ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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 主役夢見心地中故な展開。


リアスの哀路

 むか~し、むかし?

 

 めいかいのあるばしょ。

 

 『グレモリー』といういえにうまれたおひめさまがいました。

 

 おひめさまは、かぞくにそれはそれはあいされてそだっていましたが?

 

 ゆうしゅうなかぞくにくらべて?

 

 『ぼんよう』でした。

 

 がんばりはしましたが、かぞくとのさはうめられずにいました。

 

 それにくらべて、おひめさまのいとこのおとこのこは、おかあさんといっしょにすてられるまでのきょうぐうでしたが?

 

 からだをきたえるしかなかったから、それをがんばってがんばって、つよくなりすぎて、すてたほうのかぞくもせけんもみかえしてしまいました。

 

 それがくやしくて、おひめさまは、めいかいからにげだしてしまいました。

 

 にげだしたさきで、おひめさまはかわいいおとこのこに、じぶんにとっておうじさまなこにであいました。

 

 そのおかげで、とくにくらべられたおにいさんすらもじぶんだけでかてなかったものにかってしまうまでになりました。

 

 まわりをみかえしたおひめさまは、しあわせになるきっかけをつかみました♪♪

 

「うん、このまま上手く行けば後の世代?にこんな風に童話や紙芝居とかにしてもらえるかもね」

 

 セラフォルーは、呑気に自分の脳内で人間界で言う紙芝居のおじさんが小さな公園等で、子供に聞かせてあげるのどかな光景を思い浮かべていた。だが、あくまでこのまま上手く行けばな話である。

 

「う~~ん、成果があって何よりだけど?これからがほんとうの地獄だ・・って言えちゃう段階に入っちゃったよ、そう言えば?超能力使いとの一戦目を長引かせて、半ケツになったモヒカンと言うよかパイナップル頭と戦う前にお父さんなまごごそらが来てくれるような展開なら、その場は楽だったんだよね・・・・王子だけじゃなくて息子も多分死にかけて全快したから実は強くなってたろってのが無くなってたから、後が大変だったろうけど」

 

 元ネタが有名な作品の身も蓋も無い部分の弄り方だが、セラフォルーの言い分は一理ある。要は真打ちに任せるだけではダメ、他も頑張らなければいけないんだと言っているのだ。

 

「まあ、良いや・・・・命あっての物種ってもんだから、暫くは『色ボケ』になってなよ・・・・そもそも簡単に楽になろうとするのは減点さ」

 

 セラフォルーの周囲は凍結し、表情はとても溺愛する妹に見せられないと本人が自覚しているものとなっていた。彼女も胸の内に秘めたものが計り知れないのだ。

 

「『楽に』・・・・か、簡単に楽になれると思うなリアス・グレモリー!!私だけは、それは絶対に許さない!そうさ、許してやるもんかっ!」

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 リアスは、夢を見ていた。

 

 何度も見た夢、同じようで少しずつ掘り下げられた内容。

 

 異なる世界の氷の大地・・・・その氷の行く末を決定づけた幻の技。

 

 そう、リアスを救ったのはシオンが放とうとした『炎』・・・・あの時、勝負を急いだ自分がしてやられた経緯を思い返していた。

 

「・・・・」

 

 精神を研ぎ澄まし、片手に集中させた滅びの力を本格的に固めるように握り拳を型どるリアスに包囲する形となった五名は戦慄していた。アレを受けてはいけないと判断したが、特に動揺した後方の左側にいた者に狙いを付けたリアスは魔力で自身を加速させながら突っ込んだ。仕掛けられた側がガードを固めたが、隠し持ったナイフを右手の甲に突き刺して虚を突き、右側に回り込んだ。それを辛うじて見極めて残った左腕で攻撃を受け流そうとするが、リーダーが叫ぶ。

 

「避けろ!」

 

 ズシッと嫌な音が響き、リアスの一撃で腕をもぎ取られた。

 

「~~っ!」

 

 必死に悲鳴を堪えるが、溜まらずに崩れ落ちてしまう、そして反対側に陣取った者が背後からリアスを狙うが、その時は思い切り距離を取ったリアスにまたも虚を突かれ、再度突撃して来たのを確認した。今度は身体を思い切り低くしながらであり、ボディを狙いと推測した。ガード仕切れないとしてボディを打ち抜かれた瞬間を狙ってリアスに上から両手に構えた短刀を突き刺すべく身構えるが、リアスが狙ったのはボディではなく左の大腿部だった。またしても嫌な音と共に身体の一部をもぎ取られ、リアスは再び思い切り距離を取る。

 

 先にやられたもの同様に悲鳴を堪えて、もぎ取られた部分に気を集中させる。止血程度しか出来ないが、失血死は本意ではない。二名は、せめてリアスを取り押さえてその瞬間を他に突かせるべく思考を切り替えた。

 

「リ、リーダー」

 

「狼狽えるな・・やられた側は反応仕切れてない訳ではなかった・・動きを捕らえられない程ではない、それに欠点も見えた。冷静に対処すれば何とかなるぞ」

 

 リーダーは戦慄しながらも実に的を得た解析をしていた。マンション内の幻術で実際の距離以上に厄介な間合いにされているが、闘志は萎えていない。

 

(幻術無しでも、あの攻撃は驚異だ・・・・流石だリアス・グレモリー!確かにグレモリーの生まれでなければ、各勢力から驚異の若手とされてたろう・・・・だが、未熟なのも確かよ!)

 

 リーダーは正確に解析していた。グレモリーの凡庸な姫君として広まった表向きの評価に惑わされずにリアス個人の能力を充分に驚異として評価していたのだ。

 

 正に皮肉・・・・以前の旧魔王派と同じである。自分なりに鍛練を積んだリアスの力は冥界よりも他勢力の方が実に正当に評価出来ていた。シオンに助けられた日にリアスを打ちのめしていた者達は、あくまで駒王町付近のはぐれ勢力の中でも上級の部類の集まりだったに過ぎないのだから。

 

 一方のリアスは、激しい消耗を強いられていた。

 

 自分を挟んでのチャクラム攻撃がそれ程の速さで無かった理由の一つは、恐らくマンション内の幻術でわずかに距離感が狂わされていたからだろう・・・・だから、自分は普通の戦場でも対処が難しい速度で動いて虚を突いたつもりだ。だが、彼等は此方の動きに反応して致命打を避けた。見事な一撃離脱を決めたとは到底思えずに実際は薄氷を踏む思いである。

 

(この戦法は消耗が激しいし、一撃放った後には次を新しく用意せざるを得ない・・一気にリーダーを・・が、定石よね?ならば・・・・)

 

 そして、リアスは勝負に出た。

 

 またも魔力で加速しながらリーダーに正面から突っ込んだ・・・・が、ここで先程とは違う方向からの虚を突いた攻撃を繰り出したのだ。

 

「・・・・っ!?」

 

 敢えてボディを撃ち抜かせ、離脱する前に取り押さえようとしたリーダーを襲ったのは、リアスの滅びの力を纏った右拳からでは無く、左拳のモーション無しのショートアッパー・・・・斜め下から放たれた一撃は顎では無く、リーダーの心臓であった。加速しての姿勢が綺麗な一撃に無防備な心臓を強打されては格闘技であるように心臓の機能が一瞬止まる。そうなれば流石に反撃は出来ない、事態を察した無傷な二名がリアスに襲い掛かるが、リアスは今度は滅びの力を纏わせたままの右拳の一撃で二名の両腕をまとめてもぎ取ってしまう。別に命を取る気はないと言うワケではない、多勢に無勢もある上に流石に身体を打ち抜くには隙が多く、首を狙うにも相手は防御に長けてる為に、腕のように攻撃や防御に動かす際に隙が出来る為に見舞い易い箇所を狙うのが得策なのだ。

 

 どうにか身体の自由が戻り掛けたリーダーの様子を見て取ったリアスは、喉元を掴んで壁に叩き付け、最後の勧告を行った。

 

「降伏なさい、このまま力を込めれば貴方の首を消滅させられるわ?逆転の手段は無いのはわかるわ」

 

 リアスの言葉は真実だ。消耗はしているが、何かの予兆があり次第に力を込めて言った通りには出来る。そして、リアスは油断はしまいと徹底していた。この図は自分がシオンにあの仕打ちを行ってしまった瞬間を嫌でも思い起こすものだからだ。

 

「リ、リーダー・・・・無念ですが」

 

「そ、そうです・・・・仮にリアス・グレモリーをどうにか出来ても、マンションの外にはまだかなりの戦力があるハズです」

 

 他の者達も重症である上に、状況はわかっている。リアスを倒し、シオンの部屋に潜入して何かを得たとして、脱出が困難なのだ。苦痛に呻く、リーダーは身体の力を抜いて両腕を下げた・・・・が?

 

 最後の力のように隠してた『それ』をリアスの左脇腹に張り付けた。

 

「~~~っ!?」

 

 意識が失われて行くとリアスは感じた。

 

 そう思ったら、目の前にシオンにアーシア、眷属やソーナ達に冥界にいるハズの身内が現れては消えて行く。

 

「ふふ、詰めが甘かったですねリアス・グレモリー?流石に貴女に張り付ける程度出来れば勝ちの代物が我等の手にあるとは予想出来なかったのでしょう?抵抗は無駄です。それは『貴方の兄ですら破れなかったもの』ですから」

 

 息を整えたリーダーの言葉に自分に張り付けられたものの正体をリアスは察した。

 

『堕天使陣営の横流し品』

 

 確かに、言われるように事態を悟っても既に遅い。自分がシオンに仕掛けたもののように相手に触れただけで形勢を変えてしまうものはそうはないと考えてしまった甘さを悔いる暇もなく術式が進んでいく。

 

 リアス自身もロマンスで聞いている。対象の自我を封じ込め、大事な思い出に浸らせながら操るもの・・・・自分の・・・・今の一番自分の大事なものとは・・・・と考えた時に、リアスの意識は途絶えた。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 リアスの奪われた意識が辿り着いた光景は学園だ・・・・シオンの力になろうとして、ソーナ達からコメディと揶揄される日々、一例として自分のせいで女の裸程度に狼狽えまいとしていたシオンは、クラスメートの問題児、坊主頭と眼鏡の二人が持ち込んだ雑誌・・・・所謂エロ本を風紀委員が取り上げた場に居合わせ、苦手意識と戦う姿勢が迷走して本について解析を真面目に試み始めて、周りが阿鼻叫喚となった。

 

『救急車を呼びなさい!』

 

『シオン・・・・俺達が悪かった』

 

『ああ、本当に悪かったから、染まらないでくれ・・・・』

 

 紫藤イリナに振り回された過去が元で隠れた良心の一角であり続けてしまったシオンの唐突に規格外?な行動は衝撃であった。真面目な人が然り気無く冗談を言った際にとんでもない騒ぎになる一例に近いのかもしれなかった。更に、リアスが乱入してシオンがこんな事に及んだのは自分の裸に狼狽えてしまったからと周りに釈明してしまい、益々混迷してしまった。

 

 そんな騒ぎの度に『具体的な事』を言わないよう苦心しながらのやり方で通してシオンに平謝りを何度繰り返しただろうと、リアスは疑いも無く自分の中で綴られ始めた学園での日常に道に踏み入り始めてしまう。




 セラフォルー様の表情は、年少な子供は泣き出し、笑顔が絶えない者は笑うしかない恐怖に囚われ、老人はカツラが取れてるのに気付かないまま青ざめてしまうレベルのものだ。

 つくづく、こういう時に何事にも動じないのは頼りになるよ。

↑マジびびりしてる。



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