ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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それなりに動く。


各々の算段

 ギャスパー・ヴラディはマンション内部の入り口から外の光景を注視していた。会ってみたいと言うより確かめたい相手が突然帰還したのだからだ。

 

 だが、自分の私情は今は後回しだ。

 

 リアスの指示通り、二階への階段付近で待機していた自分 達であるが、外の様子は内部からの結界等の効果で確認出来ずにいた。そんな折に外に向かった堕天使達が血相を抱えて戻って来て、計画の変更と何よりもアーシアを即刻連れて来るよう伝令が来た。

 

 カラワーナとミッテルト・・・・実は外に残ったレイナーレにドーナシーク同様にアーシアを害していたかもしれない存在と知っていたが、シオンが便宜を図ってくれた者同士として、複雑な親交があり奇縁となっていたのだ。

 

 念入りに、不意打ちを考慮してアーシアを守りつつギャスパーは神器の暴発の防止とこの隙を狙った敵がマンション内に万一にでも侵入しそうになった時には、神器を使って止めるようにと指示が来たのだ。

 

 外に出たメンバーの目に移ったのは、立ったまま硬直しているバラキエルと、そのバラキエルに朱乃を押し付けるシオンの図だったが、間近に来た者達にはシオンの身体中が何かの光に焼かれて、徐々にダメージを負っていた。

 

 特に悲鳴を上げるアーシアとレイヴェルを落ち着かせつつ状況を説明したレイナーレの指示通りに光が収まったと同時にアーシアは、朱乃と一緒にバラキエルの内部に精神や思念を送り込んで空となったシオンの身体を全力で神器を使い治療した。

 

 そして、レイナーレはレイヴェルにある確認をしていた。

 

『持っていますね?』と。

 

「は、はい」

 

「使い時と対象は貴女に一任しますから、アーシアに付いていて下さい、私達全員で周囲を守りますから」

 

 レイヴェルは決断を迫られる。

 

 そう、アーシアの神器を持ってしても『内部』で負い、外に現れたダメージを治癒するのは、並大抵の消耗では済まされない・・・・場合によっては、持っているものが一つだけである為に誰に使うかを選ばなければならない。

 

(私は、シオン様に助けられただけの女のままではいられません、それは私自身が許せませんわ!)

 

 レイヴェルなりに状況と向き合って、その時の覚悟を決めた。今はシオンが無事に事を成すのを信じつつアーシアを見守るのみである。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 一旦は歌を止めたイングヴィルドにはシオン以外に明かしていない重要な秘密があった。本来なら、シオンにも明かすべきではないのかもしれないが彼の勘と頭の良さを考えて最初に言っておいた方が良いと判断したのだ。

 

 彼女に歩み寄った旧魔王派は重症だ。今後の懸念の為に、木場佑斗がバルパー・ガリレイにしたように口封じを兼ねて瞬殺するべきだったとまで考えてしまっていたが、それは止めてしまった。単に自分の手を汚すのが嫌であったからと言われてしまうだろう選択とされると自覚はしているが、その路線では自分を知るか調べるかした者全てを殺し尽くさなければ無理であろうと判断していた。それこそ、自分にも便宜を図ってくれた者のような存在すらだと、捕虜となったはぐれ勢力をサイラオーグの滞在場から合流した者達が拘束等の処置を進めているのを見守りながら考えていた。その最中に、新たに合流して来た者達がサイラオーグに慌ただしく駆け寄り、あるものを差し出した。

 

「サイラオーグ様!」

 

「む、これは・・・・っ!皆、聞いてくれ!今しがた冥界から通達が来た。シオン・アネガザキのマンションに関係者全員で向かえとの事だ」

 

「関係者全員?何故わざわざ?」

 

「これを」

 

「あらまあ?」

 

 尤もな疑問を口に出したロイガンだが、サイラオーグから見せられた何かで態度を変えた。

 

 ロスヴァイセは、その光景にピンと来るものがあった。そう、サイラオーグとの交渉でシオンが出した何かのサインが入ったものを見た途端に疑問を一旦置いた時と同じ、恐らくアレは?と考えをまとめた。

 

「ま、兎に角?通達通りに行きましょう?」

 

 当たり前に年長者そのものな振る舞いで指揮を取るロイガンだが、それに異を唱える者はいなかった。経験値が飛び抜けているから以前に彼女が途中参戦して為に街を人質にしようとした敵の意図は挫いてくれた為に、そのまま完勝の流れになったのだ。それを見て取ったロイガンは放心している二名に声を描けた。

 

「教会の二人も神様云々な真相を赤龍帝君から聞きたいでしょ?」

 

「わ、わかりました」

 

「了解よ!仮にシオン君が本当に神様の不在を知ってたとした場合、それを黙ってた理由次第によっては・・むぐっ!?」

 

 ロイガンは唐突にイリナの口を塞いで、そのまま背後に回りながら、もう片方の手で両手を抑えながらイリナの動きを封じた。鮮やかな流れだが、いきなりの仕打ちに暴れ出すイリナにロイガンは淡々と告げた。

 

「貴女、例の月?に何とやらの後にお仕置きなんて言おうとしたでしょ?ツインテールの髪型で思い当たったわ、安易には止めなさい」

 

 イリナが、口と動きを封じられながらももがくが?ロイガンは周りがイリナの言わんとした事が自分が言った事だと判断したのを見てから、イリナの耳元に顔を寄せて小声で囁いた。

 

(貴方、赤龍帝君の~~にかわってとか言おうとしたわね?やめときなさい?誰かに漏れて不味い騒ぎになった場合、赤龍帝君は貴方を許さないわよ?)

 

「~~っ」

 

 イリナはロイガンの意図を察した。そう・・不用意に漏らして騒ぎに発展させてはいけない事柄である・・・・同時に、自分が抱いていた疑念がある程度晴れた。考えが正しければ、シオンの~~を・・・・していたのはと。密かに抱いていた疑問を暫定的に解消してシオンのマンションに向かう算段に参加した。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 リアス・グレモリーがマンションの四階に辿り着いた時に思わぬ事態が起きていた。負荷に耐えながら進むリアスの死角から無数の毒針らしき吹き矢が襲い掛かるが、間一髪で回避が出来た。自分なりの鍛練と感覚が鋭敏になった成果だが、リアスには信じ難い光景があった。

 

 何と、吹き矢が飛んできた方向を確認した自分の前には敵と思わしき者が五名も現れたのだ。

 

「貴方達は?何故ここに居れるの!?」

 

 そう、マンション内の幻術と掛かる負荷を考えたら五名も敵が潜んでいる等は有り得なかったのだ。その疑問はリアスにはこの上ない皮肉として返って来た。

 

「先ずはお初にお目にかかるとでも言いましょうか、リアス・グレモリー?何故か貴女は、先に離脱した我等の同胞と違い幻術と負荷に耐えてここまで来られたようですな、理由は教えてはもらえませんか?」

 

「ええ、失礼ながら・・・・更に失礼ながら、貴方達は何故ここまで来れたのです?見たところ全く特殊な対策をしていた感じがしないので気になるのですが?」

 

「尤もな意見ですな、ではレディへの気遣いとしてお答えいたしましょう・・・・簡単ですよ、我等は身体が丈夫な方ですが、ある事情で負荷を一度だけ回復出来ましてね?後は時間を掛けただけです」

 

 負荷を回復はまだしも、時間を掛けたと言われた部分で、リアスには理由がわかってしまってのだ。

 

「まさか・・・・『諦めなかった』の?」

 

「そうです。幻術に苦労しながら数え切れないくらいハズレを引きながらも何とかここまで来た。それだけです・・・・ふふふふ、グレモリー家に生まれてしまった凡庸な姫として見下されながら自分なりに積み重ねてはいた貴女には到底及ばないでしょうが?自分達なりに諦めずに進んだのですよ、恐らく幻術を施した赤龍帝か関係者が帰って来たりしたら終わりだから傍目には馬鹿な事でしょうがね」

 

『馬鹿な事』

 

 リアスには彼等のやった事をそう思う事等は出来なかった。

 

 誰がそう思えると言うのかと、ましてや自分には及ばない等、とんでもない誤解。

 

 自分にはやれないとした。

 

 このマンションの幻術と負荷に対して、特殊な恩恵無しの身で折れずにここまで進む等、冥界から逃げ出した自分には到底出来ない!彼等の方が自分より余程強靭な精神力を持っているのだとして、リアスには目の前に現れた五名には最早敵意どころか敬意すら抱いてしまえた。

 

(でも戦うしかない、私は・・・・私の一番を守るの!)

 

 リアスは覚悟を決めた。自分が惨めになる程の精神力を持っている者達と戦うべく、向き合った。




今回の小ネタはわかりやすいのが一つだけ。

毎回、数えてるのっ!?
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