気が出始めてるぞ!結界を張れ!帰宅してない生徒と残ってる教師がいたら直ぐに退避させろ!」

 

アーシアは状況が理解出来なかったが、シオンの事を知るシトリー眷族は直ぐ様に行動を開始した。それが『彼女』の救いでもあった。

 

そして……。

 

「!?始まった……っ」

 

「お、おい何だか、オカ研の部室から光の柱?」

 

「あ、あの魔力は……『リアス』……いえ、それにしては強すぎます」

 

 

 

 

 

 

オカルト研究部の部室。

 

光の発生源の周囲には、彼女の眷族が弾き飛ばされていた。禍々しくも神々しい光を放つのは部長である『リアス・グレモリー』であったのだ。

 

剣を杖代わりに立ち上がるのは彼女の騎士である木場祐斗であるが、目の前の現実が受け入れられなかった……身内への情の深さでは彼女に及ぶ者は恐らく存在しない……その彼女が何故?いや、予兆はあった。先日の一件で死にかけたリアスは自分を救ってくれた赤い鎧の戦士に並々ならぬ執着を見せた……リアスの生い立ちを知る眷属達はリアスの光明になるかもしれないとして、当人について調べて最有力な候補を調べあげた。

 

『姉ヶ崎詩音』

 

入学間もない時期に生徒会の予備人員となった二年男子……男子にしては細く、あどけなさを残す女性と見間違うような外見の少年、リアスが推測したように自分とこの場にいない僧侶の中間に近い。

 

最近、同級生と付き合い出した事……何よりシトリー眷族と懇意にしている事、調べあげた資料に何が記されてたかは知らない……が、顔色と目の色を変えて行くリアスから何か恐ろしい気が漂い始めて……気付いたらこの有り様である。

 

「部長!正気に戻って下さい!僕がわかりますか!?」

 

「ええ…わかっているわ…どきなさい……私は、彼を……」

 

虚ろな目のままケガの癒えてない身体で進もうとするリアス……このまま行かせたらどのような惨事になるかわからない愚か者はいない、ここは力づくでも止めるしかない。

 

「邪魔をするの……?そう、貴方も……私を……っ!」

 

何を思ったか、リアスは掌に収束された魔力を祐斗に放った。

 

凄まじい圧力に動く事も出来ない……だが、せめて自分を葬った事で少しでもリアスが正気に戻ってくれればと祐斗は目を逸らさずにいた。

 

が、魔力弾は祐斗に届かなかった。祐斗の前には赤い鎧を纏った戦士が立ちはだかり、両手で魔力弾を受け止めて消滅させていたのだ。魔力弾を放ったリアスは闇に染まった思考で目の前に現れた赤い鎧の戦士を見て歪んだ笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

 

 

来てくれた……数日前、目を奪われた『赤』を持つものがと笑みが浮かんだ。

 

『手に入れる』

 

『私は、彼を自力で手に入れるの!』

 

リアスは身体中から溢れる力の導くまま赤い鎧の戦士に向き合った。

 

つい先程の事だった。

 

 

 

最初、目にしたのは彼の写真……。

 

 

 

オカルト研究部の部室のベッドで療養していたリアスは集まった資料を見ていた……その中に、作為的な物が混じっているとも知らず。『尤も下手人達にとっても誤算である事態』が起きるのであるが。

 

中性的と言うより、女性そのもの。

 

整いつつもあどけなさを残す目鼻立ちに輪郭と無垢そうな瞳も好ましいが、柔らかい紫寄りな青色の髪、柔らかいようで少し硬質そうなもの……気の張った肉食動物のようで小動物染みた彼……これは猫等を腕に抱きたいと思うのと同じような気分であろうか?と、間近で見たからであろうからリアスは確信を持っていた。

 

彼だと……そして、資料を読む内にリアスの心は乱れ出した。付き合い出した彼女がいる……そして、シトリー眷属と既に懇意にしている。

 

 

『ソーナ・シトリー』

 

 

親友であるハズが、いつしかリアスはソーナに敗北感を抱いていた。

 

自分と同じく別次元の力を持つ魔王の妹でありながら、自分のような卑屈さを持たず学校を作ると言う自分なりの夢を持った彼女は自分とはあまりに違いすぎた。

 

そう、自分は出来損ない……超越者として生まれた兄の残りくずで作られてしまった出来損ない、身内の歩んだのと両親に愛されていた幼少期が似てるだけの道をあまりにも惨めな落差で歩むしか出来ずにいた滑稽なガラクタとまで卑下していた自分とは、としてリアスは確信した。

 

ソーナは高校に入る少し前から眷属達と一緒に急激に力を付けているし、計画性も以前に増して身に付けている。

 

切っ掛けは何か?

 

彼……だ。彼だ!と。

 

……そして、リアスは更に知った。自分が目の当たりにした以前から彼はこの街に滞在していたと……そして、背後には何かしらの大きな存在がいると!冥界がその事を知らないのはおかしい……そして、何故自分が家出をすんなり行えたのかを……サーゼクス達の計画すらも確信してしまった。矢継ぎ早に抗う思考が開始された。

 

 

 

(・・・・違う!)

 

 

 

(違・・・・う!違う!違う! 違う!違う!違う!)

 

 

 

(・・・・例え滑稽でも彼を欲した自分の心だけは他は関係が無い!)

 

 

 

だが、どうすれば良いのか?

 

既に自分は彼に無様極まる姿を晒している!このままでは自分の願いはただ周りに誘導された末の結果だ!彼が協力してくれるとしても、それでは自分を憐れんでくれた兄や義姉と同じだ。どうすれば良いのだ!?と狂い始めた。

 

 

力が足りない……彼をものにしてしまえるだけの力が無い!と、それでは今までと変わらないと言う現実に尚も抗っていた。

 

(・・・・嫌だ!そんな惨めな事はもう嫌だ!)

 

(・・・・力が欲しい!)

 

(・・・・この無駄に男受けが良いだけと言われたりもした身体も血筋も命もいらない!)

 

(劣等感を抱きながらもどこかで情を抱いた家族すらいらない!欲しいのは彼を堂々と手中に納めるだけの力!それを実現しなければ惨め過ぎる!)

 

生まれて初めての域に達した渇望!鬼餓的な欲望!絶望的な程の邪欲!リアスにとって、あの赤龍帝は地獄に現れてきた雲の糸だ!他の何を犠牲にしても、自分の力で掴み取る!のだと。底の底と言える程にリアスの思考は闇に染まった。

 

生きたまま踏み込んでしまった地獄で死人のような有り様でいたリアスは、この時に自分なりに全てを捨てた。これまでは甘えがあったのだとして、ただ執念のままに立ち上がり、身体の底から溢れる気を抑えようともしない。

 

異常に気付いた眷属達は悪鬼のごとく気を放ち、歯を食い縛るリアスを止めようとしたが、執念のままに動くリアスには邪魔者にしか映らない、最早リアスは自分の欲望と執念のままに動くのみであった。

 

「邪魔だあああっ!」

 

解放された気に吹き飛ばされるリアスの眷属は状況を理解出来ない、只この学園で唯一今のリアスに対抗できる者の到着まで悪夢に耐える他は無かった。

 

そして、現れた。

 

禁手で鎧を纏った赤龍帝が。

 

 

 

 

 

 

 

『い、一体……何、が……』

 

 正に、阿鼻叫喚であった。

 

リアス・グレモリーを監視していた『旧魔王派』の一部の者達、倒れ付して大半が意識を失っている。この者達はある一手を打った。

 

サーゼクス達が望んだように、前向きにリアスが赤龍帝と接触しないよう彼女の眷属達の集めた資料にリアスの積もり積もった劣等感を煽るものを然り気無く混ぜた。

 

冥界では最強の魔王であるサーゼクスの身内として凡庸とされているリアスであるが、この者達は見抜いていたのだ。凡庸と言ってもあくまでサーゼクスを始めとする身内に比された際の評価であり、リアス単体の長所だけみれば充分に優秀であり驚異ともなり得る存在とするべきなのが正しい評価だ。特に彼女の稀少な能力を持つ者達を集める点は目を見張るものがある。皮肉な事にこれはサーゼクス達を始めとする一部の評価と同じであったのだ。将来を見越せてやれる分、此方の方が正しいと言える。今回はあくまで赤龍帝と上手くいかないように仕向けた一手である。

 

……だが、リアスにこれ程の爆発力があるとは予想だにせず成り行きの監視に使っていた『水晶玉』越しに伝わった気でアジトは半壊、水晶玉は破壊され、大半が重症であった。

 

……リアス当人にとっても気付かなかった事……リアスには単純な力だけ求めるなら『闇』に片寄った使い方が向いていたのだと。真っ先に思い知らされたのだった。




何が起きたかはさておき、真打ち登場(汗)


昔のジャンプ作品のノリある原作主人……昔のとかで思い付いたのは?(そっちじゃないが)

……甘さの抜けないが為に、立場上であるまじき敗北をして地獄に落ちた主人公に足りなかったもの、這い上がり、強く為に必要なのは…『欲望』『執念』…それを教える相手がいなかった場合に必要なのもまた然り。

監視した奴等に起きたの事態はDBZで悟空とベジータの戦いをうらないババの水晶玉で観ようとした場面をスケールアップしたようなイメージ。

そもそも、細部を考えたらキャラも作風も闇路線の方がしっくり来かねない作品多いって考えが一因なリアス暴走展開です。

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