ハイスクールD×D 見初められし『赤』   作:くまたいよう

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割と気にする者達な回。




ロスヴァイセに見たもの

「ま、魔力の防犯装置ぃっ!?」

 

 シオンが住む部屋の階にある廊下に匙の声が響く、他のメンバーも呆気に取られていた。

 

 ロスヴァイセからの話を聞いたロイガンの説明を簡単にまとめると、先程迄に戦って・・・・いや、戦いにすらなってなかったくらいに自分達をあしらった後に消えたイングヴィルドは、核になっている宝玉に魔力を注ぎ込んだ者の力や思考を再現させる防犯装置だった。恐らく、聞くところの同棲していた間でリハビリを兼ねてやっていた措置で、それが起動したものだとロイガンは仮定していた。かなりのレアアイテムであるが、それよりも問題がある。

 

「待って下さい、完全な再現は不可能なハズですよね?」

 

「えぇ、どんなに上物で才能がある者がやったのならある程度は真に迫れるとしても?身体や魔力の使い方に僅かにズレがあるからね、と言う事は、実際戦ったらもっと強いのは間違いないって事ね」

 

 淡々とした説明を聞いてる側は青ざめるしか出来なかったと同時に確信した事がある。それは先週の戦いから食事会までの流れとの違いは唯一つ。

 

『リアスと顔を合わせた』

 

 力を使い果たして眠っていた時と違って、面と向き合ったら恐らく、イングヴィルドはリアスに良い顔はしない、自分達では手に負えないと実証された。冥界から帰って来た時にシオンにロイガン、後はビナーのように対抗出来そうな者が近くにいなければ、リアスはイングヴィルドに殺される可能性があるが、事情を知らない自分達では宛にして良いかわからないし、最適な対処は出来ないとした・・・・つまり?

 

(・・・・やっぱり、部長から聞かなければ・・・・いや、聞き出さなければならないのか・・・・部長がシオン君に何をしたのかを)

 

 

 

(取り敢えず納得してくれたようね・・・・と言っても、実は『遠隔操作』をしている可能性があるけど冥界からやってるとしたら?それは魔王級としても頭抜けた力の・・・・いえ、実際にあの娘はそれそのものだから、別に大して変わらないか・・・・それにしても、私くらいならともかく同年代の女子にあんな凄いのがいるのは学生達には・・・・。アレ?実年齢は最低で百越えてるから、実際には・・・・同年代は私?)

 

 またしても若者達を欺いてしまっているがマシな部類ではあるのと、場合によってはイングヴィルドが危険かもしれない事で、ロイガンは何とか落ち着こうとしていた。セラフォルーとて政治的要素が絡めば好き勝手やれはしないのだから。

 

『守秘義務』

 

『必要』

 

『茶番劇』

 

 お題目はあるが、仮に今回の件がリアスへの制裁の一環だとしたら立場上不利だからどうにもならない、見たところ暗い気分になってるのが何名かいるけど、そこは足掻いてないと割り切っている。

 

 ロイガンが自分の把握している事をまとめる一方で学生達は暗鬱とした気分だった。特に朱乃は父からの忠告が悪い方向に動いている。

 

(・・・・あの娘がシオン君の傍にいる・・・・それでは、私は・・・・)

 

 

 

 

 

 

 暗い情念を抱いているのは朱乃だけではない、守秘義務だからとして、部屋の中にロスヴァイセと二人になったリアスは話を合わす約束の上で『ビナーからの保険』を使わせてもらっていた。

 

 

 

 

 

「効果は上々、ビナーさんに感謝するべきですね」

 

 そう、ビナーは先日にコカビエルが持っていた『フェニックス家の涙』・・・・『但し密造品』をシオンに分けていた。まるでこうなる事を見透かしていたかのように・・・・しかし、ロスヴァイセからしたらレイヴェルにだけは漏らさないように釘を刺したビナーの気遣いは感嘆した。密造品が出回っている事を知ってどうにかなる段階ではないから正解だ。

 

 一方で、リアスは先程迄の戦いの事で気落ちしていた。

 

 

『惨敗』

 

 

なす術が無かった。

 

 攻撃を受けた箇所は骨がひび割れるか折れて、内臓もかなり損傷を受け、無理をして放った消滅の魔星がまるで通用しなかった。涙を用いても僅かに残る違和感がリアスに現実を認識させた。

 

 アーシアを拐われ、思うところがあった相手にある程度迫っただけのものに惨敗・・・・朱乃がバラキエルから聞いた事・・・・シオンをイングヴィルドに任せっきりにしてしまう事が既に実現しているのではと思ってしまった・・・・。

 

「気にしない方が良いですよ、各勢力を見回してもイングヴィルドさん相手では、若手の中ではシオン君かサイラオーグさんにイザベラさんクラスでもない限り勝負にはならない・・・・正確には百歳を越えていますけど・・・・眠ってた期間が百年なら・・・・私達かシオン君と多分同年代ですね」

 

 俯いたままのリアスを何とか気遣おうとするロスヴァイセではあるが、実は自分では駄目だと思っていた。

 

(どうしましょう?・・・・掛けられる言葉が、無いです)

 

 実はロスヴァイセもリアスの噂、グレモリー家の凡庸な姫君云々のついては北欧にいた時に多少聞いてはいたが、自分がそれに触れたら、多分だが駒王町にいる者達の中では最悪と思ってしまっている。

 

 実家の跡取りとはなれなかった身だが、特にリアスが比較されていたサイラオーグとは経緯が違うが、その分噛み合わせが悪いからだ

 

 一族が代々磨いた力を継承していく事を何よりとする風潮であるアーズカルズの中にある家系の一つに生まれて一人娘であるに関わらず受け継げなかった・・・・それはサイラオーグのように生来から持っていないし魔力すら録に無くとは違い、攻撃魔法ばかりスポンジが水を吸収するが如く覚え、燃費等まで見直せるやり方までも新築できた。そこだけ見たら身内に誉められるを通り越して呆れられる域にあった。

 

 そんなロスヴァイセは、良く言えば先天的な異端児・・・・遠縁の子が私が継げなかった力を継いだ事を含めて身内には責められなかった身なのだ。

 

 此処にいるのは一杯喰わされた形とは言え、オーディンがロスヴァイセの論文・・・・詳細はまだ詳しくは明かされていないけど、何か知ってるから。良く言えばヴァルキリーとしては祖母に比べて散々だった自分に主神自ら動く程の何かがあるのだとはシオン君に推測してもらった事。

 

 そして、このマンションの結界。

 

(・・・・何故か、不穏な気配がして・・・・全力で魔力と知識を使ってそれに向き合ったから、結果的にリアスさんが命拾いしたらしいけど無我夢中だったんです・・・・何がどうなったのか全然わかりません、それにヘトヘトになって、下に向かう途中で尊敬する祖母に前向きな気持ちで相談出来る事が出来たかもと浮わついた気分でした)

 

 と思っても?そう考えられるのは、シオンにイングヴィルドと少し話して留守を任された後に色々考えたからだ。とにかくこのままではいけない。何かやれる事は、有りがちな事だけでもとして話をし始めた。

 

「リアスさん?敢えて聞きます。イングヴィルドさんの思考を投影したものが貴方に戦いを仕掛けた事に何か心当たりは?」

 

 ビクっと身体を震わせているリアスを見て、やはりそれ程のものなのだと理解した。せめて何か返されるだけでもとの路線は取り止めた数秒後。

 

「貴女は・・・・」

 

「?」

 

「貴女は、イングヴィルド・・・・さんとは先週に小猫と同じくらいのタイミングに顔を合わせているハズ・・・・ですよね・・・・何か、知ってませんか?」

 

「えぇ、話した通りにいつの間にか置き去りにされて・・・・シオン君を頼ったら?そのシオン君が、翌朝どこからか連れて来た娘・・・・多分、このマンションの別室にいたのかもしれません」

 

 明らかに暗いものが込められているが、自分には、やはり無理として吐き出すものは吐き出すのが正解で、話を合わすように言われた形で返した。実際は一年も同棲したのをシオンに聞かされた程なのだ。

 

 イングヴィルドに例えば?

 

『妬み』

 

 そんな感情込めた目を向けるだけならまだしも、妙な事をした場合は危険だとしている。

 

 少なくともサイラオーグの居住していた場をを訪ねた時までのシオンが居合わせたら、シオンはイングヴィルドの側に付くとロスヴァイセは踏んでいる。

 

(シオン君がイングヴィルドさんに向けるのは?・・・・私が知る限りで、私を気遣ってくれた時のばあ、ちゃ・・・・ち、違うさ!こげな事さ考えてっ・・・・い、いずれボロが・・・・こ、こうなったら・・・・)

 

 女みたいな顔や声を気にしている年下男子を女どころか祖母のように見る等は駄目過ぎるとして、ボロが出ないようにまとめる事にした。

 

「リアスさん?イングヴィルドさんに関しては直接顔を合わすまで保留にしましょう」

 

「保留?」

 

「そうでしょう?擬似的なものにすら戦って勝てない・・・・何故か仕掛けられる理由を聞かれても答えられない・・・・それでは話を続ける意味が無いですね」

 

「・・・・」

 

 沈黙するリアス。やはり、現実を突きつけるだけでも違うとロスヴァイセは成功を確信んした。

 

「それに、シオン君は何故かもう暫くは冥界に滞在すると通達が来ていますから、それについて部屋の外にいる全員で相談からです」

 

 姿勢を正して自分に厳しく告げるロスヴァイセの姿は、如何にも才女とすべき立ち振舞いで髪の色が銀色の傾倒なせいか、リアスの尊敬する義姉グレイフィアの姿を垣間見るものだった為に素直に頷いた。リアスはどこかで、身内からの救いを求めたフシがあった。普通ならば他から責められないハズの思考だが、それも自分にとっての更なる試練に繋がるとも知る術は無かった。




これは大人のラブストーリーです。思いがけず禁忌に踏み入って心を震わせる者達の行く先は果たして?

はいはいはいはい、微妙に違うぞ?




ロスヴァイセさんの悩みって、原作サイラオーグさんや私作リアスに比したら噛み合わせがってのに触れた回でもあった。

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