設定集読んでない人のための簡潔設定集
・この世界には霊力があるよ
・使える人は限られてるよ
・主人公達は使えるよ
・主人公機体はE-60Aだよ
・車長:アクセル 通信手:サーシャ 装填手:ギルベルト 砲手:ラインハルト 操縦手:カール 同僚:シュミット 上司:エーミール 師匠:クラーラ
・不明な点等ございましたらご連絡ください。
プロローグ
『各車整備急げ!一分も無駄にするんじゃないぞ!!』
巨大な倉庫の真ん中でエーミール大隊長が拡声器で声を張り上げる。
倉庫の中には大量の戦車、自走砲、装甲車、その他諸々が並べられており、急ピッチで整備、補給を行っている。
「なんだってんだ…まだ朝の5時だぞ…?」
「抜き打ちの演習か何かか?冬の朝にやめてほしいぜ…うー寒ぃ…」
「アクセル!ベルツさん!喋ってる暇あるなら手を動かして!」
俺らがぶつぶつ文句を言っていると、サーシャから鋭い言葉が飛んでくる。
「今やってるよ!…はいよ、霊力カートリッジ満タンだ」
ガコン、と荒々しく燃料棒を車体後部上面の給霊口へと差し込んだ。霊導型の戦車はこれを原動力にして動くのだ。
『燃料補給の終わった車両は弾薬補給だ!今から首相閣下からの伝令がある。手を動かしながら聞け!』
首相がこんなところに来るなんて珍しいな、と思いながらも砲弾のバケツリレーを行っていると、衝撃の言葉が大隊長の側にいたテレマン首相から飛び出した。
『みなさん、おはようございます。本日未明、隣接国であるフロンティエール共和国、及び共和国と同盟関係にあるディバイン連合王国が我がクライゼル帝国への宣戦布告を発表しました』
「なんだと!?」
倉庫の中の兵士たちが動きを止めた。首相はそこで一拍置き、喋り方を変えた。
『奴らは今やわが国の主産業となった霊導工学によるアーティファクト製作の技術、および設備を盗みに来る。奴らに我々の技術は理解できなかったようだからな。本日未明、クライゼル帝国とフロンティエール共和国とを結ぶ主要幹線道路が数か所爆破された。奴らはこれを私たちの仕業だとして宣戦布告を突きつけてきた。だがもちろんわが国にそのようなことをするメリットはない。確実に奴らの仕業だ。空軍はすでに発進した。間もなく戦闘に入ることだろう。陸軍諸君も急いでくれ。19年前までの惨劇を繰り返さぬよう、もう二度と国民が路頭に迷いむなしい思いをすることのないように!!』
首相は声高らかに叫び、一例をすると早歩きでどこかへ行った。それを見届けた大隊長が拡声器を持ち直して大声を張り上げた。
『奴らはもう迫ってきている!者ども、急ぐんだァ!』
「「「イエッサー!!!」」」
多数の兵士が大隊長の声に反応し、急ピッチで進められていた作業はさらに高速化する。
その後、ものの五分程度で全車両の整備が完了した。
ーーー
「いやー、まさか戦争とはね」
砲手であるラインハルトが後頭部をポリポリと掻きながら車内でつぶやいた。
「よくそんな軽く言えますね…戦争ですよ?」
本日付でこの車両にようやく配慮された装填手であるギルベルトが引き気味に言った。
「まぁ全て俺に任せておけよ。過去の戦場も駆け回ってきたんだ。任せとけ」
操縦手のカールが胸をたたいてニカッと笑った。
「その自信はどこから来るんですか?慢心で死なないでくださいね」
サーシャがヘッドホンを片方の耳に当て、何やら紙に書きながら素っ気なくいった。
「お?サーシャちゃん心配してくれてんのか?」
「違います。仲間に死なれたら目覚めが悪いので」
「それを心配っていうんだよ…サシャ…」
車長である俺、アクセルは車内を覗き込んで苦笑いで言った。
現在、戦車大隊は一列に長い車列を作り、フロンティエール共和国との国境がある西に向かって進んでいる。
道中暇だったので点けた車内ラジオの緊急ニュースによると、帝国には非常事態宣言と国家総動員法が施行され、一気に戦時ムードに突入したようだった。
「…意外だな。スヴェートの連中が中立とはな」
ラジオに耳を傾けていたカールが操縦桿を握りながら呟いた。
スヴェート社会主義共和国連邦は、クライゼル帝国から見て東の方に位置する大国だ。近年無理な領土拡大政策を行なっていたからこれに便乗するかと思ったんだがな…
「敵が少ないに越したことはないわ。それにスヴェートまで来たら私の祖国が危ないもの」
サーシャが頬杖をつきながら欠伸をした。
サーシャはイディナローク共和国の出身で、幼い頃に帝国に移り住んできた。物心つく前から帝国にいたらしいのだから、いい加減帝国に馴染んでもいいと思うんだが、本人は頑なにイディナローク国民の姿勢を貫いている。まあ、帝国寄りの国だから問題はないが。帝国とスヴェートの間に位置する国だから心配なのだろう。
「あれ、グラディウス共和国の方々、味方として参戦してくれるんですか……あの国って武器ありましたっけ?」
砲弾をクロスでピカピカに磨きながらギルベルトが眉を顰めた。
グラディウス共和国は、帝国の南に位置する国で、綺麗なビーチの数々とさまざまな美味しい料理、温厚な国民性で有名な国だ。今回の戦争で役に立ちそうには思えない。が、
「もしかしたら…強いのかもしれないぞ。確か今までどの戦争にも参戦してなかったから実力がわからないだけという可能性もある」
俺はキューポラから身を乗り出しながら咽頭マイクで車内に語りかける。
みんな和気あいあいと喋っているように聞こえるが、言葉の端々に緊張の色が見える。
そりゃそうだ。だってカールを除く車内の全員はこれが初の実戦なのだから。先の大戦は俺が6歳の時に終わった。あれから19年が経つ。兵士も軒並み入れ替わっており、大隊長やカールのような人材は少ない。
それっきり、車内の会話はなくなり、モーターの回転音と履帯が雪を踏みしめ奏でる振動音、淡々と現状を伝える国営ラジオだけが車内に響いていた。
全員浮かない表情で黙りこくっていると、森が見えてきた。車内に大隊長の無線が響き渡る。
『アルザス大森林に到達した。これより先行偵察隊が偵察をする。E-25、30は先に行け』
アルザス大森林。クライゼルとフロンティエールの国境よりちょっとばかし帝国側に位置するその名の通り大森林だ。背の高い常緑樹が多数生い茂り、地上には戦車が通れる隙間は余裕であるが、森の中で空を拝むことはほとんど叶わない。そして森の面積が広いため、木々の幹で全方位の視界があまりよろしくない。薄気味悪い森だ。
大隊長の指示に従い、E-25軽駆逐戦車、E-30偵察軽戦車数両が森の中へ消えて行った。
『2分の待機の後、本隊も先行偵察隊の後を追う。最終点検の時間だ。霊導型は今一度カートリッジ残量を確認し、必要があれば補給せよ』
「だ、そうだ。サシャ、頼めるか?」
「えぇ、分かったわ」
そう言ってサーシャは砲塔後部のハッチからするりと抜け出し、車体後部のカートリッジを引き抜いた。
青白く光るそれは、その光量からして結構減っているのが見てとれた。
「んしょ…」
サシャが力んで霊力をカートリッジに流し込む。ものの十数秒で光は出発前のものと大差なくなり、サーシャは満足そうな顔でそれを給霊口に戻した。
「満タンにしておいたから、車体後部への被弾だけは避けてね」
「任せときなサーシャちゃん。全弾避け切ってみせるぜ」
カールが笑って言った。…霊導型には量産型と比べて欠点が二つある。
一つは航続距離が短いこと。これはさほど重要ではない。補給すればいい話だからな。
問題はこの二つ目。霊力融合炉とそれに直結しているカートリッジが不安定ということだ。兵器開発部の言い分によると、特殊な方法で電気を発生させているため、融合炉が破損した場合弾薬庫誘爆以上の爆発が起きるということらしい。実際新兵の時にデモ映像を見たことがあるが、爆発した融合炉は戦車ごと吹き飛ばしていたのだ。霊導型の発動機は小さく作れるため、機関保護の装甲は特別分厚くなってはいるが、やはり不安ではある。サーシャが被弾を心配していたのはこれが理由だ。
『先行偵察隊出発より2分が経過した。我らも追随する。戦車前進!』
大隊長の言葉に合わせてカールが慣れた手つきでギアを入れ、操縦桿を倒す。
ゆっくりと進み出すE-60。俺は重苦しい曇天を仰ぎ見、キューポラを閉め、車内に入った。
森の地面は適度な雪に覆われ、所々茶色い大地が顔を出している。
薄気味悪いなと思っていた矢先、車内に短い警告音が鳴り響き、全体無線が入る。
『こちら先行偵察隊、フロンティエール軍と思しき戦車大隊を発見!現在交戦中!』
大隊全体にピリッとしたものが走った。砲声がこちらまで聞こえてくる。
『全車、交戦を許可する。帝国に戦争を吹っ掛けた事を後悔させてやれ!』
僚車が次々に飛び出していく。
「アクセル、指示をくれ」
カールが急かす。
「あぁ…そうだな。ゼーベルティーガー、前進!」
サーシャが怪訝そうな顔で俺に尋ねた。
「どうかしたの?」
俺は少し間を置いて答えた。
「ちょっと…いや、何でもない。忘れてくれ」
なにか違和感を感じたが、初の実戦だからだろうと割り切り、俺は目の前の戦闘に集中することにした。
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