週始め、急ピッチで修復された学園での日常がまた始まった。いや・・・・始められたのだとして・・・・僕、木場佑斗は一先ずは安堵していたけど・・・・正直状況が不安で考えがまとまらない。
僕は自分なりに過去を吹っ切れた。
いや、そう言うのは大抵は勘違いなんだ。
過去があるから今があるんだって事を・・・・いや、駄目だ。この言い方は不用意にやると自分が一番過去に縛られてると指摘されかねない、何故なら自分が過去を正しく把握してるかが不確かだ。それで嫌な事を他に任せてたりしてるのを棚に上げてるどこじゃないの末に自分は同じ過ちを犯したりなんかしたら目も当てられない、しっかり見直さなければならないんだ・・・・そもそも、まだ?
『生き残りがいるかもしれないんだ』
出来ればバルパーの同類じゃなくて・・・・僕みたいなのがと思いたい。
思えば、シオン君との戦闘訓練で何度も何度も死に掛けた日々・・・・実は、シオン君も『契約者』の訓練のお陰で短期間で強くなれたらしいけど、詳細は一切秘密と言われた。それが間接的に僕達の助けになってくれてるのなら、その契約者に感謝すべきなのだろう。
地獄だったけど・・・・本当の・・・・地獄だったけど・・・・と思ってたら、ここは地獄の門程度だとか言われたけど・・・・『効率的な臨界業』と言うものを短期間でやるだけでも違うらしいとしか説明されてないけど、お陰で増した力でバルパー・ガリレィをあっさりと斬り捨てた。
訓練のお陰で単純なスピードからして向こうの想定以上になれてたからだろう。
その後に、我武者羅に敵を斬り続ける中で手にした力、嘗ての同士達がくれた力で部長の騎士としての道に戻った・・・・ハズなのだが?
「ビナーさん、部長はまだ眠ったままですか?」
「えぇ、寧ろ都合が良いでしょうね」
冷たいようだが、一理ある。僕達は自分なりに現状を考えないといけないんだ。
そう、ギャスパー君が時間を停めてしまって気付いたら部長は眠っていた。
それからレイナーレさんの喫茶店の地下室で食事をして『フィリスさん』が途中で訪ねて来て、皆がお腹いっぱいに食べて、その後に地下室と言うより地下施設にあった大浴場で入浴を済ませて、寝室で寝たが・・・・翌日になっても部長は寝続けていたので、学園内に運んだ。他の方々も自分達なりに次の行動に移るべく解散となった。今思い返しても現魔王の誰かが出向いても真っ青になるようなメンバーが揃ってしまっていた・・・・因みに、部長の為に折り詰めにした料理はフィリスさんへのお土産としてシオン君が持たせた。食べ物を粗末にしてはダメだからと言ってたんだけど、思うところがあるらしい・・・・例の何代か前の赤龍帝を知る存在とすれば、それくらいあるのは明らかだ。
部長は余程の消耗をしたのだろうが、勘繰るには危険だと思うのは大半が察している。自分も所用がありますと言って出掛けたビナーさんが言うには?
『覚悟をする他はありません』
そう、シオン君と部長が『堕天使陣営の横流し品』を破った事が広まるのが発端で大戦が再びの事態になるかもしれないのだ。
そのシオン君は、今は学園を休んでいる。何でも『冥界』に行くそうだ。サイラオーグさんとの間の取り決めでイングヴィルドさんも一緒にと聞いて不安になった。旧魔王派の崇める血筋の悪魔だから彼方で何か起きないかと考えてしまったけど、それを想定はしない面子ではないだろう。
寧ろ、問題はシオン君の在り方かもしれない、彼は部長の眷属にはなったけど?自由を与えられていて、ほぼワンマン・アーミーとでも言う立ち位置だ。次に気になるのは部長からの指示は僕や小猫ちゃんを介している場合が大半なのだ。そうする理由は部長との秘密絡みとしているけど?その辺りを冥界でどう思われてしまうのかが問題だろう・・・・それを抜いてもシオン君には、この場に居て欲しかった。土日に起きた戦いは結果だけなら完勝と言えるけど不安の種が大いに蒔かれているからだ。
とにかく、今は少しでも頭がキレる味方が欲しかったんだ・・・・例えばロスヴァイセさんだ。シオン君の留守中、あのマンションに留まる事になったらしい、部長が目覚めていれば多分交渉に行ったかもしれないとか考えてしまったけど、そこまで都合良い流れは実現しないだろう・・・・だけど?翌日に唐突な形で都合良い流れが実現した。
火曜日、朝の全校集会で新任の保険医が紹介されたのだ。前任は前から転任を申し出ていた。駒王学園は元は女子高だった学園が共学化した影響で事情は色々あるからとされてるが、冥界絡みな『裏』の事情が多いのが真相で教員の異動は普通の学校の基準と比較すると、やや多い方なのだ。そして、今回の新任保険医は?
「本日より、この学園に着任しました。『ロイガン・ベルフェゴール』です。生徒の皆様、宜しくお願いします」
な、何かしそうだとは思っていたんだけどね?ちゃんと角を隠して普通の保険医さんの白衣を纏ったロイガン様の外見は如何にも美人保険医と言える妖艶な美女だ。男女問わずにロイガンさんを歓迎する声援が響いた。
そして、放課後にオカルト研究部で普通に登校した三名は部室で対面していた。朱乃さんと僕と小猫ちゃんだ・・・・ギャスパー君はまだ普通に登校するには早いので、アーシアさんと一緒に部長に付いている。とにかく序列的に部長の代行をする朱乃さんが代表格としてロイガン様と対面している。
朱乃さんも昨日は休んだ。帰路に着くバラキエルさんと改めて話をしたんだろう、今日になって登校して来たけど?シオン君がいない事に気を取られてばかりだった。バラキエルさんを助けた時の経緯が余程のものだったのだろう、明らかにそういった類いの熱情が込められた眼をしていた。これはどうなる事か・・・・コカビエルをビナーさんに任せた後に部長と一悶着あったらしいけど、朱乃さんは部長を許す気でいる。部長が暴走した時でさえ本来の力を使おうとすらしなかった自分を恥じていたからだと。でも、それはシオン君にむざむざ皺寄せをしてしまった事の罪悪感の副産物でもあるから注意が必要かもしれない・・・・二人が喧嘩でもしたらどうなるかの意味で、シオン君のマンション内に潜入していた五名を惨殺した時のような部長と雷光の力を使った朱乃さんが戦ったら痴話喧嘩では済まないだろう。
正直、緊迫はしている。番外の悪魔とされる家系の一つであるベルフェゴール家の悪魔でありながらレーティングゲーム二位の最上級悪魔として現魔王に匹敵するとされる程の実力者、そんな御方が唐突に何故なんだ・・・・言い方が悪いが、グレモリー家の半ば家出娘である部長がいる場にそんな御方が出向く理由は複雑な方向ばかりが想像される・・・・朱乃さんがロイガンさんに理由を尋ねたら?
「赤龍帝君に興味があるの・・・・女として」
いきなり爆弾発言だ。そう言えばロイガン様は人間の十代くらいが好みとして知られている。先日にイザベラさんが助っ人に来てくれたロイガンさんに対してシオン君を守るように立ちはだかったのはそれが理由だろうね、少し見ただけでイザベラさんの想いは理解出来た。そう考えていた内に?
「実は、私にも赤龍帝君とのお見合い話が来てたのよ、嗜好とか含めて都合良いって周りが判断したんでしょうね」
次の爆弾が投下された。朱乃さんが凄まじい気を放ち始めた。本来の力を使う決意をしたのはともかく、過激な面が出始めている。
「あらあら♪♪血気盛んね?・・・・『稽古』を付けて欲しいの?」
優雅にソファーに座りながら足を組み直しつつ少し口調が変わっただけで朱乃さんは勿論、僕達ですら気圧されてしまう、流石にまだ青い僕達では役者が違った。僕と小猫ちゃんと違って間近で見てない朱乃さんでは認識具合が違うので不用意な事になった。
「ふふ、冗談よ?せめてイザベラさんにイングヴィルドさんならともかく?力を使い始めたか、安定させられるか怪しいレベルじゃ、私の稽古相手になんかなれないわよ?眠っているリアス姫とそこの騎士君も含めてね」
・・・・悔しいとしか言いようがないが事実だ。
イングヴィルドさんが旧魔王の血筋と間一髪で知れなかったロイガン様だが、それ無しに僅かな共闘で二名の力を目の当たりにして最大級の評価をしている。
朱乃さんも先日にイングヴィルドさんに完全に気圧されてしまっていたし、聞いただけでイザベラさんの異常なレベルアップ・・・・わかりやすく言うとどこかおかしくなる前のシオン君と僕がいきなり近接戦闘で互角になった程のものだとしていたので、少なくともロイガン様の言う通りだと認めざるを得ないのだ。
現実を受け入れるしかないというまとめだが、木場と朱乃は、小猫の表情が僅かに暗くなってる事に気付いてはやれなかった。今回の戦いで何ら成果を上げてないし得られるものが無かったのは間違い無く自分だと小猫は自覚してしまっていたからだ。朱乃と違って、自分の本来の力に向き合うキッカケすら掴めない自分が情けなかったのだ・・・・しかし、朱乃のような経緯は本来あってはならないのだと朱乃本人がわかってはいる。頼ろうとした先輩は冥界に向かっていたのでどうすれば良いのかわからない・・・・別の場所でリアスに付いているアーシアも少しずつ自分の非力さを気にし始めた事で不和の芽が出始めていた。
保険医が来たが、脇役に落とされる者達はどれくらいだろうのう?
いや、ロイガンさんはそういうのとは無縁だよっ!・・・・多分・・・・。