ゆるふわ系美少女はGBNで闇のトップに伸し上がる 作:ナナシのG愛好家
「クソッ!!」
路地裏へと入って行く、あどけなさの残る獣人型アバターを見たスコーピオは、そう毒づいて駆け出す。
「あの子供は……」
路地裏に駆け込むと、その獣人型アバターの少年は、木箱の陰から曲がり角の奥をのぞき込んでいた。
「……しいなぁ。確かにここで……。」
と、奥から男の声が聞こえてくる。
「(まさか……!!)」
最悪の展開が脳裏によぎる。次の瞬間、スコーピオはその青年の大きめの服の襟首をつかんでいた。
「むごっ!?」
「バカ!! 声を出すな!!」
悲鳴を上げそうになった青年の口を押さえて、スコーピオはそう声を上げる。
抑えた青年は褐色の肌をしており、大きめの瞳とふさふさのしっぽが特徴的だ。性別は分からないが、このルックスなら『相手』としては十分だ。
「お前、なぜこんなことをした、正義感か!?」
「んん!! ふふぁんふふう!!」
「おい、暴れるな!!」
ジタバタと暴れる青年。すると、
「おい、」
「ん? なんだ?」
と、二人の男の声がする。
「チッ、ええいままよ!!」
近づいてくる足音を聞いたスコーピオは舌打ちをして、少年の腕を左手に持ったまま、右手でホルスターからリボルバータイプの拳銃を引き抜いた。
「動くな!!」
「「ッ!!」」
声を上げて拳銃を向けた先にいたのは、ピンクとホワイトをベースにしたヒーローのようなコスチュームに身を包んだ筋肉質な男性ダイバーと、布製のポンチョを着た男性ダイバー。その姿をスコーピオはポンチョのダイバーの方に目を向けて、
「売人か……こんなところで取引とは、やはり九頭竜街はクソだな。」
「は? お前何言って」
「とぼけるな!!」
筋肉質な男に拳銃を向けて、
「そこの男から何を買った? 違法アイテムか?」
「……誤解だ。」
スコーピオの問いに、ポンチョの男は淡々と答える。
「じゃあここで何を」
「ち、違うんです!!」
そこで声を上げたのは、そこの少年だ。
「その人、さっき開催されてたバトルロワイヤルイベントで、凄い動きをしてて、声を駆けたかったんですけど、そこの男の人に声をかけられてて……。」
「それで追いかけたってことか?」
「そうだよ。売人とか、俺達は怪しいことはしてねーよ!! ただここに謎のクエストが発生するっていう情報があって、クリアすればスゲーアイテムが手に入ると思ったから、」
「そいつを誘った、という訳か。チッ、紛らわしい。」
舌打ちをしたスコーピオは、拳銃をホルスターに収めて、
「悪かったいや、済まなかった。」
そう言って謝罪した。
「いや、こちらとしても、それで、カザミ。そのクエストは、ここに出るんだよな?」
と、ポンチョの男は、筋肉質な男、カザミにそう問いかける。
「ああ。俺の調べた情報じゃ、間違いねぇはず……人数制限とかか?」
首をかしげるカザミ。だが、その予想は裏切られることになる。突如、後ろの空間にノイズが走ったかと思うと、紫のウィンドウが現れたのだ。
「何だ?」
スコーピオがそちらに視界を向けた瞬間、その前に、黒髪の女性ダイバーが飛び降りてきた。
「うわぁッ⁉」
驚いて腰を抜かす少年。スコーピオも警戒してそちらに銃を向ける。
「落ち着け。私は敵ではない。」
そう、淡々とした声で言う女性。
「フン。敵もそう言うだろうな。」
『あ、あの……えっと……。』
「ん?」
女性に警戒していたスコーピオだが、ウィンドウに気が付く。
『あ、あの……その……。』
「チッ、何だ?」
銃を納め、そのウィンドウにスコーピオは近づく。それに呼応するように、カザミ、そしてポンチョのダイバーと少年も覗き込んだウィンドウにいたのは獣人だった。
GBNには、ケモミミダイバーと呼ばれるダイバーズルックが存在する。少年ダイバーも含め、主に若年層の者たちに人気なダイバーズルックで、世界観こそ『ガンダム』には似合わないものの、「かわいいは正義」と言われているように、可愛いのだ愛くるしい耳と尻尾が人気なケモミミダイバー。しかし、目の前のウィンドウの中にいる獣人は、それよりもいささかケモノ色が強い
少年が、人間にケモノを足した感じだとすれば、目の前の獣人はいわば、ケモノに人間っぽさを足した感じになるのだろうか。
『えっと、お、お願いします!! 助けが必要なんです!!』
と、おたおたと声を上げる獣人の少年。
「助ぇ? これがシークレットクエストか?」
『く、クエスト?』
と、首をかしげる獣人の少年。
「あ? クエストだよ、ク・エ・ス・ト!!」
しかし、少年は首をかしげるばかりだ。
「おそらく、会話形式のNPCなのだろう。設定されたワード以外には反応できないタイプの。」
「ん? ああ、そういう事か。じゃぁ、俺達は何をすればいいんだ?」
と、カザミが問いかける。
『えっと、僕いえ、私は現在、敵の追跡を受けており、創造主様方に、ご神体の力をお借りしたく!!』
「ご、ご神体? って、ガンプラのことか? 創造主様?」
今度はカザミが首をかしげる番だった。
「SD系のクエストか、いささか『ガンダム』らしくはないな。」
顎に手を当ててそういうスコーピオ。見かねたヒロトが問いかけた。
「つまり、俺達は君を守ればいいんだな?」
『は、はい!! そうです!!』
ヒロトの問いに、目を輝かせ尻尾を振りながら答える少年。
「バトルエリアは?」
『へ、ば、バト』
「その場所だ。」
『あ、はい。神殿の近くです!!』
「敵の数は?」
『か、数? い、いっぱい。30とか40とか……。』
「どっちだよ。」
煮え切らない答えに思わずそうツッコむカザミ。気になったのか、メイも問いかけてくる。
「時間は?」
『へ、じ、時間?』
「制限時間はなさそうだな。」
その答え方を見てスコーピオはそういう。と、カザミが
「何だっていいぜ!! このチャンス、逃せるかよ!!」
と、新しく出た『クエストを受けますか?』というウィンドウのyesボタンを押そうとする。
「待て!! 俺は参加するとは一言も」
「40機以上の高難易度ミッションかもしれないんだぞ? そんな気軽に」
ヒロトとスコーピオが止めに入ろうとするが、
「ああ、そんなことは気にすんな。」
と、話を聞かない。そして、スコーピオ達三人はもちろん、女性と少年ダイバーも、そんな彼らに気を取られて気が付かない。
赤をベースに菊の柄がプリントされた派手なパーカーを着た少女が、あくびをしながらこの路地裏に入ってきたことに。
「ん? なんだ?」
そして、その少女がこちらに気が付いたことに。
「俺が30倒す。あとはお前らが2、2、2、2で何とかなるだろ。」
「ほう。僕を舐めるとはいい度胸だな。」
「というか、それだと二機余る気が…………。」
額に青筋を浮かべたスコーピオと指で確認してからツッコむ少年の声。そして、
「オイ、何して……」
と、そちらに興味を示して近づいてきた少女の声まで封殺して、
「こまけーことはいいんだよ!!」
と、yesボタンを押した。
「あ、オイ!!」
「へ?」
唖然とする少女とスコーピオの怒鳴り声を残して、このエリアから彼らは消えていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして、次に彼らが目覚めたのは、石造りの神殿の中だった。
「お前ぇッ!!」
「おわっ!?」
そして、スコーピオはいきなりカザミに近づいてつかみかかる。
「俺は参加するとは一言も言ってないよな!? なぜ巻き込んだ!!」
「あ? 嫌だったのか? だったらそう言えよ。」
「いう暇もなくお前がボタンを押したんだろうが!!」
ものすごい剣幕で怒鳴る。
「え、えっと、」
「あ、あの……」
「…………。」
おたおたする少年二人。それを黙ってみるヒロト。
「あ、あのな……とりあえず自己紹介しようぜ、自己紹介。来ちまったモンはショーがねーしさ!!」
がしがしと頭をかいた少女はそう言って、
「私もお前らに巻き込まれたわけだけどよ、もうしょーがねーし。とりあえずオマエ、オマエが呼んだのか?」
と、獣人の少年に向けて問いかける。
「えっと、は、はい!! 創造主様のお力をお借りしたく!!」
「創造主? ガンダムらしくねぇ設定だな。まあいいや、名前は?」
「あ、はい!! フレディと申します!!」
「そっか。じゃフレディ、アタシらも名乗らせてもらうぜ。まずは」
と続けようとした時カザミが割り込んだ。
「まずは俺からな!!」
「オイ……。」
少女がジト目で睨むのも意に介さず、カザミは親指で自分を示す。
「俺はカザミ!! キャプテンって呼んでくれよな!! 機体は、ガンダムジャスティス・ナイト!!」
そう言ってレンガか何かで出来た台座に直立したガンプラを指し示す。
「∞ジャスティスか。」
「お、わかってるじゃねぇか!!」
目ざといスコーピオが言った通り、その騎士ガンダムのような見た目はぱっと見では分かりづらいが、∞ジャスティスガンダム。通称インジャの面影が、細かいところに残っている、ほとんど面影が無いのに見破ったのは流石というところか。
「名前からジャスティス系統の機体だってのは理解されるんだけどよ、機体の判別まではなかなかされねぇんだ!! よくわかったな!!」
と言って肩を組んでくるカザミ。それにスコーピオはメガネのフレームを抑えて、
「……昔の仲間の、愛機だったからな。」
とこぼした。
「仲間? へぇ。」
感心したようにつぶやくカザミ。すると、ポンチョのダイバーが、
「仲間……さっきから思っていたが、お前は」
「スコーピオ、だろう?」
「ッ!!」
彼が言う前に、女性ダイバーがその言葉を引き継いだ。
「スコーピオって、確か三年位前に消息を絶ってたっていう、」
「元、ランカー⁉」
少女と少年が唖然とする。
「もしかして、凄く強いんですか?」
機体に表情を膨らませるフレディ。その様子を見て、スコーピオは、暗い顔をした。
「強くなんかないさ。僕は。」
「「「「「…………。」」」」」
悲しそうな顔でそう零す彼に、一同微妙な雰囲気の顔をした。
「まぁ、そこのダイバーの言った通り、僕がスコーピオだ。機体はエンシェントガンダム。」
そう言って、先ほどの戦いでも利用した彼の機体、エンシェントガンダムを指差した。
「プロヴィデンスガンダムがベースか。細部まで作りこまれているな。」
「すっげ。ホントにアタシのイフリートと同じガンプラかよ。コズミック・イラからそのまんま出てきたみてぇだ。」
感心する女性ダイバー。少女もこれには苦笑いだ。
「じゃ、次アタシな。アタシはモナミ。フリーの情報屋やってる。機体はイフリート。イフリート・サウスポーだ。」
「フン、
ミナミ、と名乗った少女のガンプラを見てみる。ジオン軍が開発した試作モビルスーツ、少数しか量産されなかったその機体は、さまざまなバリエーションと共に色々なエース用に改造されているが、このミナミのガンプラは、有り体に言えば、
「全部乗せ、だな。」
「……悪いかよ。」
モナミはスコーピオの言葉に不満げに言う。なるほど、しかし確かにこれは全部乗せだ。
背部にジョイントされているのはイフリートのダグ・シュナイド専用機が装備していたヒートランサー。両肩の部分にはそのダグ・シュナイド機を改良したイフリート・シュナイドの武器である投擲用の短剣、ヒートダートがジョイントされている。
腕部装甲も増設され、ネオ・ジオン残党、通称袖付きのような加工が施されており、左手に持っているのはジャイアント・バズ。予備の射撃兵装とでもいうように、右腰にショットガンが装備されている。
左腰には鞘に納められた日本刀のような剣、コールドブレード、それも二本がサムライの刀のようにジョイントされており、回って後ろを見てみれば、格闘用の二本のヒート・ダートが準備されている。
両足にもホルスターのような物が増設されている。
「これだけ厳つくすれば、機動性が下がるんじゃないか?」
「うるせぇ。手数でカバーすんだよ。」
女性ダイバーの言葉にそう答えるモナミ。
「そういうお前の機体はどうなんだ!? って、ウォドム?」
モナミが見た先にあったのは、∀に登場するムーンレイスの機体、ウォドムの改修機だった。
特徴的なのは、本来ならドームに収まっている武装が、あえて外付け式になっているポイントだろう。
ウォドム自体はサイズが大きいし武装出力も高いため、外付けでも十分効果を発揮する。手数が増えることもまた利点だ。
「ああ。私の愛機、ウォドムポットだ。」
何か文句あるのか? と聞いてくる彼女に、別に。とモナミは答える。
「で、お前の名前は?」
「ああ、私はメイ。ソロプレイヤーだ。」
と、そっけない自己紹介でメイは済ませる。
「そうか。で、隣のガンプラは……って恐竜⁉」
「いや、ドラゴンだろ。」
カザミがあんぐりと口を開けて叫ぶ。無理もない。SDらしいくりくりとした目を持つ頭部。のわりに、リアルサイズと同等の大きさを持つその赤色ベースのガンプラは確かにドラゴンにも恐竜にも取れる見た目をしていたが、
「いや、羽ねぇじゃんかよ。」
「確かに。」
「あ、アハハ……。」
と、モナミとカザミの言葉には製作者であろう少年も苦笑いだ。
「これ作ったのはお前か。こうしてみると、どいつもこいつもクオリティが高ェな。」
エンシェントガンダム、ウォドムポッド、そして恐竜のガンプラ。それらを見回してモナミがそう呟く。
「そんな。モナミさんのイフリートも凄いですよ!! ボクなんか、そんなに凄くないですし……。」
しょげたように言う少年。
「ふ~ん。ところでお前、名前は?」
「えっと、僕はパルヴィーズです。そっちの機体は、モルジアーナ。」
「モルジアーナ? ふ~ん。」
少年、パルヴィーズの言葉に、モナミはそう答える。
「モルジアーナ……千夜一夜物語のか。」
「知ってるんですか!?」
「せ、千夜?」
スコーピオの呟きにパルヴィーズは顔を輝かせ、カザミは首をかしげる。
「アラビアンナイトの別名だ。有名だぞ?」
メイがカザミにそう言う。
「アラビアンナイト?」
「知らないのか? アラビアンナイトは」
「チッ、座談会をしに来たんじゃないだろう。とりあえず最後はお前か。」
と言って、スコーピオがポンチョのダイバーのガンプラに目を向ける。
「……小さいな。」
「確かに。ミニサイズって奴か? GBNで乗ってるやつは初めて見たぜ。」
最後のガンプラは、ベース機体はよくわからない。ほぼオリジナルメイドのガンプラに見える。しかし、他の機体と見比べて、圧倒的に小さかった。
「……ヒロト。機体は、コアガンダム。」
「
ポンチョのダイバー、ヒロトのその名のりに、スコーピオがメガネのフレームを抑えてそう返す。
「ああ。コアガンダムだ。」
「そうか。それにしても、来ないな。」
ボソリ、と呟いた。遺跡の外から出たら進行するタイプのクエストなのか。そう考えたスコーピオは、
「フレディだったか?」
「あ、はい!! えっと、」
「スコーピオだ。敵は何処だ?」
「敵……そうでした!! 外です!! 向かってきています!!」
思い出したかのようにフレディがそう言う。
「だ、そうだ。見に行くぞ。」
そう言って外に出ていくスコーピオ。
「あ、オイ待てよ!!」
各々で集まって立ち話などをしていたカザミ達は、声を上げて慌てて彼に付いて言った。
そこで見たのは、土煙。
「向かってきている、という訳か。」
そう言うスコーピオ。
「双眼鏡で確認したぜ。なぁ、フレディお前、敵の数は20~30とか言ってたよな?」
「え? あ、はい……。」
「三回数えなおしたが、どう見ても10機なんだが。」
その言葉に、一同がフレディを見る。すると恥ずかし気に頭をかいて、
「す、すみません。勢いあまって盛っちゃいました……。」
と、頭をかきながら答える。
「チッ。まぁいい。片付けるぞ。乗れ。」
スコーピオはそう言って、外にエンシェントガンダムをコールして搭乗する。
「そうだな!! 俺の雄姿を目に焼き付けさせてやるぜ!!」
というカザミの声を筆頭に、皆コンソールを開いてガンプラに搭乗する。
ウォドムポッドから望遠機能を使ってメイが敵影を確認。
「デスアーミーの改修機か。タンクタイプ3、前衛が3、中堅が4。バランスが取れてるな。」
ホバー移動するのは、機動武闘伝Gガンダムに登場する敵の量産機の代名詞、デスアーミーだ。
機体の下部がタンクのように改造されており、両腕を銃器にした後衛と思われるタンクタイプ、両足は原作通り普通で、どちらかと言えばザクのような雰囲気のある、アサルトライフルを構えた中堅型。そして、両腕をランスに取り換えたホバータイプの前衛が三機。
「おし!! お前ら、よく見てろよ!! カザミ、ガンダムジャスティスナイト!! 行くぜ!!」
と、高らかにランスを掲げて突撃していくカザミのジャスティスナイト。
「あ、オイ!! 勝手に突っ走るなよ!!」
そう声を上げて、背部からヒートランサーを展開したイフリート・サウスポーが遅れて続く。
「やれやれ、サポートに向かう。」
そして、そう言ったメイが、ウォドムポッドを動かして援護に向かった。
「チッ、しょっぱなから独断専行か。パルヴィーズ、ヒロト、撃ち漏らしが来る。落とすぞ!!」
「りょ、了解です!!」
「分かった。」
パルヴィーズはどもりながら答え、ヒロトはそうそっけなく言ってコアガンダムのビームライフルを構えた。
スコーピオも、ユーキディウム・シェキナーのモードを長距離射撃モードにして、スコープをのぞき込む。
「うおらぁ!!」
威勢のいい言葉と共に突っ込んでいったカザミのジャスティスナイトのランスは、前衛型デスアーミーに受け止められる。
「おっ、やるじゃぁねぇか!!」
威勢のいい笑みを浮かべてさらにランスを振るうが、逃げきめはあっさり弾かれて、
「うおっ!?」
そこから一転、じわじわと、防戦一方に追い込まれていくカザミ。
「なろっ!!」
再びランスを振るって鍔迫り合いに持ち込むが、じわじわとデスアーミーは押し返してくる。
「くっ、このっ」
「避けろ。」
「へ?」
唐突な通信に唖然とするカザミがアラートにつられて上を見れば、ウォドムポッドが降ってきた。右腕のランチャーからミサイルを撃ちながら。
「のわっ!?」
とっさに悲鳴を上げて飛び退く。ギリギリ間に合ったからいい物の、遅れていたらカザミもろとも打ち抜かれていただろう。
「おまっ、危ねぇだろ!!」
という抗議も意に介さず、そのまま膝の一撃でデスアーミーの頭部を粉砕した。
Gガン系統の機体は総じて頭部破壊も撃墜判定になる。ガンダムファイトの国際条約を順守しているともいえるが、機体のダメージを直接フィードバックするモビルトレースシステムが大本だし、それが採用されているかあやしいデスアーミーも原作で生身のマスターアジアに頭部をぶっ壊されて撃沈しているから、というのもあるだろう。細かいさすがGBN細かい。
さらにメイはウォドムポッドに外付けされたビーム砲、【ラージビームキャノン】を利用してこちらにアサルトライフルを構えていたデスアーミーを牽制する。
「おっし、今度こそぉ!!」
威勢のいい声を上げて起き上がったカザミのジャスティスナイト。今度はランスのビームバルカンで権勢をと構えるが、
「おいエセ騎士ガンダム、ビームに巻き込まれたくなかったらそこを退け。」
という通信が入る。
「へ?」
振り返ってカザミが目にしたのは、一直線に飛んでくるビーム。もちろん直撃コースだ。
「どわーッ!?」
大慌てで飛びのくカザミ。彼が回避したビームはそのままデスアーミーの一機を貫いて撃墜した。
「おいっ!! 今のは流石に無いだろ!!」
「射線に立つからだ。お前は大人しくポージングでも決めていろ。」
「酷ッ!? おまっ、いくら上手いからってそれは無ェだろ!!」
というカザミの文句に、フン、と鼻を鳴らして答えて射撃に戻る。
「あ~らら。ってか、もうちょっと連携取ろうとは思わないのかね。ヒロトってやつも、」
ちらりと文句を言いながらモナミはヒロトが守っている方を確認する。ミニサイズの小柄な体を生かして上手く立ち回っている。
「いや、アレは一人で手一杯なだけか。ミニサイズで2体まとめて相手にしてんのはスゲェ実力だってわかるけどよ、」
SDとは違って何か特別な性能の武装があるわけではない。そんな趣全開なミニサイズを乗り回すだけのことはある。
「ま、アタシはアタシでやるだけだけどよ!!」
まっすぐ突っ込んでくる近接型の初撃を、ヒートランサーを振りぬいて弾く。しかし、既に左腕のランスを構えられている。
「ハッ、
獰猛な笑みを浮かべて、二激目をヒートランサーの持ち手で弾く。
「そぉらよっ!!」
そのままヒートランサーを大きく振り下ろす。とっさに距離を取ったデスアーミーだが間に合わず胸に浅い傷を受けてよろめく。
「隙ありィ!!」
その瞬間左手が素早くひらめいて、デスアーミーの顔面にはヒートダートが突き刺さっていた。
『!?』
驚きとともによろめくデスアーミーに瞬時に接近。
「コクピットにはァ、」
右手のヒートランサーは、初めから振る気がない。デスアーミーが、イフリートサウスポーが左手に握ったヒートダートに気が付いた時にはすでに遅い。
「ヒートダートがよく刺さるなぁ!!」
すかさず閃いたヒートダートが、デスアーミーのコクピットに突き刺さるり、活動を停止した。
「さてと、次は……」
『う、うわあぁぁぁ!!』
「あん?」
次の獲物の元に飛び込もうとしたモナミは、そんな悲鳴を聞いてそちらの方を向き、笑みを浮かべた。
「予定、変更~!!」
そう言って跳びあがった先にいたのは、パルヴィーズのモルジアーナ。悲鳴を上げながら、口からの火球を連発するが、小刻みな回避軌道で近接型のデスアーミーに詰め寄られていた。
「ヒッ!!」
もうあと少しで射程。というところまで詰め寄られ、そんなくぐもった悲鳴が出てしまう。
「ったく。即席チームの癒し要因にィ、」
それを見たモナミは、空中でヒートランサーを振りかぶる。
「なァにしてくれてんじゃコラァ!!」
そして、怒号とともにぶん投げた。それは回転しながらすっ飛び、デスアーミーが気付いた時にはもう遅い。
回転する巨大なギロチンが攻撃態勢をとっていたため、避け損ねたデスアーミーの右腕を吹っ飛ばした。
「かぁらぁのぉ!!」
そのまま近くに着地。その時点ですでに二本の右手はヒートダートを引き抜いていた。
「も、モナミさん!?」
「大丈夫かふわふわ!!」
「ふわっ!? ぱ、パルヴィーズです!!」
顔を真っ赤にしてそういうパルヴィーズを、大丈夫そうだな。と言って、
「救ってやったんだ。後でもふらせろよ!!」
「ちょっ!? 何言ってるんですか!?」
という悲鳴も意に介さず、すかさず右手に持ったヒートダートを投げる。辛うじてそれを左腕のランスで弾くデスアーミー。こうすれば、少なくとも次の近接武器を抜くまでの時間を稼ぐことが出来る。距離を捕れば、
「まだ結果は分からない、とでも思ってんのかよ!?」
笑みを浮かべてサウスポーが引き抜いたのは、ショットガン。
「ジ・エンドってなぁ!!」
そう叫び、引き金を引く。それをよけきれず、散弾の衝撃によろめくデスアーミー。散弾ではなぁ!! というセリフがある、近距離でしかロクな火力が出せず、近距離でも弾丸の特性上、重装甲の相手には効かない。
総合的にこの世界では、「弱い」認定を受けがちなショットガン。しかし、その真価は、至近距離での制圧力。そして、大量の弾を「面」で浴びせ体制を崩させる、高いストッピング能力を誇る武器なのである。さらに、サウスポーは器用に片手で、銃を傾けるようにしてレバーアクションのショットガンを
「フゥ!! ざまぁみやがれサンピンがぁ!! ゾンビが人間様に歯向かうから
と、高笑いを上げるモナミ。
「へ? も、モナミさん……?」
その様変わりしたかのような様子に唖然とするパルヴィーズ。
「あん? どうしたよふわふわ。」
「だからパルヴィーズですよ!! その呼び方恥ずかしいんで止めてください!! というか、そのショットガンって、」
「ん? ああ、コイツか?」
モナミのイフリート・サウスポーの持つショットガンはジオン軍の使うソードオフのポンプアクション式じゃない。重厚感あふれる、黒光りするこのショットガンは、
「自作だよ。金属と木製パーツにプラスチックを少々。それで作った、レバーアクション式HW-55式ショットガン。チョークはライフルドで打ち出す鉛玉の飛翔が安定すんだよ。自信作だ。」
そう言って振って見せる。
「それじゃぁパルゥ!!」
「え? あ、は、はい!!」
「突っ込むから援護しろ。」
「えッ⁉」
その言葉に目を丸くするパルヴィーズ。
「え、援護って言っても、ボク、初心者ですし、何をしたらいいか…………。」
「安心しろ。ただ考えなしに火球ぶっ放せばいい。そっから始めろ。」
「は、はい!!」
「じゃぁ行くぞ、パルゥ!!」
そう声を上げて、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「これでぇ、四体目ェ!!」
両腕を切り落とし、そのまま流れるようにデスアーミーの胴体を二本のコールドブレードで三等分に切り裂く。
「これであとは、」
イフリートのモノアイが辺りを見回す。残りは三体。遠距離にいたタンクタイプだけだ。
「
と、舌なめずりをすると、デスアーミー達は、その身をひるがえして撤退に入る。
「なっ!? 野郎逃げやがった!!」
カザミが声を上げる。それに立ち上がったのは、
「「任せろ!!」」
スコーピオとヒロトだ。ヒロトのコアガンダムが飛翔し、それに追従するように、
「行ってこい、ドラグーン!!」
ドラグーンが飛翔する。デスアーミーはガトリングのようになった両腕で弾幕をっ張ってくるが、それを掻い潜って飛ぶドラグーンから飛んだビームが、二機のデスアーミーを貫いた。しかし、
「チッ、最後の一機が遠い!!」
最後の一機はすでにドラグーンの射程範囲から逃れていた。
「任せろ!!」
しかし、そこでヒロトが声を上げた。コアガンダムと、子機のような大型戦闘機が飛翔する。
「コアチェンジ、ドッキング……ゴー!!」
コアガンダムの後ろについた子機のパーツが、分離する。そして、そのパーツたちが、コアガンダムの足に、腕に、バックパックに、合体していく。そして、合体を果たしたその機体の大きさは、HGと変わらないほどになっていた。
「ミニサイズから、合体でリアルサイズに?」
「すっげ、ロマンに溢れた機体だな。しかも、合体の機構がシンプルで装甲強度を確保している。」
と、スコーピオは分析する。そんな通信をしり目に、ヒロトは、ユニットがドッキングして強化されたビームライフルを構えた。スコープをのぞき込み、狙いを定める。
「そこだ!!」
そして、放たれた高出力のビームが、最後のデスアーミーを貫いた。
『す、すごい!!』
歓声を上げるフレディ。しかし、その後の言葉に一同が唖然とすることとなった。
『さすがは、ビルドダイバーズの皆さんです!!』
「へ?」
「は?」
「ほ?」
「ビルド……」
「ダイ……バーズ?」
一同その言葉に唖然とする。しかし、唖然とする間もなく、フォース結成のウィンドウが飛び出してきたのだ。名前はご丁寧にも、『BUILD DIVERS』制限時間は残りたったの20秒だ。
「なんだ……これ?」
「ビルド……ダイバーズ?」
「私らが!? いやいやいや、でも私らビルドダイバーズじゃねぇし!!」
「そもそも、なんでnoのボタンがないんだ。僕は……」
慌てふためく五人。そんな中、メイだけが冷静にコンソールを動かした。『DIVERS』のIにカーソルを持っていき、小文字のi 『BUILD DiVERS』に変更すると同時に、制限時間が切れた。
「これなら、違う名前だ。」
「でも。」
「そもそも、俺にはゾディアクスが……。」
と、ヒロトとスコーピオが抗議の声を上げようとするが、新たに、タイムアップを知らせるウィンドウが現れる。また声を上げることもかなわず、彼らの意識は光に包まれていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「何だったんだ……。」
スコーピオもといキリヒトは、唐突な強制ログアウトで唖然としていた。
「ビルドダイバーズ……僕が? あり得ない。」
そう呟きながら、ゲームセンターのGBベースを後にする。そして、マンションに入り、エントランスの電子ロックを解除。部屋へと歩いていく。
「あら、レイヤ。お帰りなさい。」
「ええ、ユナさん。ただいま帰りました。」
そして、エプロン姿の彼の保護者、サイタニ・ユナに、そう声をかける。
「またガンプラ?」
「……ええ。すみません。今日、例の場所に行ってもいいですか?」
「……ええ。ご飯冷めちゃうから、一時間くらいで帰ってきてね。」
「はい。わかりました。」
それだけのやり取り。一度自室に荷物を置いたキリヒトは、そのままこのマンションの玄関から出ていった。
それを見たユナは、はぁ、とため息を付く。
「まだ引きずってるって知らない人は言うのでしょうけど、仕方ないことよね。カナタ。」
そう呟いて、彼女はキッチンの棚に飾られた写真に目を落とす。そこには、幼き日のキリヒトと、今よりも10歳ほど若いユナ。そして、短パンTシャツ姿の子供だ。子供の手には、イージス。キリヒトの手にはインパルスが写っている。その写真を見て、ため息を付いた。
「もう、戻れないのかしら。」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やぁ、シズ。」
小さな機械音が定期的に鳴る病室で、キリヒトはそう声をだす。
「今日、面白いことがあったよ。つい、GBNを馬鹿にしてしまってね。」
自嘲気味にそう笑う。
「怒った同級生にケンカを売って、負けてしまった。この僕がだ。」
まったくとんだ笑い話だよ。と続ける。
「ああ。そうだ。僕は僕が憎い。あの日、君に、カナに何もすることが出来なかった僕が。君をあんな風にしてしまった連中が。そして、その発端となった、GBNが。」
花瓶の水を入れ替えながら、そう零す。
「ああ。僕はあの時からずっと荒れているよ。荒れっぱなしだ。むしゃくしゃして、それに任せて八つ当たりしている、情けないだけの男だ。」
あの日から、何も変わっちゃいない。と悲しげに零す。
「君が、返事をしてくれたら、どう返事をするのだろうね。」
ベットの側の椅子に座り、そう零す。ベットに横たわる、機械に繋がれることで命を繋いでいる、この哀れな少女の前で。
「
棚に飾ってあるガンプラを見て、そう零す。通称エルツ―ガンダム。ストライクフリーダムをベースに、キリヒトのアドバイスの元、ベットに横たわる彼女、イズミヤマ・シズが作り上げたガンプラ。
「懐かしい。また、あの頃に戻れたら。」
シズとカナと僕、三人で、仲良く、何も気にせず、何にもとらわれずに羽ばたける、あの世界に戻れたら、どれだけいいことか。そう呟く。
「もう、叶わない。」
あの頃に戻ることも、彼女の笑顔を見ることも、そして、
「また三人で、GBNをすることも。ごめん、シズ。」
調べた。ネットで、GBNのアカウントでログインして確認した。三人で作り上げたゾディアクスは、消えていた。当然だ。『リブラ』と『タウルス』はあの日、アカウントが消え、『スコーピオ』は、『BUILD DiVERS』に移籍したのだ。
「すまない……すまない…………。」
キリヒトは、彼女の前でただひたすらに、涙を流しながら謝り続けた。
【エヴィのガンプラ解説ラボ】
やぁやぁ諸君、え? 私が誰かだって? 音久叉洲所属のホワイトハッカー、ダイバーネームエヴィ様さ。初回だから説明させてもらうと、このコーナーは秘密を作りたがる作者のせいで分かりづらい本作設定や、ガンプラの武装などについて解説してくコーナーになるな。ようは、補足の為のおまけコーナーさ。
記念すべき第一回だ。早速行ってみよう。
今回紹介するのは我らがボス、音久叉洲リーダーの『ムート』ことカヤマ・サクラの愛機、N-EXASガンダム・バハムートの解説だな。え? 何で私がボスのリアルを知ってるのかって? ま、ここはおまけコーナーだ。そこはご愛嬌というところで勘弁してくたまえ。
バハムートと言えば、特徴的なのは必殺技の
とりあえず、まずは武装を並べてみようか。バハムートの武装は以下の通りだ。
メインの射撃武器となる両腕部ビームガトリング
両腕のクロ―『ドラゴン・クロウ』
背中のVウィングにもなっている、ビーム・ウォーサイズ
変形形態は尻尾にもなり、ビームの小さな刃を発射する機構も備えた鞭『テイル・ロッド改』
そして、高出力ビームキャノンである、胸部の『メガ・キャノン』。
Vユニットを中心とした赤いパーツは、出力を上げることで赤く発光するのも面白いね。機体の識別コードの頭文字となる文字を関したユニットの出力を上昇させるという点では、この期待もシステム機の一種に含まれるな。
また、この機体にはもう一つ、隠し玉が用意されているらしいね。
さて、こんなところか。それじゃあもう一つ余談を。作中一話で言及された【獣の円卓《ビースツ・サークル》】は、音久叉洲のチームリーダーたちの事を指す。ようは、幹部の集まりみたいなものさ。かくいう私もその一人だ。
今日の所はこのあたりにしよう。さて、次はどの機体を解説しようか。そうだねぇ次はキリヒト君もとい、スコーピオ君のエンシェントガンダムなんてどうかな?
それじゃあ次回でまた会おう!!