…調べれば出てくるからいらんか(自己解決)
「あかん…ここどこや…」
「アクセル…貴方って人はほんっとに…!」
日はもうとっくに落ち、辺りが暗くなっている頃、俺たちは未だ森の中にいた。
「うぉっ、危ねぇ」
ライトをつけてはいるが、BOランプのまま使用しているため前方視界はあまりいいとは言えない。現に急に目の前に出てきた木をカールが頑張って避けている。
「…ダメね、何故だかわからないけど無線が繋がらないわ」
それに加えて無線も繋がらないときた。もうどうすればいいんだ?
時折暗闇からヌッと現れる木を左に右に避けながら進んでいくと、ふと森が途切れた。
「ようやく抜けたか…?お、あの光は…」
「ちょっと待て!ライトを消せ」
俺の声にカールが不思議そうにライトを消す。キューポラから頭だけを出して双眼鏡を覗いた。
「なぁアクセル、どうしたんだ?森を抜けた先に野営地を設営するってのは聞いたんだろ?ならさっさと…」
ラインハルトが面倒くさそうに言うのを遮って言った。
「あれ敵だ」
「なんだって!?」
キューポラを閉じ、車内に戻る。
「昼間殲滅した駆逐戦車……何だっけ、あれと、あれに砲塔を載っけたようなやつとか、色々いたんだ。今回の戦闘で鹵獲はしてないはずだからあれは敵の野営地だ」
「
「今繋がったわ。報告するわね」
そう言ってサーシャはようやく繋がった無線でクライゼルの野営地にことの顛末を報告する。
「報告終わり。野営地の場所が分からないと言ったら大声で笑われちゃったじゃない。アクセル貴方って人は本当に詰めが甘いんだから前も…」
「いやいや、俺は…」
「夫婦漫才はそこまでだお二方。目の前敵陣地だぞ。本隊はなんて言ってたんだ?」
「えっと、無線で場所はわかったから明日攻めるって。私たちはここで敵の観察だそうよ」
「「「「えー!?」」」」
「恨むなら我らが車長を恨みなさい」
「俺かよ!?」
「お前だろ」
「せやったわすまぬ」
不平不満はあるものの、命令には逆らえないわけで。俺たちは初陣の勝利を寂しく車内で祝うことになったのであった。
観察…もとい監視を命令された俺らだったが、100キロを超える速度で激戦を繰り広げた後にそんな夜通し観察できる体力は残っているはずもなく、カールと俺を除く3人は早々に眠ってしまった。
「…みんな寝ちまったな。お前も寝るか?」
小声でカールがそう言った。
「いや、俺はまだ寝ない。そうだな、ちょっと霊力供給してくるわ」
俺は立ち上がって車外に出た。
冷たい冬の空気が鼻をつく。白い息を吐きながら車体後部にそっと降り立つ。
「ッ、つめてぇ…」
金属の取手を恨みながらカートリッジを引き出してみると、朧げに光るその光は弱々しいものだった。これでは走れて10キロと言ったところだろうか。
取手を握る力を強め、霊力を供給する。自分の体の中から霊力が流れていくのが感じてとれた。
カートリッジが光り輝くようになったのを確認すると、俺はそれを戻した。
車内に戻ろうとした時、カールが叫んだ。
「まずいぞ!気付かれた!」
「何だって!?何故……あ」
真っ暗な森の中で突如光が現れたらそりゃ疑うか。どうやら俺も疲れでどうかしちまってたみたいだ。
それに車体後部で光を出したら砲塔の影が浮かび上がるに決まっている。
「みんな起きろ!…敵に見つかっちまった!」
俺はすやすやと寝息を立てていたメンバーをたたき起こした。
「ちょっと叩かないでよ!いったい何よ!?」
「敵だっつってんだろ!カール、敵編成は?」
「Fochに砲塔付いたやつ、ARL-44、…あとなんかわからねえ奴!3両だ!」
クソッ…砲塔付きFochは未知数だ。カールの報告も適当だし、無策で突っ込むのは危険としか言いようがない。それにここは敵の野営地であるわけだし。極力戦闘を避けつつ逃げた方がいいな。
「カール、野営地と反対方向に全速力、術式使ったら衝突事故の危険性があるので使えない。頼んだぞ。ラインハルトはいつでも撃てるようにだけしておけ、サシャ、本隊へ通信、大至急!」
冬の夜の冷たい空気を切り裂いて敵弾が飛来する。車体を掠めた。
相手は全速力でこっちに向かってきている。それなのにいやに射撃が正確だ。
『こちらゼーベルティーガー!敵に発見され現在逃走中!敵は3両!』
『こちら大隊長だ。なんとしてでも逃げ切れ。無事に帰ってくることを祈る』
それだけ言うと無線は切れる。俺は大隊長の投げやりな感じに頭を抱えながらキューポラを空けて顔だけを出す。
真っ黒に染まった木々が後ろを睨むように見る俺の視界から遠ざかる。時折マズルフラッシュが見え、
どうやらコイツの足では奴らから逃げ切ることはできなそうだ。
「ラインハルト!砲塔旋回180度、後ろの敵を狙う!」
俺は前を向いて左右に近い木がないかを確認して指示を出す。モーターの音が響き、砲塔が回り始めた。この回っていく時間がもどかしい。
早く、早く回り終わってくれ!車体背面に一発でも有効射が入ったら俺らは終わりなんだよ!
レーツェル融合炉は淡い青い光を放ちながら膨大な力を発している。被弾でもしようものならこれが俺らに牙をむくことになりかねないんだ…!
砲塔が旋回を終える。
途端にラインハルトは射撃を始めるが、こちらも高速走行中だ。ちゃんと狙えるはずもなく、当たったとしても弾かれてしまう。
「クッソ!当たっても弾かれやがる!あの砲塔付きFochかってぇぞ!」
「当たり所が悪いだけだ!」
車内にも焦りの色が見え始める。カールの集中力も切れてきたようだ。そんな時、ギルベルトが悲痛そうな声で叫ぶ。
「残弾、
途端に血の気が引いていくのを感じた。そりゃそうだ。あんな激戦の後補給なしでは弾数も底をつくというものだ。1発…敵は3両いるってのに!
不運とは重なるものだ。カールが嘆く。
「履帯から異音がする。なんか巻き込んだみたいだ。それと前方に谷だ!」
ついてないな全く…!履帯までイカれるとは……何か…何かないか…?
ある。一ついいのがあるじゃないか
「カール、谷手前まで言って落ちないところギリギリで左へ曲がれ。奴さんたち俺らしか見えてないはずだ。ギルベルト!HEに交換!ラインハルト!敵車両の履帯を狙え!」
「…!了解!アクセルらしい戦法だ」
「交換完了です」
「今度こそは当てる!」
気が若干まばらになり、道の凹凸が少なくなる。森の終わりは近い。
車内にはうなりを上げるモーターと路面の音だけが響く。
「曲がるぞ!」
「っ
砲撃音と共に車体が急速に向きを変える。崖から一瞬落ちそうになるが何とか立て直した俺らは急いで崖付近から離れた。
ラインハルトの決死の一撃は敵の先頭を走っていた砲塔付きFochの履帯を撃ち砕いた。
そいつは急な足回りの消失でコントロールを失い、その驚異的なスピードのままスピンする。
後続のARL-44は前部誘導輪が突出しているデザインとなっている。そこへ砲塔付きFochが衝突、旧時代設計の足回りは砕け散った。
後続のよくわからない奴は前方をふさがれ、衝突する。
そしてそのまま、前2両は谷へ真っ逆さまに落ちていく。そこまで高さがある谷ではないが、落ちてただでは済まないだろう。
3両目が前2両を押してとどめを刺した感じだ。3両目はいまだに崖上にいる。
そいつは反転して俺らの方へ向こうとする。いまだ健在のようだった。
谷からちょっと離れたところで事の顛末を観察していた俺は指示を出す。
「ラインハルト、撃て」
静止射撃、そして今から動き出そうとする敵相手ならそうそう外すものではない。
命中の衝撃でそいつは谷にゆっくりと落ちていく。そいつの影が見えなくなった時、谷の対岸の崖がボウッと一瞬だけオレンジ色に染まり、そして暗くなった。
「「「「「はぁ~~~…」」」」」
俺らは車内で脱力した。ようやく命がけの鬼ごっこが終わったのだ。
「生きてる…僕生きてる…」
ギルベルトがほとんど空になった砲弾ラックにもたれかかる。
「俺はぁ…生き残ったぜ…もう二度と夜の森を高速走行はしたくないな」
カールが操縦ハッチを開けて外に出る。それにつられて全員が外に出た。
本来寒いはずの空気は今ばかりは涼しく、心地よく感じられた。
「星が綺麗ね…こんないい夜なのに私たちは一体何をしているのかしらね…」
「ほんとだよな…」
「さーて、感傷に浸っているところ悪いが、一つ良くないお知らせだ」
足回りを見に行っていた俺とカールが車体によじ登る。サーシャがもううんざりといった顔をしている。俺だって好きで悪い知らせもってきてるわけじゃないんだよ。
「昼間の全力走行、今回の装甲、そしてたびたびの至近弾の影響で…」
「履帯が切れました」
「車中泊です」
途端にラインハルトから抗議が上がる。
「こんな遮蔽も何もない場所でか!?今度こそ死ぬんとちゃうか!?」
「ラインハルト、方言が出てるぞ。それに大丈夫だ。多分」
「その多分が信用できひんのやぁ!」
ラインハルトが食って掛かる。それを見てギルベルトが呟いた。
「なんでラインハルトさん方言隠してたんだろう…?」
「地方出身って侮られたくなかったみたいよ。なんか前にそう言う事があったみたいで。新人が来るときいつもそうしてたのよ。標準語が取れたってことは認め…たのかしら?」
「認め…られたんでしょうか?そもそも最初っからフレンドリーだった気はしますけど…」
「「まあいっか」」
『こちらゼーベルティーガー、本隊の応答願います』
『ゼーベルティーガー!無事だったか!?』
無線相手の勢いに思わず私は無線機を耳から離す。
『シュミットさん、声が大きいわ。…なんであなたが出てるのかしら?』
本当なら大隊長あてにつないだはずだったんだけど…おかしいわね?
『あぁ、それなんだがな。大隊長が ”冷たく突き放しちゃったから合わせる顔がない…” って俺に無線機よこしたってわけ…あっ、ちょっと大隊長!?言ったのは悪かったですから…ちょっと!叩かないで…年甲斐もなく布団抱え込んで体育座りしないでください!拗ねんな!子供か!……あぁ、待たせて済まないサーシャさん。で、そっちはどうなんだ?声の調子からして誰も死んじゃいないだろ?被害は?』
シュミットさんが申し訳なさそうに聞いてくる。大隊長は今日も平常運転のようだ。オンオフの差が激しすぎるわね相変わらず。
『履帯が切れちゃったの。予備を使って今修理しているところだから、明日の朝くらいには出発できるかも。野営地の場所は?』
えーと、と言うシュミットさんの声がちょっと遠のく。そしてすぐに戻ってきた。
『事前配布の地図で言うとL5地点あたりだな。そのあたりに来れば分かると思う。んじゃ、気をつけてな…大隊長!ほら立って!』
そう言って無線は切れた。
「サーシャー!無線終わった?なら手伝ってくんない?」
車外から旦那の声が飛んでくる。
「今行くわ。待ってて」
ハッチを空けて外に出ると、空はもう明るくなりだしていた。
どうやら私たちが十分な休息をとる時間はなさそうだ。…不幸だわ……
ラインハルト君の性格、当初予定していたのと別人格で書いてた…まあいい。このままいけばバレへんやろ(モロバレ)
ラインハルト君はエセ関西弁になりました。
そして
ちなみにですがこれまでに出てきたFochは155じゃないです。普通のです。