「敵が煙幕を展開!前が…!」
カールが唸る。
高速走行に入った途端に煙幕弾による視界遮断。そして煙幕が展開しきるほんの少し前、俺の目は
…まさか…衝突して止める気か!?
ふと自分の脳裏に最悪のパターンが映し出された。
「カール!針路をずらせ!奴さん正面衝突で止める気だ!掴まれ!」
「んなバカな!?」
急いで針路を車体幅分ほど右にずらすが、間に合わなかった。
途端、左前に鈍い衝撃が走り、車体が浮き上がって回転する。
「ッ…!状況報告!」
「こちらカール、左の履帯の反応がおかしい。でも切れてはいないみたいだ。」
「切れてないなら上等だ!すぐに出せ。敵の砲弾で蜂の巣にされるぞ!」
カールが急いで操縦桿を前に倒す。次の瞬間、元いた場所に次々と土煙があがる。
「外したのか!?衝突で停めたはずじゃ!?」
「うわっ!?こっちに来るぞ!?」
立ち込める煙幕の中、俺は作戦失敗を悟った。
部隊は今、煙の中にいるはずの敵1両を追って右往左往としている。このままじゃ同士討ちが発生するかもしれない。
「全員止まれ!この煙の中じゃやつもこちらを視認出来ないはず…」
刹那、轟音が響き、視界が赤色に染まる。
「2号車被弾!沈黙!」
通信手が悲痛な声で叫ぶ。
どういうことだ?敵はこちらが見えているというのか!?
また視界の端で炎が上がる。グズグズしてはいられない。
「撤退だ!最善を尽くして逃げろ!」
これ以上俺の私怨で部下を死なせる訳には行かない。敵車両が煙幕の中でもこちらを視認可能ならば、あとは逃げるしか、こちらに取れる手はない。
「操縦手、急いで反転、撤退だ!」
大柄な車体が馬力に物を言わせて回転を始める。これならすぐ逃げ切れるだろう。
「煙幕から抜けます!」
操縦手の声で前を見る。段々と靄がとれていく視界の、その先には…
「バカな…!いつの間に!?」
こちらを向いている敵車両を視認したと同時に、俺の意識は途切れた。
「ふ〜…死ぬかと思ったぜ…」
敵車両全車の沈黙が確認された今、車内には安堵の空気が漂っていた。俺らは無事に奇襲を斥け、且つ全車両撃破という快挙もなしとげたのだ。…まあ、敵が未熟だったという所もあるかもしれないが。
「これからは野営地にもそれ相応の戦力を置いて欲しいわね」
「そうだな。今回の功績があるから多少の無理は通るだろう。言ってみるよ」
「大隊長には飯を奢ってもらうくらいはしてもらわなきゃ割に合わねぇよなあ?」
車内に笑いが起こる。
「なぁ、アクセル、敵の野営地が堕ちたら次はどこなんや?」
ラインハルトが尋ねる。俺も詳しいことは知らないが…恐らく…
「首都だろうな。短期決戦のつもりらしいし、一気にフロンティエールに畳み掛けるつもりだろう」
「つまり、次勝てば戦争は終わるんやな?」
俺は押黙る。例えフロンティエールを倒したとしてもディバインが背後にはいるし、何故か音沙汰がないスヴェートも心配だ。
「あぁ…終わるといいな」
この事件から2日後、フロンティエール主力野営地が陥落し、クライゼルはこの戦争に王手をかけることになった。
長らくおまたせしました。お待たせした割りにはクオリティが最底辺なのはすみません。
次回か、その次でフロンティエール戦は終わる見込みです。