ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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リアスは、擬似?ドライグに言われたように暫くはじっくり暫く楽しんでな状態と外の視点な回。



『堕』と『落』

シオンに抱き寄せられたリアスの身体の振るえは、以前の過ちからのものと密着した身体の感覚に対するものの割合が拮抗し始めていた。奇しくも自分の右腕が肩まで当たる程にシオンの左胸を貫いてはいない、抱き寄せる側が違って膝立ちであるのを除けば、あの過ちを犯した時と同じようになる形を膝立ちでしている状況になっていたからだ。

 

(だ、駄目・・・・こ、の・・・・姿勢・・・・でもシ、オ・・・・ン・・・・の身体・・・・気持ち・・・・っ、ぃい、のぉぉ・・・・っ)

 

僅かに頭によぎれば、そのまま罪悪感に苛まれるままを堪えていた日々なのに、実際にほぼ再現されてしまえばまるで違う。自分より細いが、しなやかに筋肉が付いた身体と背に回されている両腕の心地よい感触、衣服越しの身体を合わせるだけで、こんなにも満たされて気持ち良くなってしまうの?と惚けた思考がリアスの罪悪感に落ち着く形の思考をも染め始めてしまう。

 

改めて思う、初めて会った時から心底欲した存在、リアスは抱き寄せられるだけで胸の奥も下腹部の方も芯からも熱くなり、そのまま内部から焼かれるようだ。心臓の鼓動が早まる現状を知られてしまいそうな羞恥心に震えるが、シオンはそのまま何もしようとはしない・・・・自我を無くしている以前に知識に乏しいので、精々ここまでしか出来ないのだ。  

 

(ど、どうしょう・・・・なにか、シオンの自我を戻・・・・す)

 

『戻す』?

 

自我を戻して、この時間を終わらせるの?

 

リアスはどこかでそれを拒んでしまった。同調し続けた末の最悪の結末は頭にあるが、今の自我を無くしているシオンならば、その危険は少ない・・・・でなければドライグがこのような事を許すワケは無い。あくまで自分の身体を使って苦手意識を解消させようとしているのだ。寧ろこれを逆手に何かしらの感応を招いて、シオンの救いになる情報と知識を得る絶好の機会かもしれないというのもある。あの日とは違う経緯だが、危険が無いワケでは無い・・・・あくまで、慎重・・・・そう。

 

「慎重・・・・に・・・・っ、ぅぅ・・・・ん・・・・っ」

 

リアスの呟きにシオンの瞳が一瞬光を取り戻したシオンは微かに頷き、そのまま誘惑に屈し始めたリアスの背に回した両手を片方は下に、もう片方を横にゆっくり動かし始めた。それに気付いたリアスは両手がどこを目指しているのかを察して身体を震わせてしまう・・・・何かの感応で有益な情報を得れるかもしれないのだという事で思考の逃げ道を作りつつ自分の身体を差し出す背徳感に悶え、熱い吐息をこらえきれず僅かに漏らしてしまいながら・・・・シオンの手がゆっくりと推測される箇所に近付く甘美な不安と期待に震え続け、密着した身体だけでなく頬を擦り寄せてシオンの顔と髪の心地好い感触も堪能する。そう・・少なくとも?あの日とは違う・・・・違うのだと、リアスの思考は自分の過ちからの罪悪感に震える愚者でなく浮わついた女のものに本格的に染められ、堕ちて行った。

 

・・・・あくまで、これは擬似的な世界であるが遜色は無かった。それがバラキエルやサーゼクスすらしてやられた品の恐ろしさである。

 

仮にドライグがこれを知ったら、そうなってたかもしれないし、そうしたかもなあ?と答えただろう。その算段については時間稼ぎであり、場合によっては危険であるが『ある認識』をリアスから取り去るようしたい為に、リアスが自分からではなく『シオンから何かをして欲しい願望』が強くなる事が肝心と考えているのは事実だからだ。

 

「っ、ぁぁあっ・・・・っ」

 

声を漏らすのを更に堪えられなくなって来たリアスは自分の声色が甘いものになっていることに気付き、自我を失っているとは言ってもシオンの間近で自分が甘えた声色を出し続けている事からの新たな羞恥に震え始めた。最早、抗える余地は無い。

 

(墜ちちまえよ、リアス・グレモリー・・・・ただの取るに足らない女になあ?・・・・暫く墜ちた先で知らぬが花になってれば良いのさ、お前が本当に墜ちるのは相棒にやらかした時に知ったのとは違う闇だってのをな)

 

現実のドライグが抱くであろう真意を知る由もないリアスは嘲られる通りに墜ち行くのみだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

膝から崩れた姿勢で意識を無くすリアス。それを手足をもがれた四名は『密造品』による治療を終えて周りを警戒使いしつつ、重症の振りをしている。万が一に新手が来てしまった時に備えて敢えて油断を誘う算段だ・・・・ダメージの余韻が残る部下達に守られるリーダーは心底困惑していた。サーゼクス・ルシファーすら破れなかった名も無き横流し品、今回リアス・グレモリーに仕掛けるのが成功した際は例の赤龍帝との何か重大な事と推測される秘密を吐かせる事を目的の一つにしている。各勢力の実力者は勿論、自分達からしても・・・・特に冥界と敵対する側からは有益と推測される情報は欲しい、だが先程から慎重かつ根気良く念を送っても何も感じられないし、反応が無い。サーゼクスがしてやられた時すらも逆効果になる程即座に反応があったとされる事で有名な代物のハズだ。それについてリーダーが恐ろしい可能性を考え出していた。

 

(まさか、二名の間にある秘密とは・・・・この横流し品ですら上回る何かだと言うのか?)

 

リーダーは戦慄した。サーゼクス等の現魔王とグレイフィアの計五名ですら知られてる通りに苦心させた品の力を上回る?それがどのような事か?事によっては、現在の各勢力を簡単に揺るがせる何かだとも考えられるのだ。例えば嘗ての在りし日の二天龍のように。

 

その疑念は間も無く、リアスを監視する五名にとって最悪の形に落ち着く事で当たる事になった。

 

 

 

 

・・・・・・・・眠り続けるリアスが夢の中での回想を続け、シオン達が大人数での食事会を続ける一方、冥界では?

 

 

 

 

サーゼクス・ルシファーは実家にいる父に呼び出された。たまたま自分が近くに滞在していたのだから、細かい話をしたいとの名目ではあった。

 

「ち、父上?これは・・・・」

 

「信じられないのもわかるが、事実だ」

 

そう、ジオティクスが人間界に放った監視用に特化した力を持たせた使い魔からの知らせで恐らくは自分達が真っ先に知れた事、赤龍帝とリアスが嘗てサーゼクスがしてやられた『堕天使陣営の横流し品』を破ってしまった。二名が考えるのはビナーと同じ事だが、それは他も基本的に同じであった。

 

前者は恐らく予備知識があっての事を除けば最適な協力者あってのものだが、嘗ては自分以外の現魔王とグレイフィアが総掛かりでやっとの事を成し遂げた。これだけでも各勢力を震撼させる内容だ。

 

更に後者は?状況からして、何と単独で破ってしまった・・・・『あのリアスが』だ。そう考えてしまった時にサーゼクスはある事に気付いてしまった・・・・父ジオティクスはそれを見て取って話を進めた。

 

「サーゼクス・・・・気付いただろう?『私達はリアスを下に見ていた』のだ」

 

「はい・・・・」

 

「そうだ・・・・極端な形で実証されたが、私達はリアスを『凡庸』と罵った者達と何ら変わらなかったのだ。今回の詳細はさておき、リアスが私は愚か、お前ですら部分的にでだが凌駕するような成果を挙げられるワケがないと言える形で下に見ていたのだ。それは私達はリアスがグレモリー家の悪魔として身内である分更に酷く凡庸と見ていた事だ。それがリアスを罵っていた者達と何が違うと言うのだ・・・・っ!」

 

ジオティクスとサーゼクスは沈痛な面持ちで俯いていた。どうすれば良かったかと考えてはいたが、リアスが仮に真っ先に自分と身内の差について相談しに来たとしても自分達は真っ当に取り合ったであろうか?恐らく、有りがちに言うしか出来なかったのではない?

 

セラフォルーのように振る舞うにしてもどこか中途半端だったのではないか?

 

遠回しに考えても結局はリアスが自分達程の力を持ち得ない存在として見ている事と同意義な事をした推測しか出来ないのだ。自分達なりにリアスを気遣っていたが、至らなかった事に改めて打ちのめされたが、ジオティクスは敢えて次に話題を移した。

 

「過ぎた事は仕方がない、問題は今後だ」

 

『今後』

 

そう、これが広まったら各勢力が益々リアスと赤龍帝に注目するであろう。そこから発する事態は・・・・。

 

「まあ、当面は心配あるまい」

 

当たり前に言い放つ父に顔をしかめたが、ジオティクスは続け様に自分の考えを述べる。

 

「リアスと赤龍帝が、わかりやすく言えば?そうだな・・・・次世代の魔王級と見なされる一因になるような成果を上げた。こうなったのがリアスと赤龍帝が出会ったのがキッカケとすれば、上手くまとまればお前達のロマンスのように、後の世代には美談として語られる流れになるのではないか?」

 

そう、結果論だが自分とグレイフィアはそのような流れになっている。リアスと赤龍帝が今後どのような関係になるかは未定であるのだが。

 

「サーゼクスよ?お前なら、その流れになる事はどう思う?」

 

「は、はあ・・・・?それは寧ろ喜ばしい事で」

 

「うむ、次に敵からしたらどうなると思う?まさか、今すぐに冥界に攻め込むと思うか?」

 

「それは有り得ませんな」

 

そう、最強の魔王サーゼクスが冥界に腰を構えているだけで、慎重派の敵からしたら迂闊に動けずにいる。リアスの件もアザゼルを始めとした各勢力の実力者が迂闊に手を出せない時点でその影響が甚大だ。

 

それでも手を出すに当たり、やはり比較的御しやすいだろうリアスにすら今回の戦いで当人達の未知の力もそうだが、ビナーやロイガンが出向いている時点でサーゼクスすら敵側になったつもりで考えても不用意には動く気になれないとなる。尤もビナーに関しては今回の流れではなく彼女を赤龍帝に近付けた事でリアスに対して最も厳しい試練を与えた事が本命なのだ。サーゼクスとて推測される真相を考えたらリアスを甘やかすまではいかずとも、このままでいてはならないとする程度の覚悟はある。

 

更なる驚異とされる存在が浮き上がった結果は精々狂信的な過激派寄りになるかだが?その者達からしたら凡庸と見下していたか、或いはグレモリー家でなければ優秀な悪魔の一角としていたリアスの驚異をどの道認めざるを得ない結果が出た。有り得る事態で考えられるのは?

 

「今まで通りだサーゼクスよ、リアスへ何かを仕掛ける動きが活発になる。『極端な事をする危険に関しては元々想定はしている』」

 

そう、ジオティクスが言う通りだ。何の為にリアスやソーナだけに限らないが、人間界の複数箇所を若手に任せているかを考えから外してはならない。

 

「悲観的に言えば、大戦が再びに繋がりかねない危険もあるが、それもこの件だけでは無い。この件に関して言えば要はリアスを守れば良いのだ。私達も知らない赤龍帝との秘密を暴かれないようにと幅を広げつつな、とすれば?今の私達はリアスと距離を置いているのが利点となろうな」

 

そう、一固まりになったなりの盲点は防げる。寧ろ、父の言う守る対象から離れている利点と第三者的な視点を得れる可能性もある。割り切れたワケではないが父の良く言えば豪胆さには感嘆した。流石に自分や母がいるグレモリー家において戦闘力でなく内政力で誰もが認める党首としての地位を得た存在である。

 

「さて、サーゼクスよ?一先ずは方針は決まった。ならばだ・・・・」

 

「さ、酒ですか?」

 

父が持ち出したものにサーゼクスは目を丸くした。

 

「そうだ。不安要素が有り余っているが、今の状況は見方を変えればリアスが凡庸な姫として終わらない可能性が出来たかもしれんのだ。身内としては良い意味でそうなるよう願うべきだ。何よりも堕天使の幹部や大多数の旧魔王派等が動いた戦いが終わってリアスが無事だった事を喜ばんとな」

 

「はいっ・・・・!」

 

楽観論だが、一理はある。自分達なりにリアスに今までの埋め合わせが出来るかもしれない可能性もある事すら二名は考えていた。

 

・・・・尤も、ジオティクスは寧ろ『冥界側』の波風を予期していたが、それは自分が当たるべき事だとしていた。

 

その日、サーゼクスは何年振りかになる比較的に前向きな気分で飲む酒を父と共に味わった。

 

 

 

・・・・・・・・その翌朝、グレモリー家の来客用から希少品として保管された酒が何本も無くなった事で二名には、ヴェネラナとグレイフィアからの雷が盛大に落ちたと言う。




オチを付けた側達の大事な姫様は案外いい加減に生きていけるかもしれんな。

お前は堕落させたいだけだろ。

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