「『炎を使わない』だと?」
「はい、僕が疑問を抱いたキッカケは?赤龍帝・・・・つまり赤い龍と聞くと火から炎なイメージにしては何度か同じグレモリー眷属としてはぐれと戦った際に炎は使わないでいた事からです。直接見てはいませんが、炎属性の魔力弾を他属性のものと同時に放つ技くらいしか使った事が無いそうです」
色々おかしい特注リムジンでシオンのマンションに向かう側でサイラオーグと木場佑斗は話題がシオンの戦い方に移り、シオンが何故か炎属性の技をほぼ使わない事についてになっていた。
「正直、安易なイメージだったので直ぐに思い直したのです。歴代の赤龍帝も別に炎が得意分野だったワケではなかったのは直ぐに調べられました。ですが、それについての違和感が再度膨れたのは、その後も何回か一緒に戦っていますが、目の当たりにした戦いで氷属性を使うはぐれの群れ相手に炎を使う気配を見せたら、シオン君は咄嗟に止めた時です。その時は荒れ地に張られた結界内でしたから別に周りの被害を気にした風でもありません」
「ふむ?確かに赤龍帝、つまり赤い龍と聞けば、思い付くのは炎属性使いとするのは安易だ・・・・俺が冥界でシオンの戦い関連について聞いたりした限り、戦う際には『水』に『氷』属性の方が主体とあったが・・・・何故か炎を使うのを咄嗟に止めたと知ったのは初めてだ」
そう、シオンの使う技は基本的な自然属性に分類されるものは『水』と、それに連なるように『氷』が主体だ。
仮に二つの属性に傾いたのが一年前とするなら『水』の属性に分類される神滅具を持つイングヴィルドと付き合いが出来て、新しい境地に至ったからとも考えてはいただろうが、彼が戦い始めたのは七歳の頃だからイングヴィルドと出会うかなり前、記録にある限りであるが?その時期から佑斗が言った場面以外に使う技の属性に炎が用いられてないとなる。
「・・・・俺の感じた事についてだが?目の当たりにしたのと記録にある限りだが、どうも力の象徴の一つの扱われる存在の戦い方とは程遠いものだな」
佑斗は同意した。基本的な戦い方でもサイラオーグの言うように強者と見られる存在特有の戦い方である小細工無しの単純な力等にものを言わせたやり方・・・・但し、サイラオーグ自身が身体しか頼むものが無い故と自虐するものを除くものとは微妙に違う気がしていたのだ。精々が暴走したリアスを止める手段の為に彼女が放った魔力弾を正面から突っ込んだ時くらいだが、アレはリアスを無事に出来るだけ元に戻す為の手段であり、イザベラがシオンの無茶振りを心配するキッカケになった事項と同系統だ。
「サイラオーグさん、炎を使わない疑問程度からの推論で失礼ですが・・・・シオン君は別に本来持つべきか持っているとされる力を持っていないとは考えられません」
佑斗が気付いたのはそれだ。一度、咄嗟に使うのを止めたのを除き、あくまでイメージ通りに炎を使うような存在が使ってない事が発端からの結び付けでは失礼とすべきであるが、サイラオーグを絡めた考えなのが肝だ。シオンは滅びの力を受け継がずに生まれたサイラオーグのような要素があるとは思えないが、少なくともシオンの戦い方は赤龍帝の鎧を当たり前に纏っている事で見落としていたが、正にサイラオーグのように本来持つべき力を持っていないか、少なくとも使えないかな者に近いのだ。
「うむ、確かに俺のように本来使えるべきものを使えないが故に、他をどうにかしたような歪な存在に近い何かがあるな」
サイラオーグからしても先程までの僅かな共闘で自分に近いものを感じるシンパシーがあった故に木場の意見に同意していた。安易なイメージと噛み合わない事からの違和感程度かもしれない、だがサイラオーグと佑斗の語っている内容。
『シオンが殆ど炎を使わない事への疑念』
『何故か、サイラオーグに近い戦い方をしている』
これ等は彼の秘密を解き明かす為には実に的を射ていた。現にサーゼクスのような超越者であるが故に見抜けない、精々シオンの戦い振りは傲り等には縁がないくらいとしか気付けないものの真相に迫れる方向に入っていたのだ。
そして、シオンのマンション前。
バラキエルの内部に意識を飛ばしたシオンには誤算が多かったが、先ずは元の身体である。朱乃に敢えて雷光の力を自分に放たせた時に、ダメージが其方に流れていた。ドライグを始めとした何名かが察する域以上にシオンの変異は深刻であるのだ。アーシアはそれ程の負荷は掛からずに治療は出来たが、次に起きたのは?
「こ、これは何ですの?」
シオンが『内部』で朱乃と共にバラキエルに呼び掛けた始めた頃、残された身体から同じような状態の朱乃とバラキエルを包む荘厳な気にレイヴェルは戦慄していた。他は計り知れない力と技の種類を持つシオンの力の一角として見ていたが、レイヴェルにはこの気の根底が理解出来た。イザベラ同様に自分なりの得意分野から幅を広げる為の鍛練を積み重ねた成果である。
(陰と陽、光と闇・・・・相反するハズのものを調和させている?それは・・・・即ち?)
レイヴェルは読めた。
シオンの力の根底を説明出来るものの重要な要素の一つ!
(シ、シオン様・・・・私の考えが正しければ、貴方の契約者とされる御方が、何者かはさておき?貴方の存在を隠匿する気配がどこか希薄な理由、それは・・・・)
レイヴェルも自分なりに迫れる核心、それも恐らく一番危険な類いのものに迫ってしまったが、彼女に幸いなのは思考を中断させてくれる事態が新たに起きた。シオンの身体が禁手の鎧を纏った姿に変わった事だ。
(内部で起きてる事が、佳境に入った?う、運が良かったかもしれませんわ、私には・・・・まだ早いですわ)
レイヴェルの考えは正しい、そう・・・・仮に、この場に立ち会ったのがイザベラやイングヴィルドでも、まだ・・・・。
だが、レイヴェルの予想は良くも悪くも想像を越えていた。
バラキエルの意識は戻ったのならば、元の世界に帰れるハズだが?
「赤龍帝・・・・女の・・・・敵!私の娘を毒牙に掛けるのは許さん、ぞぉぉぉっっ!」
台詞こそ親バカの一旦だが、全身から放たれる気は尋常ではない!流石に堕天使陣営屈指の武人として、朱乃は膝を震わせていた。
「と、父様!お待ち下さい!シオン君は・・『ストップです』・・っ?」
「先輩?あのバラキエルさんは例の横流し品に衝動で抗った余韻で動いてるだけです。結論を言えば、疲れるまで相手をすれば、いつの間にか元に戻るって段階ですよ」
「も、戻る・・・・父様が・・・・」
朱乃は父が元に戻ると言われた事に安堵したが、唯一つ疑問が残った。
「あ、あの・・・・シオン君?その・・『疲れるまで相手をすれば』とは?」
「簡単です。戦うんですよ」
平然と言い放ち、シオンは禁手で鎧姿になっていた。ここがレイヴェル達が外でシオンが鎧姿になったのを見た時である。
「取り敢えず先輩は離れていて下さい。巻き添えを受けないように気を付けて、魔力の防御系を準備してて下さい」
朱乃は事態を察した。ビナーとコカビエルの戦いの際にリアス達とそうしているしかなかった時と同じである。レベルが違う、今はシオンの足手まといにならない事が先決であり、フリードの挑発に嵌まった時のように私心を優先させた故の過ちを犯す訳にはいかないのだ。朱乃はシオンに言われたようにするしかなかった。
(シオン君・・・・父様をどうか・・・・そして、わたくしが父様に謝り抜いた後、わたくし・・・・と)
周りの何名かが徐々に核心に迫る中、シオンはこれ迄の中で最強の敵となった相手と正面から相対した。
・・・・・・・・。
(来ている・・・・)
外部からの情報が遮断されるハズの結界が張られたマンション内で戦うリアスは外にシオンが来ている事を感知していた。それが可能になった理由を知られる訳にはいかない・・・・そう、自分と相対する者達、敵ながら敬意を抱いた者達だとしても!
(むっ、戦意が膨れ上がり始めた?・・・・何故かは知らぬが、勝負を掛ける気に・・・・いや、勝負を焦り始めたようだ。だとすれば今こそ好機か!)
リアスと戦う五名のリーダー、リアスの心情迄を察する事が可能なレベルの洞察力は賞賛に値した。あくまでもしもだが、例えばレーティング・ゲームに挑んでいれば洞察力に対する評価はかなりのものだっただろう、但し?その洞察力から打つ手がどのような結果を招くかまでは流石に予想し得なかったのだ。
ヒントと真相解明への要素だらけな回だが、何かに迫るのが急激な展開の際には理由に刮目してみるのも一興よ。
おぉ、流石に言う時は良い事を言うよなぁ・・・・って、他にそうさせといた末に更なる罠仕掛けるのがお約束な奴が言うなやっ!