気づいたらしずかちゃんだったので道具を借りパクしてみた 作:さわやふみ
時計を見ると7時30分をさしている。
(あ!学校に行く支度しないと!)
誰かに指摘されたわけでもないが急に思い出す。
小学生と言えば学校、という無意識な発想からかもしれない。とにかく急がないと遅刻してしまう。
ただ、学校に行くには……着替えなければならない。
タンスの服の位置が分からないこともあるが、問題はパジャマを脱がなければならないことだ。
漫画で見かけるシャツとスカートをデザイン関係なしにタンスから探し出し、いざパジャマのボタンに手をかけるが手が進まない。
タンスを漁ることさえ変態的と感じたのに、自らの体ではあるものの小学5年生の女の子の服を脱がすのはやはり抵抗があったのだ。
(この感覚……。やはりどう考えても俺は男だ。しずかちゃんの人格ではないのだろう)
気を使って、しずかちゃんの体を見ないようにしながら何とか外出着に着替え始める。
これはまだしずかちゃん体験型VRであることの可能性を排除しきれなかったことも起因していた。
もしもハァハァ言いながら女の子の体を着替えさせている俺が外部モニターなどに映し出されているのだとしたら現実社会に堂々と復帰出来ないからだ。
シャツが胸の先端に擦れただけでも変な気持ちになる。
この子はもうブラが必要ではないのか。
と余計な事を考えながらなんとか着替えを済まし、髪の毛をアンバランスながらも2つ編みのおさげに結ぶ。髪型は楽で良かった。
そして居間に行くと、しずかちゃんの両親が既に朝食を食べていた。
「あら、静香。おはよう。今日は起きるの遅かったわね。具合でも悪いの?」
「お、おはよう……。大丈夫」
漫画で何となく見たことがあり既視感がある母親であったが、ほとんど記憶がなく初対面に近い感覚だ。
父親に至っては漫画でもコロコロ容姿が変わっていたこともあり全く見覚えがなかった。
朝食を食べている間も会話こそなかったがかなり気まずく、とにかくすぐにランドセルを背負って外に出ることにした。
「あら?もう行くの?朝風呂も入らないなんて……」
去り際に聞こえた母親の台詞にハッとする。
そうだ。風呂に入りたい。
なぜか分からないが無性に風呂に入りたいのだ。風呂好きなしずかちゃんの体が欲しているとでもいうのだろうか。
時間もないため、湧き出る欲求を抑え無理矢理に玄関を出る。
しかし、問題は続く。
学校は……どこだ。
記憶がないからたどり着けるわけがない。手元に携帯もなく調べることも出来ない。
(取り敢えず歩いてみるしかないな……)
適当に少し歩いてみると勝手に歩が進みだす。まるで学校に吸い寄せられているかのようにスイスイと突き進むのだ。
また、見渡して見ると小学校らしき建物が見えるし、ランドセルを背負う他の学生達も見かけられるようになった。
その流れに上手く乗れ学校に着くことが出来そうだ。
なんか人生やり直せるとしたら小学生からと思ったことがあった気がするけど、まさに今俺は小学校に登校しようとしているのだ。
女の子としてだが。
取り敢えず穏便に過ごすため、可能な限りしずかちゃんの特徴を思い出す。
歩き方からもしずかちゃんらしさは維持しないといけない。
友達関係も可能な限り思い出さないと。
そうしてブツブツと独り言を言いながら歩いていると聞き覚えのある声が後ろから聞こえてくる。
「しずかちゃ〜ん!おはよう!」
(む……この声は……)
この声を聞くとやはりこの場所は漫画ドラえもんの世界なのだなと実感する。
ゆったりとしてトゲがなく綺麗な声だ。
振り返るとまん丸メガネをかけた黄色い上着の少年、野比のび太がそこにいた。
漫画ドラえもんの主人公にして圧倒的なダメ男、しかし温厚で優しく、他人を深く思いやる心の持ち主だ。
この男の子の顔を見るとなぜかすごく安心する。
悩み事に対して親身に相談に乗ってくれそうだからだろうか。
「あ、あらのび太く、さん。おはよう」
「しずかちゃんがこの時間帯に登校なんて珍しいね。急がないと遅刻しちゃうよ!」
「そ、そうね。一緒に行きましょう」
のび太についていけば素性がバレることなくしずかちゃんの座席を教えてもらえるだろう。
ついでにのび太の家に居候しているドラえもんにアプローチも出来る。
「のび太さん、今日学校が終わったら遊ばない?」
「ええ?いいけど今日しずかちゃんピアノの練習日じゃなかった?」
「え?ああ、そうね!そうだったわ。じゃあ明日はどう?」
「うん、いいよ!空き地に集合かな?」
「たまにはのび太さんのお家にいきたいな」
「そ、そう。わかった」
「明日すぐ行くね」
小学生らしく実に自然な約束の仕方だった。
怪しまれることなくのび太の家に行けることになった。
早いところ記憶の問題を解消しないとこの先しずかちゃんとしてやっていけるか大分不安だ。
というか一生しずかちゃんとして生きていかなければならなかったらどうしよう。
真剣に考えてみると不都合も多い。
先ほどのび太に指摘されたピアノが弾けるようにもならないと母親がうるさいだろう。
そしてなによりしずかちゃんの人生にはのび太が付きまとってくることが確定している。
そもそも人生を奪っていることにも(少しだけ)罪悪感がある。
やはりいまやるべきことは早急にドラえもんに会うことだ。
教室についてからは自然と座席も聞け、授業にものぞむことが出来た。
小学5年の授業はまだ予習なしでもなんとかついていけそうで良かった。学校のほうは軌道に乗れそうだ。
が、重要なことを朝からずっと我慢しており、遂に限界に近づいていた。
トイレに行きたかったのだ。
(も……もう無理だ!どうせいずれはしなきゃいけないんだ!しずかちゃんすまん!)
周りの目を気にする余裕もなく急いで女子トイレの個室に入り、スカートとパンツを脱ぐと一気に放出する。
ゾクゾクっと背筋を通る感覚は、また男と違った達成感があった。
では……拭かないとな。
この行為を嫌厭してトイレに行くことを避けていたがもう仕方がない。
やらなければ不衛生だし、病気になったらしずかちゃんに申し訳がない。
一応、遠慮してティッシュを大量に取り、いざ秘部を拭く。
ティッシュなのか肌なのか分からないぐらいの柔らかさであったが、手に伝わる感触は"何もない感"が強く、改めて女の子になってしまった事を実感した。
トイレから出る際はなぜか外に誰もいない気配になるのを確認してから出た。
いったん一難は去ったが、今日の問題はやはりピアノだろう。
授業中に考え抜いた結論としては体調不良で乗り切る案だ。
しずかちゃんの母親はピアノでは厳しいけど基本的に優しい。情に訴えればなんとかなるはず。
学校が終わった帰宅途中の玄関の手前で暗い表情にモードチェンジし、いざ家の中に入る。
するとそこには母親がニコニコしながら出迎えているではないか。
「おかえり、静香。今日はピアノの練習に行く前にママに成果を聞かせて頂戴ね」
「………!!」
ドッドッドッドッ
心臓の鼓動が聞こえてくる気がするほど背筋に緊張が走る。俺はピアノは全く弾けない。
このまま母親にピアノを聞かせたらどうなってしまうのだろうか。
しずかちゃんが記憶喪失だとバレるか。もしかするといま人格が変わっていることさえ親ならば察してしまうかもしれない。
(落ち着け……初動が大事だ。練習通りにやればできる)
「あ、ママ?今日は何だか気分が優れなくてピアノはお休みしたいのだけど……」
おでこに手を当てつつ上目遣いで母親の様子をチラリと見ると、すごく心配そうな表情だ。
のりきれるか?
「あら……やっぱり具合が悪かったのね。いいわ。今日はもうベッドで休んでらっしゃい」
「うん。そうする……」
助かった……!!
今日はこのまま部屋に籠もって作戦を練ることにしよう。
明日、ドラえもんにどのように相談するか。本当のことを打ち明けるか。
やり方は色々あるはずだ。
ベッドで横になって考えていると、慣れないしずかちゃん生活の疲れもあって気がついたら夜を迎えていた。
晩ご飯の時も口数が少ないせいか両親から心配された。
しずかちゃんの母親に体を心配されて改めて思うが、俺はやはりずっとしずかちゃんでいるべきではないかもしれない。
この子の人生を奪ってはいけないのだ。
どうなるか分からないけれど明日ドラえもんに会ったら決着をつけよう。
今夜はもう風呂に入って寝よう……。
風呂……。風呂か。
なぜこんなにも入りたくなるのだろう。
しずかちゃんは大の風呂好きで有名だ。1日に3回は風呂に入ると書いてあった気がする。
体が欲しているのか、またはしずかちゃんの欲求が俺に混ざり始めているとでも言うのだろうか。
意を決して俺は風呂場を探す。
そして長い廊下の途中にそれらしきドアを見つけ、中に両親がいないことも確認する。
湯も張っているようだ。
(慌てるな。女の子が一人で風呂に入るだけだ)
いざ洗面所に入り大きな鏡を覗くと無表情のしずかちゃんがこちらを見ており、やましい心が見透かされているようだった。
「し、失礼します」
自分の年齢の記憶さえあやふやだが、つい小学5年生に敬語を使ってしまう。
取り敢えず髪の結びを解いてから上着を脱ぐと、白くて薄い布地のシャツに薄いピンク色をした2つの膨らみが浮かび上がっているのが分かる。
やはりシャツだけでは成長している胸の突起までは隠しきれていないようだ。
朝は敢えて意識しないようにしていたが、それを今から拝見させてもらうと考えると自然と興奮してしまう。
流れでスカートのホックを外すとストンと足元に落ち、目の前の鏡には下着だけのしずかちゃんが写し出されている。
し、刺激的だ。
変に恥じらいながら少しづつ脱いでいくから着エロ効果が出てしまっているのかもしれない。
ここはもう一気にいくしかない。
思い切ってシャツとパンツをパパッと脱いでいくと目の前には天使を彷彿とさせる透き通った白い素肌の女体があらわれる。
源静香の産まれたままの姿
漫画でもたまに出てきていたが、実際に生で間近で見ると実に神秘的な光景であり、局部の作り込みも圧倒的な完成度だ。
これはもう体験型VRなんかではない。
俺はいま紛うことなきしずかちゃんそのものの体を誰にも邪魔されずに見ているのだ。
のび太が知ったら恨まれるだろうな。
風呂に入り、石鹸の泡を体に滑らせる際も張りのあるスベスベの肌にいちいち驚かされた。
ただ今日、胸や秘部を洗うことは遠慮してやめておくことにした。
全ては明日結論が出てからだ。
その後、風呂上がりに髪が全然乾かないことに苦戦しながらも、えも言えぬ達成感と初日の疲れから俺はそのまま床についた。
道具の話を書きたいのに、変態的な内容になってしまう。