ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

76 / 161
眠るなんとやらの~~しさよ?


感じられるもの

 夢の中とは言え、ドライグはこのイカれた光景を静観していた。リアスは『把握されている』事にまで頭が回ってはいなかった。

 

 ドライグはリアスの本質を見抜いている。

 

 朱乃のような依存体質に近いものがあるリアスは、仮に縋る依存対象を失ったら?例えば冥界が滅びるような危機が訪れていた事態になっていても、余程の事が無ければ立ち上れなくなるだろう・・・・知った事ではない、そんなのに興味は無い、相棒が死んだりするなら本人の責任であるとしてる。それが戦士と言うものだし、生死不明の場合は相棒と距離が空く事になるから都合が良い・・・・だが、今はこれで良いとしていた。相棒の自我が無いのを関係無しに晒け出した箇所の奥底まで、実際見られてる以上のものまで見透されてしまうような錯覚に悶えるリアスを滑稽さと憐憫さの混じった冷めた感情で見やっていた。

 

『踊れ踊れ・・・・哀れな舞台でなぁ?お前が求めるものを痴れ狂った中で歪めちまえ』

 

 皮肉られたように哀れな舞台に上がって、卑猥極まる舞踊以上の痴態を晒す事しかできないリアスはただ哀れな女に堕ちるのみ、やはりドライグの思惑は到底見抜けないままである。

 

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

「ぅうっ・・・・んんっ・・・・」

 

 部室内でのリアスの・・・・シオンへの『勉強』が佳境に入っていた。薄暗くなって来た部室内で机に乗ったリアスの汗に濡れた白い裸体が震えながら動く、必死に声を出すのを堪えてはいたが、結果として艶かしい吐息を断続的に漏らしてしまう事になっていた。

 

 雑誌に載っている後ろ姿の類いの格好を幾つも見せつける自分の痴態を椅子に座って微動だにせずジッと観察しているシオンを時折首を後ろに反らして見るが、やはり自我を失ったままの瞳・・・・自分以上に白い肌のせいか、より病的と言える形に映る。押し倒されたような姿勢で前半分を・・・・後ろ半分ら机の上で卑猥な格好を何種類も見せて、これで身体の全てを時間を掛けて隅々まで見せた・・・・もしも、自我を僅かにでも戻したら?

 

 不安と妖しい興奮で全身から更なる汗を流れ出してしまう・・・・相手が女の裸体をまともに見れないという事を自分は最低の形で知っているのに・・・・。

 

 机の上には、リアスの手や膝に足を付けた跡と、かなりの度合いで零れ落ちた汗で所々が濡れている。膝立ちになって見る際に邪魔にならないよう髪をかき上げて背中から腰、お尻のラインを見せつける格好は愚か・・・・女として、意思のある人型をした生き物として・・・・決して見せてはいけない行為をするような格好すら晒した為に涙すら無数に落ちている。

 

 そのせいか、これ迄に凡庸と呼ばれ始めた頃から普段は機会的に振る舞っていたが、エチケットに気を回せていたであろうか?と思い始めてしまった。

 

 ドーピングとはいかないまでもスタミナ食から魔力の薬草を大量に食した事もある。

 

 不潔にはしてないつもりだが、はしたない箇所の手入れすら二の次だったのではないか?

 

 更には体型にさえ気を使わなかったのではないか?と思い始めてしまった。

 

 それ等が妙な影響と結果を出してはいないのか?

 

 もしも、妙な指摘をシオンにされたら?と考えた時。

 

「や、やああ・・・・」

 

 思わず声を漏らしてしまう。

 

(・・・・イヤ・・・・イヤ・・・・よっ・・・・私、そんな事をシオンに言われてしまったら・・・・)

 

 裸体をはしたなく見せるのとは違った羞恥の涙が新たに溢れ始めてしまう。

 

 今更こんな・・・・最低の奴隷のような事をしているのに何を気にしてしまっているのだろうとして振り払おうとするが?

 

 

『覚悟が出来てなかっただけじゃねえか?半端な能無し娘がっ!』

 

 

 ドライグの嘲りが聞こえたような気がした。そう、自分はいつだって半端な・・・・と思った瞬間に唇を噛み締めて首を振る。

 

「違、う・・・・!違・・うぅぅっ・・・・!(・・・・私、は・・・・なるっ!奴隷にだって・・・・何に、だってなるわ!)」

 

 そう、リアスはそれより遥かに非道な仕打ちをしたのだ。その償いの為に、はしたない事をする為の奴隷になるくらいが何だと言うのだと全力で否定した。最も既にねじ曲がり倒錯してる思考になってはいた・・・・個人的に色欲に旺盛な上流階級の爛れた教育ですらこうはしないのではないかと言う行為を続けていたが為に。

 

「シオン?まだ・・・・やるから、しっかり・・・・勉強・・・・してね?」

 

 潤んだ声色で有りがちな台詞を並べて平静を装いながら、再度雑誌に載った格好をし続けるリアスだが、直ぐ様に後悔した。無いに等しい気丈さが薄まったせいか?自我を失った状態でなくてもシオンの性格からしてゼロに近いであろう事を期待する思考が、僅かにだが頭によぎってしまった。

 

 見てるだけではなく・・・・そう、せめて・・・・触って・・・・欲しいと・・・・自分の身体に少しでも興味を示して、欲しい・・・・勉強としての教材等ではなく、ただの・・・・そう、女としてと・・・・。

 

 それを言ったら、普段のシオンならば恐らく?

 

 そんな事を考えてしまうのは輸魂法の感応のせいだと諭されてしまうだろう。

 

 リアスは、思い至る事を否定は出来ない・・・・あの時に身体の底から歓喜に震えて、それ以上の事を渇望してしまったからだ・・・・肉体的には既に・・・・と、自覚している。

 

(・・・・けど、違う・・・・初めて出逢った時に・・・・無様に敗れて、全てを諦めた時に、貴方が颯爽と現れて救ってくれた時から私は・・・・私は貴方を・・・・)

 

 そう思いながら、机の上に立って次の姿勢を取ろうとした時である。

 

 ズルっと、汗で濡れていた箇所を踏んで滑ってしまった。

 

「キャッ!」

 

「っ」

 

 自我を無くしたまま椅子に座るシオンに向かって背中から倒れ落ちてしまった。彼は事も無げにリアスを受け止めて無事を確認する。

 

「ダイ、丈夫・・・・デスカ?」

 

「は・・・・は・・・・ひ、ぃぃっ」

 

 椅子に座るシオンの膝に座り込むようになりつつ、受け止めた際に彼の腕に後ろから抱き抱えられたような格好、そうなった事に身も心もゾクゾクしてしまう、先程迄の見せつけで疲労していた為に息も絶え絶えに震える声を出してしまう・・・・一矢纏わぬ肌を直にそうされ、高ぶったリアスの身体は最早抑えようがない劣情が本格的に暴走し始めた。

 

 

 このまま、強く抱き締めて欲しい。

 

 

 身体の芯からのうずきを沈めて欲しいと。

 

 

 自分の身体をいやらしく扱って欲しい。

 

 

 輸魂法ではない目的で、私の唇を奪って。

 

 

 唇だけでなく、何もかもを貴方のものに。

 

 

 私の全てを・・・・奪い尽くして・・・・下さいと。

 

 

 それが危険だとわかってはいる。だがその事からの葛藤をどうにか沈めなければと思って口にした事が偽りの世界でも最悪の結果を招いたのがキッカケで目覚めた直後の惨劇に繋がったのだ・・・・それを夢で何度か繰り返したのだと僅かに頭によぎって、現状を理解した瞬間にリアスは、本当に目覚めた。

 

「ィィヤあァァァァァァァァァァァァァァァァヤアアアアアアアアアアアっっ!」

 

 凄まじい悲鳴を上げた。

 

 一息ついて、封印を解かれて外へのドアが開かれた時のギャスパー以上だったかもしれない悲鳴だったと自覚して、リアスは汗まみれになって飛び起きたと同時にリアスはある事を確認した。

 

(違う・・・・知っているのとは違う!私は、シオンを『 』させてはいない)

 

 安堵して、他の状況を把握しようとしたリアスだったが?

 

「あら、派手なお目覚めね?」

 

「っ、ヒっ・・ィィ・・っ!」

 

 押し殺しきれない悲鳴を漏らしてしまった。傍にいたのはアーシアやシオンではなく、何日も眠る事になる前に自分が踏み入られたくないのが明らかな域に遠慮無しに踏み行って荒らしてしまった存在・・・・親友である朱乃だった。

 

 朱乃はリアスを無様とは思えなかった。

 

『怯えている』

 

 朱乃は、自分にした事がどう返ってくるか不安なのだろうと見た。自分を救って眷属にしてくれたリアスは?身内に比べられて『凡庸』の烙印を押された頃から表向きは気丈に振る舞っていたくらいは理解していた。身内の方に関しては、自分にとっては教育者であったリアスの母を始めとした方々にどう切り出すかと思ってはいたが止められた。彼女なりの意地だったのだろう・・・・だが、そういった類いが決壊した時にどうなるかも先日に実証した。恥も外聞も無くシオンに泣き縋って父を助けてと頼み込んだ事で、冷静になれていた。

 

「長い事、眠ってましたわねリアス?もう、丸三日間ですわよ?」

 

『三日間』

 

 現象を伝えられて、道理でとリアスは思う、あの日にシオンに眠らされた日から焼き増しで何度も最悪に数えられる展開に繋がるかな夢を見た。ありったけの力を振り絞ったのが理由であるが、リアスの願望が一因でもあるに加えて、アーシアは気付かなかったのだが車から降りる際に『ビナーに渡されたもの』をシオンが使っていたのだが、説明された通りに数日間眠る事も有り得る副作用が確認されていたが、好都合ではあったのだ・・・・シオンに眠らされる前のリアスは何をするかはわからない状況であったのも事実。だが朱乃は言うべき事から始めた。

 

「よくも下僕とは言え、人様の触れられたくない部分を知っていてああしてくれましたわねリアス?『凡庸』と言われ始めた時から私達が貴女にしてた事を考えて欲しかったですわ」

 

 ビクっと身体を振るわせて、ついに来てしまったのかとリアスは思う。

 

 下僕であるが、親友や身内として接して来た朱乃達はリアスがグレモリー家の跡取りとしては凡庸と言われ始めてからも・・・・正確には出逢う以前からの事だが、その事を不用意に触れはしなかったのだ・・・・それなのに自分は・・・・と、覚悟をして朱乃からの言葉を待つ。

 

「ですが、私にも落ち度がありますから?今回はやむなしですわね」

 

 そうして、朱乃は語る。

 

 リアスが暴走した時に自分が本来の力を使う気にすらなれなかった事をレイナーレに指摘された事。

 

 フリードの煽りに掛かってしまって父が窮地に追いやられた事。

 

 そんな経緯なのに父を救う為に協力を頼まれたのに意固地になっていた事を語る。

 

 リアスは朱乃が涙を流しながら語るのを黙って聞いた。

 

「私には貴女を非難する資格はありませんわ、頭を冷やしてしっかりやり直すしかお互いありません」

 

 敢えて謝罪をさせずに自分の非を語る朱乃の変化が眩しく見えた・・・・だが?

 

「うふふ・・・・謝罪やけじめが必要ならば?二人揃って、シオン君に『お尻叩き』でもしてもらう方が私達へのお仕置きに相応しいかもしれませんわね♪♪」

 

 冗談のようで、表情に妖艶な色を浮かべる朱乃からは明らかな熱情が感じられた。恐らく父を助けてもらった経緯でと考えが及んだが、リアス自身も夢の中のようにドライグに誘導されるのではなくシオン本人の意思でと、この場合は順番待ちか朱乃と一緒になのかとはしたない思考をして、また身体を震わせてしまう・・・・覚悟をしていた事にしないでくれた親友に感謝するリアスだが、朱乃は自分の中に渦巻き始めた事を漏らしてしまった。

 

「ねえリアス?」

 

 リアスはハッとした。声色こそ普段のおっとりしたものだが、感じられるものは暗いものだと付き合いが長い身としてと同時に無意識に自分も共感する類いなものだからと理解した。

 

「貴女・・・・『イングヴィルド』さんって娘の事を何か知らない?」




夢ならば何も感じないというらしいがどうかね?

いっそ、夢であれってくらい最後に・・・・か。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。