ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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言うまでもないが、女版ヴァーリなんて言われたりするのが序盤から私作みたく参戦しては他が大変だろうな(汗)




聞かされた者と聞く者

 周りが動き出しているのをまだ知らず。丸三日も眠る前の事すら整理出来ていないリアスは親友から知らない者の名を聞かれて困惑の標準を浮かべるしかできなかった。

 

『イングヴィルド』? 

 

 誰なの?と正直に言おうとしたが、リアスには引っ掛かる事があった。繰り返した夢の中で自我を失っているとは思えない程にシオンが何故か自分の服を脱がしたりする前に子供をあやすような手腕に長け過ぎていた理由、相手候補はレイナーレかもしれないとしか考える材料は無かったからだが、まさか?その名の人物が理由だったのか?と、考えた時。

 

「何か心当たりがあるの?」

 

「っ!」

 

 実際は正解なのだが、それを知る術も無い身であるリアスは安直に過ぎるとして言えなかった・・・・それに自分が例の横流し品で歪められた世界を繰り返す夢の中でどれだけ痴れ狂った狂態を晒したかを思い起こしてしまう為に・・・・何とか話題の切り替えをと考えたが?やはり有りがちな事しか言えない。

 

「初めて・・・・聞く名前だわ、本当に・・・・本当によ?」

 

「・・・・」

 

 朱乃は暗い情念を込めた目でリアスを見据えた。シオンに関する事でリアスが言い出せない事を多く抱えているのは確信しているが、嘘は言ってないと判断した。

 

「朱乃?今度は、私から聞くわ?そのイング・・ヴィルドさん?って・・・・誰なの?」

 

 リアスからの問いに朱乃は自分が見て感じた事を正直に話した。それにはリアスも大いに心がざわめいた。

 

 小猫や佑斗が多少見ただけで規格外の力を有している娘・・・・シオンが何故かサイラオーグの滞在場に連れて行った娘だと。

 

 

 

 

 但し、小猫はシオンがイングヴィルドを一年も自室で保護・・・・つまり、同棲していた事を知らせてはいない・・・・先週の土曜にシオンのマンションで出会った者達は、翌日にシオンがどこからか・・・・恐らく例の契約者絡みで連れて来たと話を合わせてある。

 

 

 

 

 肝心のシオンは今その娘を連れて冥界に赴いていると・・・・明らかにシオンにとって重要な存在だとわかったリアスはカタカタと身体を震わせた・・・・そう、そう言った情を抱いてしまう存在としてもインクヴィルドは重要な立ち位置であるとした朱乃の考えはあながち間違ってはいない、シオンが気を許している相手である事は事実なのだ。

 

 

『このままでは・・・・お前は今度はシオン君の事を?『イングヴィルド』さんに任せっきりにしてしまう事になる』

 

 

 朱乃は正直、父からの忠告に藁にも縋る心境だったから唐突に質問してしまったと自省していた。実際バラキエルの忠告は良い方向に解釈すれば、ほぼ確実な未来を告げられた内容でもある事はイングヴィルドの一睨みだけで気圧された朱乃は本能的に悟っていたのだ。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 

 不和の芽が少しずつ出始めた事すら知らないシオン達は冥界で予定外の出来事と向き合っていた。

 

 

(セッティングされたか)

 

 

 目的は?セラフォルーすら予想外な早さで解決して思わぬ邂逅を経てで疲れた為に、冥界から早目に退散したかったシオンは、早期に自分が冥界に呼ばれた理由を諭った。イングヴィルドが多少動けるようになっていた事を知った経緯はさておいて?ミスラ婦人の療養場から退散した自分の前に現れた女性悪魔、自分をこの女性と会わせるのが、セラフォルーの目的の一つだったのだ。

 

 シトリー領内にある竹林で日本の時代劇に度々映るような古風な赴きで設けられた茶室、自分達を招いた女性が茶筅で茶を点てる・・・・イングヴィルドは慣れない正座にもだが、茶室自体にも戸惑いを見せている。

 

(・・・・俺も中学の時の文化祭以来だな・・・・一番古い記憶だと小学校の時に茶道教室に行った時かな?)

 

「前から失礼いたします」

 

 そして、二人の前に出された茶碗に戸惑うイングヴィルドに作法を一応と、シオンが声を掛けた。

 

「イングヴィルド?先ずは茶碗を右手で・・・・」

 

「あら、構いませんわよ?先ずは自由にお楽しみ下さい」

 

「はあ・・・・」

 

「いただきます」

 

 イングヴィルドは戸惑いながらやや薄目に点てたお茶を飲んだ。シオンも薄茶は作法からして初心者には具合が良いと思い出して、覚えてる限りはやりながらお茶を飲んだ。

 

(・・・・時計回りに二度回し・・・・器の感触まで大事にしながらが・・・・日本の昔ながらの作法は何故か落ち着くんだ)

 

 亜麻色の髪を外ハネのショートヘアしている以外はリアスと瓜二つな外見に茶道の和服を着込んだ美女は資料で見た通りあどけなさを残した女性のような容姿の少年と、その少年の真似をしてお茶を飲む少女をどこか微笑ましげに見つめていた。

 

 

・・・・・・・・。

 

 

『亜麻髪の絶滅淑女』(あまがみのマダム・ザ・エクスティンクト)

 

 そう唄われ、現役の中でも魔王級でもなければ敵わないとされる女性悪魔。

 

 若き頃には?

 

『亜麻髪の滅殺姫』(あまがみのルイン・プリンセス)

 

 その異名を持ち、「バアル家最強の女性悪魔」とまで唄われた美女。

 

 

 

 

『ヴェネラナ・グレモリー』

 

 

 

 ヴェネラナは自分がここに来た理由を思い返していた。

 

 嘗て、腹違いの弟の子として生まれた男子。つまり自分の甥であるサイラオーグの苦境を聞き、手を尽くそうとしたが取り合われずにいたのを何年も気にしていた。そうしている内に、サイラオーグが自分なりに身一つを鍛える事だけで境遇と戦いを始めたのを聞いて密かに彼の状況を立場上の仕事の合間に度々聞いてはいたが、いつの間にかサイラオーグと娘リアスの力関係が完全に逆転してしまった時の心境が複雑を極めたものだったが、それは触れざる話題だろうとした。冥界では今更と言えるレベルだ。

 

 そして、人間界に逃げ出した娘が何故か眷属にしてしまって波風を立てている存在・・・・今代の赤龍帝が丁度冥界に赴く情報を得た。

 

 あろうことか、甥の母を目覚めさせる手段があるとして、それは素直に喜んだが・・・・ヴェネラナは赤龍帝と『偶然を装おって会う機会』を得た。元から甥とその母の事を気にして度々足を運んでいた為に有り得る展開だ。

 

 娘が『凡庸』の烙印を押される前に、興味を持っていて自分も嗜んだ『日本』の文化である茶道を話の場に選んだのは、ヴェネラナも自分なりに平静を保とうとしたからだ。そう、赤龍帝であるシオンを一目見てヴェネラナは理解してしまった。

 

 

(リ、リアス・・・・っ、貴女って娘は・・・・!)

 

 

 ヴェラナラはサイラオーグ以上にシオンの状態を一目で見抜いた。

 

 確かに『あのセラフォルー』がああなっていたワケだと理解した。久し振りに会った彼女は凄まじい激情を殺した姿であり、何事かと思ったら、頭を下げてシオン・アネガザキに会って欲しいと頼んで来たのだ。

 

『会えば、わかります!』

 

 サーゼクスとの妹自慢で喧嘩していた現魔王の一角であるセラフォルーはヴェネラナからしたら手の掛かる娘に近い存在だったのだ。彼女が遠回しな手段を取った理由を知るべきと判断して、聞き入れた。

 

(わかったわ・・・・確かに、これを何とかしないと・・・・そういう事ね)

 

 意図はわかった。『最低でも』自分が知る手段を用いなければ最悪の結末になる!それを見透せたヴェネラナは先ずは探りを入れた。

 

「シオン君、私の娘と色々あったようですが?何か娘が迷惑を掛けたりはしていませんか?」

 

 世間話程度の感覚、親としては娘がちゃんとしているのか気になるという方向での話だ。

 

「はい、部長には世話になっています」

 

 そう応えるシオンの目の色と僅かな気の変化もヴェネラナは見抜いた。隣にいるイングヴィルドもいたたまれないようにしていた為にヴェネラナは・・・・。

 

「おやめなさいっ!」

 

 怒鳴ってしまった。

 

 とても耐えられない・・・・知る限りの情報と先程のイングヴィルドとのやり取りだけで、目の前の少年の本質を見れた結果、ヴェネラナは確信した。このままではいけないとして、直ぐ様に『今後』の為の算段を立て、シオンにはそれを記したメモを用意して渡す。

 

「イングヴィルドさん?『貴女と同じような御方』に心当たりは?」

 

「え・・・・と、イザベラ・・・・さん」

 

 イングヴィルドは何となく答えた。自分なりに理解した限りでは心当たりはイザベラであったが、シオンはわからない・・・・『わからなくされていた』とも理解している。

 

「シオン君、そのメモに書いてある事を?先ずはお茶を飲んで落ち着いた後に直ぐに実行なさい・・・・良いわね?」

 

「は、はいっ!」

 

 シオンは逆らえなかった。目の前の女性から感じるのはバアル家最強の女性悪魔を始めとした複数の異名で唄われた存在のものではなく。

 

『  』

 

 そういう存在からのもの。これこそがセフォルーが手段を知っている事以上にヴェネラナに頭を下げた理由だ。

 

「シオン君、それと貴方はイングヴィルドさんとイザベラさんの二名は先ずは保留として、周りを疑う事を前提のレベルで自分の今後を考えなさい!他でもない、貴方の為に!」

 

「・・・・は、い・・・・」

 

「声を荒くして申し訳ありません、お茶を仕切り直しましょう」

 

 定番のお辞儀をするが、ヴェネラナは額を擦り付ける程にして謝罪したい心境だった。リアスの真意はさておいて目の前の少年にした仕打ちは九割方把握してしまった。最早、自分に出来るのはシオンに提示した手段が上手く行くよう祈るのみであったが、当面は確率が高い事に安堵してしまったのた・・・・皮肉な事にリアスがシオンさえ生きていてくれれば何とかなる機会があると言う事に安堵してしまうと同時に罪悪感を抱いてしまう思考パターンとある程度似ているものがある・・・・これを敵対する者に付け入られたら流石は親娘と皮肉られたろう。

 

 状況がわからないシオンと違って事態を理解したイングヴィルドがただ悲しげにシオンを見つめる中、ヴェネラナは心を落ち着かせるように次のお茶を点て始めた。




まあ気にするな・・・・原作組と早期登場やオリジナル組の現状を比較すると・・・・勝ち目バツグン!

同情の余地が無い相手じゃない分余計に意地悪な言い方はやめい!

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