ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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今回も然り気無く、重大なのが混じってます。


面影

(・・・・暖かい・・・・)

 

 シオンの指示通りに彼の両肩に手を添え、彼から発せられる気に導かれるまま精神を集中させる朱乃は、まるで亡き母に甘えていた時のような安らぎを得ていた。

 

 母扱いされた事をシオンが知ったらどうなるか?知る範囲では彼は怒るだろうと、朱乃は内心で思う。

 

 尤も、かなりの度合いで精神が同調してるから感知されている。シオンはイリナに振り回された時期、アーシアにカレーのおかわりを用意した時のような振る舞いをお母さんみたいとリアスに称された時のような心境になっている。

 

 敢えて言えば、父のようと評さないのは朱乃が未だにバラキエルに歩み寄りきれないからなのをわかっていて、そのせいだと思って気を逸らさないようにしている。この類いの術は精神が乱れては危険なのだ

 

(ここに、来て・・・・)

 

 朱乃は、内心でぎこちなく、語りながら真剣に祈るようにバラキエルに呼び掛けていた。

 

 バラキエルが、ただ思い出の中に逃げ込んだりする程度の術であるのならば話は簡単だったハズだが、朱乃がフリードの悪辣な罠にまんまと掛かってしまった隙に例の堕天使陣営からの横流し品の驚異はその程度ではない、バラキエルの自我は厄介極まる形で限り無く封じられてしまったのだと知らない朱乃であるが、今は後輩の助力を信じて呼び掛けるのみである。

 

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 朱乃が暫く念じ続ける一方、その朱乃に背後から両肩に手を掛けられながら印を結ぶシオンは嘗て無い消耗を強いられていた。

 

 周囲が地割れを起こし、虚空から雷撃が浴びせられているが、それ等から朱乃を結界で守りながらも彼女の呼び掛けを増幅させる術の印を結び続けた。

 

 その内にバラキエルの姿を象った何かが現れ、襲い掛かって来たのだか、赤龍帝の籠手の表面が龍らしい鱗が幾らか現れ、その鱗を周囲に飛ばす。その鱗は高速で回転しながら魔力を纒い、バラキエルもどきのような何かの急所に飛ばされ、塵のように霧散させる内にシオンは悟る。

 

(そろそろかな・・・・意識は向いてるハズだし、此方もきついから『一回目』の勝負を掛けるか)

 

 そして、シオンはバラキエルの自我を向けさせる為に手っ取り早い言い分で呼び掛けた。

 

「バラキエルさん!?いい加減に向き合って下さい!娘を傷付ける気ですか!?」

 

 周囲の異変が止まる。

 

 微かにだが、朱乃の呼び掛けに反応していた成果でこうなったのは想像通り。だが、まだ足りない・・・・。

 

 朱乃はシオンから発せられる気が解除されたのに気付いて目を見開くと、周囲が一変しているのを見た。まるで星空が自分達の周囲に広がっているようだ。

 

「シ、シオン君?これは一体?」

 

「例の横流し品にやられた対象を救う為には、一番厄介な段階ですね、周りにある星みたいのは全てバラキエルさんの自我と言えますが、後一歩足りません・・・・下手したら、何もかもが消えてしまう、つまりバラキエルさんの心が全て・・・・心が無くなるのは『死』も同然と言えます」

 

『死』

 

 あの男、バラキエルが『死ぬ』と言われた朱乃は、その意味を悟る。

 

「あ、ああ・・・・」

 

 朱乃はその場にへたりこんだ。

 

『死ぬ』

 

バラキエルが死ぬ・・・・『  』・・・・が死ぬ。

 

 それも、自分がフリードの罠に嵌まったミスが原因でと、頭の中で並べて朱乃は気付いた。バラキエルが死ぬ事は考えた事が無かったのだと・・・・資料で知った堕天使陣営屈指の武人としての、そして・・・・あの日、母を殺害した者達を瞬く間に皆殺しにした姿を目の当たりにして、バラキエルの強さを良く知っていた朱乃はバラキエルが死ぬような事は完全に想定外だった。

 

 虚ろな目で現実を受け入れる事から逃れている事を見て取ったシオンは、セラフォルーから聞いた事を含めての現状を告げた。

 

「先輩?サーゼクス様達のロマンスは甘口で語られてますが、ここが正念場ですよ?サーゼクス様は他の現魔王様達やグレイフィア様の呼び掛けで、今俺達が目の当たりにしているのと、ほぼ同じ状態から自我を取り戻したのが真相です。ここで貴女が更に呼び掛ければ上手く行く可能性もあります」

 

「で、でも私はあの男に今まで・・・・」

 

 母が殺害され、その際に下手人達に悪意を込めて聞かされた堕天使や家系との確執、耐えきれずにバラキエルにぶつけた言葉だけでも向き合いきれないのだ。今更・・・・と俯く朱乃にシオンは目線を合わすべく自分もその場に屈んで両手で朱乃の顔を上げさせ、正面から見据えて平然と言い放った。

 

「まあ、当然です」

 

 キッパリと、自分が考えている事は全て見通してるとわかる流れな表情と声色である。

 

「肝心な時に?間に合わなかったり、しくじった者への対応なんてそんなものです。立場上の問題含めたりでは尚更ですね」

 

 シオンは、そうは言っても?明らかに他にも非があるのは同情したいと思いたいとは言わずにいた。

 

 辛辣ではあるが、今までにバラキエルの事も考えてやるような事を言って来た者達とは違う対応に朱乃は新鮮さを感じていた。そして、朱乃はシオンの目に亡き母の面影を、バラキエルや実家の事で言い出せない事を申し訳なく思いながらも自分に語っていた時と同じような影を宿した目を見たのだ。

 

 

 

 後に、朱乃はこの時に・・・・もしもシオンが容姿だけでなく、本当に女性ならば、即座に・・こう言ってしまっただろうと語る・・。

 

 

 

 

 『母様』と。

 

 

 

「それはさておき、さっさと今まで言ったり思ったりした事の焼き増しを叫ぶかで良いから、ありったけに出してみて下さい、それから・・・・」

 

 そう言いながら、周囲を警戒すべく立ち上がるシオンの手を朱乃は掴んで首を振る朱乃の目は涙が溢れ始めていた。

 

「嫌・・・・」

 

「?」

 

「嫌、で・・す・・っ、私は・・・・私には出来、ません・・っ」

 

「先輩?」

 

「もう、嫌・・・・です!私は、私は自分に、嘘をついていました・・・・と、う・・・・さま、父様に責任を押し付けなければ心が保たなかった・・・・私が、そんなだから、父様は・・・・」

 

 朱乃の涙は最早止めようがなかった。先程からシオンに母の幻影を見てしまった事で、フリードに怒りを露にした時に漏れた本心が隠せなくなった。

 

『父様を信じてあげて』

 

「私は・・・・私は、母様のお願いすら、守れ・・・・なかった。私は・・・・三人で暮らしていた・・・・かった・・・・だけの女、なのに・・・・」

 

 朱乃は留守がちな父にもっと自分と遊んで欲しかったのだ。頭をなでてもらって・・・・ずっと、ずっと父と母と自分の三人で暮らしていたかったと、矢継ぎ早に本心を自覚した。

 

「お願い・・・・っ!お願いです!私は、もう父様を悪く言いたくなんか、ない・・・・謝らせて下さい!母様のお願いを守れなかった事も、父様を傷付けた事も!父様を助けて!私に父様を悪く言う事をさせずに・・・・助けて・・下さい!何でも、何でもしますからあぁぁっ!」

 

 恥も外聞な無く、嗚咽して涙も鼻汁も出続けるのも構わずに膝立ちのままシオンに泣き縋る朱乃の心は幼い頃に戻ってしまっていた。あの日、母を失った日から堪えていたものが全て決壊したのである。




母の面影がキッカケか、悪くはないと思わんか?

ま、まあそうだわなぁ・・・・(ち、チキショー・・・・シオンは男だとかツッコミせんのか?って目を向けやがってぇ・・)
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