ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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以前のように、途中の台詞がアレなのは参考にしたもののネタバレ防止の為。


収束・・・・そして

シオンは嘗て無い苦戦を強いられていた。衝動の残りで襲い掛かって来ているとは言え、バラキエルとの基本的な能力差と、悪魔には致命的な雷光の力の前では氷の盾や目眩ましを駆使して受け流すのがやっとである。回避しようにも態勢を崩したりしたら、その瞬間を狙われるのがオチである為に迂闊には出来ない・・・・防戦に徹する際には今のやり方が向いているシオンなりの最善の方法を取りながら次の算段を立てた。

 

(となると?悪いが『大火傷』するくらいのものを見舞わせてもらう他は無いか)

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

離れて戦いを見守る姫島朱乃は途中から気を全開にして自分を守って下さいと言われ、その通りにしながら戦慄していた。シオンの言うところの衝動の余波だけで動くだけでも父の力は凄まじい・・・・が、その父の猛攻を捌くシオンは一見は防戦一方だが、悪魔の身体と水属性主体の戦い方では父の雷光の力とは相性があまりに悪過ぎる・・・・にも関わらずバラキエルに有効打を許さない実力・・・・その考えをした際に、初めての疑問を抱いた。

 

(シオン君は、今の父様クラスと戦った事があるの?)

 

そう、幾ら才能があっても初見でこうまでは出来ないのではないか?と・・・・だが、そのような存在と一体何処で?シオンが初めて神滅具を目覚めさせたのは約十年前と聞いたが、その時期から今の情勢では、そのようなレベルが動いていては・・・・と、朱乃も他とは違う視点からシオンと今の各界の秘密と情勢についての真相に近付き始めたのだ。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

(躊躇してられないな!長引いては、やはり不利だ。此処で勝負!)

 

決断して、バラキエルの振り下ろした拳を思い切り後ろに飛んで避けた。拳はそのまま地面に炸裂し、巨大なクレーターを作る。その余波でバラキエルは一瞬シオンを見失うが、直ぐに位置を把握したと思ったが、シオンはあろうことか、そのままバラキエルに突っ込んだ。

 

「シ、シオン君!?」

 

これには朱乃も絶句した。二名の戦力差から正面から突っ込んではどうなるか理解出来ない程に愚かではない、バラキエルは『愚か者め!』と言わんばかりに迎撃の一撃をシオンに放つ、しかしシオンの顔面に向かった拳はシオンの両手に阻まれて防がれていた・・・・だが、そのまま押し切るつもりで力を込めた次の瞬間、シオンは両手でバラキエルの拳を掴んだまま勢いに逆らわずにそのまま後方にとんぼ返りをしながら両手を放すとほぼ同時にサマーソルトキックの型で蹴りを放ってバラキエルの顎を蹴りあげた。勢い余ってと顎のダメージで、されるがままに拳を向けた方向に飛ばされるままになり態勢を整えつつ着地する。その間にシオンも思い切り距離を取って一キロ近く離れたのがシオンの好機である。

 

「む、むぅ・・・・」

 

まんまと、単純な力と早さに勝る側ならではの心理を計算しての裏を掛かれたバラキエルは僅かに戻った自我でシオンの姿を見た。

 

「あ、あれ・・・・はっ?」

 

バラキエルは驚愕した。離れて見ている朱乃もだ。シオンの身体から立ち昇る力の属性は別の場所で木場が使わない事に疑念を抱くもの・・・・『炎』であった。

 

「・・・・ぅ・・・・っ!・・」

 

炎は凄まじい圧力でシオンを中心にドラゴンを型取り始めた。この技こそが、シオンが無意識に残る記憶から編み出した。本来は相反する種族間に生まれた者にしか使えない幻の技であるのだ。シオンは今のバラキエルには虚を突いた上でコレを放つ他は無いと判断した・・・・が?

 

「いかん!止めるのだ赤龍帝っ!」

 

バラキエルは全力で叫んだ。そう、アレを放たせるワケにはいかない。自分がアレを受けるのは構わない、だが人間界に住む者がアレを放てる事の意味を知っていたのだ。

 

シオンは技を中断して、炎を沈静化させた。意図は知らないが、目的は遂げたのを理解したからだ。

 

バラキエルも呼び掛けた少年にも心底驚かされたが、何よりも・・・・。

 

「父、様・・・・」

 

自分に近付く声で理解した。長年、願っていた事が漸く叶ったのだと。

 

「朱乃、よ・・・・すまなかった・・・・本当、に・・・・すまなかった・・・・っ!」

 

「いえ、違います!私が、私が・・・・」

 

「言わんで良い!私の責任だとわかっているのだ・・・・だから、良いのだ!」

 

敢えて言わせない父の姿に朱乃も全て理解出来た。漸く戻れたのだ・・・・大好きな父と、その娘にと。

 

次の瞬間?

 

いきなり、三名の周囲はシオンのマンション前の広場に移った。バラキエルの自我が戻り、意識が戻ったのだ。

 

「流石ですわシオン様、無事に戻ってこれたのですわね」

 

「レイヴェル様?」

 

自分に真っ先に声を掛けたのはレイヴェル、他は近くにいたハズのアーシアですらシオン達の身体から離れていたのであった。何故離れていたのかと言うと?

 

 

 

・・・・・・・・つい、数十秒前。

 

 

 

(やはり・・・・)

 

シオン達の近くに残るレイヴェルは自分の予感が当たっていたと、安堵したと同時に戦慄していた。バラキエルと朱乃から雷光、シオンからは炎の力が激しく発せられた。シオンがバラキエルに止められた技を準備するまでの事だ。

 

他はレイヴェルが突然に自分以外はシオン達の身体から離れるよう提案されていた。理由は直ぐにわかりますと促されてだ。少し前にシオンから立ち上った気を目の当たりにしたレイヴェルは、それ以前のレイヴェルでは無くなったように名門フェニックス家の令嬢の肩書きに恥じない覇気を出し始めたからだ。確かに、三名から放たれる気に当てられては危険だったろう、不死の特性を生来持つレイヴェルならば、何かあっても多少は耐えられると自他共に判断したのだ。

 

兎に角、元に戻ったが例の横流し品の?『バラキエルに張り付いてた星形の何か』のせいで消耗したらしいバラキエルをシオンと二人で支える朱乃の姿を見て、経緯はまだ知らないが、関係の修復すら上手く行ったのだろうと周りは何となく理解した。

 

「あら?来るまでもありませんでしたか?」

 

そして、駒王学園の方角から来たビナーが合流して来た。思惑についてはシオンが赤龍帝な為に気にする事は無く自然な声色である。

 

「皆、無事か?」

 

次に、何故か来たリムジンから別行動を取っていた側とサイラオーグ、何故かいる最上級悪魔のロイガンと新顔を含むメンバーが降りて来て、一段落したのだろうと皆が一先ず安堵した。そして、シオンのマンションにいた側には懸念が一つ残っていて、それをどう切り出すかに考えを及ぼし始めた。

 

 

 

・・・・・・・その時。

 

 

~~~~~~~~~っ!

 

 

『マンションの四階』内部から発された光と気で窓のガラスが全て粉々に吹き飛び、音もなく光に飲み込まれて消えていく、そして何かが落下したと思った。両腕を失ったそれは、自分達の知る者に首を掴まれながら地面に頭から落下して聞くに耐えない音を響かせただけではない、そのまま断末魔をあげる事も無く、首を掴んで地面に叩き付けた者・・・・全身から異様な気を放つ美女・・・・『リアス・グレモリー』により、身体を『消滅』させられていた。マンションの四階にはリアスに消滅させられた者達の身体の一部が幾つも転がっていたのだ。

 

感心したような表情のビナーと、何かを悟って目を丸くした程度のシオンを除き、驚愕して唖然とする者達を見据えたリアス、全身を返り血に染め、滅びの力と赤いオーラが混じったものを纏いながら、唯一名・・・・シオンにしか関心が無いと言わんばかりに歩み寄り、この惨劇を関係無しにしてるように優しく、笑顔で語り掛けた。

 

「シオン、お帰りなさい・・『マンションの四階を荒らしてしまって』ごめんなさいね」




バラキエル氏に仕掛けたシオンの戦法はサマーソルトキック辺りまでは、ある格闘技の基本的なものだな。

敢えて重要なとこ以外を取り上げる手腕は感心してやるしかないよ。

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