俺は、何処に迷い込んだ?何もない空間で状況を整理していた。
目的の為に冥界に来たハズだろ?
事前に用意してもらった算段でサイラオーグさんに協力してもらった。その代価を支払わなければならないとして冥界に来たんだ。手順や形式では殆ど犯罪なんだがな・・・・まして俺はともかく、イングヴィルドは今の冥界にとっては火種だろうから・・・・今更か。
冥界行きの列車内の旅、身体が動くようになったイングヴィルドが一旦マンションに戻って用意した鶏肉の黒胡椒焼きを主菜にした弁当を食べながら向かってたんだっけ。
蜂蜜漬けにしたレモンの輪切りを食べきった後に余る汁を下味付けに活用した味は良かった。俺のケチな料理を参考にしながら一年も食べ続けたからな・・・・と言ったら、首を振って真顔で言った。
『シオンは、ケチな、んかじゃないよ・・・・シオンのは、その・・・・』
顔を赤くして、何を言いたいのかわからないが誤魔化すように車窓からの景色を見てた。確かに見応えはあるな・・・・敵を異次元空間に飛ばすような技とは違う光景だ。
そうして、目的の場所に到着して・・・・そうか、手筈を整えるべく?・・・・ある程度は情報が整理出来てきたと思ったら?
♪♪~~♪♪
聞こえだしたのは頭がお花畑になってるヤツが作る歌の見本だ。
何だってんだ。歌詞に混ざるは?
『おっぱい♪♪おっぱい♪♪』
だから、おっぱいが何だってんだ!?
女の身体が何だってんだ!?
イングヴィルドやリアス部長の件だけで消え入りたいくらいなんだよっ!
こんな歌に関わるのは奴しかいない!何処にいる!?・・・・いや・・・・最初から、赤龍帝の籠手の中にいるんだろっ・・・・出てこい!
『兵藤一誠』
『やっと名前呼んでくれたか姉ヶ崎詩音♪♪』
「呼びたくもなかったんだ!俺がそうなってた気持ちがわかるのか!?」
『わかる!』
即答だ。しかも、いつの間にか目の前に立ってた奴の目は曇りが無い・・・・善人の目だが?
『いやなあ?俺がある程度経験値積んだ辺りからな?ドライグが一時期精神を病んじゃってなあ、悪かったと思ってんだよ』
「当たり前だろ・・・・二天龍と称され、神や魔王すら畏怖した存在が、何が悲しくて?『乳龍帝』だの『おっぱいドラゴン』だの言われる羽目になるんだって、俺も聞きたくないけど聞きたいわ!」
『ああ、それについてなんだが?』
何だ。あの目は・・・・真剣過ぎるぞ?ただそれだけを求道する者の目だ・・・・と感じた俺に掛けられた言葉は?
「お前は周りにいる女達の中で・・・・誰のおっぱいが一番良い?」
「『プリズミック・ミサイル』!!」
ゲームの魔法を我流で再現してみた技、一発一発が氷結に毒やら石化やらその他無数の状態異常をもたらす多種多様な色を纏う魔力のミサイルを一斉に撃ち込む技を問答無用で放った。大半が直撃してバカなオブジェになったと思ったら?
パキィンっ!
氷結が溶けて、元の黙って真面目にしてれば割りと男前な顔が出て再度向き合った。
『落ち着けって!俺は真剣なんだ!!』
「尚悪いわ!」
ふざけた流れだが、流石は嘗ての赤龍帝だと言わざるを得ない・・・・恐らく、まともでは敵わない・・・・だが?
『お前さ、女の子と仲良くしたくはないか?』
「そんな暇あるか」
『そんな事を言ってたら、匙に木場やギャスパーと妙な噂がたつぞ?』
「な、何だそれは?」
わけわからん!奴は何を見ている!?と戸惑ったら、また真面目な顔になった。頼むからそのままで脱線しないでくれ!
『じゃあ、なりたいものは?理想のヒーロー像とかはないのか?漫画とかのキャラでも良いからさ』
「西城カズヤ」
相手は目を丸くした。聞き出し易くなるようにストレートに聞いたら予想以上にストレートに返されたからか?
『西城カズヤ』
ハードボイルド医学伝説と唄われた物語の主人公で某世紀末救世主が医者やってるようなキャラ・・・・男としては兵藤一誠も痺れる憧れるであろう存在だ。
「そりゃ、渋いな・・・・」
「『ハーレム王』になれとか抜かしそうな奴が言うな」
真面目な話で、女のような容姿で、とある事情で筋骨隆々とやらな外見になれない俺が現代人として平和に生きてく場合、行き着くヒーロー像は外見も中身もあの漢だ。そもそも赤龍帝の力が出るまでは勉強と運動に力を入れていたのが今に役立っていたのはドライグすら認めている。遊びに行く時も近所の植え込みを飛び越え、徐々に高くなる場を飛び越えるのを続け・・・・それは忍者の修行法だ!とクラスメートから突っ込まれる日々を小学校に入る前から心掛けていた。
『いやな?俺が生きたのは極めて近い何とかな場所のせいでさ、つい言っちまうのさ・・・・それは別に良いさ・・・・お前はどう見ても俺の知ってる白龍皇やオーフィス寄りだしなあ』
『白龍皇』
『オーフィス』
どちらも『赤龍帝』になった以上避けては通れない・・・・けど、それについては不可解だ。肝心な白龍皇は・・・・いや、それは後だ。当面の問題からだ。
「『オーフィス』には会った。だが、何だあの娘は?あれだと・・・・」
そう言うと、奴は待ったを掛けるように手を突き出した。その目は先程の軽薄さが微塵も無いものだ。
『物怖じしないし、見透せるお前を見て安心したよ、俺はお前の周りのおっぱい・・・・じゃなくて、女の子も気になってたけど、そっちは同じ世界に生きてない俺には関係ないけど?・・・・ただ『オーフィス』についてだけは頼んでおきたかったんだ。あいつを気に掛けておいてくれ』
「わかった」
即答してしまった。相手は各界を揺るがす組織の・・・・なんだが、それについては『茶番劇』を目の当たりにしてるしな、それだけ聞くと奴は俺の前から消えた・・・・その直後に視界が違う場所にゆっくりと移って、病室内・・・・ああ、そうか・・・・。
「目覚めたか」
サイラオーグさん?
隣にいるのは・・・・。
「良かった・・・・お手数を掛けてしまいました」
『ミスラ・ウァプラさん』
俺が冥界に来た目的・・・・けど、何でだろう?
何でこうなったのかに思いを馳せた。そう、アレは・・・・と考えたら。
「シオン!」
イングヴィルドが抱き着いて来た。いきなり何だ?と思ってたら、何故か震えながら泣き出してしまった・・・・ああ、そうか・・・・イングヴィルド・・・・俺、の・・・・いや、待て!何を思おうとしたんだ?・・・・違う!違うんだ!イングヴィルドは・・・・。
「はーい♪♪ご苦労さん♪♪」
陽気な声で思考が中断された。
声の主は久し振りに直接顔を合わせた契約者様なセラフォルー様だった。
「いや違うよね?え・・・・と、先ずは・・・・ごめんさない!」
セラフォルー様が頭を下げた?仮にも現魔王でしょうと思ったら、サイラオーグさんが説明をし初めた。
ミスラさんには簡単に言うと、精神感応の類いを施す算段でいたのだが?それは予備知識があると力が弱まる難点があった。そこで、先ずは病室に入って?セラフォルー様を呼び出した俺とサイラオーグさんに、転送した出会い頭に凍結魔法を掛け、感覚を無くし掛けた際に同調術を掛けたとある。
内面に問い掛ける術で、そこから抜け出す際の気が重要だそうだが、誤算があった。
それはサイラオーグさんがアッサリと元に戻ってしまった事、聞いてみたらサイラオーグさんが見てたのは?自分が後天的に滅びの力が目覚めた世界だったと言う・・・・けど、それはアッサリ否定したと言う、そう・・・・サイラオーグさんはその力が生まれつき無く、鍛え始めてからも後天的に目覚める兆しも無かったからこそ今がある。そんなもしも等は不要とキッパリ断じた。その強力過ぎる意思の力こそが母に届いて・・・・と聞いた辺りで?
「じゃあ、俺のは一体・・・・」
正にくたびれ儲け・・・・そもそも、歴代の赤龍帝に内面で邂逅する場合はある程度に聞いてたにせよ、最後に意味深な事を問われた以外は疲れただけじゃないか!
「いや、正直・・・・すまんかった!」
セラフォルー様もサイラオーグさんの力を甘く見てたからと猛省して平謝りしているのだろうが、これはもう勘弁だ。二度と御免だ!とにかく、親子には場違いだから即刻に退散した。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
その光景に、こうなった『裏』に『自分達が絡んだ茶番』がある事をシオンには多分、冷静に考えられたら気付かれると踏んでいたイングヴィルドとセラフォルーであった。
それは、二名を氷結させた直後。
五感の内、何処かを無くすと他が敏感になるのは度々あるもの。と言ってもわざと無くすには割りと弊害があるものだ。
「だから、これですか?」
「うん♪♪」
ミスラの眠るベッドの傍には・・・・シオンとサイラオーグが氷漬けになっている。呑気にお茶を飲みながらイングヴィルドと語るセラフォルーが慌てたふりをして凍結させたのだ。
ミスラの眠る病室に入り、契約通りにセラフォルーを呼び出したが、あろうことか?『着替え中で慌ててしまったフリ』をしながら転移終了間際に二名を氷漬けにした。言うまでもないが、二名には姿を確認させていない・・・・そういうのが通じるキャラ達ではないと認識している。いざって時は先日のコカビエルの件のせいでげんなりしてたからだとする。
慌てるイングヴィルドを宥めてから、暗めの笑顔でこう告げた。
『リアスちゃんへのお仕置きの為だよ♪♪』
『リアスへのお仕置き』
その意図を聞いている内に、イングヴィルドは納得してしまった。今のシオンとサイラオーグが力を増す利点もあるからだ。それから?
(・・・・抑止の為なんだよ、イングヴィルドちゃん?私の意図通りだと君が力を増しちゃうだけになっちゃうんだ・・・・悪いけど、我慢してね)
そう、当初の予定通りにしてはミスラが目覚めるのはともかくイングヴィルドだけが力を増しては別に困らないが、早目に決着は『面倒』だとしたのだ。
(戦力は多い方が良いの・・・・イザって時に前衛を担当できて、背中を見るだけで安心出来るのは必須だよね?)
セラフォルーはサイラオーグを高く評価していた。ソーナが協力を求めるのを容認するだけで知っている者はそう見ていたが、当人は自分がイザって時には後を任せられる存在が欲しいと考えていて・・・・イングヴィルドを保護してくれたシオンに小躍りして喜んだものだったと。
「・・・・セラフォルー様?」
「あ、ありゃゴメンゴメン?」
セラフォルーの持った甘いミルクティーの注がれたカップは凍り付いてしまっていた。激情を抑えるのが難しい・・・・と思っていたら、サイラオーグが想定より遥かに早く元に戻り、シオンにばかり要らぬ負荷が掛かる展開になり大慌てだったのだ。嬉しい?誤算が多くて困るが、今はイザベラの時同様喜ぶべきとした。
思い通り以上に動いてくれるのも怖いものやもしれんな。
変なとこで学ぶべきな事を認めるのはやめい!