気づいたらしずかちゃんだったので道具を借りパクしてみた   作:さわやふみ

4 / 12
4.道具の検証

 せっかくこの世界に来たんだ。この際、大抵のことはドラえもんの道具に頼ることにする。

なぜか分からないが俺はひみつ道具について大分覚えていることが分かったからだ。今後、どんな道具を借りていくべきかリストアップした上で慎重に選んでいく。

そのためまずは道具のランク付けをして分類分けしてみることにした。

 

トップクラスの『もしもボックス』はやはり無敵最強なのでS級になるだろう。他にも最強系の道具はある。それは『ソノウソホント』だ。

 

これはクチバシの形をしており、口に装着して嘘をつくと、その嘘が本当(現実)になる道具だ。直接的に影響範囲が広い効果を引き出せるため実用性は『もしもボックス』と並ぶ。コンパクトな分、それ以上かもしれない。当然、タイムパトロールから危険視もされている気がする。

念の為、この手の道具は全てS級として一旦様子見とする。

 

俺が狙うのは影響範囲もほどほどで目をつけられにくい道具で間接的に恩恵が得られる物だ。持ち運びしやすいとなお良い。

 

その点で『さいみんグラス』は実に丁度よかった。メガネを通して話した人に強度な催眠をかけてくれるのでその場凌ぎがしやすい。ただ、機械であることにはかわりないからGPSがついている可能性は捨てきれない。まぁ乱用して社会のバランスさえ崩さなければ大丈夫だろう。このような立ち位置となる道具をS級につぐA 級クラスとして狙い所とする。そして有用だけど消耗品として消失してしまうものや、子供向けで効果の価値が低い道具をB級、C級とした。

 

 ではまず何から手を付けるかと言うと、人格が変わっていることがバレないようにするため最初はしずかちゃんの生活に順応することに注力する。例えばピアノだ。しずかちゃんとしてピアノ(とたしかバイオリン)は弾けるようにしておきたい。

 

ただ、俺は楽器が得意でなかった。

 

そこでピアノの習得に使う道具を思い起こすが、特訓や訓練系の道具はろくな物がない。のび太が水泳や野球のために『スパルタコーチ』シリーズを使ったことがあるが、スパルタすぎて死にかけていたし、効率的でもなかった。

かと言って『能力ディスク』で一時的に達人の能力を体にセットするのも空しいだけだ。

あくまで自分の力でピアノを弾けないと意味がない。

 

(能力習得は長期戦になりそうだな……)

 

時間がかかるが複数の道具を併用すれば手がないわけではない。しばらくは『さいみんグラス』で時間稼ぎをしながら道具で効率的に習得していくことにする。

 

となれば次は学力だ。しずかちゃんの成績は当然上位だろう。俺の知識でも小学5年生レベルであれば並の点数はすぐに取れると思うけどそれだけじゃ学力が下がったと思われてしまう。なるべく注目を集めないためにも成績は維持しておいたほうがいい。

 しかし勉強なんてすごく久しぶりの感覚だし、出来れば可能な限り楽して良い成績を取りたい。それにはやはりひみつ道具の1つ『アンキパン』が適しているだろう。

これを本のページなどに押し当てると、合わさった部分が転写され、食べれば転写した内容を即座に覚えられる。

 ただし、この道具は使い勝手が難しい。

食べられる限り何枚でも効果が重複するが、その内容を暗記していられるのは食べたアンキパンが体内にあるうちだけで、排泄した途端に忘れてしまうのだ。

食べたものは24~72時間で排泄されることを考えると確実にいくならテスト前日に使う程度だ。さらに保存も通常のパンだと2日ぐらい。ドラえもんに発注して受け取ってからすぐに冷凍しておくとしておよそ保存期間は一ヶ月と考えておこう。かなり不味くなりそうだけど。

 

これでしずかちゃんらしい生活の基礎は整う。

このまま当分はしずかちゃんとなり様子を見ていき、ゆっくり記憶を取り戻す。戻った記憶次第で後のことは考えることにしよう。

ちなみに『わすれとんかち』は怖いので使わないことにした。

 

 

 

(よし……では実験の続きだ)

 

俺は再度、しずかちゃんの母親の元に行く。

 

「ママ、私って今日のピアノの練習もう終わった?」

 

「何言ってるのよ。さっき終わったじゃない」

 

「そうね。ありがとう」

 

「おかしな子ねぇ」

 

……よし。

 

俺はさいみんグラスの効果の持続性を確認した。

永続的なのか一時的なのか仕様次第では大分使い方が変わってくる。少なくとも数分たっても効果は継続されていることが分かった。この後、24時間後にも確認する。ただ、仮に永続的であるとしてもドラえもんを相手にした場合はもう少し慎重にいきたい。

 ドラえもんはさいみんグラスの形状を知っているから道具を出した途端にバレてしまう。度々しずかちゃんがこのメガネを使っているところを目撃され、不自然なことが続いた場合真っ先に疑われてしまうだろう。

 

ではどうすればいいか。

 

答えはシンプル。道具でドラえもんの記憶を消してしまえばいいんだ。

 

記憶を消す道具はいくつかある。一番効果が強いのはやはり『メモリーディスク』だ。記憶を吸い取ったり、読み取ったり、偽物の記憶を埋め込むこともできる。これを使って記憶を消去することが出来るはずだ。当然この道具は自分的にはS級に分類されるから預かることはしない。

『さいみんグラス』で道具を借り、その記憶を『メモリーディスク』で消す。借りた道具はなるべくその場で使いすぐにドラえもんに返してすぐに記憶を消せばリスクを負わずに実質使い放題に出来るのだ。

『さいみんグラス』を手に入れた時点で既に何でも出来る万能感さえ持ち始めていた。

 

(試してみたい)

 

俺は街のマップを覚えるついでに、さいみんグラス片手に家を飛び出した。

 

余裕が出てきた今になって分かるが、街中を行き交う人々は普通に仕事をしていたり子供は遊んでいたりそれぞれ生活をしている。ドラえもんの世界がリアルタイムで動いているのだ。

漫画にあるようなその他大勢という感覚がまったく感じられない。

完全にこの世界は1つの現実として存在しているようだ。

 

そのへんに立っている地図を見てもここが練馬区の街であることも分かった。

 

(練馬区か……。実在する区だな。空き地や裏山もあるのかな?)

 

俺は地図からそれらしい空白の空き地を見つけて向かった。

するとそこにはお馴染みジャイアンやスネ夫が野球をしていた。

 

(おおお!いるいる。やっぱり皆いる)

 

漫画にある土管のようなコンクリートが3つ積まれた物もあるではないか。

 

(ジャイアンのことをしずかちゃんは何て呼んでたっけ……。あ!そうだ!)

 

「たけしさーん」

 

振り返りしずかちゃんに気づいたジャイアンは速攻で走ってくる。スネ夫達も野球を中断して駆け寄ってきた。

 

「しずかちゃん、どうしたんだ?」

 

太い声でぶっきら棒に喋るジャイアンに感動しつつも俺は『さいみんグラス』を試したい衝動にかられていた。

 ジャイアンとスネ夫は映画だとのび太の味方だが通常の漫画やアニメだとのび太をイジメる側だ。ちょっとぐらい痛い目にあわせても問題ないだろう。

 

さいみんグラスをかけた俺はジャイアンの目を見て喋りだす。

 

「この間貸した500円まだ返して貰ってないけど……。スネ夫さんもよ。いつ返してくれるの?」

 

「えー!ごめんごめん!いまサイフあるから返すよ」

 

そう言うとスネ夫はゴソゴソとポケットから500円を取り出し渡してきた。ジャイアンは手持ちがなかったらしくまた今度にした。

 

道具を使って2人からお金を巻き上げることに成功したが、実験とはいえ割と虚しさを感じる。

 

(小学生から大金をせしめるわけにもいかないしな。さいみんグラスも効果範囲的に大分地味な道具だし……)

 

だからといってさいみんグラスからのコンボで全てが成立するから必須なアイテムであることには変わりはない。

 

明日以降これを使ってドラえもんから他の道具を借りる。未成年ではあるがお金稼ぎも工夫していくつかの道具を借りれば可能になるはずだ。

 

いや、そもそもドラえもんの道具自体に魅力があるのにお金稼ぎとかしょーもないことに使おうとするから地味な道具選定になるのではないか?もう少し夢のあることに使ってみるか……?

 

 

 

「し、しずかくん……怖い顔してどうしたの?」

 

「で、出木杉さん!」

 

急に話かけてきた声の主は出木杉くんであった。仲が良いから敢えて避けていたのにアッサリ出会ってしまった。

 

「昨日は早く帰っちゃったようだし……何かあった?」

 

この言葉にギクリとする。そうだった。

出木杉くんとしずかちゃんはよく一緒に帰っている。やはりこの男……危険だ。

 

「ぐ、具合が悪かったの」

 

「そう、大丈夫?熱はない?」

 

そう言うと出木杉くんは(しずかちゃん)の額に手をあててくるではないか。

しかもこの表情は計算ではない。真剣にしずかちゃんの心配をしているのだ。

 

(かっこいい……)

 

これは男でも惚れてしまうレベルだ。

 

しかし、舐めるな。俺はこの世界のヒロインだぞ。この美少女を落とそうなど100年早いわ。主導権を持つのはこの俺だ。

 

しずかちゃんの体を手に入れたせいか、出木杉くんに対する嫉妬もあいまって俺は強気に対抗し始める。

 

「そうかしら……」

 

(しずかちゃん)は額にある出木杉くんの手にかぶせるように自分の手を置いた。

 

「どう?熱い?」

 

「うーん、高くはなさそうだけどね」

 

手を重ねられた出木杉くんは至って平静を保ったままだ。

小学校時代なんて女の子の免疫耐性はまだついてないはずだ。しかもカワイイ子に手なんて握られたら普通は好きになっちゃうだろ。

 

猛者(ツワモノ)だ……。

 

ならば……これはどうだ。

 

「でもちょっと暑いのよねぇ」

 

そう言って(しずかちゃん)は前かがみになりながら胸元のシャツをパタパタと扇ぐ。

 

出木杉くんの目線が一瞬、胸元へ行ってから離れるのが分かった。

 

(ふ……見えただろ?谷間が。しかしおそろしく速い目の動き。俺でなきゃ見逃しちゃうね)

 

恐らく瞬間的に脳裏に焼き付け、後から映像処理を行うのだろう。凄まじい情報処理能力だ。

 しかし、やはりなんだかんだ出木杉くんも男の子だ。異性にはやはり興味を持ち出していると見える。もしかすると漫画では見れない性癖も抱えているかもしれない。

 長期戦になりそうだが思わぬところで新たな楽しみが増えた。しずかちゃんを使って端正な澄まし顔の出木杉くんを落としてみるのも余興として悪くない。しかもそれはドラえもんの道具は使わずにだ。

 

この時、俺と出木杉くんの因縁の戦いが始まったような気がしていた。




HUNTER×HUNTERリスペクト
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。