ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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章分けとかどうしょう?


葛藤

『良いか・・・・朱乃?』

 

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 姫島朱乃は、先日に父に言われた事を思い返していた。

 

『父と和解出来た』

 

 食事と入浴を終え、気が緩んだのかいきなり本来の力を無我夢中に使ってしまった代償の疲労に襲われて翌日の登校は無理と判断され、地下施設で療養しながら父と語り合った。

 

 今回の事後処理について、打ち合わせをし始めたバラキエルは一旦は外に出たが、少なくとも?その日の夕方迄しか滞在してはいられないとビナーに聞いた。そしてバラキエルが戻ってくる前に地下施設の調理場を借りて、亡き母から教えて貰った料理で作ったお弁当を用意して渡した。涙を流して暫くの別れを告げ、施設を出る前に周りを確認して神妙な表向きでバラキエルは娘に問うた。

 

『朱乃よ、一つ聞きたい・・・・私の精神世界内でシオン君が私に放とうとした炎属性の技を見てどう思った?』

 

 唐突な質問、朱乃には何か強力な技を使おうとしたくらいにしか感じなかったと正直に言う他は無かった。そして、少々逡巡してバラキエルは更に問うた。

 

『シオン君が気になるか?』

 

 それがどの意味で告げられているかは図りかねるが、朱乃は赤面して頷いてしまった。娘が抱いた想いに少し複雑そうにしたバラキエルには気付けなかったが。

 

 そして、朱乃は改めて思っていた。

 

 バラキエルの精神世界の中での時間・・・・思えば、シオンも強引すぎたが自分は衝動のままにシオンに雷光の力をありったけ浴びせてしまった事を考えるのを躊躇っていた。一歩間違えば取り返しが着かなかった予感がしたのだ。実際にシオン自身も自分の状態を把握しきれてないせいでそうなりかけ、アーシア達は黙っていた事だ。

 

 それの確認以上に、バラキエルを救うべく内部での体感時間にて数時間・・・・悪夢としか言いようのない光景で無様に嘔吐し続けるまで取り乱し続けた自分を支えてくれた少年・・・・父との時間が終わったら、直ぐにでもシオンと会いたいと焦がれていたが、彼は冥界に行ってしまっていたのだ。

 

 バラキエルは朱乃の心情を察して、本題に移った。娘関係無しに言っておかなければならない事を述べた。

 

『朱乃よ?敢えて言っておかねばならねが・・・・何かあるのはわかっていたであろう?』

 

 そう、わかっている・・・・リアスが豹変した理由は何かと考えてみれば関係者全員が同じ結論を出している。

 

『次にリアス・グレモリーと仲直りする気はあるか?』

 

『はい・・・・』

 

 そう、朱乃は気付いた。まだバラキエルに歩みよれないでいた自分への対応・・・・それで一触即発になりかけたが、自分はそれ以前にリアスの暴走の時にすら本来の力を使わずにシオンに任せっきりにしてしまった・・・・自分にリアスを非難する資格は無い・・・・だが、そこには幾つか口に出せない考えがあったが・・・・。

 

『ならば、彼女と共に心せよ』

 

 後ろめたい考えを見透したような厳粛な口調に息を飲む娘にバラキエルは告げた。

 

『良いか・・・・朱乃?シオン君に『炎』を使わせてはならぬ』

 

 

『炎』

 

 

 朱乃は何となく察した。

 

 シオンがあの時に使おうとした炎属性の技、あれを目の当たりにして父が正気に戻ったのは理解している。あの炎には何があるのかと聞こうとしたが?

 

『これはお前が自力で気付かねばならぬ事だ。だから、教えられぬ・・・・』

 

 父の目には真剣な色しかない、言われたように朱乃は自分で確かめる事にした・・・・そして、バラキエルは『失言』をしてしまったのだ。

 

『蒸し返すようだが、リアス・グレモリーが暴走した時だが、お前はシオン君に任せっきりにした自分を気にしているようだな?・・・・』

 

 ここまでは朱乃の自省している部分だが、次からが問題であった。

 

『このままでは・・・・お前は今度はシオン君の事を?『イングヴィルド』さんに任せっきりにしてしまう事になる』

 

 バラキエルがどこまで考えて、こう告げたかは朱乃にはまだ知りようが無いが、これは悪手であった。

 

『イングヴィルド』

 

 あの日、シオンに歩み寄ろうとした自分を阻んだあの紫色の髪をした少女・・・・。

 

 朱乃は父を見送ったが、暗い部分を払拭出来ずにいた。

 

 そして翌日登校した自分の耳に入ったのは?

 

『シオンと小猫の話題』

 

 先週の土曜に、傍目には待ち合わせて一緒に下校し、少しして駒王町内を二人で歩き回る姿を多くの生徒が目撃していた・・・・あくまでも一般人からの見方であるが、朱乃の中に渦巻く葛藤から漏れた暗い感情が少しずつ少しずつと広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、リアスは夢から覚めようとしていた。

 

 何度か繰り返してしまった事、あるいは最悪に近い結末を招いた事を繰り返した事で、僅かだが意識が戻りつつあるが、自分が見上げる少年の瞳に意識が向いてしまう。

 

 感情も光沢も無くなった瞳・・・・視覚に頼らずに根源的な感受性を高めた彼なら何処かで把握してくれているのではと、はしたなさと打算が混じった思考をしてしまう、少しでも良いから自分を見て欲しいと。

 

 但し、リアスには見落としがあった。リアスが見た記憶の大半は『前世』のものだった事で『今世』の分の把握が不充分だった。その代償が近付いていた。

 

 オカルト研究部の部室は、身体を動かす音と堪えきれずに溢れる吐息が響くのみだ。

 

 シオンに『教材』として差し出した自分の身体の前半分は隅々まで観賞され、雑誌に載っていたような姿勢を取るか、指示通りに自分からさせられるかで全て見せた。

 

 一つ一つの姿勢になるまでの時間がリアスには言うに耐えない甘酸っぱいものに感じられていた。

 

 同意で見てもらうだけなのがもどかしい。

 

 自分が甘えるか・・・・彼から甘えられるか。

 

 彼の腕の中で、もしくは自分が腕に納められてと。

 

(・・・・ち、違う・・・・これはあくまで勉強)

 

『勉強』

 

 そうは思っても、あまりにもはしたない・・・・まるで逆光源氏計画としても・・・・はしたない事を自分は年下の少年にしてしまっている。

 

 夢と現実の境目がわかっていても曖昧になってしまう、シオンが自我を失くしているかもすらだ。平静を取り繕う為にもリアスは内容に気を付けながら問うた。

 

「シオン・・・・次は、どう・・・・」

 

「・・・・雑誌に載ってたのは、次は後ろ姿なんですけど?目線が」

 

『雑誌』

 

『目線』

 

 それを聞いてリアスはこれからやるべき事を理解した。あの雑誌に載っていたのは押し倒された女性の裸体を男性視点から見たようなのが何ページか・・・・その次には?

 

「じゃ、じゃあ・・・・あそこ・・・・ね?」

 

 リアスは考えた結果、いつも自分が使う部長用の机を指差した・・・・いつも自分が使う椅子にシオンを座らせて・・・・座らせて?

 

(・・・・わ、私の椅子に・・・・)

 

 リアスは、まるで下克上を実現されて自分の玉座を奪われたようだとまではいかなくとも、所謂・・・・禅譲?と言えるかどうかな事を自分から申し出たような錯覚があった。仮にも貴族染みた・・・・とはいっても、周りからの評価も含めた自分。名家に生まれてしまった凡庸な娘と自虐した思考で歪んだもの・・・・と認めてるようで半端だったと痛感したものから来るものかと取り繕いをしていたが。

 

 主従関係の逆転とまではいかない・・・・だけど、その気になったらと。

 

 今更だと思う、力関係は最初から彼が上なのだと、仮に『真相』を知られたら、自分が何かをする前にどうにでもされてしまうだろう。

 

(私・・・・シオンに、こうやって・・・・こんな風にされ・・・・っ、い)

 

「部長?」

 

 何をするのかと問うているのだろうが、シオンが仮に自分に対して今からやる事を命令するようになれば・・・・だが、今は。

 

(・・・・ま、待たせたらダメよ・・・・この場では私が主導権を)

 

 本心で芽生えた事を誤魔化すように、リアスは机の上に裸で上がり、椅子に座るシオンに対して震えを堪えながら語る。

 

「じゃ、じゃあ・・・・雑誌に載って、いたポーズ・・から・・・・ね?」

 

 リアスは机の上で、シオンに尻を向けて四つん這いになり・・・・はしたない箇所を差し出すように突き出した・・・・リアスは既に外面を取り繕った何もかもが削がれてしまっていたのを必死に認めまいとする葛藤とあさましい行為に溺れる欲に全身を震わせ、涙を溢れさせた。もう結末に向かって墜ち続ける他は無い。




ふむ、原作のような関係ではない為にドロドロした情念が渦巻く路線に入りつつあるな。

昼ドラかよっ!?・・・・って、普通にマトモな解説?




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