ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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前回のあらすじ。

一階に入っただけで一度体験したリアス達から見ても魔宮の如く変貌していたシオンのマンション内に現れたのは冥界に行ったハズのイングヴィルドであった。嘗て彼女が住んでた町の海辺らしき場に何故か転移してしまったリアス達・・・・怒りが頂点に達していたイングヴィルドの一撃が無慈悲にリアスを捕えた。


※イングヴィルドの戦闘力はあの設定のキャラが私作みたいな日々過ごしてたら程度なノリ。


怒れる魔王イングヴィルド!語るべき手段は一つだけ

(引き・・・・裂かれ、る・・・・っ)

 

 リアスは、水の竜巻に飲み込まれて身体中が悲鳴をあげる中、声も出せずにいた。

 

 このままでは粉々にされてしまう恐怖から全力で魔力を解放した結果、竜巻から脱出はしたが、後方の岩に勢い良く背中から落下と言うより叩き付けられる形になった。

 

「あ・・・・ぅぐっ・・・・」

 

 激痛のお陰で意識が保たれてたが、身体が言う事を聞かない。砕けた岩の上に仰向けに倒れ付し、必死に身体を起したリアスの視界に入ったのは、無数の色取り取りのマジックミサイルだった。木場祐斗が間に入り、咄嗟に有りったけの魔剣を創造して盾代わりにして防ぎ、防ぎ切れなかったものを全て切り払ったが、全ての剣が砕けてしまっていた。

 

「くぅっ・・・・シオン君以上のマジックミサイルだ」

 

 木場の剣を握った手は、負荷で血に塗れて腕も痛みで悲鳴をあげていた。威力だけでなく一発一発が異なる属性や毒に石化の効果を含むものだから不用意且つ生半可には切り払えなかった。聖魔剣を使おうかと考えたが、まだ使いこなせている程じゃない、何よりイングヴィルドには『見せてしまっている』先日に彼女のセンスを目の当たりにしたお陰か、生半可では一切通用しないとわかってしまっている。

 

 離れた場では魔力の水をチャクラム状にしたものが高速回転しながら無数に他のメンバーに襲い掛かっていた。

 

 姫島朱乃が上空に回避しつつイングヴィルドに雷光の魔力を放ったが、ドーム状の水の結界で防がれていた。水属性の力を使う悪魔に一番有効と考えられた力すら通じないのではどうするべきなのか?と他にも同様が広がる。

 

「あ、あの力の使い方は・・・・」

 

 朱乃は、父の内面世界でシオンが使っていた防御と殆ど同じだと気付いた。電撃は水を伝うから地面に届く形にしてアースしているが、シオンより精密な形。

 

 だとしたら恐らく間接攻撃は通じないと判断したのか、ドーム状の結界が消えた瞬間を狙った小猫の拳と真羅の薙刀が側面から伸びたが、それも大気中の水分と魔力で作ったらしい防御壁に阻まれたと同時に二人は思い切り横っ飛びをした直後、いた場所には水を結晶化した槍が無数に通過していった。避けられたのは共闘した時にあの攻撃を見た側と聞いた側だからである。

 

 直後にイングヴィルドはソーナが魔力の水で造った壁で包囲され、上空に飛び出した物体に向けて魔力弾を放ったが、それは囮代わりのような何かだった。どうやらソーナの時間稼ぎと判断した朱乃達は一旦リアスと合流したが、改めて理解していた。

 

『勝てない』

 

 魔力の強さと使い方に差がありすぎる。

 

 雑誌に書いてあった通り、サイラオーグクラスが格闘戦に持ち込みでもすればわからないとら思ったが、今の自分達には無理な話だ。

 

 ロイガンが十を越える水龍の群れを裂け目で抑えてくれているが苦痛が見て取れた。

 

 聞いた限りであの水龍は一体一体がはぐれ悪魔の十体程度なら歯が立たないくらいの強さだからだろう。

 

 どうすれば良いのかとした時に、何かに気付いたようにイングヴィルドは、左腕の近くに右手を手刀のようにして振るった。細い何かが現れて消えたと思ったら、後方で立ち上がった匙が弾かれたようになり花戒と仁村に咄嗟に支えられていた。気付かれない内に繋げたラインから『血抜き』を行おうとしたようだが、相手の方が上手であった。

 

(父様・・・・父様は、この状況を予期していたのですか?)

 

 力の差を理解した朱乃であるが、父からの忠告と何故かシオンに一部似た戦い方に暗い疑念が浮かぶ。

 

 知る由も無いが、二名は単に匿う事やリハビリを手伝う等で同棲していたワケではない。

 

 身体が録に動かせないイングヴィルドの為に精神を同調させる類いで行うイメージトレーニングも実行する中でリハビリと言うには次元が違うやり取りをしていて、お互いに主に使う水属性の魔力に関して技術を高め合って、更に奥の手も考案していた仲でもある。酷似した使い方が多いのはその為だ。

 

 『ある事情』で頭を悩ませたセラフォルーはそれを知って益々二名を気に入ってしまい、過度なサービスすら増やしてしまったのが『今の状況の一因』でもある。

 

 そう、今のイングヴィルドは後は実行するだけな段階にイメージが整ったものを幾つか出しているに過ぎない、才能が現魔王級を入れてもバケモノ染みてる者が特殊な状況だが、ほぼ同格の者と真っ当に切磋琢磨していたので下地からして差が有りすぎた。

 

「ち、きしょう・・・・隙が無い」

 

 一方で、匙は龍関連の天敵な神滅具の力以上に、殺され掛けた程の訓練をした時のシオン以上な強さに戦慄していた。実際どうなのかまではわからいが、イングヴィルドには訓練の時のシオンに無かったものがある。わかりやすく言えば『殺意』だ。向けられてるのはリアスのみだが、見てるだけで寒気がするレベルなのだ。

 

(・・・・それにアレは・・・・悪意とかがねえ、そうだ。会長の夢を・・・・冥界に学校を作りたいって夢を笑った冥界のお偉方に対してセラフォルー様が向けてたののような類いなんだ。邪魔をするのが間違ってはいないけど、否定はしきれねえって類いで向き合うと、自分達の方が・・・・)

 

 匙がそう思っていた時、何か違和感を感じたと思ったら、ギャスパーが前に立っていて、更にその前にいたレイヴェルがギャスパーの前で両手で何かを受け止めたようだ。どうやらソーナの造った壁を破壊された直後に『停止世界の邪眼』で時間を停めようとして通用しなかったようだ。そこを突いた攻撃をレイヴェルが代わりに受けたのだ。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「お気になさらず。今の私はこれくらいしか役に立てないですから」

 

 レイヴェルは先週のシオンから感じた事、魔王の血筋以上にそのシオンと付き合いが長いイングヴィルドの事を考慮した結果ギャスパーの神器が最低でも他よりは通用しないであろう流れを読んで、反撃を直撃させない為の盾となったのだ。時間停止に咄嗟に魔力を解放して抗った為に、防御壁を半端にしか展開出来ないままイングヴィルドの凍結系の魔力弾を受けたせいで両手は凍結しているが、徐々に戻っている。自分なら即死さえしなけれ家柄の特性で回復は出来る。もしもの為の『涙』を夕方に使ってしまった以上は自分がそうして味方側の被害を減らすしかないと判断していた。一方でギャスパーはレイヴェル以上に神器の力が通じないイングヴィルドの事で思い当たる事があった。

 

(そ、そうか・・・・一度、やったから二度目は駄目だったんだ)

 

『君の神器は確かに恐ろしい、だが停止させられる時の感覚を一度覚えてしまえれば、瞬時に魔力を使って防げる事もあり、そんな敵が現れる事も有り得るだろうから、使いこなせるようになる日が来ても過信は禁物だ・・・・尤も?遠距離からの不意討ち等ではなく、近い距離で?正面切って対峙しているくらいの状況でそんな事が出来るような相手が来たら私達でも逃げるのが安全だがね』

 

 ギャスパーは、サーゼクスの眷属にそう聞かされていたのを思い出した。イングヴィルドは正にその流れで時間を停められるのを防いでいた。そんな相手がいきなり現れる覚悟はまだ無かったギャスパーだが、それでもレイヴェルの前に震えながら歩み出て対峙していた。自分なりの意地・・・・そんなギャスパーに主からの声が届いた。

 

「皆、下がって・・・・ロイガン様も」

 

「リ、リアス?」

 

「彼女が用があるのは私だけよ、現に私以外には殺意を込めた攻撃はしようとしてないわ、追い払う程度か加減してるようなのばかりよ」

 

 先制攻撃を受けてから漸く立ち上がれたリアスは、痛む身体を押してイングヴィルドの前に進み出た。

 

 水龍を抑えてはいたが、どうも戦意が感じられてないとしているロイガンと、状況を観察しつつ攻撃を受け止めたレイヴェルは一時的に凍結させる程度の感覚と理解していたので、リアスの言った事が正しいとしたが、それでも自分達を簡単にあしらっているから余計に畏怖せざるを得ない。

 

「私と一人で戦う気?」

 

「そうよ、けど・・・・私から聞きたい事とお願いがあるの」

 

「何?」

 

「私は貴女には勝てない・・・・それは良いわ、けど私と戦う理由は・・・・シオンでしょう?」

 

「ええ、貴女は・・・・シオンから、沢山・・・・沢山奪ってしまったの・・・・早期に取り戻すには、私が貴女を死なない程度に無力化してシオンの前に連れていくのが今はベターよ」

 

「ど、どういう事?何・・・・をっ」

 

 朱乃が叫ぶが、意に介されず。話に割り込まないで?という意図の一睨みで黙らされてしまう・・・・元から相手にはされていない、ロイガンを水龍で抑えてでもいればイングヴィルドにはこの場の全員は大した驚異にはならない、それが朱乃の悔しさを更に煽る。

 

「次に、お願いというのは?」

 

「私をどうするにしてもシオンにアーシアが何処かに連れて行かれた事を伝えるだけはして欲しいの、それだけよ」

 

「連れて行かれた・・・・誰に?」

 

「ファーブニル・・・・正確にはアーシアに誰かがクラスメートを介して渡した箱から出たものがアーシアを連れて行ったの」

 

 リアスの偽りない本心だ。自分よりもアーシアの無事だけは守りたい、せめて早目にシオンに伝えてもらうだけでもとの望みだ・・・・だが?

 

「関係無い、アーシアさんは貴女の近くにいた方が危険だから寧ろ保護してもらったとすべきよ・・・・」

 

「・・・・っ」

 

「何より、甘いわね・・・・今の私は敵よ?貴女がアーシアさん絡みも弱点ですって確信出来る形に教えているようなものね?推測される限りで例え転生悪魔になっていても戦闘力が不安な娘じゃない?もしもだけど、そのアーシアさんがここにいたら私は真っ先に狙うけど?シオンの事だけで問題なのに考えが足りないわね」

 

 リアスとそれ以外もギクッとなった。自分達が何度も思っていた事だが敵として立った側から言われたのは初めてなのだ。

 

 リアスにとってアーシアはシオンに関係する事に勝るとも劣らないと言える程に弱点になっているのは事情を知らないメンバーから見てもわかる。

 

 イングヴィルドの言い分は無慈悲だが、真実でしかない。

 

 関係者の大半が認識している事で仮にアーシアがイングヴィルドの言うように転生悪魔にでもなり、リアスの眷属となると仮定する。

 

 その際に、アーシア本人は回復役で貴重な力となるだろうが本人の戦闘力が皆無・・・・ファーブニルを始めとした何かの力で補おうにも使いこなすには時間が掛かる為にリアスと後方で待機する戦術にしたとしても問題はシオンとリアスだ。何かしらの影響を与え合っている二名が回復以外では非戦闘員以上な穴とすべきアーシアと同じ戦場に居ては不安要素が多すぎる。

 

 だからこそ、知る者達はリアスがシオンをワンマン・アーミーや遊撃兵のように使う方針に異は唱えられなかったのだ。

 

 恐らく知っている相手から引き合いに出されては更に反論の余地がない。

 

(不味いわね、手が付けられない)

 

 ロイガンから見ても、イングヴィルドは頭の良さまでかなりのレベルだし、何より非情さがある。リアス以外に殺意を向けてないのは決して甘さではないと感じていた・・・・単にソーナを害しては後に響くからだ。先程の囮に攻撃をしたのは掛かった振りだろうと見ていた。眠りの病に掛かる前に相当の経験をしたのか。

 

 何か弱点があるとしたら、やはりシオン絡みだと推測は出来るが、そのシオンを害されたからこうなっているのだし、それでもシオン関連を揺さぶりに使うのは付き合いの長さを考えては直接戦う以上に生半可は通用しないとすべきだ。恐らく真っ当な意味でシオンにとって一番の立ち位置だからだ。

 

(と、なると・・・・いえ、これは最低過ぎね、かと言ってリアスさんが殺されでもしたら多分面倒だから覚悟は必要か・・・・)

 

「お話はここまで、一人で戦う気になったと言うなら・・・・こういう場合は戦士として語るべきね」

 

「っ!」

 

 イングヴィルドの言う事は即ち戦う事・・・・今のリアスには血筋に相応しい力を持つ魔王そのものと化した女性と戦って勝つしかない・・・・滅びの力を拳に込めて、怒れる魔王そのものな存在と改めて対峙した。




誰も傷付けまいと自ら立ち向かうとは・・・・。

逃げ場無しっ?って言ってられる状況じゃねえしな・・・・次回・・・・サブタイトル未定としか言いようねえな。

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