ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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細部埋めと焼き増し兼ねてな・・・・。


動揺

『丸3日』

 

 部室の中に持ち込まれたベッドで、丸3日も眠っていたリアスは朱乃に促され部室内のシャワーで身を清めるべく立ち上がるが、夢の中の光景を思い出して身体を震わせた。

 

(・・・・ち、違う・・・・私はシオンを・・・・そ、そうよ・・・・現実では、私はシオンに会って眠らされたんだから)

 

 堕天使陣営の横流し品・・・・それによって閉じ込められた内面世界、破るキッカケになった過ちを思い出し、それを眠らされた後の夢の中で何度も寸前まで繰り返したが為に過敏になっている。

 

 次に思い浮かぶのは部長である自分の机とその周辺、特に床や椅子・・・・自我を失っていたシオンにどれだけはしたない姿を延々と見せた事かと・・・・否、今は身を清めて皆に会うのが先だとしてリアスは、冷水と温水のシャワーを交互に浴びた。

 

 

 

 

 

(・・・・長いわね)

 

 朱乃は思った。身体がまだ上手く動かないにしても長いと思ったが、普通に身体を洗っているような気配しか感じない・・・・そう言えばリアスは立場上で必要なだけしか身の周りの事に気を使わなくなり始めていたのだと思い至った。

 

 仮にも付き合いが一番長い身の上だ。私生活の細部もそれなりに知ってるし、小猫が眷属になった時にも兄の薦めだと言う事を気にしてしまって自己嫌悪に陥っていたが、直ぐに自省して持ち直していたのも見て来た・・・・リアスは決して中傷の中にあるように惰弱な姫君なのではない・・・・寧ろ、それなりに気概はある。

 

 リアスに関する罵りの数々は身内やサイラオーグに比されてのものが殆どである。

 

 それを考えたら、今迄に積み重なったものを含めてシオンにした事がどれだけ重い事だったのかを改めて考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 リアスはまだ念入りに身体を洗っていた。

 

 夢の中で、隅々まで言うに耐えない形や姿勢で、自分の裸体をシオンに見せたのを思い出したせいで疼きに疼いて火照った身体を何度目かの冷水のシャワーで何とか沈めた後に、温水に切り替えて浴びた後に髪や頭部は勿論、水滴を弾く程に瑞々しい張りのある肌・・・・耳裏や脇の下から足の指の間に胸の下に・・・・思い付く限り全てを念入りに。

 

(・・・・違う、夢の中のは・・・・)

 

 擬似的な世界で、同じく擬似的なシオンに隅々まで間近で見せた身体がきちんと手入れをしているか不安になったと言う呑気な考えであるものの気を使わなくてはと思い始めてしまっていた。

 

 度々邂逅していたドライグに自分の身体は芸術的等と言われたが、あくまで誉められてるワケではないとリアスは思っていたのだ・・・・自分の身体については特に、以前冥界の若手を集めたパーティーで・・・・あのグラシャラボラス家の凶児ゼファードルと大公、アガレス家の跡取りであるシーグヴァイラが揉め始めて仲裁に入った際の事がリアスには堪えていた。

 

『はっ、処女くさいのの次は無駄に男ウケが良い身体しか取り柄の無い凡庸姫かよっ!』

 

 元から発育が良い身体を凡庸呼ばわりの罵りの材料に使われた。リアス本人もどこかで思ってしまった事を言われ、一気に沸点に達した怒りのままに黙らせようとしたが、間に入ったサイラオーグの最後通告も無視して尚も喚き散らすゼファードルは・・・・サイラオーグの加減したと言うのが信じられない拳一発で黙らされた。

 

 その時にリアスが感じたのは、感謝ではなく彼の力への嫉妬だった。

 

 サイラオーグからしたら、叔母であり自分の味方をしてくれた側のヴェネラナの娘への罵倒を見過ごせなかったのだが?自分こそがリアスの現状を更に決定付けた一因なのだと、まだわかってなかった時期の出来事だった。

 

 そんな事ばかり理解してしまう自分の惨めさに奮起して更に鍛練は積んだが、埋めようもない差を理解してしまうだけだったから・・・・と思った瞬間に身体を震わせて、涙を流して膝から崩れ落ち掛けたが、留まった。

 

(だ・・・・駄目っ、絶対に・・・・)

 

 泡を流すシャワーの温水に混じった涙も止め、リアスは自分の問題と向き合った。シオンへの過ちに繋がる事を思い起こして泣き崩れるだけでは今までと変わらない、シオンが促してくれた道に入るには、それだけでは駄目なのだと・・・・しかし以前の事を思い出したのが皮肉な光明となる。同じ路線ではサイラオーグや身内のようになるのは無理として、ひたすら技術と知識の探求をしたが?その資料の中に混じっていたものこそが、自分がシオンの封印を一時的に解いたもの・・・・だが、暴走したあの日に保管した資料は燃えてしまった。

 

(アレは・・・・私の頭の中にしかない・・・・けど、他に無いとも限らないわ・・・・そう、泣きながら逃げるだけは駄目っ)

 

 現状と今後の事をそれなりにまとめてシャワーを終えたリアスは、身支度を整えて先ずは朱乃と一緒に生徒会室に向かった。

 

 

 

・・・・・・・・。

 

 

 

 ソーナ・シトリーは予想外な事態に頭を抱えていた。

 

 リアスもそうだが・・・・問題は?と、考えていたらノック音がして近くにいた匙が此方に伺いを立てて来たので許可を出した。

 

「どうぞ」

 

 ドアが開いて入って来たのは、リアスと朱乃であった。リアスは顔色からして回復はしたようだと判断したが、皮肉な事に今入って来た情報が彼女にどう影響してしまう事か・・・・。

 

「お目覚めですか、状況からして姫島さんとは先日の事は話し合えたようですね?」

 

「えぇ、貴女達にも失礼をしたから顔を出させてもらったわ、ごめんなさい・・・・許されようとは思ってないわ」

 

 ソーナはリアスが自分達にも誠意を示す為に来たのは歓迎した。そもそもソーナにはそこまで言及するつもりはなかった・・・・まして今は。

 

「リアス?率直に言うと、貴女を責めるつもりは無いわ?先週末の貴女の見せた冷徹さは決して間違ってはいない・・・・」

 

 そう、地力が劣る身同士の考えとして、皆が生き延びる為にはリアスの取った手段は決して間違いではない・・・・眷属の王として憎まれ役を自ら買ってでも他が生き延びる確率を高める為に動いた姿は尊敬に値する。

 

「それに、シオン君と貴女が例の堕天使陣営の横流し品を破った成果が今後にどう影響するかも考えなければならない・・・・私達には貴女を責める余裕すら無くなるかもしれないのが現実です」

 

 リアスと朱乃は表情を強張らせた。破る破らない以前に、あの品が持ち出されただけでシオンやビナーの言うように大戦が再びの事態になりかねないのは承知しているからだ。緊迫感を増した二名だが?

 

「まあ、それは覚悟を決めるしかないと言われるまでもありませんからはさておき?どのみち貴女達も知るだろうから見て欲しいものがあります」

 

 緊迫しつつも、何処か肩を竦めるような仕草になるソーナに促されて真羅は『ソレ』をリアスに渡した。

 

「これ?今日発売の冥界のゴシップ雑誌じゃない・・・・っ、ま、まさか!この前の戦いが雑誌に取り上げられたの?」

 

「ある意味で間違ってはいません、横流し品絡みの事ではない部分が付箋を付けたページから載っていますよ?」

 

 リアスは付箋を付けたページを見て、朱乃も一緒に読んだ・・・・そして、内容に身体をわなわな振るわせた。生徒会室にいたメンバーも初見で驚いたが、リアスと朱乃は同じような想いを抱いた中では特に動揺が凄まじいだろうとしていた。

 

 

 

 

その記事の内容は?

 

 

 

『巷で噂の赤龍帝の衝撃の事実発覚』

 

 眠りの病に百年掛かっていた娘・・・・しかも『レヴィアタンの正統な血筋を引く娘、その名もイングヴィルド・レヴィアタン』・・・・その娘と入浴や着替えを手伝ってあげまでしながらの同棲生活を最低3ヶ月もしていたと判明。

 

 グレモリーの姫=新魔王派に属する者にして現魔王の妹の眷属の一名が旧魔王の血筋に当たる娘を匿っていた事の真相や如何に!?

 

 確認されている現在の若手悪魔の中では、サイラオーグ・バアルが格闘戦に持ち込むくらいしか勝つ手段が無いかもしれない程の力を見せつけた才女の今後は?

 

 現冥界への背信にもなり得る秘密を抱えていた真相は?

 

 言動からして、戦争反対派?先ずは話し合いをする姿勢を見せるイングヴィルド・レヴィアタンの百年前とは?

 

 立場を越えた絆?二名の関係や如何に?

 

 

 

 

 載っていたのはシオンとイングヴィルドに関するスクープ記事であった。

 

「見ての通りです。スキャンダルに取るよりもサーゼクス様とグレイフィア様みたいなロマンスに繋がる流れ寄りにするか決めかねている感じですが、かなり冥界を揺るがす事態になるでしょうね」

 

 父からの忠告で特に気にしていた朱乃と、その朱乃に名を聞かされたリアス、イングヴィルドが何者なのかと特に気にしていた二名には衝撃的である・・・・そして記事の内容には?

 

『重大な一部が除かれていた』

 

 その事をこの場で知れた可能性を逃していた事すら知る由もなかった。




おぉ、動乱の予感・・・・。

どっかのイベントに参加するカメラ小僧みたいな格好するんじゃねえ!

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