ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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原作からして使うのが多くてわかりやすいネタ絡みのが有り回。


間違いか否か

 リアスは夢を見続けていた。

 

 内容は、例の横流し品にしてやられた時以降のものだ・・・・毎夜アーシアに縋りつかなければならない程にシオンにした事ばかり頭にあったが、皮肉な事に冥界にいた頃の事は、いつの間にか思い出す事は少なくなった。父の手紙の件で身内の事を時折気にする程度になった。ビナーに関しては、せめてシオンにだけは害が及ばなければと割り切るしかないとした。

 

(・・・・学園・・・・駒王学園に行きたい)

 

 朱乃は勿論、アーシアやソーナ達に自分の眷属達・・・・皆と縁を切られても仕方がない姿を立て続けに見せた。けど、構わない。後悔だけはしない、自分は皆に去られてもシオンさえ生きていてくれれば良いのだとしていた。

 

 そう思っていたリアスは、気付いたらいつもの通学路と言うより、校舎に行く道をアーシアと一緒に歩いていた。意識が混沌としていて有りのままに状況を受け入れてしまいながら。

 

 自分を気遣い、慕ってくれるアーシアは日常の全てが新鮮で楽しいと感じ、何よりも、自分とシオンがいる日常と生活を喜んでくれているのだ。それが自分にどれ程の救いになっている事だろうと、リアスは泣きそうになる。

 

(・・・・そうよ、学園に行くの・・・・学園に行けば、シオンがいる。シオンが生きているだけで私の犯した罪は自分なりに償いが出来る機会があるわ・・・・それが、私がシオンに『 』してもらえるだけの結末だったとしても。だから、行くわ・・・・最低でも、その日まで私の生きていける理由がある場所へ)

 

 

 

 

 その頃。サイラオーグは、数日前の事を思い起こしていた。

 

 

 

 

 商売とは『効率』が必要だ。

 

 同じ物を使って複数の物を出せるのも貴重だと、拳しか取り柄が無い自分には学ぶべきものが多いとして出されたコーヒーに感嘆した。

 

「ふむ、酸味が抑えてあるブレンドコーヒーならば水出しにもそのままの割合で使えると言うワケか?」

 

「えぇ、素人判断ですが?少なくとも私みたいなのがやる分には有利だと思いますよバアル様」

 

「いや、このコーヒーは本当に心を打つ味だ。それとサイラオーグで良い、バアル様等とは慣れなくてな・・・・」

 

 サイラオーグは人間界に所用で赴いた際に、資料にあった喫茶店を知り合い達と共に簡単な話し合いを兼ねて訪れていた。彼女は謙遜しているが、本当に心を打つ味のコーヒーだと、看板娘となっている堕天使に自分の素直な感想を述べた。

 

 一方、匙元士郎は緊張していた。

 

 目の前にいる男こそが若手悪魔の中でも最強とされ、主であるソーナ・シトリーが将来の夢である冥界の学校の設立に協力を持ち掛けている男だったからだ。 

 

 本日は生徒会の仕事は他のメンバーに任せて、ソーナと真羅、匙の三人で人間界に出向いた男との話し合いを行う算段である。

 

 建前はバアル眷属にも持ち掛けられた話についてだが、実を言うと、同席しているソーナが探りを兼ねてこの店に連れて来ていたのだ。シオンと懇意にしている堕天使、二人の背後にいる存在が定かでないので、もしやと考えての事だ。だが、結果は予想通り・・・・そもそも、この男は策謀向きではない、そう考えている間にレイナーレとサイラオーグの会話が続く。

 

「私の茶番相手に用件があるそうですね?」

 

「ああ、前党首達の意図は図りかねるが、俺の眷属にも女性の悪魔はいる。その悪魔達に赤龍帝との見合い話を持ち掛けられた。だが、俺は陰謀の中に踏み込んで上手く立ち回れる男ではないからな・・・・精々、顔見知りを通して俺自身が会ってみようと思った。以前から一度会ってみたかった相手だからな、だが?ソーナ達に止められてな?」

 

 そう、シトリー眷属が良く知るシオンなら会わせても構わなかっただろうが、今は駄目だとしている。前々から思っていた事だが、二人を会わせた場合はサイラオーグの性格からしてシオンに手合わせを申し込む確率が高い、シオンが未だに底を見せないが、レイナーレの知る情報と同じ程度は認識しているシトリー眷属達の予想では恐らく、二名の手合わせが実現したら拮抗した戦いになると思っていたが、最近のシオンはどこかおかしい。何故か不吉な流れが予感出来てしまうのだ。リアスの眷属となったあの日から。

 

「ソーナ達からの頼みで、俺が把握している例の赤龍帝の情報を話すのは構わんが、ここに居る者達が把握してる事以上の範囲を出る確証は持てんが、近い内に荒れるのは間違いないだろう・・・・だが、少なくとも、お前のコーヒーが奴の救いになるのはわかるぞ堕天使レイナーレ」

 

「私としては、出来ればあのお転婆姫にお仕置きの一発でもかましてやりたいんですが、彼がそれを許さないってのがヒントになるかもしれませんね?」

 

「ヒント・・・・か」

 

 ソーナ達もどこか予感していた。だからこそサイラオーグとの待ち合わせの場に此処を選んだのだ。レイナーレは恐らく、ある程度は見透かしている。そしてリアスとシオンの秘密がバレるならバレるで・・・・せめて、話のわかる相手を望んでいる・・・・更に言えばリアスに都合が悪い相手を望んでいる。ひねていると言えばそれまでだが、思うところがあるのだろう。リアスはあくまでレイナーレにとっての特別になっているかもしれない存在に何かをしてしまった相手なのだ。

 

 そして、サイラオーグには悪い予感が感じられた。これから何かが起きるとしたら、それはリアスとシオン当人達ではなく、寧ろ?この堕天使のように、シオンを思う相手に発端の芽があるのかもしれないと感じていた。腹違いの弟同様に自分のせいで影を落としたリアスが傍目には前向きになっていたのは従兄弟として嬉しいが、その代償が恐るべき規模になる予感を感じていた。

 

 そうして、ソーナに持ち掛けれた学校作りの協力についての話題に移ろうとした時だ。一般客が来店したと思った瞬間に異様な気配を感じた。入り口を見て流石に自分もソーナ達も驚いた・・・・『あのグレイフィア・ルキフグス様』が突然現れたと思ったら、悪戯に成功したように微笑みながら自己紹介をしてくれたのはグレイフィアの双子の妹であるビナー・レスザン。

 

 サイラオーグの叔父であるジオティクスからリアスへの手紙を届けに来て、用件が終わったのでお暇しようとした際に不穏分子が動いているとして人間界に一時留まる事になったと言う話だ・・・・そして、あろうことかサイラオーグをリアスの滞在する場に連れて行くよう指示が来たと告げた。指示を出したのが誰かは想像にお任せしますと言われ、前々から興味があったシオン・アネガザキに会える機会を仄めかされ、手合わせを申し込んだりしないよう条件を付けられながらサイラオーグは同行した。

 

 正直、久し振りに顔を合わせたリアスが前向きになっていると聞いていたが、一見はそのように感じたのはサイラオーグには嬉しかった。父と、その後妻との間に生まれた弟を見てきたのに、リアスの抱いていたものへの理解が遅れたのを密かに気にしていならだ。

 

 今となっては実現しなかったのが複雑な結果と言わざるを得ない事だが、欠陥品として捨てられたサイラオーグを引き取ろうと提案してくれていた叔母であり今も深く感謝しているヴェネラナ・グレモリーの娘が自分のせいで影を落とした事に思うところが多かった故に、久し振りに会った自分を見るリアスの変化は嬉しく思っていたのだ・・・・只し、シオンを間近で見るまでだ。

 

『怒った』

 

 近年で、彼は一番怒りを露にしてしまった。リアスが男性であれば、即座に拳を向けたであろう。リアスは前向きになった訳では無い、寧ろ真逆の心境になる過ちを犯したのだと、サイラオーグは理解してしまった。

 

 そして、先程の光景で確信した。

 

 ビナー・レスザンは決してリアスの味方をしている訳では無い、自分より遥かに把握している事態を部分的に加速させたいのだと。

 

 だが、それは悪い事なのか?仮にビナーの目的がリアスではなくシオンの味方とまでいかなくとも、シオンの状態をどうにかする事だとしたら、寧ろビナーの方が正しいのではないのか?と、思ってしまったのだ。

 

 小耳に挟んだ程度で、しかも禁句とすべきと忠告されているが、ビナーはレスザン家の養子として苦汁をなめた女性悪魔と聞いていた。

 

『真相を知りたいですか?ならば、死を覚悟する事からお始め下さい』

 

 シオンのマンション前に留まっている執事から忠告された事だ。自分にとっての師父とすべき存在がそうまで言う意味を考えられない程にサイラオーグは愚かではない。

 

 真相はまだ完全に把握してはいないが、リアスは自分のした事を心底悔いてはいる。仮に自分が身体を鍛えるしか取り柄が無いのとは真逆、極端に言えば北欧の主神オーディンのような全知全能の知恵を持つ者だとしたらリアスは自分に頭を下げてシオンを助けて欲しいと懇願して来た事だろう。

 

 そのオーディンに仕えていたロスヴァイセが置き去りにされてシオンを頼って来たのも、何かの意図があるのではないのか?と思い始めていた。

 

 

 

 

 重々しく回想しながら状況を整理していたサイラオーグだが?

 

 

 

 

♪♪~~♪♪

 

 例の五十人前は食べて腹八分とか言ってのける男が主人公の国民的アニメの数多い食事シーンで流れる陽気な音楽が聞こえそうな雰囲気の中で、大人数での食事が行われていた。

 

『夜も遅くなって来ました。食事と行きましょう』

 

 事もなげに言ってのけるビナーに大半が唖然とさせられたが?

 

『明日以降、身体がもたなくなるかもしれないのです。体力を回復させなければなりません、リアス様が早く目を覚ますように天の岩戸作戦?兼ねてです』

 

 天の岩戸については間違いだらけだが尤もな言い分、確かに今日の事で、明日以降がどうなってしまうのかわからない、リアスに言ってやりたい事がある面子もそれなりに気遣う面子も多いのだ。アーシアも呼んで来たビナーが用意したのは知り合いが遊びで作ったと言う元ネタがわかりやすい小型カプセル、そのスイッチを押してポイっと投げたら、この場にいる二十を越える人数でも食べきれるか否かな和洋中様々な料理が大量に出てきたのだ・・・・ビナーのペースに乗せられようと、確かに先ずは体力を回復させるべきだ。少なくとも空気を軽くしてくれたビナーには皆が感謝して気分を入れ替える為にも食事を始めた。シオンについても焦ってどうにかなるものではないとは皆が理解していた。

 

 そのシオンは大勢の食事に戸惑うイングヴィルドを気遣ってる内にイングヴィルド以上に場に入れないギャスパーに食べたいものを聞いて持って来たりと世話を焼いていた。ギャスパーはともかく、付き合いが長いイングヴィルドとのあまりに馴染み具合が溢れる光景に周りは多種多様に勘繰らざるを得なかった。

 

 後で荒れそうとは思っても、すんなりそうなれるかも不安を感じるサイラオーグであるが、先ずは今日の戦いで味方側に死傷者が出なかった事を祝うとしようと結論付け・・・・味は絶品であるが何故か巨大な軟骨やバアルの名産なリンゴでもここまでの音は鳴らないのではないか?と言いたくなる摩訶不思議な骨付き肉にかぶり付いて癖になりそうな音を響かせるのであった。




糖尿病予防に砂糖は控えてくれたか?

別作品だろがそれは!量と時間帯が問題なんだ!

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