ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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アーシア絡みは、それなりにややこしくなってる。


誤算

 学校の多目的ホールには、駒王町に残るグレモリーとシトリー眷属にレイヴェルとロイガンが集まっていたが、ロイガンが見た限り全員が沈鬱な表情をして自分を恥じていた。

 

 正に、鬼の居ぬ間にであった。

 

 学園に残っていた中では最強戦力のロイガンが外に出て数名の眷属達と共に狙撃犯の取り押さえた事と気付いた事で冥界に対しての措置と連絡をしている間にリアスと小猫以外が手段が不明で曖昧だが眠らされていた間にアーシアが拐われるまでの事態が起きた。

 

 下手人があのファーブニルであるのも驚かされたが、戻って来たロイガンの話を聞いて全員が顔面蒼白になっていたのだ。

 

 人間界に潜伏か普通に混じって暮らしている純粋と転生両方の悪魔達のかなりの数が、人間界で起こりうる事件に見せ掛けて次々と殺されている。その結果、例えば普通に人間の遺体として検視に回された悪魔の遺体を調べられてはどうなるか言うまでもない。基本的に存在を秘匿しなければならない者達がそうなっては冥界上層部は四方八方に出向かざるを得ない。

 

 更に、現魔王の身内の管轄内ではなく多少離れている場が主な為に自分達も下手に勘繰られかねないと来ている。只でさえリアスの件と先週末の戦いで良くも悪くも注目が集まっていたのだ。

 

「留守にしちゃった私が言えた義理ではないけど、下手したらリアスさんとソーナさんに冥界から出頭命令が来かねないわね・・・・アーシアさんが拐われただけでも問題だしね」

 

「いえ、私達も眠らされていた有り様でしたから、ロイガン様のお陰で早期に対処が出来るハズです」

 

「それが無ければ、アーシアさんが拐われた事を捨て置く事態になったかもしれません」

 

 オカルト研究部の部室内にいた者達だけではなく、生徒会のメンバーも何者かに眠らされた不覚を取らされた。その中でソーナは自分を恥じつつも冷静に状況を見ていた。確かにアーシアはご法度を犯して自分達の監視下に置かれていた人間であり、それをむざむざ拐われたのは失態・・・・しかし、ロイガン達が気付かないままで対処が遅れては真羅が言うようにアーシアが拐われた事を捨て置くような事態に繋がりかねなかった。

 

(シオン君がいなくて幸いだったわね、私の意図が読まれるにしても、あの子を怒らせると後に響いてしまうし)

 

 ロイガンは後ろめたい思いをしながらも話を合わせる事にした。正直、この場の何名か死んでもソーナが無事なら後はどうとでもなると割り切れなければ本末転倒な立ち位置だからだ。

 

 しかし、アーシアは自分からしたらソーナの次に別格なのだ。

 

 アーシアは今回の件で拐われていないとする場合、今頃は例の横流し品を破った事で冥界内での評価が爆上がりしているであろうリアスへの搦め手に打ってつけだ。

 

 早急過ぎる処置でアーシアを追放した教会側やディオドラ絡みで失墜した側への政治的配慮の範囲拡大を狙うにも良い事尽くめである。

 

 未だにアーシアに癒して貰った事に感謝する民衆は多く、手紙一つ送るにも決められた場を介す必要があるとされる事をやったと認識されていて尚もアーシアに励ましや感謝の手紙を送る者は絶えない、更にアーシアの生い立ちや性格を考慮してディオドラに陥れられるような事態を想定しないでいた教会側を責める声まであった程だ。日数はそんなに経ってはいないが、今もこれからもであろう・・・・特に、せめてアーシアが隠棲出来る場を探し続けていたが間に合わずにいた事を気にするヴァスコ・ストラーダ猊下のような者が多かったのも大きい、これは即断した側の誤算とするか否かで物議を醸している。

 

 尤も、ストラーダ猊下達は例外としてアーシアを擁護する者達には体よく祭り上げて益を得ようとする輩から上手く便乗しようとする他勢力の声等がかなり混じっているのだが・・・・他にも数えきれない要素があるからこそリアスの保護下に入る流れが冥界の許可付きで成立したのに今回の体たらくは些か都合が悪い・・・・ロイガンからしたら別に気にする事ではないが、逆に好機と取る者達が多い事だろう。

 

 この場にいる者達は気付いていないようだが、冥界の意図はアーシアを転生悪魔にでもして自分達の側に引き込めでもしないかと考えている事だ。

 

 フェニックス家の涙は例外として、本来は悪魔には持ち得ない貴重な回復の力を持つ神器、しかも種族を問わない類いのものの使い手を得れる価値が計り知れない為にそれを望む声があるのだ。勿論ディオドラの件があるので、他に責められない形が望ましいとしてだ。

 

 しかし、その意図を叶えるのに一番適任とすべきリアスが縋り付く対象としてアーシアに依存し過ぎているのが問題だ。小細工は逆効果であろうし。

 

『リアスが悪辣な思考に墜ちた結果でやってしまったとしたら、リアスはシオンに殺される』

 

 これはロイガンからすれば賛否ある流れになる。

 

 細かく考えて、アーシアはファーブニルに拐われたと言うより保護して貰ってるとした方が良い、守りきれないならそう考えるべきとしたロイガンは自分の立ち位置上で残った者達の指揮を提案程度はする形で遠回しに取らせて貰うことにした。

 

「じゃあ、私から提案ね?ロスヴァイセさんに連絡しようにも?夕方からの事態を考えたら盗聴されたりの可能性があるわ」

 

「ぼ、僕もそう思いますぅぅっ、以前の僕のパソコンの件がありますから」

 

 ロイガンに賛同した形だがギャスパーの自分からの発言には異論は出なかった。特にリアスに何があったかを考えては、あの時のように何かの細工を仕掛けられて自分達では今で言えばロイガンに頼るしかない事になる可能性もある。

 

「では、やはりリアスさんが提案したように直接聞きに行くにしても?留守にした学園に何かされる心配がある為に残る側と行く側に分かれるのは、分散してしまう事でもある。そこを各個撃破の好機として狙われるかもしれないわね・・・・シオン君やビナーさんが不在の状況で分散の策は構成次第で危険ね?そこで学園には念の為に私の眷属達を残す。元々表立って動くと面倒だから目立たない場に置く方が良い。他は全てマンションへの構成で進める・・・・これでどう?」

 

 異を唱える者は居なかった。確かに分散した隙を突かれたばかりではそうするのが安全、番外の悪魔であっても遊学や婿候補の品定めに来ているとも出来るロイガン自身はともかく眷属達まで目につく場で動くのは都合が悪いから学園に残すのは間違いではない。

 

(・・・・但し?先週とは違って固まって睨み合いになった中でシオン君の何かを見抜かれる心配が無いからリアスさんは賛成してる部分有りだからな利点がある・・・・図らずとも計画通りってとこね、悪いけど私にも事情があるのよ)

 

 

 

 

 

 

 準備を進める中で、一番冷静で他との連携を重んじる立ち位置の木場祐斗が落ち着いて自分なりに状況をまとめようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 ロイガンさんの提案で僕達はシオン君のマンションに向かう事になったけど?例えばマンションに着いたら現魔王派から誰かが事情聴取に来ていたり、若しくは旧魔王派がまた何か仕掛けたりしてるかもしれない。冷静にならなければならないのを含めて僕達は一つ重大な事を敢えて考えないようにしていたが、やはり気になる。

 

 それはシオン君のマンション・・・・つまり、シオン君がイングヴィルドさんと同棲していた場に行く事だ・・・・アーシアさんが拐われた今となっては、浮わついた事を勘繰るような余裕なんか無いとしたいけど・・・・正直、イングヴィルドさんは比較的わかりやすかったけど、シオン君はどうかと考えた場合?生い立ちからくるものでわかったけどシオン君は少なくとも彼女には気を許している。

 

 部長を始めとして、場合によってはそれがどう作用するか心配な存在が多い。

 

 それ等を考えながら準備して、出発前には?

 

「・・・・『涙』を使ってくれたのは感謝します」

 

「・・・・いえ、私が早急だったのです」

 

「「申し訳ありませんでした(わ)」」

 

 レイヴェルさんと小猫ちゃんは気まずそうだった。結果的にお互い不用意な事をやったからこうなったのだろうと考えているからだろうけど相手が何枚も上だったとするしかないとしてお互いに謝罪した。

 

 正直、僕達がいつの間にか眠らされていたのは聞いたところのファーブニルさんの仕業なのか判断が出来ないんだ。この際は桐生さんに誰からファーブニルさんの力が出てきた箱を預かったのかも聞くべきかもしれない・・・・けど、小猫ちゃんに掛けられた呪いの件まであるから迂闊に動くのはやめた方が良い・・・・やはり、今はロイガンさんに頼るしかない・・・・悔しいけど、自分達が上手く立ち回れない現実を受け入れないと始まらない、現実と事実を無視して成長も進展も無い。

 

 

 

 

 

 一方で、他とは特に一線を画す存在がいた。

 

 

 

 

 

(つくづく嫌な女よね)

 

 集団で警戒しながらシオン君のマンションを目指す子達のリーダーと言うか引率者?な私、ロイガン・ベルフェゴール・・・・勿論、角は隠してます。

 

 正直、私を頼るしかない状況なのよね・・・・冥界も私が調べた事だけで迂闊に動けない、リアスさんの件があるから移送系の不安が無くても不用意に魔王様達に助けを求められない。

 

 と、言うより?わかっててもどうにもならないわよねえ・・・・全員眠らせて、聞くとこによるとファーブニルに色々吹き込むなんて出来るのはオーフィスが来た以外に考えられないし。

 

 そして、途中で襲撃受けたりせずに到着したわねシオン君の住むマンション・・・・なんだけど?これはこれは・・・・夜中の無機質なマンション肝試しには早いとか言える胆力があるのはビナーさんくらいね。

 

「行きましょう、早くしないと」

 

 リアスさんが率先して入って行く・・・・アーシアさんが拐われてるから動いていた方が楽ってとこなんでしょうね・・・・まあ、これから嫌って程に動く事になりそうだけど?

 

「・・・・っ!・・・・そ、そん・・・・なっ」

 

 驚いてるわね、まあ気の毒だけど現実を受け入れるべきね。

 

「リ、リアス?これは・・・・『先週のとは違う結界が張られている』のですか?」

 

「でも、リアス部長には通用しないハズっすよね?」

 

 皆が入ってから状況を理解して?匙君が先週に知った事を述べているけど、計算違いでショックでしょうね。知る限り、敵と認識されなければ発動しないのが特徴でリアスさんもそう認識してるけど・・・・ねえ?その辺りが最初から誤算なのよ。

 

「これは、私が知る結界ではないわ・・・・私も理由はわからない・・・・い、いけないっ!一旦外に出るわよ!」

 

『遅い』

 

 出口を通り抜けたら、管理人室に入っていた。私達は下手したら生きて出られない迷宮に入ってしまったのです・・・・ってとこね。




資本主義の裏側とは無縁であるべき域を侵されたくないならシャンとしぃやあ?ってとこなアーシア嬢絡みな部分やなあ?

何で俺がそんなのの一例に向ける目で見られてんねん!?俺はそんなのにはならんわい!

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