「(・・・・『敵』とは何でしょうね?まあ、キリが無いけど・・・・一例として?
例えば自分が気に掛けた者に酷い事をした存在。
仮にですが?その酷い事をした者が目の前に現れたりしたら先ずは『敵意』を我慢するのが大変です。それ無しにしても?訳有りでも録に謝れないまま被害者の住んでるとこに現れたりしたら?大なり小なりこれを向けますね?
『警戒心』
それから、相手が実は身内とかに限り無く近い者だったらどうなります?極端に言うと?
『愛しさ余って憎さ百倍』
一思いに、自分が出向いて。
『成敗!』
それをやれたら楽なのに世知辛い事情でやれないとなると?更に怖い怖い事になるのが当たり前です。だから、こうなるのは当然・・・・)」
ロイガンだけは察しているとも知らずにリアスは状況を自分なりに考えていた。
マンション内は先週末とは比べ物にならない程の違和感が漂う魔宮のように変貌していた。
自分通用しないハズの幻術迄が別物のようになっていて、いけないと感じた。この場に長く留まって幻惑されていては精神に支障をきたしかねないと判断して、壁を破壊する程度の威力の魔力を放ったが?
(っ!消えた?)
リアスが、そう思った次の瞬間、前方の空間に『裂け目』が出来て、跳ね返って来た魔力が相殺されていた。
「咄嗟だったけど、凄まじいものね?」
「ロ、ロイガン様?今のは・・・・」
「ちょっと待って、咄嗟だったから上手く説明が出来ない、状況整理するわね?」
質問してされたロイガンとっては?
『計算外なようで幸いだった』
「え・・・・と?
(・・・・ともかく、急遽用意した事実含めた建前を述べようか・・・・はあ~~・・・・ビナーさんならともかく実力に見合わない真似は勘弁さ・・・・って、私に関しては今更ね。シオン君から獅子王君みたいのがもう何人か出てきて欲しいんだけど?贅沢なようで心当たりがあるんだけ)」
そして、白々しく思いながら間違ってはいない事を述べた。
「跳ね返されたと言うより、威力が増幅されながら素通りして戻って来た感じだったわね?防げたのは奇跡に近いから、破壊して脱出はやめときましょう・・・・」
威力が増幅されながら素通りして、戻って来たとは受け入れがたい、いかに最上級悪魔の言葉でも理解出来し難い現実だ。
「原理は理解出来ないけど、結界が聞いたものより次元違いに強化されているようで何か違うわ?上に行くのは論外よ、一旦は外の出口を探しましょう。最悪の場合、ロスヴァイセさんが気付くまで外への出口を探すしかなさそうね、迂闊に何かやるとシオン君すらドン引きしてたらしい仕掛けが次々来るかもしれない」
素直に全員が頷いのを確認して、内心ではロイガンは沈みがちな気分だった。姑息と言わざるを得ない事ばかりは今に始まった事ではないからこその心境である。
「(・・・・まあ要するに?リアスさんとソーナさんが一緒じゃなかったら不味かったのよ。聞いた事を信じる場合、強化とかだけじゃなくてセラフォルー様の意志が反映される結界内だから?
『最大の敵と最愛の妹が一緒に来て凄まじい反発を招いた結果』
まあ、ここは少なくと・・・・もっ!?)」
ロイガンは寒気を感じた。廊下の端・・・・暗闇の中から有り得ないハズの存在が此方に近付いて来たのである。
「侵入者・・・・私の大事な場所、荒らすのは・・・・許さない・・・・っ」
「ちょ・・・・っ、貴女は今は『冥界』に行ってるハズじゃないのかい?(・・・・嗚呼、これ『詰んだ』?)」
ロイガンは、先程に考えてしまった候補がいきなり現れたのは驚愕した・・・・この後に起こり得る事を予想して嘆くしかなかった。
「それについては回答出来ません・・・・人数が多いから、場所を変えましょうか?」
~~~~~~っ
マンション内に集まった者達はリアスを除いて知っている声にも驚いたが、音も無く空間が歪んで何故か夜の海辺に移動していた。近くには町並があるが、日本とは何処か空気が違う、外国であろうか?
「え~と?此処は一体?」
「私が住んでいた辺りです。一応、言っておきますけど、先週の旧魔王派のように?町を人質にでもしたら・・・・どうなるかは言わせないで下さい?」
全員が心胆を寒からしめる。離れた場に姿を現し、淡い薄紫色の粒子のような魔力を漂わせている姿に木場と小猫は戦慄していた。あれは彼女が力を使う気になっている証拠だ。
初めて目の当たりにする者達も彼女から感じる魔力は現魔王級と定義される以上なものだとして顔を青くしている。そう判断出来るのは、比較対象を知っている者達ばかりな故に・・・・そう、既にロイガンすら悟っている。彼女から感じられる気だけでわかる現実・・・・戦いが避けられない事と、何よりも?
『勝ち目は無い』
「♪♪~~♪♪」
何故か歌い出していた事に対峙する者達が戸惑うが、歌う事で力を表すのをこの場で知ってはいる小猫と木場が意図を悟って横を向くと、匙元士郎が崩れ落ちていた。初めて目にした者達もこれには戦慄するしかなかった。
「花戒に仁村!匙を後方にっ」
「「は、はいっ!」」
『咄嗟に考えていた作戦が不可能になった』
同行していた二名に指示を出したソーナも聞いた通りの力を見せられて動揺を押さえるのが精一杯にされた。恐らく読まれていたのだと割り切るしかなかった。
「ごめん、貴方には思うところは無いけど?気付かない内に『血抜き』とかされたら私には不利なの・・・・」
「流石ね、ある意味で一番怖い存在を真っ先に倒す・・・・心得てるわ」
「うん・・・・『ヴリトラさん』を宿す男・・・・シオンが凄い奴だって言ってたの、戦闘力が同じくらいなら自分は勝てないって」
それはロイガンも同意だ。虚無を自覚しているシオンには匙のような真っ当な『熱』を持ち、敬意すら抱ける者は戦闘力がある程度近い場合は天敵に近い存在になり得る。尤も匙からしたらシオンは虚無故に敬意を抱ける者な立ち位置だから実力が同じでもそれ以上な天敵となるだろう・・・・そう思えるのは自分が双方に真っ当に顔向け出来ない事をやっているからだと自覚しているからとも考案していた。
「ま、待って!君は僕達と戦う理由は無いハズだろ?『イングヴィルドさん』!!」
「イング・・・・ヴィルド?この娘が?」
記事には顔写真が載っていなかったので対面するのは初めてだったリアスは名前を聞けない程に気圧されていたのに気付いた。この女性がシオンと最低三ヶ月も同棲していた存在、密かに自分の内面世界での自我を無くしたままなハズのシオンが自分の服を脱がすのが手際良すぎた理由は恐らく・・・・と、僅かに頭に過ったのだが・・・・そう考える余裕は直ぐに無くなった。リアスが目を向けた辺りからイングヴィルドから放たれる魔力が益々高まっていったのだ。
「顔を合わせるのは初めてね?先週に共闘した騎士さんからの質問だけど・・・・私にはあるの!ここで戦う理由が!」
木場からの問いを底冷えするような声で返された事に全員が唖然としたが、小猫はわかっていた・・・・仮に先週末にリアスが力を使い果たして眠っていなかったら危険だったかもしれない事を・・・・見ていたギャスパーからしたら、シオンがリアスを眠らせたのはこれを未然に防ぐ意図があったのでは?と思い当たっていた。
そう、イングヴィルドの敵意が向くのはただ一人。その対象を見据えたオレンジ色の瞳には凍り付かされるような殺気が宿っているのを全員が理解した。先週にそれを垣間見た小猫を筆頭に全員が完全に気圧されてしまっている。背後の海から水柱が何本も昇り、龍の形となって自分達を見据えている・・・・知らぬ内に、そうなり得る存在と・・・・『最強の断罪者』となる条件がほぼ整った結果としてイングヴィルドは告げた。
「リアス・グレモリー・・・・っ!私は・・・・っ、貴女を許さない!」
イングヴィルドが手をかざした瞬間、リアスの足元から小型の水龍が飛び出した。魔力に呆気に取られたのを見て取れたので、その隙を突いて密かに用意したものだ。リアスは咄嗟に防御壁を展開したものの上空に打ち上げられてしまい、水龍達が追撃しようとしたがロイガンの展開した裂け目に阻まれたものの、それは狙い通りである。
虚を突いた事を見て取ったイングヴィルドは自ら上空のリアスに追撃の一撃を用意していた。
かざした手に魔力を込めて旋回させる。魔力は瞬時に水の竜巻となって放たれ、リアスを飲み込んだ。
原作主人公は一昔前のジャンプ漫画主人公みたいとか言われてるが、その手のは最初ボコボコにされるのが定番だったのう、まあ過去に突破口見出だすしかない事態になるかは未定だが。
その場合、本来の世界の敵まで追いかけて来たりするんだよなあ・・・・俺達の場合はアニメに影響受けまくったのがたけど。