ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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さて、疑念になる部分には気付いてもらえるだろうかな回でもあります。


呼び掛け

 精神や夢の世界を始め、現実とは異なる体感時間の場は多い・・・・バラキエルの内部に入っているシオンと朱乃にとって幸いなのは、自分達が感じる時間が現実と都合良く異なっていた点であった。でなければ、数時間は過ぎていただろうからだ。

 

「・・・・」

 

 姫島朱乃は、顔面蒼白であった。

 

 胃液すら吐き出し続けてカラカラだ。シオンが魔力で作ってくれた水で顔を洗い、口の中を洗浄して力の入らない身体を動かし続ける。

 

 バラキエルの夢の中、自分が知らない記憶の部分を何度も見た。そこは堕天使陣営屈指の武人と称えられた男が良く見てきたもの・・・・即ち、戦場である。恐らく、自分があの時に拒絶して以来の記憶と理解してはいたのだ。母を殺害され、リアスと出会うまで放浪を続けた自分の記憶が生易しく見える程の地獄のような光景を何度も目の当たりにしていた・・・・。

 

 妻を自分の留守中に殺害され、間に合わずに娘に拒絶されて以来のバラキエルは娘を案じながらも、罪の意識に苛まれて激戦区に身を置き続けた故の光景。

 

 朱乃はバラキエルの戦場での顔は知らない、だが自分が知るバラキエルは優しい父親であったのだ。あのような光景に身を置いていた事を認めたくはなかったと言う考えが過り、即ち・・・・自分が、あの時にと思ってしまった時、またしても空間が揺らいで場面が変わる。

 

「う、ああ・・・・」

 

 自分を庇って殺害された母。

 

 駆け付けて、母を殺害した者達を瞬く間に皆殺しにしたバラキエル。

 

 何より・・・・母を殺されて、その間に自分が気にしていなかった事を、生い立ち絡みの暗部を悪意を込めて聞かされた事のショックから生じたどす黒い感情の捌け口に調度間に合わなかったバラキエルを使って、ひたすら罵る幼き日の自分。

 

 そう

 そう、朱乃はわかっていた。自分がバラキエルを本当はどう思っているか、バラキエルと堕天使に抱く感情の正体すらも・・・・最近に自分なりに自分の暗部と恥部に向き合うリアスを目の当たりにする中で改めて気付いてしまっていた事を。

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 一方でシオンは、何となくであるがバラキエルの心がわかっていた。

 

 先程から、どうも暴走の気配が少ない・・・・何かしらの光明を見出だしたような気配があると、それはぎこちないながら、朱乃が自分を父様と呼んでくれた事で希望を持っていたからであった。奇しくも元々は歌のお兄さんになりたかったサーゼクスが後に最強の魔王となる道を歩んでいた中でグレイフィアに出会って本来の望みとは違った希望を見出だしていた状況にある程度は近い、ならば?その中でバラキエルの自我を呼び戻す方法は朱乃に呼び掛けてもらうのが正解に近いが、お互いが爆発的と言える激情を出し続ける必要がある。それはまだ無理と判断した・・・・そもそもにして、先程からバラキエルの核には辿り着けない、場面が変わるのが精々と考えた時であった。

 

「場面が変わる?つまり、核から出てるのじゃなくて、ここが全て・・!・・・・ホーロド・ニー・スメルチ!」

 

 答えを見出だしたシオンは左手に赤龍帝の籠手を具現化させ様に魔力を込めて、拳を上空に向けて振り抜いた。凄まじい冷気を纏う竜巻が発生して空間を揺らした。

 

~~~~っ!

 

「っ!?」

 

 朱乃は突然にシオンが虚空に向けて、以前にリアスに放った技を使った事以上に・・・・バラキエルの悲鳴とも言える絶叫を聞いた事に驚かされた。

 

「こっちに意識を向けてくれたか」

 

 だが、再び空間が揺らぎ辺りを覆う、まるで何かを隠そうとするように、消し去ろうとするように・・・・そして、シオンは片手をかざしたと思ったら、水の魔力で造った小さなドームの形状の結界が張られた。朱乃は状況がわからなかったが、直後に自分達に雷のようなエネルギーが襲い掛かるが、地面まで届く水属性の結界でエネルギーがアースされ、遅れて轟音が響いた。

 

「まだ足りないか」

 

「シ、シオン君?今のは何です!攻撃にも驚きましたが、私には確かに、あの男の声が聞こえましたわ!」

 

「簡単に言えば、周りの状況そのものがバラキエルさんの核だったんですよ、俺達は探してるものの内面に飛び込んだんです。多分バラキエルさんは内部に先輩がいる事を意識が限り無く失われてる中で察しています。けど、それでも先輩にすら歩み寄れないようです」

 

「そ、それは・・・・」

 

 朱乃にはわかる。バラキエルは自分と母への罪悪感から、せめてもの償いを求める中で決して自分には言えない日々を重ねてしまった。だからこそ、自分から会いに来れなかった。現に朱乃とて、この内部世界に来る前に話だけなら聞いてはいたのだ・・・・だが、そんな事は・・・・。

 

「先輩?兎に角、俺が念を増幅させますから、バラキエルさんに呼び掛けて下さい、何にしても恨み言だけでも良いから直接に言うべき事は言うべきです」

 

 朱乃の心情を計算したシオンからの提案。

 

 意固地になっている以上、恨み言だけでもと言う部分に朱乃は反応した。

 

「わかりました。私の前に来るように言ってみますわ、でも『増幅させます』と言ってもどうするのです?」

 

「取り敢えず。俺の身体の何処かに・・肩にでも手を触れながら気を集中しながら心の中ででもバラキエルさんに呼び掛けて下さい」

 

 言い様にシオンを両手で印を結び、間も無く荘厳な気を放ち始めた・・・・朱乃は、この気には覚えがある。あの日、暴走したリアスと戦い、リアスと共に自分達の視界から遠ざかった少し後に一瞬感じた気だ。何故か信憑性がある気に導かれるまま、言葉通りに背後からシオンの両肩を左右それぞれの手で掴む。そして、朱乃は心の中で全力でバラキエルに呼び掛け始めた。




今回のは、わかりにくいだろう小ネタが二つと、ある疑念フラグが一つだけ。後、ギャグ無し。

解析は有り難いが、ギャグ無しの部分はいらんだろ。

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