そして、ついに鉄板な展開(汗)
アーシア?
いえ、違う・・・・アーシアはまだ桜の木の近くで立っている・・・・あれは、恐らくファーブニルが作り出した擬似的なもの。あの黄金の鎧もだけど・・・・アーシアの周りから立ち上るオーラは全て・・・・龍?・・・・しかも、アレはドライグとは何か違う・・・・あれではまるで。
『邪龍』
アーシアが邪龍を従えている?
いえ、そんな事よりも私はアーシアの目が怖かった・・・・サイラオーグに『怒気』を向けられた時がまだマシと思えた・・・・光を感じない、如何にも擬似的・・・・擬似的な世界から夢で見たシオンとは違うけど、自我が無いような目・・・・けど、わかる。アーシアは私に『怒気』を向けていた。()・・・・
・・・・思って、はい・・・・た。
真実を知って、私を倒し得る何かの力があるなら、アーシアは私にそれを向けるだろうと考えた時に、アーシアの周りの邪龍達が動き出して襲い掛かってきた。
グオッン!
「・・っく」
オーラを纏った体当たり、それの余波が肩を霞めただけで骨が軋む・・・・いけない。こんなのを今の小猫が受けたら。
「小猫・・・・っ?小猫・・・・は・・・・っ」
隣にいた小猫は、いつの間にか本物のアーシアの近くに移動して、一緒にファーブニルの出したオーラに包まれていた。
「安心しろ、猫又?には今は用は無い・・・・っ、今はお前がそのアーシアと戦え・・・・そのアーシアは?お前が最悪の未来を辿ったら闘うかもしれないアーシアを俺様が再現したものだ」
『最悪の未来』
やっぱりと思った。ファーブニルの真意はわからないけど、今は戦わないとやられる。私は襲い掛かる龍の一体に対して滅びの力を込めた魔力弾を放った・・・・けど弾かれた?魔力の類いは使ってないハズなのに・・・・そうしている内に次々と来る攻撃を回避するのが精一杯になった。
・・・・・・・・。
いつの間にか、アーシア先輩の傍に移動させられて戦いを見守るしか出来なくされました。このオーラを力技で破ると先輩が危険になるからやめとけと言われましたが、ただのオーラではないので悔しいけど脱出出来ない・・・・けど意図がどうあれ、少なくともファーブニルさんは真剣だとはわかります。今は部長の無事を祈るしかありませんが、私は気付いた事があります。
「弱い」
ファーブニルさんが、ぼやくように言い放つ程ではありませんが・・・・私から見たら?少なくとも、私達の前で暴走した時やマンションの四階から落下して来たと思ったら敵を叩き付けて消滅させた時には程遠い。
部長が弱いのではなく・・・・あのアーシア先輩の形をしたものがけしかける龍が強いのではとも思いましたけど、動きを見ている内に私もわかった・・・・例えば相手がアーシア先輩の姿をしているのと関係は有りますけど、無い要素がある。
「猫又の娘、気付いたな?・・・・あの女、多分余程の状況で良く言うと闘争心?とかをありったけ出さないと実力以上のものが出ない・・・・誰に聞いたかは秘密だけど、聞いた限りで今までのを切り抜けられた力は悪く言えば『火事場の馬鹿力』と『付け焼き刃』がバレない形・・・・しっかりした形にはなれてない・・・・それに?何かが足りない」
そうです。私にはファーブニルさんの言う足りないものが何かがわかる・・・・今は?
『シオン先輩がいない』
部長が暴走した原因の一つである先輩に対して抱いた。悪く言わせてもらうと我欲・・・・次は聞いた話で朱乃先輩に対する罪悪感で強がりながらの果てに敵と遭遇した後、何かが最大限に増幅されていたのに加えて先輩と繋がりが出来てしまった恩恵もあるからこそ私達が目の当たりにした成果が出ていた・・・・全然役に立てない私よりはマシだと言う事も出来ないのが情けないです・・・・私も使いこなせる自信が無い力を使っても・・・・。
「お前達、何故戦う?」
何故戦う?・・・・正直、唐突です。
私は・・・・私は何故戦っているのか・・・・サーゼクス様に便宜を図ってもらってから部長の眷属になって、部長の力に・・・・でも、部長の為にとは言っても、部長が何を求めていたのかは・・・・周りの意地悪なのから『凡庸』と言われる前の部長はどうだったのか・・・・今は、真相が曖昧な以前に私から見てもシオン先輩にしてしまった事が関係しているとしか・・・・それが無ければ?部長はきっと周りと比べたら弱い、戦闘力の問題ではなくサイラオーグさんやイザベラさんから感じるものが無いからです。勿論私はそれ以上に弱い・・・・部長は私で言えば怖くて向き合えないものに立ち向かおうとしている・・・・私の知らない事に怖くても立ち向かおうとする部長は私よりは強い・・・・けど。
「俺様、お宝が一杯欲しかった」
「お宝?」
「金銀財宝・・・・今やってる事が出来るようになるレアアイテム?とか、一杯・・・・一杯欲しくて集めた・・・・けど、それよりもっと欲しくなったものがある」
「それは?」
「アーシアみたいな子」
「え?」
「俺様、アーシアみたいな子に会った・・・・その子みたいなのに、どんなのか話せないのになった俺様を使って欲しかったけど、いつの間にか居なくなっていた・・・・だから、俺様の前の持ち主が紹介してくれたから・・・・力使って助けた」
心当たりはあります。あのドロップ缶を装った爆弾を外に飛ばして花火のようにしてくれたのは、やはりファーブニルさん。言った通りなら箱の中の何かに入ったままでアーシア先輩を気に入ったから。
けど、やはりわからない・・・・何故、部長を?
・・・・・・・・。
尚も続く邪龍らしきもの達の猛攻に私は限界を悟った。致命傷を今のところ負わなくても体力が落ちて、一撃でも受ければそのままなぶり殺しに合うような状況になっている。
(なら、虚を突いて一気に・・・・)
その内に正面に回り込んだ邪龍が魔力弾か気弾を撃つ気になったのを見て・・・・『わざと』体勢が崩れた振りをしたら計算通りになった。攻撃を防御壁越しに受けて吹き飛ばされ、後方の校舎に叩き付けられたところを追撃しようとした敵を見て、一気に勝負に出た。
これはシオンとの訓練で、私や小猫達が一緒にシオンに攻撃していた時にやられたパターンよ。小猫の全力パンチにガードごと吹き飛ばされたと見せかけて、後方の校舎に叩き付けられる寸前に体勢を変えて壁を蹴り背後に飛んだ後に虚を突いた私達に、シオンは氷結系の魔力弾を雨のように浴びせた・・・・正直、凍え死ぬかと思ったのを模倣して・・・・上手く行った!
飛び越えられて、邪龍達が虚を突かれている今がチャンス!
アーシアの背後に飛んだ私は、一気に召還者としての立ち位置なアーシアの形をしたものに狙いを定めた。
「悪いけど、これで・・・・っ」
私は滅びの魔力を瞬時に凝縮させた一撃を空中から放とうとした・・・・けど、振り向いた私と相手の目が合った時。
「・・・・っ!・・・・アー、シ・・・・」
「っ!」
私は見てしまった。
普段のアーシアも今のアーシアを模したものの怒りを宿した目も・・・・一瞬の隙にアーシアの目が光り、私は何かの念力らしきものの圧力を防ぎきれずに吹き飛ばされて、後方の校舎に叩き付けられた後に地面に落下してしまった。
「あ・・・・ぐっ」
ザッ、ザッ・・・・と鎧を着けているから良く響く足音で、倒れ伏した私にアーシアが近付いてくる。
痛い・・・・凄く、痛い・・・・けど、私に近づいてくるアーシアが怖くて、そのまま震えるしか無かった。
駄目・・・・私は・・・・アーシアを撃てない。
あのアーシアは本物ではなくても、多分近い内に有り得る姿だ。
「リアス・・・・グレモリー・・・・っ!」
爆音が響く。
倒れ伏す部長に近距離で撃ち込まれた爆発系の魔力・・・・何とか、横っ飛びで回避したようですけど服がボロボロになった部長はそのまま転倒した。アーシア先輩は右手で何かを掴み上げるような仕草をしたら、距離が離れている部長は見えない何かに首を掴まれながら二メートル程空中に浮き上げられる形になって苦悶の表情となり始めていました。
「やめさせて下さい!!」
私は悲鳴をあげてしまいました。
わかる。
私にはわかります。私にだってアーシア先輩を殴るなんて出来ない、まして部長にはとても無理です。部長は私から見てもアーシア先輩がいてくれたから今まで何とか日常で平静を保っていたようなもの。意図はわからないけど、こんなの酷すぎます!
「じゃあ、死ぬだけ」
ファーブニルさんの無慈悲な声が響いた。私の心情を読んだかのようにですが、それは嘆くような目で否定して来た。
「俺様は『事前に聞かされた』・・・・だから、こうしてる。あのアーシア、リアス・グレモリーの一番を争うくらい恐れているものを具現化した姿」
「部長が・・・・恐れているもの・・・・?いえ、その前に!あのアーシア先輩は何ですか?幾らなんでも強すぎです!」
「それは可能性の一つに加えて、リアス・グレモリーが恐れていた事の一つ・・・・眷属達とアーシアにすら抱く劣等感のせい」
意味がわからない・・・・部長が私達に劣等感?
「そうだ。あの女、生まれの恩恵で持った能力はあるが、身内に比べて『凡庸』と言われてた。更に他に比べたらどうだ?特筆出来る点は戦闘力とかでは別に無い・・・・例えば猫又の中でも特に強力な猫ショウなお前、雷光の力を持つ堕天使とのハーフな親友と聖魔剣使いになった奴も結果的に自分の境遇跳ね返してるから益々思うとこある」
聞けば聞く程に納得せざるを得ない、今対峙しているものの元であるアーシア先輩のような希少な回復能力を持った人間も部長からしたら劣等感が・・・・それだけでなく他を分析したらな結果を組み合わせた結果が、飢餓的にシオン先輩を欲した理由で、今は部長を痛め付けるものの姿となった・・・・。
「そして、リアス・グレモリーは自分の秘密がバレて、アーシアに自分を打ち倒す力があればあんな風にされると恐れている。けど違う・・・・例えば?周り全員にバレて、それを責められてもアーシアはリアスを庇う」
そうです。アーシア先輩はそう言う人です。
だから、あのアーシア先輩は有り得る姿ではなく・・・・。
「あのアーシアはリアスが他を信じられてない証拠」
私はそれを否定出来なかった。シオン先輩を眷属にしてしまって以来の部長は力が増してはいても・・・・私達が慕った部長ではありません。もしも、今のようにシオン先輩やビナーさんがいない状況で単独でどうにもならない戦いが起きたら。
「あの女、周りを頼る事すら出来ずにいて、そのまま死ぬ・・・・だから、今の内にこうしとくべき・・・・切り抜けられないならそこまでだ」
ファーブニルさんの言う事を否定出来ない、けど私は・・・・。
・・・・・・・・。
暗い・・・・何もかもが暗くなる。
擬似的なアーシアに念動力で締め上げられる苦痛すら遠退き始めている自分、私には相手が本物にしか思えなかった。そう、私が何をしたか知られた以上はもう・・・・いっそ、この場で。
『その通りですね』
聞き覚えがある声、横を見ると。
『そうすれば貴女に用は無くなる』
「っ!?」
念力が解けたのか、私は地面に落下した。
見上げたら、冷たい目をして私を見下ろすシオンがいた・・・・何故?彼は冥界にいるハズだったのにと・・・・考えたら。
『・・・・ピンチって聞いたから来てみたら?有りがちな罠に掛かってただけですか?それなりにやって下さいって言ったハズですよ?』
余りに冷たい声色・・・・本来、彼に真っ先に向けられるべきもの・・・・だけど違う!甘えた考えからではない、確信がある。
「貴方、誰・・・・?」
身体が感覚を無くす寸前なダメージで言う事を聞かないせいで他が鋭敏になっているせいで第6感かそれ以上のが高まっているとかでは無い。
シオンじゃない・・・・絶対にだと確信出来たけど、私は自分の甘えも自覚してしまっていた。
このような状況になれば、今のシオンなら絶対に自分に冷たくしたりしない、ギリギリ手前ではどこかでそれを望んでしまっていると・・・・その理由を誰よりも私は知っているから・・・・私は・・・・。
『ぶ、部長?何を言って・・・・』
うるさい!
その声で喋らないで!当惑しているフリなんかしないで!
彼は私のもの!だからわかるのよ!
そうよ、私がそうしてしまったのだから・・・・だから、私は・・・・っ!
『部長?状況はわかりませんが、この場は俺に任せて下さい、立てますか?』
私には、失言だと気付かれない事も知らないようね。
『状況はわかりませんが』
私限定では、そう言うのはどうなるかを・・・・手を差し伸べてくれたけど、嗚呼・・・・こうなる前なら・・・・ね?
『っ!?』
・・・・・・・・。
私は信じられない光景を見ていた。
『本来の力』を使ってでもファーブニルさんのオーラを破ろうとしたのに、突然現れて部長を助けてくれたシオン先輩、リアス部長に手を差し伸べて・・・・部長はその手を取ろうとしたけど直前、握らずに横に剃らして先輩の左胸に滅びの力を込めた魔力弾を至近距離で、撃ち込んだ。
『~っ』
声もなく倒れ伏す先輩にアーシア先輩を模したものが悲鳴をあげて駆け寄ってますが。神器を発動させてない・・・・部長を睨み付けるだけでしたが、やはりと思いました・・・・『聖母の微笑』までは再現出来ないのですね。部長はその姿を見て確信したようだ。先輩達の偽物に向けてありったけの魔力弾を撃ち込み消滅させた。
いけない・・・・部長があんな事をしたら。
「余計な横槍が入ったけど、小猫とアーシアを放してもらえないかしら?」
ファーブニルさんと対面した部長は幽鬼のような表情でした。今の部長にとって支えになっている二人の姿を模したものを消滅させたのは部長には死にたくなるくらい辛い事です。
「わかった。猫ショウから離して、話を聞かせる」
「部長?」
「・・・・」
解放されて駆け寄ったけど、今の部長の顔は見ない事にしました・・・・見ては駄目です。
「さあ、こんな事をした真意を教えなさい!」
「簡単だ。アーシアの目を覚ますのは簡単だけど赤龍帝が帰るまで眠らせた方が安全かもしれなかったからお前に探りを入れた。結果は落第点だ」
『落第点』
部長は言われても仕方が無いとしてます・・・・けど。
「シオンの姿をしたものを出したのはそっちの失敗でしょう?」
「だから落第点なんだ!」
ファーブニルさんから放たれた光弾らしきものが先輩達の偽物が消えた辺りに飛んだ。虚空を切るだけのハズなそれが何かに着弾してその姿を現した。
「お、おのれ・・・・」
目付きが鋭いと言うより悪く、黒いローブを付けた若い男性?ファーブニルさんの放った光弾は身体を貫いてはいないが、着弾した場所から何か黒い瘴気らしきものが立ち上っていました。
「北欧の悪神か?赤龍帝を調べたから、姿を真似れば近付いて何か収穫あると踏んだか?グラムに縁のある俺様の近くに来たのは迂闊だ。それの影響は苦しいぞ?」
「ぬかせっ!墜ちても聖書の神を信仰する者や肩入れする者は、いずれ目にもの見せてくれるわっ!!」
そう言い捨てて、消えました。
『北欧の悪神』
そう言えば、このファーブニルさんには因縁がある場所の存在。
「あ、あれは?」
「見た通りだ。赤龍帝の偽物は俺様の出した奴じゃなかった・・・・お前には幸いだったけど、気付かない事でプラスマイナスゼロ、やはりお前は落第点だ。五体満足で済んだから有り難く思うべき」
返す言葉が私にも無い、確かにあの偽物が来たから部長は窮状を切り抜けられたけど・・・・そうでなければ今頃はアーシア先輩の偽物に尚も痛め付けられていた。
「そう言う事だ。アーシアは俺様が安全なとこへ連れて行くぞ、理由を説明してなんて言うならやはり俺様がこの場で殺す」
「・・・・っ」
そう言い捨ててファーブニルさんはアーシア先輩と一緒に消えた。好き勝手されたと言えば簡単だけど・・・・私達には成す術が無い。呆然とするしか無かった。ならば・・・・と思っていたのですが?
「小猫?皆を集めて」
「部長?」
「他の皆がどうなっているか直ぐに確認して、それからロスヴァイセさんを訪ねるわ」
私から言おうとした事を部長が言い始めた。
ロスヴァイセさんを訪ねるのはファーブニルさんは北欧の出身の龍・・・・ならば、ファーブニルさんの行きそうな場に何か心当たりが・・・・北欧の悪神と言われた偽物についても何か知っているかもしれない、私達は姿だけは見たのだから。けど、部長は・・・・。
「小猫・・・・こういう場合はね?行動よ・・・・ロスヴァイセさんやロイガンさんに泣き付くだけにしても自分から行った方が多分マシよ・・・・っ」
血が流れ出す程に拳を握り締めた部長を見て、部長が自分を奮い立たせているのを理科した私は指示通りに動いた。そう、自分達から行動するべきです。
『多分』と言ったのは、自分に自信が持ててはいないからですけど、それは私も同じです。学園に残ったメンバーには長い夜が始まったのです。
・・・・・・・・。
リアスの心は悔しさで一杯であった。自分の無力さを自覚するだけとなった結果が早速出てしまった・・・・だが、止まる事は許されない・・・・。
(私の・・・・なのよっ・・・・アーシアもシオンも私のなの・・・・あの二人なら、私は・・・・私を)
燻っていた闇がリアスの中でも動き出した。
リアスの中の光であると同時に暗い希望になり得る二人がリアスの傍にはいない・・・・長い長い夜の始まりである。
明確な目標を持たずか持ってたとしても他に見劣りしたもの=レーティングゲームで云々程度なショボさに過ごすとどう思われるかな立場なハズだがのう・・・・リアス嬢は。
隣人?に考える暇が無くさすようなトラブルメーカーに言われると腹立つよって今も言いたいわ・・・・。
※
鉄板はアーシア嬢がやはり拐われたでした(汗)