ゼノヴィアは不思議な光景の中にいた。
神の不在を敵から聞かされ、相棒と共に自失していた自分はロイガン・ベルフェゴールから、シオンに真相を聞き出すべきと諭されて、昨夜の宿となったマンションに戻る最中なのだが?
「悠々自適とはこの事ですねぇ?」
隣に座るロスヴァイセが何処か現実感が無いように状況を述べた。
『シオン・アネガザキの関係者全員で向かえ』
わざわざ全員で向かえとする冥界からの指示にどのような意図があるかはまだ判明してはいない、だがサイラオーグが用意したリムジン・・・・そう、何故かリムジンであった。
人間世界では、多少の金持ちなら所持していても珍しくはないが・・・・実は外見が普通のリムジンでも外部からは魔力やその類いは感知されない特注品でロスヴァイセ曰く自分の攻撃魔法フルバーストに耐え得るかもしれない防御力があると、どこかおかしい要素だらけだ。あの獅子王のイメージには合わなすぎな代物である。尤も?外勢力を警戒しつつ移動するのには間違ってはいない選択かもしれないのだが、兎に角そんな特注リムジンに乗り込んで移動中である。
比較的考えてる面子は兎も角、マジックミラーである為に車から映る外部の光景に興味を持つイングヴィルドやリムジン内の冷蔵庫に入っていたケーキ等のお菓子を黙々とだが、美味しそうに食べ続ける小猫と、誰も彼も戦闘後ともこれから何かを見るかもしれない者達とは思えない、違和感だらけである。
(オーディン様に比べたら可愛いものばかりですが、どこか個性的と言うより、多種多様な人材ばかり集まってますね・・・・やはり、私が此方に回される以前からですか?)
ロスヴァイセなりに、この地で動き出していた思惑に触れ始めたが、やはり昨日の今日では情報がまだ足りないとこだらけであり、まだ会ってもいない面子と顔を合わせる必要を感じた一方。
(オーフィスと会ってしまったから考えられてるのかもしれないが、やはり近年、どこの勢力も何かおかしいのかもしれないな・・・・私達のようなのが比較的に好きにやれるのはシオンが言ったように、魔王級同士が人間界で不用意に衝突しない為としても・・・・魔王達にとって、そうする理由は・・・・駄目か、私が得れてる情報だけでは、考えてもどうにもならん)
現状で知る限りではどうにもならないと有りがちな結論だが、ゼノヴィアにとってはその現状こそが見るべき突破口に繋がるとは知るよしもなかった。
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シトリー眷属達は何処か違和感があった。
先程から、十近い新手がシオンのマンションかバラキエルの元に向かって来たが、悉くお縄にしていた。拘束した者達は念入りに眠らせて匙の『神器』で失血死寸前まで血を抜き取り無力化している。転生悪魔と思わしき者達だからこそな相手だが、何処か統一性が無い・・・・尤も、これはアザゼルを始めとしたメンバーが行かせても問題無しとした小物ばかりが辿り着いてはシトリー眷属に取り押さえられていた結果とは知るよしも無い、現にこの場に現れたら詰むような者達のみに彼等の目と手が集中していた。
「会長?何か変ですね?バラキエルさんのところか、マンション内に向かって来ている者達もそうですが、例えばコカビエルのようなのが攻めて来る気配も無いです」
「何か隠し球があるのかもしれません、兎に角用心しながら現象維持です」
細心の注意を払いながら事を進めるシトリー眷属は自分達を過小評価しながら事を進めていると堕天使組は畏怖していた。敢えて穴を作るように布陣して誘い込んでは有無を言わさない一斉攻撃を見舞い、念入りに『血抜き』をして戦闘力を限り無く奪うと・・・・伊達にシオンと訓練を重ねてはいないと見れる徹底振り、チームプレイの旨さだけなら直ぐ様にレーティング・ゲームの若手層の中でトップに入るかもしれない。
(リアス・グレモリーがマンション内で、今はどうなってるか私達には感知出来ない、今は余程厄介な新手が来ないのを祈るのみか)
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マンション内でリアスに襲い掛かった者達は、学校と同じ程度の広さの廊下でリアスと一定の距離を取りながら向き合ってはいたが、その内に五名の内、二名がリアスの両側を走りながら通過して振り向き様に刃の着いた投げ輪、所謂チャクラムと言われる武器を投擲し、リアスは前方の三名を警戒しながら回避したが、投擲されたチャクラムは前方が指二本で受け、そのまま投げ返しては後方に位置取った二名が同じように受けてはまた投げ返すを繰り返した。
(何の真似?投擲しているのは、ただのチャクラムのようだけど・・・・)
スピードはあるが、チャクラムを使ったキャッチボールのような行動、リアスに積極的に命中させる気はあるか怪しいし、前方の中央に位置するリーダーらしき存在は動かない、どうやらリアスを即座に抹殺する気は無いらしい・・・・彼方の意図をリアスは図り損ねていた。
(むう、どうやら毒が塗られてないのに気付いてはいるようか)
先程の吹き矢で気付いたが、どうも自分が調べたデータで 知るリアスより勘が良く見えていた為の試しである。知識があれば、あのチャクラムに毒が塗られてる予感はして慌てるくらいはするだろう、だが自分達が向き合っているリアスは何処か違和感がある。話に聞く赤龍帝のような超常的な勘らしきものが備わっているように感じられていた。
(だが、まだだ・・・・時間を掛ければ掛ける程に此方が有利になる!)
仕込みに入られたと気付ける程にリアスは経験と勘が足りてはいない、彼等の本命はまだ隠されたままだった。
物事には原因があるが、現状だけではサブタイ程度のものしか感じられまいな。
徐々に迫り来る何かってやつかなあ?(こいつが普通にやってる方が俺には違和感あるんだよなあ)