とにもかくにも、状況が整理出来ない。
リアスをお姫様抱っこするシオンは、何故か後方から妙な力が来たと思ったら、リアスが力を使い果たしてしまい、崩れ落ちたので慌てて抱き抱えたら、左脇腹にバラキエルのやられたものと同じのがあって困惑したと説明した・・これで共犯とは言ったが、少し前に引き戻したが正しいかな路線が確定したが、別に気にするまでもないとしていた・・シオンからしてもリアスに早まった真似をされては都合が悪いのだ。
他からしたら、自分達が感じた違和感はギャスパーの神器のせいと理解したが、シオンだけが真っ先に行動したのに関してはシオンには通用しない類いの術が多いのは大半が知っていた事なので騒がれなかった。ドライグが危惧しているのは、あくまでもイングヴィルドの神滅具クラスのみなのだ。
どの組も合流した側に聞きたい事が山ほどあるが、先ずは落ち着いた場が欲しかったので、この後の事についてロイガンが切り出した
「え~と?今後について相談よ?このまま留まろうにも、マンションは四階がアレだし?赤龍帝君のプライバシー次第でマンション内は却下かも含めて、先ずは落ち着けるとこに心当たりはある?」
「レイナーレの喫茶店推奨で、俺の部屋への空巣含めた問題が心配なら、詳細は守秘義務ですが、そのままにしても問題はありません、正直言って部長が辿り着かなくてホッとしてます」
シオンが即座に答えた。言うようにリアスの選択は間違いでは無かったが、命拾いしたと言うべきでもあった。仮にシオンの部屋付近に行けたしても、そこにはシオンすらドン引きなレベルの仕掛けがわんさかあるのだ。セラフォルーのサービスは度が過ぎたレベルである。それだけシオンとイングヴィルドを大事にしているのではあるが。
「では、ギャスパー様を連れて参ります。どうやら隠れてしまってるようです」
「レイヴェル様、念のために私も」
レイヴェルとイザベラはマンション内にギャスパーを迎えに行った。その光景にビナーだけが微笑を浮かべていた。
「イザベラ?貴女は初めてでしたね、マンション内に入ると違和感があって、幻術に戸惑う事になるでしょうが、今回はギャスパーさんを連れ出すだけなので気にしない方が良いですわ」
「は、はい・・・・(え・・っ?)」
言葉通り、経験が無い為に入り口を通った際の違和感にイザベラが戸惑うであろう事を心配したレイヴェルだが、ここでイザベラは言われたのとは違うものを感じた。結界の中に入ったのは理解した・・・・だが?
「イザベラ?目を丸くしてしまうのはわかりますが、早くギャスパー様を連れて来なければなりません」
「は、はい・・・・」
レイヴェルは流石に予備知識はあっても戸惑うものなのだろうと解釈上していたが、真相は違う。恐らくは先程に短時間隠れてた際に多少把握した道を進んでいると思える足付きで進むレイヴェルに追従するイザベラには。
『マンション内の幻術が通じていない』
これはリアスと同じである。だが、何故だ?と困惑するしかない、これがサイラオーグの居住地に向かう前に私心でシオンのマンション内に入るのを躊躇った事の間違いの部分である。もしもだが、イザベラにマンション内の仕掛けについて予備知識があれば、今の状況はガラリと変わっていたであろう、とにかく表情に出さずにレイヴェルが階段付近のギャスパーに声を掛けるのを見守るしかなかった。
「お、終わったのですか?」
「えぇ、どうやら?つい神器の力を発動させてしまったようですが?皆様、ご無事ですわ、先ずはこの場を離れましょう」
素直に従うギャスパーにレイヴェルは違和感があった。どうも素直過ぎる・・・・今までの例からしたら、初対面のイザベラに驚いたりするハズなのだがと・・・・否、それについてはこの場を離れてからだ。
ギャスパーは、レイヴェルに同行しながらイザベラの状態に気付いていた。おずおずと見上げたイザベラはレイヴェルに見えないようにギャスパーに苦笑を見せた。気を使うなと言われた気がした。
(この人も部長のように・・・・あ、後でお話を聞かなきゃ)
彼を知る者達を驚かせる程に前向きになっていた。非常時を考慮して封印を解く許可を根回ししてリアスに出したサーゼクスと、許可を使って封印を解いたリアスの決断は決して間違いでは無かった。正に嬉しい誤算だったのだ。
・・・・・・・・。
冥界においてシオンのマンション内を念のために、監視し続けていたセラフォルーは中に入って来た一名に目を見張って状況を理解した。
「あやや~~?こりゃ良いや♪♪まさかまさかイングヴィルドちゃんより早く『そこに行った』のがいたなんて、嬉しい誤算だよぉ♪♪しかも、身体も心もしっかりしてそうなのがまた良いよ♪♪」
セラフォルーの表情はリアスに怒りを露にした時とは真逆であり、心底歓迎して喜んでいた。可愛がっていた身内に良いお友達が出来た事を喜ぶような類いのものだ。
『お友達』
「う~ん、話に聞くフェニックス眷属の顔半分な仮面の娘ちゃんか・・・・『お友達』って言うには、かなり前からお熱な・・・・ヤケちゃうなぁ・・・・うんうん♪♪がんばりなよ?お姉ちゃん信じるから、しっかりと自分の乙女チックな願望を叶えなよ♪♪」
セラフォルーは嬉しい誤算にご満悦そのものであった。ドライグも思った事だが、早めにそこに行けるとしたら、恐らくイングヴィルドくらいだろうと考えていた為にイザベラは歓迎すべきイレギュラーであったのだ。
・・・・・・・・。
そして、マンションの外に出た頃には数台のタクシーから一般自動車が呼び出されていた。流石に特注リムジンのまま移動は人数の問題を除いても目立つのでグレモリーやシトリーの息の掛かった場から用意されていたのだ。リムジンは運転して来たバアルの執事と共にこの場に残る形となった。次の空巣に備えての案である。
「一名だけで平気なの?」
「寧ろ、来ないよう祈ってあげたいな」
イリナが尤もな質問をしたが、サイラオーグから発せられたのは、相手を気遣うようなものだった
後に、この執事が生まれる場を大間違いした武術の神以上に年の甲と言う言葉の体現者と評する事すら生ぬるい存在と判明したが、今は?あくまで知らぬが花である。
振り分けについては、有事に備えてのものにすべくビナーとロイガンが指揮を取っていた。女性陣の何名かは内心でシオンと同じ車を希望してはいたが?彼の性格上、この場でそのような事で騒ぐのは逆効果と判断して踏み留まったようだ。
・・・・・・・・。
「で、俺達は欲を出そうものなら?あの老練執事とやり合わなければならねえってワケだ。サイラオーグの奴、したたかさも侮れねえぜ」
マンション周辺で知られないよう戦っていた堕天使総督アザゼルは苦虫を噛み潰したような表情である。噂の赤龍帝とリアス・グレモリーだけでも驚かされものだが、最上級悪魔に未知の神器・・・・否、神滅具を持つ悪魔の少女とは・・・・好奇心を大いに煽られ、バラキエルの無事を喜びながら近付くかとも考えたが、寄りによってビナー・レスザンまでと来た・・・・サーゼクスは単に魔王級の協力者を妹のとこに出向かせたと取るか『知っているのか?』と取るかはさておいて、出した結論は?
「撤収だ。下手に例の組織に関わるよか厄介な面子ばかりだしな、チャンスはまだある。それに、早めに後に備えないと面倒そうだしな?」
割り切るアザゼルはこんな考えに及ぶキッカケを思い起こしていた。そう・・・・リアスが赤龍帝を眷属にした話が広まって数日経った時の話。
・・・・・・・・。
「駄目だっ、さっぱりわからん!」
堕天使総督のアザゼルは心底参っていた。
どう考えても、さっぱり・・・・さっぱり、さっぱりでさっぱりさっぱり歌って踊る妖精が複数出てきそうだ。
『リアス・グレモリーとシオン・アネガザキ』
得ている限りの情報から考えられる二名の力関係から性格を考えて、リアスがシオンをすんなり眷属とするのは到底不可能というのが各勢力が出している結論、それはフェニックス家を始めとした悪意無しに二名に起きた事を探る者達すら同じである。では如何にして二名が主とその兵士となったか?その秘密は各勢力が探っているものの皆目健闘もつかないのだ。
「あの二名に何かがあるのは明白だが、下手にチョッカイ出してサーゼクスが出向いたりする事態になったら厄介だしなあ・・・・それなしにしても、調べても不毛に終わりかねんのが問題だぜ」
アザゼルのぼやく事こそが、各勢力の本音だろう・・・・サーゼクス・ルシファーの身内を拉致等して調べる等で害した代償も怖いが、仮にそうまでして何の成果も無いのだとしたら?正に本末転倒だ。骨折り損ならぬ・・・・『殺され損』になるであろう。
「昔から度々起きる大戦で皮肉にも長年掛けて洗練され続けて残った技術と知識をありったけ持ってしても駄目・・・・お若い連中には何がある事や、ら・・・・?」
アザゼルは自分のボヤきで、ある可能性が推測出来た。
「洗練された?だと・・・・つまり、既存のものを昔から?『成功』『改良』そんなのを積み重ねて更なる高みに到達したもの・・・・もしも、もしもだ!あの二名に起きた事や使われたりな術がそう言うのとは真逆で『未知』のものから『失敗』『欠陥』『工夫』『不可抗力』な要素だらけで、迷走しちまった果てにその場で『完成』しちまったもんだとしたら・・・・?それなりの面子が、幾ら調べても答えが出るワケがねえっ!」
アザゼルは只、幸せであった・・・・自分が上手い立ち位置に行けたのだから。
・・・・・・・・。
回想を終えたアザゼルは、やはりあの執事のようなイレギュラーには自分が危惧する展開を防げるかもしれない期待で歓迎ムードがあるので不用意な事は控えたのである。何度か考えたが、やはりバラキエルが無事だっただけで良いとして改めて撤収をした。
思慮深くあろうとする姿勢が微妙な結果ばかりやな、若気の至りか・・・・と思わせまくるには微妙な奴等ではあるが。
若気の至りとかはともかく、お前は他にブレーキ掛けようとしてアクセル全開やらかす側やろがっ!!